《13》全国都市緑化よこはまフェアを開催して 執筆 大浦 康史 環境創造局みどりアップ推進課担当係長 1 はじめに  全国都市緑化フェアは、都市緑化意識の高揚、都市緑化に関する知識の普及等を図ることにより、国、地方公共団体及び民間の協力による都市緑化を全国的に推進し、もって緑豊かな潤いのある都市づくりに寄与することを目的に開催される全国的規模の花と緑の祭典である。  2017年に開催した「第33回全国都市緑化よこはまフェア」(以下、「よこはまフェア」という。)では、都心臨海部の「みなとガーデン」、郊外部の「里山ガーデン」をメイン会場とし、パートナー会場や区の取組により、72日間で600万人を超える来場者をお迎えすることができた。よこはまフェアでは「ガーデンネックレス横浜2017」の愛称のもと、「まち・人・時」をネックレスのようにつなぐ様々な取組が行われた。 2 みなとガーデンの取組と成果 @みなとガーデンの特徴  みなとガーデンは、「歴史と未来の横浜」をコンセプトに都心臨海部に所在する公園、港湾緑地等の8つのメインガーデンを設定し、さらに各会場を回遊するルートや駅前など街全体の緑花演出を補完するまちなかフラワースポットを15箇所設定した。みなとガーデンの最大の特徴は、従来の都市緑化フェアのように大規模な公園を単独の会場とするのではなく、既存の公園等に加え日本大通りなど街路も含めた演出により、街全体を大きな会場としてお客様に回遊しながら楽しんでいただくことを目指した点である。  また、会期が早春から初夏まで72日間に渡ることから、季節に応じた花のリレーをお楽しみいただけるよう、サクラ、チューリップ、バラをテーマフラワーに設定した。みなとみらい地区や山手地区のサクラに始まり、春の風物詩となっている市民の手で植えた横浜公園の16万本のチューリップ、よこはまフェアに合わせ命名されたチューリップ新品種「ラバーズタウン」、会期後半は、市の花バラについて、よこはまフェアの統括アドバイザーでありローズガーデンのデザイナーでも有名な白砂伸夫氏がデザインした山下公園と港の見える丘公園のバラ園をお楽しみいただいた。 A美しい芝生へのこだわり  よこはまフェアは3月25日からの開催であり、この時期の横浜での芝生は茶色である。美しい青い芝生をぜひ開幕からご覧いただきたいため、開幕の2年前から採用する芝の実験を行い、サッカー場で使うティフトン芝に冬でも枯れない西洋芝をオーバーシードする方法を採用した。 この芝生のおかげで山下公園では、カラフルな球根花壇の縁取りとして、とても美しい演出を行うことができた。 Bみなとガーデンの各会場  みなとガーデンでは、各会場を楽しみながら回遊していただくために、テーマ性や特徴をもった演出によって、来場者に感動を与える必要があると考えた。そこで、関内・山下地区など歴史や特徴ある既存公園を特徴ある演出によってブラッシュアップし、みなとみらい地区など新しい街づくりが進んでいるところでは緑化壁など新たな技術を用いた演出を行った。  以下、メインガーデンの代表的な演出や展示を紹介する。 ア 港の見える丘公園  展望台からお花とともに写真撮影できるようハンギングバスケットを多数設置したほか、近接する山手西洋館をPRする狙いで精巧にできたミニチュアの西洋館に小さなハンギングバスケットをあしらった街並みを展示した。 イ 山下公園  既存のストックを最大限活用するため、白砂氏のデザインによりバラ園の再整備を行い、アーチやタワーなどでバラを立体的に演出した「未来のバラ園」をお楽しみいただいた。また、観光客のフォトスポットとなるよう、海岸近くの氷川丸がバックとなる場所にガーデンベア立体花壇を設置し好評を得た。 ウ 横浜公園  野球愛好家にもお楽しみいただけるよう野球選手を立体的に表現したトピアリーを噴水周りに設置したほか、公園を舞台にした国際交流の歴史を伝える取組として、戦後、友好の印として横浜市からアメリカ・ポートランドに寄贈された石燈篭の複製を日本庭園に展示した。また、市造園協会の協力で、生垣作りといった造園の伝統技術を学ぶイベントを会期中に行い、現在も継続的に行われている。 エ 日本大通り  幅員の広い歩道を最大限に活用した仮設花壇を設置し、統括アドバイザー白砂氏の監修のもと「日本大通りフラワーフェスタ」として、会期前半はチューリップ、5月のゴールデンウイークには開花時期を温室で調整したバラによる演出を行った。 オ 新港中央広場  世界的なガーデンデザイナーであるジャクリーン氏を横浜に招聘し、現地で直接デザイン監修いただき、多彩な球根・宿根草を用いたガーデンで演出した。 C様々な連携の取組と成果  「人をつなぐ」という視点で様々な連携も生まれた。会場整備の面では、「ガーデナー」という草花を使った庭造りのスペシャリストとの連携が大きかった。これまでの公園で見られた画一的な草花の植え方から、一年草や宿根草を組み合わせたナチュラルな見せ方で花壇を演出した。また、施工を行った造園会社にとっても、よこはまフェアでのガーデナーとの作業協力により技術力を磨くことができた。また、公園愛護会向けに実施した様々な球根を一度に植える新たな方式である球根ミックス方式(※)の花壇づくりの講習には、全市から愛護会メンバーが集まり、学んだノウハウが地元の公園での実践につながっている。  また、小さな子どもでも簡単に参加できる花壇づくりの手法として、日本家庭園芸普及協会の協力により「たねダンゴ花壇」づくりを象の鼻パークで行った。