《4》ニーズ調査からみる本市の子育て家庭の状況について 執筆 三堀 浩平 こども青少年局企画調整課企画調整係長 1 はじめに  本市では、子ども・子育て支援事業計画(以下「計画」という。)を策定するに当たり、子育て家庭の現状とニーズを把握するため、「横浜市子ども・子育て支援事業計画の策定に向けた利用ニーズ把握のための調査」(以下「ニーズ調査」という。)というアンケート調査を実施している。第2期計画(令和2〜6年度)の策定に向け平成30年度に実施した調査結果について、過去の調査結果との比較も踏まえながら、子育て家庭の状況の変化や傾向についてみていきたい。 2 ニーズ調査の概要  ニーズ調査の概要は次のとおりである。 (1) 調査の対象は@未就学児又はA小学生の子どもを持つ世帯とし、住民基本台帳から世帯重複がないように無作為に抽出した。 (2) 未就学児調査:62,677世帯、小学生調査:66,358世帯の合計129,035世帯に調査票を発送した。調査期間は平成30年6月14日〜7月10日で、未就学児調査の回収数28,721(回収率45.8%)、小学生調査の回収数30,738(回収率46.3%)、合計:回収数59,459(回収率46.1%)であった。 (3) 主な調査項目は、家族の状況、保護者の就労状況、放課後の過ごし方、子育ての悩み事・相談先、教育・保育事業、地域子ども・子育て支援事業の利用状況や利用意向などである。  なお、計画では、子ども・子育て支援法に基づき、保育・教育及び地域子ども・子育て支援事業について、一定の区域ごとに5年間の「量の見込み」(利用に関するニーズ量)及び「確保方策」(量の見込みに対応する確保量と実施時期)を定めることとされている。本市では行政区別に策定することとしているが、量の見込みを算出するに当たっては、一部ニーズ調査の結果を用いる必要があるため、行政区別の分析に必要な回答数を得るために約13万世帯という大規模な調査数としている。 3 人口や少子化の状況  本市の18歳未満の人口は、2020年1月時点で約54.5万人となっている。2000年と比較すると約3.5万人減少しているが、そのうち0〜5歳人口の減少が約2.5万人となっており、未就学児の減少が顕著となっている(図1)。  また、出生数は減少傾向で、2016年には3万人を割り、2019年は約2.6万人となっている。全国ベースでも2016年には100万人を、2019年には90万人を割り約86.5万となっている。本市の合計特殊出生率は2005年以降上昇傾向に転じ、2015年には1.37となったが、その後減少し、2018年は1.32となっている。全国の合計特殊出生率と比較すると、低い水準で推移している(図2)。 4 就労状況の変化  未就学児調査によると、「母親の現在の就労状況」について「フルタイム」で就労している割合や「パート・アルバイト等」で就労している割合が増加傾向にあり、「以前は就労していたが、現在は就労していない」、「これまで就労したことがない」といった母親の割合が減少している(図3)。  また、世帯の就労状況について、専業主婦の世帯は減少している一方、夫・妻ともにフルタイムで就労している共働き世帯の割合が増加しており、平成30年度のニーズ調査では40.0%を占めている(図4)。さらに、現在就労していない母親については、「子育てや家事に専念したい(就労の予定はない)」と回答した割合は19.0%、「就労したい」と回答した割合は72.2%となっており、就労の意向が高い傾向にある。  このような就労状況の変化は保育ニーズの高まりにも表れている。就学前児童数が減少傾向にあるにもかかわらず、保育所等利用申請者数は毎年伸び続けている。今後も、保育ニーズは上昇することが見込まれており、第2期計画当初における保育の確保方策においては、令和2年4月から令和6年4月にかけて約8,000人の受入枠拡大を見込んでいる。 5 子どもと過ごす時間  未就学児調査によると、「平日子どもが起きている間に、子どもと一緒に過ごす時間」は、父親が平成25年度・平成30年度ともに「1時間」が最多となっており、両年度ともに3時間以下が約8割となっている。母親については、両年度とも4〜6時間が最多となっているが、平成25年度と平成30年度を比較すると、10時間以上子どもと過ごす割合が減少し、9時間以下の割合が増加している(図5)。 6 子育ての不安感・負担感  「子どもを育てている現在の生活の満足度」については、平成30年度調査では、未就学児がいる世帯では84.9%、小学生がいる世帯では77.9%が「満足している」、「どちらかといえば満足している」と回答しており、過去10年間で上昇している(図6)。  また、未就学児調査によると「現在、子育てをしていて楽しさと大変さのどちらを感じることが多いか」については、「楽しさを感じることが多い」、「どちらかといえば楽しさを感じることが多い」と回答した人が増加傾向にあり、平成30年度時点では約6割となっている。一方で、「大変さを感じることが多い」と「どちらかといえば大変さを感じることが多い」を合わせた割合は約1割となっている(図7)。  さらに「子育てに不安を感じたり、自信を持てなくなったりしたこと」について、「妊娠中」、「出産後半年くらいの間」、「現在」の3時点別に聞いたところ、特に「妊娠中」や、「出産後半年くらいの間」に「よくあった」と回答した人の割合が増加傾向にあった(図8)。 7 赤ちゃんの世話経験  未就学児調査によると、「自分の子どもが生まれる前に赤ちゃんの世話をした経験」について、おおむね4人のうち3人が、「世話をしたことがない」と回答しており、5年前と同様の割合であった(図9)。 8 子育てに対する周囲からの支え  未就学児調査によると、「子育てに対する周囲(祖父母や友人、知人、近所の人等)からの支え」について、平成30年度調査では、「緊急時もしくは用事の際には、祖父母等の親族による支えがある」が51.4%と最も多く、次いで「日常的に、祖父母等の親族による支えがある」が32.9%となっている(図10)。一方、平成25年度調査と平成30年度調査を比較すると「いずれもいない」が微増し、平成30年度時点で18.6%となっている。 9 妊娠中や出産後に重要なサポート  未就学児調査では、「妊娠中や出産後に重要なサポート」として、「赤ちゃんの育児相談」(59.0%)に次いで「母親の健康面の相談」を挙げる人が48.5%おり、5年前と比較して増加している(図11)。また、「父親向けの育児講座」を挙げる割合も増えている。 10 終わりに  ニーズ調査では特に未就学児を持つ世帯の就労状況として、フルタイムの共働き世帯の割合が5年前から増加しており、また、子育ての満足度は上昇傾向にある一方、妊娠期から出産後の時期において、不安が高まっている様子も垣間見えた。  子ども・子育て支援新制度では、未就学児においては、保育・教育の充実だけではなく、0歳から2歳の保育を必要としない家庭=自宅で育児をしている家庭への支援の充実にも量的・質的拡充を図ることとなっており、在宅子育て家庭への支援という側面を中心に、地域子育て支援拠点をはじめとする身近な地域における親子の居場所や、乳幼児一時預かり事業などの支援が展開されてきた。第2期計画においては、共働き家庭の増加など就労形態も多様化する中、自宅で育児をしている家庭だけでなく、全ての子育て家庭に向けて地域での子育て支援の取組を進める必要がある。  なお、第2期計画策定に当たっては、ニーズ調査のほか、子育て中の市民の方を対象に市内全区で「グループトーク」を開催し、200名を超える方にご参加いただいた。また、計画素案に関するパブリックコメントでは1,400件と非常に多くのご意見をいただいた。グループトーク及びパブリックコメントの報告書は、こども青少年局ホームページに掲載しており、ニーズ調査だけでは見えにくい生の声が寄せられているため、こちらも参考にしていただきたい。