≪8≫おわりに 編集部  本号では、横浜市や他自治体、海外における事例を通して、行政においてデータ活用を進める上での課題や視点などについていくつかの示唆が示された。これらは主に次の3つに集約される。    〈職員の意識醸成・人材育成〉  政策立案などにおけるデータの可視化や分析には、政策課題に根差した視点からのアプローチがこれまで以上に重要となってきている。そのため、職員がデータを課題解決などに生かすという意識を持ち、現在のデータ活用環境のにあった知識やスキルを身に着けることが必要となっている。  神戸市や佐賀県においては、職員を分析実務者、施策決定者などの役割、職責によって分類し、その役割に応じた意識付けを行っている。さらに実務と結び付いたプロジェクトにより、業務におけるデータ活用のための実践的なスキルの習得や課題解決のためのプロセスの構築など組織としての基盤づくりが進められている。  本市においても職員研修や庁内プロジェクトの実施、また、地域課題の分析、市民との共有など日常業務での活用が進んでいるが、業務の一部として継続的にデータ活用が根付いていくためには、職員がデータを活用することの意義を認識し、積極的に取組を進めていく意識の醸成や、必要なスキルをもった人材の育成が必要である。    〈データ活用環境の整備〉  ICTの進展やビッグデータ解析など、より効果的なデータの分析・活用ができる環境が整いつつあるが、各部署が保有しているデータは、他者が利用することを前提として作成されていない場合が多い。今後は、オープンデータなど庁外における利用はもちろん、庁内利用においても横断的かつ効率的な分析等に活用されることを意識して、データを生成・管理する必要がある。そのためには、データの生成から蓄積、管理までを含めたデータマネジメントを推進する体制づくりの検討や、システム改修などの財源の確保も重要となってくるであろう。    〈大学・民間等との連携〉  先端技術やデータを活用して社会的課題等の解決や新たな価値の創造に取り組んでいくためには、市民、企業、大学等の多様な主体との連携は欠かせない。共同研究などの他にも、港北区の事例のような小学生向けセミナーなど、市民への普及啓発にも有効な手立てとなるだろう。  また、経済局によるI?TOP横浜のようなプラットフォームを通じた新たなビジネスチャンスの創出など、市内経済の活性化にも期待できる。    今後、どのようにデータを政策立案に生かしていくのかという点では、まず、データを重視した政策形成により、効果的かつ効率的な行政運営を進めること、が視点として挙げられる。EBPM(証拠に基づく政策立案)については、政策立案のプロセスそのものを理解していくことが何よりも必要であり、一つの理想的な方法としつつ、まずはその政策決定に至る根拠や課題認識を市民に説明し共有できるよう、可能な部分から取組を始めてみることも大切であろう。  データ活用の目指すところは、安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することである。データは市民と共有の財産であり、魅力的な資源でもある。この資源を、これからの横浜を創り上げていくためのエネルギーとして、市民や地域活動団体、NPO法人、企業、大学・研究機関など、多様な主体とともに、有効に生かしていくことが期待されている。