≪5≫地方自治体の政策形成におけるデータ活用事例 津田 広和 財政局財政課財政担当課長(財務省より出向) 1 はじめに  近年、EBPM(エビデンスに基づく政策形成(EvidenceBased Policy Making) の頭文字)が盛んに取り上げられます。政府においても、地方自治体においても、「職員の勘や経験、気合だけでなく、データやエビデンスをしっかり活用すべきである」との意見を聞きます。しかしながら、そもそもエビデンスとは何か、EBPMとは何かについて、どれほど理解が浸透しているでしょうか。  データやエビデンスの活用は、これまでに世の中を大きく変えてきました。例えば、映画「マネーボール」が描く、メジャーリーグの貧乏球団オークランド・アスレチックスの再生劇のイメージです。ブラッド・ピットが演じるジェネラル・マネージャーのビリー・ビーンは、それまでスカウトの勘や経験任せの体制を改め、データや統計分析を活用した選手評価基準(セイバーメトリクス)に転換しました。資金力では他球団に太刀打ちできないので、費用対効果の高い選手を発掘したのです。導入したシーズンの前半は散々で、球団オーナーやスカウトから大きな反発を受けましたが、同シーズン後半には歴史的快挙である20連勝を記録し、優勝一歩手前まで躍進しました。  スポーツの世界だけではありません。米国政府においては、オバマ前大統領が、EBPMを大統領イニシアティブとして推進したことで、EBPMが一気に普及しました。現在では、オバマ前大統領のEBPMイニシアティブを支えたスタッフが「政府のためのマネーボール」を提唱し、党派、連邦政府、地方自治体、非営利団体の枠を超えてデータやエビデンスの活用を推進しています。地方自治体では、ブルームバーグ前ニューヨーク市長が、ニューヨークでEBPMを推進したほか、「何がうまくいくか探求する都市(What Works Cities)」というEBPMに関心の高い都市のプラットフォームを設立し、ニューヨークなどのEBPM先進都市の取組みをスタンダードにしようと試みています。  こうしたEBPM先進事例における特徴は、施策に効果を厳格に検証する「インパクト評価」によって得られるエビデンスを最も重視していることです。また、施策のPDCAの段階や熟度などに応じて、施策課題、執行状況、費用対効果などの様々な情報が必要となりますので、EBPM先進事例においては、こうした情報がバランスよく整うことも重視しています。そこで、本稿では、最初にインパクト評価を紹介し、次にそれ以外に重要な情報を提供する手法について紹介します。本稿後半では、EBPMを地方自治体で進めるポイントについて、米国のEBPM先進都市における実践例とともに紹介します。 2 インパクト評価(因果推論)入門 (1)ジョナサン・シルバの例  ジョナサン・シルバは、ニューヨーク在住の移民2世、両親と弟の4人家族です。ジョナサンは、10歳の時に家族と一緒にニューヨークに移住してきましたが、両親の露天商手伝いで忙しく、夜間学校でどうにか高校まで卒業しました。社会人になっても、不安定な低賃金の仕事にしかついておりませんが、安定した職を手にして、何とか家族を支えたいと願っています。  そんなジョナサンが出会ったのは、パー・スコラス(PerScholas)という非営利団体が提供する就労支援プログラムです。パー・スコラスは、連邦政府やニューヨーク、民間企業などからの支援を受け、ITスキルに特化した就労支援プログラムを提供しています。パー・スコラスの参加者は、約18週間にわたり、プログラミングの基本のみな__らず、面接などの就職活動に必要なスキルも徹底的にトレーニングされます。  ジョナサンは、無事にプログラムを修了し、大手IT企業への就職も勝ち取ることができました。年収は2倍以上になり、家族も大喜びです。ジョナサンのように、パー・スコラスで人生が変わった方は少なくありません。パー・スコラスのパンフレットには、これまでに1000人がプログラムに参加し、そのうち85パーセントが修了、80パーセントが就職(うち1/3はIT企業)、プログラム参加者の平均所得は2倍になったとアピールしています。  さて、この効果は、本当にパー・スコラスによるものと認めていいのでしょうか。このパンフレットの記述は、パー・スコラス前後の就職、所得などを単純に比較しています。しかしながら、ジョナサンをはじめとする参加者は、パー・スコラス以外からも様々な影響を受けており、それが就職や所得上昇に影響している可能性があります。例えば、ジョナサンをはじめ参加者の多くは、元々IT分野に関心や才能があったかもしれません。