地元の小学校の1、2年生の子どもと一緒に、団子状に丸めた土にワイルドフラワーの種子をくっつけ、それを花壇に置くという簡単な方法で、その後ほとんど手をかけずに様々な草花が開花し、会期中、お客様を楽しませた。地元の小学校では、たねダンゴによる花壇づくりが会期後も続いている。 D全国都市緑化祭の開催  4月26日には、秋篠宮同妃両殿下の御臨席を賜り、大さん橋ホールにて約5百人の出席のもと全国都市緑化祭を行った。その後、山下公園で、横浜に縁のあるヨコハマヒザクラの記念植樹を行った。今回の式典に合わせ、芝生を全面的に張替え、西洋芝をオーバーシードした青い芝生をベースに、海を背景として非常に美しい中で植樹が執り行われた。また、植樹を行う際の盛り土も円錐形に成型するなど工夫を行った。 3 里山ガーデンの取組と成果 @環境を生かした魅力の創出  旭区、緑区にまたがる樹林環境を生かし、「緑豊かな横浜」をコンセプトに、里山の魅力、楽しみを体感できる会場として大きく4つのゾーンに分け、自然林を活用したアウトドアパークや横浜の花卉産業の成果を見せる大花壇など老若男女が様々な体験が楽しめる場として整備した。  一番の見所として整備した花を楽しむゾーンの大花壇は、入り口広場からはあえて見えないようにした。入り口広場と大花壇をつなぐ竹林の中に高さ8mの空中デッキを通し、緩やかにカーブした空中デッキを抜けると1haの大花壇が突然広がるという驚きを演出した。この大花壇を俯瞰できるデッキには一枚一枚形状の異なるガラス柵を採用し、大花壇の風景になじむよう工夫している。もともとの畑の地形を活かして整備したこの大花壇は、周辺を緑に囲まれ、建物や電線などの人工物が目に入らず、オーバーシードしたグリーンの芝生と相まって、今まで見たことのないような絶景との評価を得た。  谷戸を楽しむゾーンでは、谷戸の地形を生かしナノハナとともにレンギョウやユキヤナギなど花木を多く植栽し、既存のヤマザクラやオオシマザクラとともに春の里山を演出した。また、谷戸の湿地環境を生かし県内唯一のカキツバタ園として整備した。  その他、里山ガーデンの外周園路には小学校・特別支援学校との連携事業として動物の形のパネルに児童・生徒が彩色したどうぶつプランターを設置したほか、樹林内の森の小径には、中学生による蝶の木工アートを展示し、里山環境を生かした取組によりお客様にお楽しみいただいた。 A森の新たな楽しみ方の提案  森を楽しむゾーンでは、保全された樹林地を活用し、木々のなかをターザンのようにすり抜けるアスレチックや、森の中でのキャンプ体験や自然を使ったワークショップなどが楽しめるグランピングサイトを設けるなど、これまでに無い森の新たな楽しみ方を提案することができた。入り口広場ゾーンでは、広報親善大使の三上真史さんデザインのウェルカムガーデンのほか、花や緑に親しむワークショップやステージイベントを展開した。 4 全市的な取組と成果  よこはまフェアでは、メイン会場だけでなく全市的な取組として、横浜を代表する花と緑に親しめる場所をパートナー会場とするとともに、18区が主体となり市民の身近な場所で花や緑に親しむ様々な取組が行われた。 @パートナー会場  パートナー会場として、よこはま動物園ズーラシア、三渓園、横浜イングリッシュガーデン、八景島、俣野別邸庭園、舞岡ふるさと村、寺家ふるさと村の7か所を設定した。メイン会場の室内常設展示施設であった横浜赤レンガ倉庫では、パートナー会場のパネルを展示し各施設をPRした。パートナー会場の各施設では、緑化パネルや鉢植えのディスプレイを設置するなど普段に増して植栽で彩るとともに、よこはまフェアの期間中に花や緑関連のイベントなどを多くした。その結果として「まちをつなぐ」というガーデンネックレスの実現に大きな役割を果たすとともに、施設を訪れた多くの人を楽しませた。 A18区連携事業  市民の身近な場所でガーデンネックレスの「まちをつなぐ」取組として、公園や駅周辺での花壇整備、市民の自宅を開放するオープンガーデン、花と緑に親しむための各種イベント開催など市域全体を花と緑で彩り、よこはまフェアを盛り上げた。 B多くの市民ボランティアの参画  よこはまフェア会期中、市内在住者を中心に200名を超えるボランティアの方に、会場内の花壇の花がら摘みや除草などの作業を行っていただいたことで、来場者に花を常に美しい状態でお楽しみいただくことができた。来場者のアンケート結果における満足度が非常に高かったことは、市民ボランティアの皆様の日々の作業によるところも大きく、大変感謝している。 5 おわりに  よこはまフェアには、72日間の会期中に、メイン会場であるみなとガーデンと里山ガーデンを合わせ600万人を超える方が訪れた。会期中に実施したアンケートでは、96%の方から「大変良い」「良い」との回答をいただき、特に「大変良い」が7割を超えたことはとても評価できる結果であった。また、「花と緑への関心」についても93%を超える方が、よこはまフェアに来場し「関心が高まった」と回答し、都市緑化フェアの目的を十分に達成したといえる。さらに、よこはまフェアの実施においては、平成27年の実施計画から整備・運営に至るまで職員が主体的に様々な検討・議論を重ね実施することができた。自ら考え努力して得られた経験やノウハウを蓄積するとともに、他の職員へ技術を継承し、よこはまフェアを契機に始まった花と緑あふれる「ガーデンシティ横浜」の推進につなげたい。 ※球根ミックス方式  様々な種類の球根を混ぜ合わせ一度に植栽し、開花期の違いにより開花を長く楽しむ方法