《11》まちづくりにおける緑 @ みなとみらい21地区における緑化のまちづくり 執筆 加藤 稔 都市整備局みなとみらい21推進課担当係長 1 はじめに  みなとみらい21地区では、ウォーターフロントという恵まれた立地条件を活かすため、水際線に特色のある公園・緑地等を配置し、それぞれの緑地をプロムナードで結んでいます。「中央地区」には高島水際線公園・水際線プロムナード、臨港パーク、日本丸メモリアルパーク、「新港地区」には赤レンガパーク、象の鼻パーク、新港中央広場、カップヌードルミュージアム、汽車道・運河パークが配置されています。また、「中央地区」の中心にはグランモール公園、高島中央公園を整備し、みなとみらい21地区全体で「緑のネットワーク」を形成しています(図1参照)。さらに、道路などの公共空間や民間街区の各施設での高水準な緑化によって、地区全体で四季や緑量を感じられる緑の創出にも努めています。  地区内では年間約8,300万人が訪れ、これからも街区開発が進展することやイベントなどにより来街者等の増加が見込まれます。  本稿では、これまでの緑化について振り返るとともに、これからの緑化の方向性について述べていきます。 2 これまでの取組  みなとみらい21地区は、「中央地区」の土地区画整理事業と、「新港地区」や臨海部での港湾整備事業が行われてきました。この事業が連携して都市基盤となる公園・緑地、道路、駅前広場等が整備され、街並み、ネットワークが形成されています。  道路空間での特色として街路樹は、季節感あふれる道づくりをテーマに、みなとみらい大通りには一年を通じて緑を提供するクスノキが植栽され、ほかでは、さくら通り、けやき通り、いちょう通り、すずかけ通り、とちのき通りと植栽された街路樹が通りの名称となっています。また、街路樹は歩行者や車両等の安全で円滑な通行を確保しつつ、樹木が健全に育成できる空間確保を目的とし、高木と中低木などが植栽されています。  地区の玄関口となる桜木町駅前広場においては、駅から動く歩道への歩行者動線を十分に確保しつつ、緑陰と緑量感を演出するため常緑樹と落葉樹が植栽されています。 3 公民連携の取組  緑化の公民連携の取組としては、「まちかど花壇」があります。これは道路空間に市が花壇を整備し、協賛をいただいた地区内の企業に花の植え付けや、維持管理を行っていただく仕組みです。現在は桜木町駅前広場、さくら通り交差点、クイーンモール橋、はまみらいウォークで設置、運営がされています。年間を通じて来街者や地区内で働き、暮らす方々に身近な緑花の風景を提供しています。  キング軸においては、現在、20街区MICE施設の整備や新高島駅周辺の街区開発が進んでいます。キング軸は民間街区に配置される歩行者ネットワーク(地区施設)であり、開発計画において50%以上の緑化を目指すこととしています。国際大通りの上部には植栽も含めた歩行用のデッキ整備を行っています。これらにより緑陰や賑わいの空間演出、快適な空間を実感できる、緑による景観形成が図られることになります。  民間街区においては、街路樹と敷地の外部空間による一体感のある緑豊かなオープンスペースの形成として、歩行空間や広場空間などのコモンスペースが整備されています。  また、横浜市では、民間企業を対象とした緑化整備の助成制度を設けており、多くの人が訪れる公開性のあるまとまった敷地において緑空間の整備が行われています。 4 緑化の現状把握  前述のとおり、みなとみらい21地区では公園・緑地や道路、広場の街路樹など計画的な整備が行われてきました。公園・緑地等の計画総面積は46haで、地区全体の約25%を占めています。  このように、みなとみらい21地区では大規模な街区と道路や公園・緑地等の公共空間で街並みが形成されていますが、緑が来街者等にとって豊に感じられているかどうか、平成29年度に市民へのアンケートを実施しています(図2参照)。その結果、現状として「樹木の量」及び「花(草花)の量」については「多い」、「まあ多い」が約55%となっています。また、将来的な「みどりの量」については「もっと増やしてほしい」、「どちらかというと増やしてほしい」が約80%となっています。 5 今後の緑化の方向性  これまでの緑化として、公共空間の公園・緑地、街路樹や、民間においても街路と一体となる緑の形成などの取組により、地区内では、一定の緑化の整備が行われてきたところです。一方で、市民へのアンケートからは、緑がもっと豊かに感じられることが求められているのではないかということがうかがえます。  今後の緑化の方向性としては、市民・来街者にとっての視線レベルで緑を豊かに感じることができるよう、緑化の質の向上を図ることが考えられます。そのためには、公共空間においては、緑をたす、つくりかえる、などが挙げられます。まずは地区内の街路樹、公園・緑地等において、樹木の生育状況、生育にかかわる土壌の状況について、現況調査を行うことで、健全性の把握を行っていく予定です。その状況により、緑化の生育がよくない、緑の量が不足しているなどのケースにおいては、樹木の植え替え、新しい樹木や草花を補植するなどを計画・検討していきます。また、街路樹の良好な維持管理手法として、さくら通り、けやき通りなどにおいて樹木の長期的かつ計画的なせん定などにより、街並みの美観向上に寄与し、街路樹を良好に育成する取組が始められています。  併せて、緑化の公民連携による取組を推進することも求められていると考えています。「まちかど花壇」などの拡充や、機会を捉えて企業、イベントなどとの連携も視野に、市民、来街者が緑花を感じられる取組を今後も展開していきます。