ITブームでIT業界全体が採用を急拡大するのとパー・スコラスの活動が重なったのかもしれません。そうだとすると、参加者の多くは、パー・スコラスに参加していなかったとしても、IT業界に就職できて、高い所得を得られていたかもしれません。  施策がなくても同じ結果になるならば、わざわざ税財源を使ってやる必要はありません。そこで、あなたがニューヨークの就労支援担当職員で、パー・スコラスの効果を検証するならば、ここに示されている効果が本当にパー・スコラスによって生み出されたものか、その因果関係を問わなければなりません。(注1) (2)インパクト評価  ではどうすれば因果関係を検証できるのでしょうか。施策と効果との因果関係を検証する手法を、インパクト評価といいます(因果関係を推計するので因果推論とも言います)。施策のインパクト評価のためには、同一の施策対象について、ある一時点において、施策があった場合となかった場合とを比較することが必要です。パー・スコラスでいえば、ある一時点において、受講したジョナサンと受講しなかったジョナサンとの間で、就職や所得について比較するイメージです。しかしながら、ジョナサンは一人しかいないので、こうした比較はできません。これが因果推論の根本問題と呼ばれる問題です。  このように、個人レベルでは施策があった場合となかった場合を比較することはできませんが、一定の条件を満たしたグループならば可能です。その一定の条件とは、2つ以上のグループにおいて、結果に影響を及ぼす要素(男女比、所得、向上心等)が平均的に等しい状態です。  とはいえ、結果に影響を及ぼす要素が平均的に等しいグループなど、どこに存在するのでしょか。そこで統計学の出番です。統計学は、一定規模以上の集団をランダムに分けた場合、分けられたグループは、結果に影響を及ぼす要素が平均的に等しくなることを教えてくれます。ここでランダムとは、くじ引きを引いてもらって、引いたくじに応じて異なるグループに分かれるイメージです。  ランダムに分けられたグループは、結果に影響を及ぼす要素が平均的に等しいグループとなるので、一方だけに施策を実施することで、両グループ間の違いは施策の効果だけとなります。そこで、両グループを比較することで、施策の効果を因果推論することができるのです。このように、ランダムに分けて比較する因果推論の手法を、ランダム化比較対照試験( 以下R C T、RandomizedControlled Trial の略)といいます。RCTは、様々ある因果推論の手法の中でも最も因果推論の精度が高く、究極の方法と呼ばれています。  先ほどのパー・スコラスの例に戻ります。現在の米国では、補助金支給にRCT等のインパクト評価を義務付けたり、インパクト評価に補助金を厚く支給するインセンティブを付与することが多々あります。そこで、パー・スコラスでもRCTを行ったところ、プログラム受講者の所得が27パーセント上昇しているほか、失業保険や生活保護の受給が減少していることが分かりました。(注2)こうした効果を厳密に証明できたことで、パー・スコラスは連邦政府やニューヨーク以外の地方自治体等からも支援を受け、現在ではアトランタなどの5都市に拡大しています。 (3)様々なインパクト評価の手法  このように、ランダム化は、因果推論をするうえで大変重要なのですが、例えば学校の先生や保護者が子供たちの教育内容の差に抵抗を感じるように、「平等性や倫理性の観点から難しい」という意見をよく聞きます。確かに、施策の評価でRCTが使われてこなかった日本においては、アレルギー反応があるのは当然です。米国などの一部EBPM先進国においては、政府が音頭を取って推進していることもあり、幅広い分野でRCTが活用されていますが、それでもアレルギーがないと言ってはうそになります。また、そもそもRCTが利用できない分野も少なくありません。例えばインフラ整備の場合は、整備地区とそれ以外とで全く同質な場所を見つけることは難しく、インフラ整備に膨大な資金がかかるので、RCTは実質的に不可能です。  そこで、直接的なランダム化はしないけれども、施策の設計を工夫することでランダム化したのと実質的に同じ効果を得る手法が開発されています。例えば、学校で補習を行う場合、60点などの基準を設定し、その基準未満は受講を義務付けます。この場合、ぎりぎり60点未満の子どもたちとぎりぎり60点以上の子どもたちを比較すると、親の所得や性別比、本人の学習意欲、潜在的な学力含めて、テスト結果に影響を及ぼす要素に両グループでほとんど差はなく、あたかもランダム化したような状態になることがあります。