《8》地域における取組から D 企業における横浜の緑の取組 執筆 永沼 孝臣 JFEエンジニアリング(株)総務部 施設管理 柴田 芳宏 トンボみちファンクラブ代表  京浜の森づくり事業は、横浜市みどりアップ計画の始まる6年前、平成15年に開始しました。京浜地区の企業の緑地や市民に公開されている施設を地域の重要な財産と捉え、公共の緑や水辺などと合わせて、企業、市民等と行政の協働により緑化・活用を展開し、未来に引き継ぐ「京浜の森づくり」を提唱、推進しました。  本稿では、実際にこの事業に取り組んだ企業と、整備した緑地で活動する市民団体の取組について紹介します。 1 JFEトンボみちの概要  「JFEトンボみち」は、横浜市と民間企業が協働し、地域の緑化活動を推進する「京浜の森づくり末広地区協働緑化計画」の一環として、JFEエンジニアリング(株)が2009年に整備した公開緑地です。全長約365m、遊歩道の幅員4m、全敷地面積約2,300uの規模です(写真1)。  施設入口にはトンボ池が水辺ビオトープとして造成されています。企業、市民、専門家、行政が協働で行うトンボの飛来調査地点であり、開設以来、トンボの生息のモニタリング調査を実施しています。トンボは、幼虫期は水中、成虫期は陸上で過ごすことから、環境指標となる生物と考えられており、トンボやヤゴの観察を通して、その自然環境の豊かさを知ることができます。 2 JFEエンジニアリング(株)の取組 ●施設の一般公開  「JFEトンボみち」は、夜間を除いて一般市民のみなさんに常時開放をしています。水道・電気などの通常のインフラ設備がないものの、日常監視により、池への水補給、怪我や事故を防ぐための補修などを行い、常に安心して利用できるように努めています。  また、一般公募によるトンボ池の生きもの観察会を開催しており、毎回多くの家族連れが参加しています。 ●環境活動への場所の提供と支援  トンボはドコまで飛ぶかフォーラムのトンボ調査、近隣小学校の校外学習、学士論文・修士論文等の研究調査のための場所の提供と活動支援を継続して行っています。 3 トンボみちファンクラブの取組 ●自然あふれる地域社会をめざして  「トンボみちファンクラブ」は「JFEトンボみち」の愛護会的な任意団体として、近隣のみなさんを中心に結成したクラブで、草花の世話、野菜栽培、生きもの観察などを楽しんでいます。  6月から10月には毎月2回、子どもたち向けの「トンボとり大作戦」を開催し、地域の自然に関心をもってもらうための活動にも取り組んでいます。 ●JFEトンボみち憲章を制定  2012年4月、JFEエンジニアリング(株)とトンボみちファンクラブは、協働して「JFEトンボみち憲章」を制定しました。活動の指針として「虫や鳥や草花と仲よくしよう!」などを掲げ、その実現に向けて活動を続けています。 4 取組を通じての変化  JFEエンジニアリング(株)は、トンボはドコまで飛ぶかフォーラムに2003年から参加していますが、「トンボとり大作戦」では参加者が増えてきて、トンボみちファンクラブの活動も活発になってきています(写真2)。  また、トンボ調査でトンボの移動が多数確認されたことにより、当施設がトンボを指標とした地域のエコロジカルネットワークの拠点のひとつとなっていることを実感しています。