調査季報178号 特集:ダブルケアとオープンイノベーション 横浜市政策局政策課 平成28年3月発行 《コラム》社会や組織の未来を創る、新しい時代の働き方 <執筆者> 日本マイクロソフト株式会社 官公庁事業本部 本部長代理 田島 定尚 日本の企業に求められる働き方の近代化  市場や環境の変化によって、働き方にもその変化に合わせた対応を求められています。少子高齢化が進み、子育てがしづらい環境や高齢者の介護など家族の負担も大きく、 仕事の継続についての決断を迫られるケースも多々あり、それが労働力減少の一因とも取れるかもしれません。  技術の革新、サービスの多様性が進む中、「生産性の向上」が求められる日本において、 「働き方の近代化」が必要不可欠であり、マイクロソフトはICTを活用した「テレワーク」をその答えの一つとして見出しています。  テレワークとは、ICT(Information andCommunication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。テレワークというと「在宅勤務」を連想される方が多いと思いますが、実際には、企業で働く人すべてに有用な働き方と言えます。お客様先にいても、自宅にいても、オフィスにいるのと同じように作業やコミュニケーションができる環境が整っていること。限られた時間の中で、工夫して業務にあたることによって、より効率的に、高い生産性につなげていくこと。それがテレワークなのです。 なぜ今、テレワークが求められるのか  人口構造の変化に伴う労働力人口の減少や、日本全体の低い労働生産性の課題、また市場全体の価値観の変化など、今後の競争力を維持・向上するために、働き方そのものの変革・近代化が求められています。  「テレワーク」といえば、育児や介護、女性の活躍をサポートする在宅勤務と言ったキーワードが多く使われていますが、本来「テレワーク」は、一部の方や特定のシーンをサポートするだけの仕組みではなく、こうしたワークスタイル変革のためのキーとなる取り組みとマイクロソフトは考えています。 テレワークの企業・経営へのメリット  場面に応じた働き方の選択で業務効率の向上が期待できるテレワーク。その他にも、“テレワークの制度が存在する”ことでの優秀な人材の確保(新規雇用)や離職防止の効果(継続雇用効果)、オフィスのコスト、出張費、交通費その他総合的な削減にもつながります。 また自然災害、パンデミック発生時のBCP(事業継続計画) 対策においても効果を発揮します。  社団法人日本テレワーク協会の「テレワーク白書2008」によると、テレワークの試行・体験により「仕事の生産性や効率等が向上した」と回答した割合は57% に達しています。研究・開発職、スタッフ職、営業職などでは計画的、集中的な作業実施における業務効率の向上が期待できます。弊社では、2010 年から2015 年の5年間で社員一人当たりの売上を26% 向上させることに貢献しました。  育児期・介護期等の社員への働きやすい環境の実現による離職の防止、退職した高齢者、通勤が困難な障碍者、遠方居住者などの新規雇用の創出も期待できます。弊社の社員意識調査では、ワークライフバランス満足度が5年間で40%向上しており、女性の離職率は40%低下するという結果が出ています。  総務省の「テレワーク(在宅勤務)による 電力消費量・コスト削減効果の試算について」(平成23 年5月)によれば、テレワークの導入によってオフィスの電力消費量を40%以上削減することが可能としています。弊社では5年前に比べて旅費・交通費を20%、紙を49% 削減することに成功しています。  地震や新型インフルエンザなどの予期せぬ災害が発生した時に、企業として事業を継続していくことが求められます。在宅勤務のようなオフィス以外の場所で仕事をすることに慣れておくことが、大規模地震のような災害発生時に素早く事業を再開あるいは継続することに役立ちます。2011 年の東日本大震災の発生時には、東京でも交通機関や電話網が利用できない状態になりましたが、弊社ではいつでもどこでも仕事ができるICT環境が整っていたため、社員の安否確認をすばやく行うことができ、自宅待機ではなく、自宅で業務を継続することができました。 最後に  従業員だけではなく、企業・経営にとっても多くのメリットを秘めているテレワークを多くの企業が体験し、ノウハウを共有していただくために、日本マイクロソフトでは2014 年から「テレワーク週間」を実施しており、2015 年には651の法人にご賛同をいただきました。次回もさらに多くの企業にご参加いただき、テレワークに取り組んでいただけることを期待しております。