こうした場合に、補習後の両グループの成績の伸びに差があり、補習以外に両グループのテスト結果の伸びに異なる影響を及ぼすものがなければ、その差は補習の結果生じたものといえます。このほか、行政サービスの多くは、所得等を基準に提供することが多いので、サービス受給基準の上下ぎりぎりにいるグループはあたかもランダム化された状態になり、因果推論を適用できる可能性があります。  ここで紹介した特定基準上下ぎりぎりのグループを比較する手法を回帰不連続デザインといいます。他にもランダム化類似の状況を作り出して因果推論する手法(総称して「疑似実験」又は「自然実験」といいます。)は数多くありますが、いずれもRCTよりも強い仮定を置いているので、RCTと比較して因果推論の精度は劣ります。しかしながら、しっかりと設計された疑似実験の場合、前後比較や、施策対象と対象外の単純比較、単純な回帰分析にはできない因果推論が可能となるのです。  ここでは疑似実験の手法を一つ一つ紹介できませんが、素晴らしい因果推論の入門書が出ておりますので、関心のある皆さんは是非ご覧になってください。『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』伊藤公一朗著(光文社出版)『「原因と結果」の経済学』中室牧子、津川友介著(ダイヤモンド社) 3 インパクト評価以外のエビデンス  さて、これまでエビデンスといった場合に、施策の効果を因果推論するインパクト評価に着目してきました。しかし、どんなに効果のある施策であっても、施策課題の認識が不適切であったり、執行面に問題があれば、予期していたような効果は出ないどころか、悪影響すら及ぼす可能性があります。また、インパクト評価は、費用も時間も要することが多いために、タイムリーに施策の達成状況を確認してマネジメントに生かすには、別のモニタリング手法が必要となります。加えて、効果に比して過大な費用がかかるようであれば、別の施策を検討する必要があるかもしれません。要するに、施策のPDCAや熟度などに応じて、意思決定に必要な情報は変わってくるのであり、施策が効果を出すためには、必要な情報がバランスよく整うことが重要なのです。そこで、以下では、インパクト評価以外で施策の重要な判断材料となる、@課題やトレンド等の把握、A執行(プロセス)評価、B業績評価、C費用対効果分析(費用便益分析)について紹介します。 (1)課題・トレンド等の分析  施策が計画通りの効果を発揮するためには、施策が対応する課題を的確に把握することが第一歩です。就労支援の例では、失業者数、失業率などの適切な把握ということになりますが、できれば、日本、神奈川県、横浜市、各区のような地域別のデータだけでなく、性別、学歴、障害の有無などの属性別に統計が整っていれば、より詳細に問題を理__解して、適切な対応をとることができます。また、こうしたデータを統計的に分析することで分かるトレンドも重要です。例えば、米国の研究ですが、景気変動と失業の関係を分析すると、景気低迷は、低学歴であったり障害を抱えるような労働者により深刻な影響を与え、影響も長期化する傾向にあることが分かります。また、学歴や障害の有無などの違いによる所得ギャップは、年々拡大する傾向にあります。こうしたデータから、特に行政のサポートを必要としているのは、低学歴、障害などの属性に該当する方々だということが見えてきます。 (2)執行評価(プロセス評価)  執行評価とは、施策が計画通り執行されているか、法令などで定める行政サービスの基準や規制を満たしているかなどについて、定量的のみならず定性的な手法も活用しながら分析するものです。  例えば、ニューヨーク以外の自治体でパー・スコラスに類似する就労支援施策を採用したとしましょう。IT技能訓練に必要なパソコンなどの備品やソフトウェア面に問題があり、計画していたほど人材育成がうまくいかないかもしれません。また、IT研修の担い手が十分に確保できず、技能訓練がIT企業の求める水準に到達していないかもしれません。就労支援の場合にはあまり該当しないかもしれませんが、保育や介護、医療などでは法令で細かくサービス提供内容などが決められているので、こうした規制を満たしているかも確認する必要があります。  パー・スコラスなどの業種に着目した就業支援施策について執行調査した結果、サービス受益者のみならずサービス提供者の習熟にも時間を要するため、十分に効果を発揮するまでに早くても2年弱の時間を要することが分かりました。