調査季報178号 特集:ダブルケアとオープンイノベーション 横浜市政策局政策課 平成28年3月発行 《コラム》ダブルケア支援における社会福祉協議会の役割:鶴見区から <執筆者> 社会福祉法人横浜市鶴見区社会福祉協議会 事務局次長 武田 博美 ダブルケア研修の実施  平成27年12月2日に、本会ではダブルケアサポート横浜の協力のもと、「ダブルケアから考える家族支援」の研修会を開催した。  今回企画した意図は、社会課題となっているダブルケアに関し、地域住民、子ども、高齢、障がいなどの各種分野の方々に会員として加入いただき、単独の職種のみならず、横断的に地域課題を解決していける可能性がある社協の特徴を生かしえるのではないかと考えたところによる。  ちなみに、受講対象者を「本会会員の他関心のある方」としたところ、当日は地区社協役員、民生委員などの地域関係者、子育て支援団体、高齢者施設や介護保険事業者、ボランティア団体、当事者など24名の参加があった。(図1)  内容は、相馬先生や山下先生、ダブルケアサポート横浜事務局の東氏からの話の後、4名の当事者(ケアラー)の方々にご協力いただきグループ別に、ダブルケアに関する理解を深め、課題を共有していく形式をとった。  おかげさまで研修は好評のうちに終わり、アンケートからも、今後継続しての企画を希望される声や、地域課題として地元でも共有していきたいとの声も多く上がっている。 「地域課題」に社協だから取り組めるもの  今回研修を進めるうえで印象的だったのは、もともと当事者は静岡からの参加者1名のみと認識していたが、「実は私も」「私も過去そうだった」という方も数名出てきたことである。  ダブルケア状態である我が家を振り返ってみた際、「ダブルケアとは何か」を知ることで、自分の置かれた状況について理解(納得)でき、また事例や課題解決に向けての動向にかかわる情報を得られることで、「孤独な悩み」から解放されるきっかけにもつながったと感じている。  先述した通り、企画を立案した趣旨は、「ダブルケア」という、種別を超えて横断的に考える必要性がある課題を、社協だからこそ取り組めるのではないかという点にあり、実際、多種多様な所属の方々の参加が得られた。  一方で、当事者がこの場に参加し、実際に声をあげていただけたこと、また地域課題、社会問題にかかる情報を発信することは、支援者だけでなく支援が必要な人も共に課題解決に向けて動けるきっかけ作りとしての効果があったのではないかと思われる。 「社会福祉協議会」のミッション  そもそも社会福祉協議会(社協)は、地域住民のほか、民生委員・児童委員、社会福祉施設・社会福祉法人等の社会福祉関係者、保健・医療・当事者団体など関係機関に参加・協力いただき、地域福祉を推進していく協議体であり、そのミッションは「誰もが安心して暮らすことができる福祉のまちづくり」となっている。  ポイントは「誰もが」という点であり、その対象はそれこそ老若男女と幅広い。一方で社協は、各種分野の会員による協議体であり、このような団体はおそらく他に類するものはないのではないだろうか。  また、社協はネットワークを構築することを特技の一つとしている。だからこそ、社協はその特技や強みを自覚し、活かしていくことが大切だと思われる。  近年、「ダブルケア」の他、若年性認知症の親に対する「若者介護」の課題など、それこそ「包括的なケア」が求められるケースが多くなってきていると感じている。  そこには、それぞれの「専門職」「NPOやボランティアグループ団体」「地区社協などの地域団体」などの役割や期待はとても大きいと思う。  ただ、忘れてはいけないことは、「その人・その家族」を支えるには、専門職や団体をつなぐ「糸」が必要だということである。ネットワークが構築されることで、「その人・その家族」へのケアはさらに充実したものになると思う。そしてその「糸」の役割を担うのは、社協のミッションではないだろうか。  今後も社協らしさを活かし、多様化していく地域課題解決の一端を担えるようになるべく、事業を進めていきたいと思う。