調査季報178号 特集:ダブルケアとオープンイノベーション 横浜市政策局政策課 平成28年3月発行 《コラム》多様な働き方の手段としてのテレワーク <執筆者> 向洋電機土木株式会社 広報部長 横澤 昌典 ワーク・ライフ・バランスは「多様な働き方」なのか  私は、ワーク・ライフ・バランスというのは社員全員がそれぞれのライフステージにおいて享受するもので、そうでないワーク・ライフ・バランスはおかしいと思っています。しかし、全ての会社や社員、そしてその家族の構成から状況、それぞれの歴史や背景、そして金銭的な状況から将来性まで、全く同じ会社や家族そして個人というのはありえませんので、全ての社員が満足するという魔法の施策などというものはありえません。現在のワーク・ライフ・バランスというのは、本来の多様な働き方という部分が非常に閉ざされた形になってしまっています。  多くの人は、ワーク・ライフ・バランスは育児世代以外には「関係の無い施策」と認識しています。現経営者層や幹部の方々は育児が終わっている人が多いと思われますので、当事者ではないから「必要性を感じられない」となってしまうのです。また、若い世代であっても、結婚していない人や子供がいない夫婦には「自分達には関係ない」ものとなっています。そのため、子供がいる夫婦が、ある期間限定で参加する子育てイベントというイメージでの施策が多くなっていると感じています。そのような一部の人だけが利用できる現在のワーク・ライフ・バランスというのは、本当に多様な働き方と言えるのか、と非常に疑問を感じています。  それは、私自身6歳の娘の育児をして、父親の介護もしており、ダブルケアの状態で育児と介護の狭間に揺れているからなのです。 多様な働き方の一つの手段~テレワーク  テレワークというのは、クラウドを活用してのデータ共有や保存をしたり、ビデオチャットなど、ICTを使って会社以外の場所で業務を行う、ということです。  例えば、シングルのお母さんが、子供が熱を出したときに他に診てくれる人がいない場合、休みを取らなければなりません。それでも、今日どうしてもやらなければならない仕事などがある場合もある。そのようなときに、テレワークの環境が整っていれば、「自宅で仕事をする」という選択肢が増えるのです。自宅にいながら会社のシステムに接続でき、会社にいるのと同じように仕事ができるので、お母さんは子供が落ち着いた時点で仕事ができるようになります。  また、仕事をしていくうえでは、時間的な制約があると思いますが、会社以外の場所で、会社にいるのと同じように仕事ができるなら、外出先から会社に帰って資料を作ったりする必要がなくなり、移動時間が節約できる分作業することができるわけです。このような場面で選択肢を増やすためにテレワークがあるのです。  一方で、セキュリティの問題や様々な準備が必要ですし、思いつきですぐに出来るものではありませんが、パンデミックや自然災害、交通断絶時など出社できない時への二次的効果への期待という面もあります。一番の利点としては社員全員が必要な時に必要な形で平等に使えるということです。自分の調子が悪いときに、子供の調子が悪いときに、親の調子が悪いときに、台風が来て出社が出来ないときになど、様々な場面で使用する選択肢があるということは、プラスになればこそマイナスにはなりえません。  是非皆さんの職場でも、誰が何に困っているのか、話し合ってサイレントニーズを掘り起こしてみてください。いろいろな選択肢を作っていくことで、多様な働き方改革が進んでいくと思います。