それゆえ、1年目の施策参加者よりも2年目以降の参加者のほうが高い効果を発揮する傾向にあります。また、その他の就業支援施策と比較して参加者の修了率が非常に高いことや、地域の業界やコミュニティとの緊密な連携も重要であることも分かりました。(注3) (3)業績評価  業績評価とは、事前に設定した業績目標の達成状況について、モニタリングやレポートを行うものです。施策がうまくいっているか否かなどの重要な情報を提供してくれますが、インパクト評価と異なり施策と効果の因果関係まで検証するものではありません。 ニューヨークの就労支援施策においては、共通の業績指標を設定することで、施策ごとの達成状況だけでなく、施策間の達成状況も比較することが可能となっています。具体的には、就労支援サービス受給者数、フルタイム・パートタイム就業者数、中位所得、職業訓練修了者数、継続雇用期間などが共通指標として利用されています。  なお、業績評価は、インパクト評価や執行評価と組み合わせることで大きな威力を発揮します。インパクト評価を通じて、最終的に目指すアウトカムの達成につながる中間的なアウトカムを確立できれば、それを業績指標に設定することで、最終的なアウトカム達成に向けた進捗管理が可能となります。例えば、パー・スコラスの効果は実証されているので、パー・スコラスの参加者数、修了者数を業績目標に設定することで、IT業界への就職や所得上昇に向けた進捗が管理できます。また、プロセス評価で、施策が効果を出すために遵守すべき要素が確認できれば、それを業績指標に設定することで、その要素を順守した執行が行われているか確認できます。例えば、パー・スコラスなどの業種に着目した就労支援について、サービス提供者と受益者の双方において習熟に時間を要するのならば、習熟すべき技能を明確にして集中的に訓練することで、早期に効果を発揮することが期待できます。 (4)費用対効果分析、費用便益分析  費用対効果分析の前提として、インパクト評価によって、施策にどの程度の効果があるかを厳格に把握する必要があります。そのうえで、施策の効果あたりの費用を分析することで、施策ごとの費用対効果を比較することが可能となるのです。  費用対効果分析といえば米国ワシントン州のワシントン州公共政策研究所が有名です。1983年の設立以来、州議会や州政府の重要な意思決定に必要となるエビデンスを提供してきました。州議会が新しい施策を検討するにあたり、当研究所は、全米中の類似施策の調査結果を使って、ワシントン州で実施した場合の費用対効果を分析し、州議会に提供しているのです。  当研究所が公表している就労支援施策の分析結果(図1)を見てみると、高校生に対するキャリア・技能教育は、便益が約1万5千ドル、費用が約6千ドルなので、ネットでは約9千ドルと高い便益が見込まれています。一方で、若者向けの就労体験施策は、便益に比べて費用が高いため、ネットでは約4千ドルの損失が見込まれます。この場合、どちらの施策を選択すべきか一目瞭然です。  次に、社会人を対象とする就労体験施策と失業保険受給者に対する個別就労支援施策を比較してみます。両者とも便益は約4千ドル程度と同程度なのですが、前者の費用は約2千ドルかかる一方で、後者の費用は200ドル程度に過ぎません。ネットの便益では、2千ドル程度の大きな差がつくのです。予算が潤沢にあれば両方実施すればいいのですが、限られた予算で選択を迫られた場合、失業保険受給者に対する個別就労支援施策が選択されるのです。 (5)ロジックモデル  最後に、ロジックモデルについて紹介します。ロジックモデルとは、施策のインプットから最終的に目指すアウトカム達成までの経路について、論理的に説明するものです。ロジックモデルを検討することで、施策の設計上の欠陥や問題点を事前・事後に発見するほか、アウトカムを達成するための別の経路を発見することもあります。また、ロジックモデルは、これまでに説明してきたインパクト評価をはじめとする各種評価手法の基礎にもなります。(図2)  ロジックモデルを用いて最終アウトカムの達成につながる中間的なアウトカムを設定し、それぞれに対応する業績指標の達成状況を定期的に確認することで、施策進捗のモニタリングができます(業績評価)。また、こうした業績指標の達成状況の確認や、施策の担い手、受給者などへのインタビューやアンケート調査などを通じて、ロジックモデルで設計した通りに施策が執行されているかを確認できます(執行評価)。施策が最終的に目指すアウトカムに影響するまでにはある程度時間を要するので、業績評価や執行評価は施策導入初期においては特に重要な役割を果たします。