《3》第2期横浜市子ども・子育て支援事業計画の目指す方向性 執筆 齋藤 聖 こども青少年局長 1 はじめに  本市では、生まれる前から青少年期までの切れ目のない総合的な支援を推進するため、「横浜市子ども・子育て支援事業計画」(以下「計画」という。)を策定し、子ども・青少年施策に関する基本理念や目標・方向性などを定めている。計画については、令和2年4月から新たに第2期がスタートしたところであり、今回のテーマである「地域における子育て支援」についても第2期計画の基本施策の一つに位置づけ、推進していくこととしている。 2 計画の位置づけ  平成24年に成立した子ども・子育て支援法を含む子ども・子育て関連3法に基づき、平成27年度から全国的に子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)がスタートした。子ども・子育て支援法において、新制度の実施主体は市町村とされ、5年間を1期とする市町村子ども・子育て支援事業計画の策定が新たに法定化された。  本市では、子ども・子育て支援法の施行以前は、次世代育成支援対策推進法に基づく市町村行動計画である「かがやけ横浜こども青少年プラン」を策定し、施策を推進してきた。次世代育成支援対策推進法は平成26年度末までの10年間の時限法として制定されたが、平成26年に改正され、法律の有効期限が10年間延長されている。  これらを踏まえ本市では、「かがやけ横浜こども青少年プラン」を継承し、総合的な子ども・子育て支援施策を展開するためのものとして計画を位置づけ、子ども・子育て支援法及び次世代育成支援対策推進法に基づく法定計画としている。(図1) 3 第2期計画策定の基本的な考え方  第2期計画の策定に当たっては、第1期計画の基本理念や施策体系を踏まえつつ、子ども・子育て支援法や児童福祉法の改正、支援の量的拡充を踏まえた質の向上など、新たな課題への対応や取組を盛り込んだ。  具体的には、法改正への対応として、令和元年10月からスタートした保育・幼児教育の無償化等を踏まえた保育・幼児教育の質の向上や、医療的ケア児・者支援コーディネーターの養成・配置による医療的ケア児への支援を新たに位置づけている。あわせて、横浜市版子育て世代包括支援センターによる支援の充実、子ども家庭総合支援拠点機能の検討、児童虐待に係る発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化等に取り組むこととした。  また、 第1期計画期間では、保育所等の整備による受入枠の拡大、放課後キッズクラブの全校設置、地域子育て支援拠点サテライトなど親子の居場所の増設、保育・教育コンシェルジュや子育てパートナーといった利用者支援事業の拡充、横浜型児童家庭支援センターの全区整備の推進など、一定の量的拡充を進めてきた。第2期計画においては、引き続きこれらの必要な整備を進めるとともに、これまで以上に質の確保や向上に取り組むことを基本とした。 4 第2期計画の目指す方向性  第2期計画では、本市の目指すべき姿として「未来を創る子ども・青少年の一人ひとりが、自分の良さや可能性を発揮し、豊かで幸せな生き方を切り拓く力、共に温かい社会をつくり出していく力を育むことができるまち「よこはま」」を掲げている。  子ども・青少年は、家族や社会にとって大きな可能性を持ったかけがえのない存在であり、横浜の未来を創る力である。子ども・青少年の成長と子育てを支援することは、一人ひとりの子ども・青少年や家族の幸せにつながるだけでなく、次代の担い手を育むという意味でも、社会全体で取り組むべき重要な課題である。計画の推進を通じて、誰もが子どもを生み育てやすいと実感できるとともに、子どもたちが地域の関わりの中で豊かに育ち、温かな社会をつくる原動力となるよう、一人ひとりの健やかな育ちが等しく保障され、「子どもの最善の利益」(※)が実現される社会を目指していく。 5 計画推進のための基本的な視点  「目指すべき姿」の実現に向けて、施策・事業を推進するに当たっての6つの基本的な視点を定めている(図2)。その中でも特に「子ども・青少年の視点に立った支援」を一番に掲げている。国が作成している「子ども・子育て支援法に基づく基本指針」においても、「子ども・子育て支援の意義」として、「子ども・子育て支援とは、保護者が子育てについての第一義的責任を有することを前提としつつ、子育ての負担や不安、孤立感を和らげ、親としての成長を支援していくことであり、このような支援により、より良い親子関係を形成していくことは、子どものより良い育ちを実現することに他ならない。」という趣旨が述べられている。子育て支援=保護者への支援という側面も大きいが、子どもの利益が最大限に尊重されるよう、「子ども・青少年の視点」に立って施策・事業を推進していくことが必要である。 6 計画の推進体制等  計画の着実な推進を図るため、条例に基づく附属機関である「横浜市子ども・子育て会議」において、施策・事業の実施状況の点検・評価を行うなど、PDCAサイクルを確保していくこととしている。  また、第2期計画を策定する中では、地域の支援者や市民の方からも、担い手の育成の必要性や「支援があっても必要な人に届いていない、使いづらい」といった声を改めて頂いた。これまでも取り組んできた課題であるが、各事業を展開していくに当たり重要な観点であることから、「人材確保・育成の推進」、「情報発信や情報提供の推進」について、第2期計画では新たに明文化した。 7 終わりに  第2期計画の策定に当たっては、子育て世帯のニーズを把握するための大規模なアンケート調査や、生の声をお伺いするために各区で子育て当事者の方を対象にしたグループトークを実施した。  また、計画素案に関するパブリックコメントでは1,400件ものご意見を頂戴するとともに、本市が主催した子ども・子育て支援フォーラムのほか、地域の子育て支援者のネットワークによる独自の勉強会の開催などもあった。そして、子ども・子育て会議の委員の皆様にも、約2年にわたり活発にご議論をいただいた。単に計画を策定するだけにとどまらず、策定までのプロセスを通じて、市民の皆様と子どもたちの健やかな成長を支えるためにどうしたらよいか、議論できたことを大変うれしく思っており、この場を借りて感謝申し上げたい。  令和2年度からスタートした第2期計画であるが、新型コロナウイルス感染症の流行により、子どもや子育て家庭を取り巻く環境も策定時から大きく変わっている。感染拡大は、子どもや子育て家庭にも多大な影響を与えており、安心して子どもを生み育てられる環境をつくることの重要性が改めて浮き彫りになった。感染症の長期化により生じる新たな課題やニーズなど、社会状況の変化にも柔軟に対応しながら、コロナ禍においても、子ども・青少年の視点に立ち、子どもたち一人ひとりの健やかな育ちを守るという計画の目指す基本理念に立ち返り、子ども・子育て支援の更なる充実に、関係職員一丸となって取り組んでいきたい。 ※ 子どもの最善の利益  子どもの福祉に関する広い範囲の問題を決定するために、ほとんどの裁判所が準拠する原則。「児童の権利に関する条約」において基本原則として掲げられている。