調査季報178号 特集:ダブルケアとオープンイノベーション 横浜市政策局政策課 平成28年3月発行 《コラム》iction! で創る多様な働き方とテレワーク <執筆者> 株式会社リクルートホールディングス 事業本部 iction!推進事務局 事務局長 小安 美和 「iction!」が創る多様な働き方~まずは「はたらく育児」から リクルートホールディングスとリクルートグループにおいて人材サービスを提供する事業会社4社(注1)は2015 年7月、「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る。」というゴールをめざし、「iction!(イクション)プロジェクト」を開始しました。「iction!(イクション)」とは「育児」と「アクション」を組み合わせた言葉。子育てしやすい世の中にする、働き方にアクションを起こす、社会みんなでアクションをしていく、などの意味を込めています。  育児離職、介護離職など、日本において働き手を取り巻く問題は数多くありますが、私たちはまずは、働きたいけれど働けない育児中の女性が日本に170万人いると推定し、育児をしながら働く=「はたらく育児」の課題解決に取り組んでいます。 「はたらく育児」を解決するキーワードは、「時間と場所」  「iction! プロジェクト」では、調査(注2)より、以下の3つの課題を抽出し、解決に取り組んでいます。 (1) 第一子出産後に仕事を辞めた女性の約4割が辞めたことを後悔している (2) 子育てをしながら働いている女性で、両立を負担に感じている人は8割にものぼる (3) 働きたいのに働けない子育て中の女性が約170万人いる  育児中の女性の再就労を阻む要因は様々ありますが、(3)にあるように、「時間制約」「場所制約」が最も大きな阻害要因となっています。これは介護しながら働く方々の課題にも共通しますので、ここから得られた知見をもとに、介護をしながら働く「はたらく介護」、さらには「はたらくダブルケア」にも応用できると考えています。 「時間」の制約を超える、短時間ジョブの創出  iction! プロジェクトでは、まずは「時間制約」の問題の解決に取り組んでいます。企業に働きかけ、育児中の女性が働きやすい、「地元で働ける短時間ジョブ」を多く創出することで、自宅のそばで短い勤務時間で働きたいというニーズにこたえていく取り組みを求人メディア「タウンワーク」などで全国展開しています。この短時間の仕事を多く生み出すことで、育児だけでなく、介護、そしてダブルケア中でも、自宅近くで短時間で働きたいというニーズにこたえることができると確信しています。 「場所制約」を超える、リモートワークの可能性  育児・介護しながら働きやすい世の中を創るためのもう一つのキーワードが「場所の制約」。  リクルートグループでも、場所にとらわれない働き方への挑戦など働き方変革に積極的に取り組み始めました。リクルートホールディングスにおいて2016年1月より本格導入したリモートワークは、育児や介護など特別な事情を持つ社員に限ったものではなく、雇用形態にかかわらず、当社で働く全ての従業員が選択できる働き方として位置づけています。また、直接雇用の人に限らず誰もが柔軟な働き方を自由に選択できる環境を広げたいとの考えの下、当社で働く派遣社員においても、会社間の同意および本人の希望があった場合にリモートワークを選択可能としています。  場所の制約を超えて仕事ができることで、育児、介護をしている従業員だけでなく、たとえば、不妊治療などで頻度高く通院しなければならない従業員にとっても、柔軟に働ける選択肢が増え、多様な従業員にとって安心して継続就業できる仕組みといえます。  「iction! プロジェクト」で企業様とともに短時間の仕事を多く生み出し、多様な働き方の選択肢をご提供していくことに加え、自社の「働き方変革プロジェクト」における取り組みを世の中に広く発信しナレッジをシェアすることで、育児、介護、そして、ダブルケアをしながらも、より働きやすい世の中を創ることに貢献できたらと考えています。今後、オープンイノベーションで柔軟な働き方の実践や、サービスの開発を加速していきたいと考えています。 特設サイト「働き方改革プロジェクト」 http://re-recruit.jp/ 注1 リクルートキャリア、リクルートジョブズ、リクルートスタッフィング、スタッフサービス・ホールディングス 注2 『仕事と育児の両立に関する就業者および就業希望者調査』調査対象:子ども(末子が18歳未満)を持つ18 ~69歳の女性で、就業者、または、就業希望の非就業者(首都圏)、有効回答数6,533(就業経験者に対する)追加調査回答者5,922