そのうえで、最終アウトカム達成までに十分な時間がたったところで、インパクト評価を活用して、施策の成果を因果推論するのです。  ここで重要なのは、施策の企画立案の段階で、ロジックモデルを活用しながら評価計画までしっかりと作成し、アウトプットや中間・最終アウトカムなどに対応する目標指標とそれに対応するデータを決めておくことです。施策を執行していざ評価する段階になって、必要なデータをとっていないので厳格な評価ができないということがありますが、そうしたミスを防ぐのです。 4 EBPMを実践しよう  これまでにEBPMの手法について紹介してきましたが、ここではEBPM先進自治体の具体例とともに、EBPMを実践するポイントについて紹介します。ここで紹介するポイントは、@アウトカム志向になろう、A既存のエビデンスを最大限活用しよう、BEBPM推進体制をつくろう、の3つです。(注4) (1)アウトカム志向になろう (ア)アウトプット志向からアウトカム志向へ  これまでアウトカムを目標に設定していることを前提に説明してきましたが、政府・地方自治体を問わず、就労支援サービス提供件数などのアウトプットを目標に設定していることが散見されます 。  確かに、たとえアウトプットであったとしても、目標指標を設定し、その遵守にコミットすることで、市民生活を大幅に改善した例は少なからずあります。世界的に有名な例は、米国バルティモア市(人口約62万人)のシティ・スタット(Citi Stat)と呼ばれるものです。マーティン・オーマリー市長は、99年の着任早々、様々な市民サービスに目標指標を掲げ、市長自ら出席する2週間に1回のシティ・スタットと呼ばれる会議において達成状況をデータで確認し、達成できていない場合には改善方策を徹底的に議論しました。当時バルティモア市では、職員の無断欠勤と、出勤職員の超過勤務が問題になっていましたが、リアルタイムに無断欠勤や休暇をモニタリングしたことで、1年後には無断欠勤はほとんどなくなり、超勤手当も6百万ドル削減できました。また、道路の補修やごみ収集、窓口の応対時間に至るまで、あらゆる市民サービスに指標を設定し、シティ・スタットで徹底的に進捗管理と改善策の検討を行うことで、多くの目標指標は達成され、市民の行政サービスに対する満足度も大幅に高まりました。その成果もあり、シティ・スタットは、米国のみならず海外にも広まっています。(注5)  このように、アウトプットを目標指標とすることで一定の成果が上がる場合もあります。また、窓口対応やごみ処理のように、サービスの提供自体が目的のものについては、アウトプットだけ管理すれば問題ありません。しかし、多くの場合、市民は行政サービスの提供のみならず、そのサービスを通じて達成されるべきアウトカムを求めています。例えば就労支援であれば、窓口相談や技能訓練、雇用者とのマッチング・イベントなどの提供数も重要ですが、これらの施策を通じて実際に生み出される雇用増加、所得上昇などのアウトカムが期待されています。  ただし、アウトカム志向になるにはいくつか課題があります。一つは、アウトカムは複数の部局にまたがることが多いので、行政の縦割りを超えた連携が必要になることです。例えば、低学歴層向けの就労支援といった場合には、就労支援施策の担当以外にも、少なくとも生活保護などのセーフティーネット、学校教育、公営住宅などの担当者が関係するでしょう。二つ目は、市長等の幹部や担当者の任期よりも達成までに時間を要するものも少なくなく、任期を超えた施策の継続性が問題になることです。三つ目として、アウトカムは施策以外からも予想外の影響を受けるので、施策の効果を把握するのが難しいことです。既にインパクト評価のところで説明したように、就労支援施策がアウトカムとする雇用や所得上昇については、景気や本人の才能・やる気、政府の経済対策などの別の要因も影響するので、施策の効果を把握するためにはインパクト評価が必要となるのです。 (2)ニューヨークの欠席対策  2010年、ブルームバーグ前ニューヨーク市長は、子どもたちの学校欠席が子ども自身の将来のみならず、社会にも深刻な悪影響を及ぼしているとして、市役所内の関連部局や市民団体などで構成する特別チームを編成しました。全米で750万人の子どもたちが年間10パーセント以上の授業を欠席しており、落ちこぼれ、中退、将来の犯罪の温床になっているという調査結果を踏まえたものです。(注6)また、長期欠席の原因には、家庭の事情、交通手段の不備、ぜん息等の病気など様々なものがあり、こうした原因を適切に踏まえた対応をする必要があることから、特別チームは様々な部署で分野横断的に形成しました。  