調査季報178号 特集:ダブルケアとオープンイノベーション 横浜市政策局政策課 平成28年3月発行 《コラム》ダブルケア支援における子育てひろばの役割と課題:ほしのひろばの実践から考える <執筆者> 親と子のつどいの広場 ほしのひろば 施設長 北原 基子  親と子のつどいの広場「ほしのひろば」では、2014 年度末から2015 年度内に全9回ダブルケアCafé を開催いたしました。  普段は0~3才児を中心とした親子の居場所ですが、ダブルケアCafé を開催するにあたり、広場のある星野町担当の新子安地域ケアプラザの地域交流事業担当者に協力いただき、広場の利用者親子へ「ダブルケア」という状況・ことばの認知を広める目的で行いました。  事前に知ることで、備えられることがある…と考え、スタッフも学びながらの座談会でした。  利用者の中心は30 才~ 40 才、社会経験も積まれてから初めての出産、育休中のお母さん方です。また座談会には、近隣の孫育て中のおばあちゃん、おじいちゃんたちもご参加下さいました。  親世代・子世代・孫世代が集い、「ダブルケア」を知った際の、本音のつぶやきを以下にご紹介いたします。 親世代・子世代・孫世代の本音のつぶやき ●印は盛り上がった話題・重複した話題 ①ダブルケア ケース紹介を聞いて感じたこと 【家族関係について】 ・ケアをしている姿を子供に見せることは子供にとっていい事 ・子世代同士で協力、つながりを持って一緒に親を看ればいい。それが看る方と看られる方の“ケア”につながる ・大半はお母さんの負担なので気持ち的に夫に支えてもらえたら、子ども(孫)にもいい影響になるのでは ・居宅介護というが、周りのママ世代は同居を考えていない 【自分について】 ・実際そんな状況になったら、忙しすぎて自分の状態がわからなくなる。 ・自分の時間が必要・そうなったとき、家には相談できる相手がいない。いざという時に、まず相談できる場所を探すことが大変 【仕事について】 ・現在保活中。仕事は続けたいが、すべてを両立するには職種が限られてくる。 ・仕事をしながら介護、できるだろうか ・仕事は辞めない方がいいが、通院や手続を理由に休みが貰えるだろうか 【その他】 ・乳児を連れて病院へ行くのも大変 ・ピンと来ない、人ごとの様な感じ ●下の世話はできない! 義理、自分の両親ともに出来ない(オムツをした赤ちゃんがいたので、その延長でお祖父ちゃんの下の世話もできたというダブルケアラーの話を聞いて) ・介護は先が見えなくて大変だとわかった ②今、できることは? 【近隣同士の交流】 ・横のつながりが大切と実感 ・広場で交流、地域で交流すること(「ほしのひろば」が交流の場となってくれたらよい) ・何かあった時、相談できる相手をつくる ・困っている人がいたら、声をかけたい ・状況はわからないけれど「何かあったら声かけてね」という一言で救われることも ・事が起こる前に、身内&近所の人間関係をつくる。見返す。 【相談窓口を知る】 ●ケアプラザの周知(まず、ケアプラザって何ですか?と質問が多数。ホウカツ・CP など呼び方が様々でよくわからない。ケアという表現がバックりすぎる。) ・ケアプラの利用(とりあえず子連れで行ってみたい) 【その他】 ●家族での話し合い(暗い話なので話題にしづらいが、孫の将来の話題をきっかけにして、切り出してみる) ③地域に必要なものは? 【交流の難しさ】 ・地域でのコミュニケーションを図るのは難しい ・コミュニケーションは求める人・求めない人など様々(介護していることを知られたくない人も) 【交流の場】 ●広場で高齢の方々と知り合えれば、近隣で会った際も話せる(マンション内のエレベーター、ポストなどで赤ちゃんを連れている時、突然話しかけられると身構えてしまうので。(タワーマンション住民談)) 【窓口】 ・必要な情報をくれる場所 ・相談できる場所 ・一緒に考えてくれる人 ●トータルケアをしてくれる人(赤ちゃんもお年寄りも私の事も)      まとめ 座談会を重ねるなかで、参加者の皆様のご意見をまとめてみました。 「今、求められる支援」 ●ダブルケア同士のつながり  ●ダブルケアの社会的認知  ●介護者に対する、子育てサービスの不足  ●介護サービスと子育てサービスの連携  ●相談窓口の設置≒家族支援サービス 「2025年問題」 自分や子供たち、親は何歳になっているかな? 備えられることは? 「企業内のダブルケア認知」 復職する広場利用者さんたちへ、復帰後に職場で「ダブルケア知ってる?」と話題にして貰いたい。 ケアプランがたち、家庭が落ち着くまでの一時休業など、社内で呼びかけていこう。 「子育て支援施設として座談会を通して思いを新たにしたこと」 まず、ダブルケア予備軍のお母さん達にダブルケアという状況になるかもしれない、と知ってもらう事が大事。 「子どもが心身ともに健全に育成されるよう、周囲のすべての国民が努力しなければならない」-児童福祉法の理念第1条  ほしのひろばもこの理念を胸に毎日開場しています。 以前、介護や仕事に追われて「この子さえいなければ…」と追い詰められたお母さんの話を伺いました。ダブルケアCafé を通じて、そんなお母さん達同士が「広場があるよ」と声をかけあい、介護していることを打ち明けられる、助け合える場になればと考えています。  全ての世代にとってより良い地域となるよう、これからも地域の皆さんとダブルケアCafé を続けてまいります。