ニューヨークが最初に直面した課題は、子どもの欠席状況を把握することでした。実は、クラスごとの平均欠席率はデータとして存在しましたが、平均出席率からは個々の子どもたちの長期欠席を読み取ることができません。そこで、個々の子どもの出席状況と欠席の原因についてタイムリーに把握するデータベースを構築し、関係者の間でデータを共有できるようにしました。  その上で、様々な施策が試みられましたが、その一つであるサクセス・メンターでは、長期欠席に入っていたり、その危険性のある子供たちにメンターを付け、子どもが欠席したら朝のうちに親に連絡を取って即座に対応するのみならず、日常的に子供たちの様々な相談に乗ることで、出席するよう働きかけました。また、メンターは先生などの学校内部の人材のみならず、学校外部の人材も入れたので、関係者間のデータ共有や連携がうまくいっているか、メンターの質が確保できているかなどについても執行調査で確認し、遵守すべき模範例を冊子にまとめることで、模範的事例のスタンダード化も行いました。その上で、サクセス・メンターをRCTで評価したところ、欠席対策として有効なだけでなく、子供たちの成績向上にも有効であることも明らかになりました。こうしたエビデンスが評価され、現在では、類似のメンター施策が連邦政府にも採用され、全米に展開されています。 〈本事例の教訓〉 ・中間アウトカムに設定した個々の生徒の欠席状況にタイムリーに対応することで、ニューヨーク全体の長期欠席削減や子どもの学力向上という長期アウトカム達成に結実。 ・課題の的確・適時な把握のため、個々の生徒の欠席状況やその原因をリアルタイムに把握するデータベースと関係者間での共有体制を構築。 ・執行調査で明らかにした模範的事例を共有し、スタンダード化。 (2)既存のエビデンスを活用しよう  アウトカム志向になったところで、そのアウトカムを達成するのに有効な施策を実施する必要がありますが、個々の自治体が、あらゆる施策分野について、効果のありそうな施策を一から立案し、執行、評価まで行うことは現実的ではありません。この点、他の自治体などが過去に実践した施策などを評価したエビデンスの蓄積があるので、それを最大限有効活用しない手はありません。 (ア)プロビデンスの「子ども・若者内閣」(注7)  米国ロードアイランド州の州都プロビデンス(人口約18万人)では、市内の子ども・若者の健全な成長のために、市役所内の関係部局や市民団体の代表で構成する「子ども・若者内閣」を組織しました。市内の子ども・若者が抱える課題等の特定、その対応に有効な施策の選択、予算やスタッフなどの資源配分を行うものです。  子ども・若者内閣は、他の自治体の子供関連施策について調査し、「子供をケアするコミュニティ(以下CTC)」という全米各地で成果を上げたコミュニティベースの非行予防施策を参考に、「エビデンスから成功へ(以下E2S)」という施策を設計しました。これは、子どもたちにアンケートを実施し、飲酒、喫煙、薬物使用、犯罪等に至るリスク要因を特定した上で、適切な予防施策を講じるものです。プロビデンスは、CTCの設計者にE2Sの設計段階から参画してもらい、CTCのコアとなる要素は維持しつつ、プロビデンスの特性などを踏まえた工夫も施しました。  学校や地域の協力姿勢などの観点からモデル地区を選択し、子どもたちにアンケートを実施したところ、慢性的な欠席、停学、心配事/鬱、軽犯罪等に至るリスク要因を抱えていることが判明しました。そのうえで、モデル地区の保護者、学校、地域社会などから得られる支援やそれらが抱える問題などを踏まえ、5つの施策を選択しました。その一つは、ポジティブ・アクションという、小中学生を対象に、学習への関心を高めたり、周囲との協力を促進することで、リスク発生を予防する施策です。先ほどのリスクのうち、慢性的な欠席、停学、心配事/鬱の3つに効果があるとのエビデンスが示されているものです。  この施策を実施したところ、モデル地区以外と比較し、慢性的な欠席が5パーセント減少、心配事/鬱の要因が35パーセント減少などの効果が検証されました。この効果検証を受け、連邦政府等から財政措置を受け、市内の他のコミュニティや他の地方自治体にもE2Sは拡大しています。 (イ)クリアリングハウスの活用  プロビデンスの事例では、2段階にわたって既存のエビデンスが活用されています。CTCをモデルにE2Sを設計した段階と、E2Sの中で発見したリスクに有効な施策を選定した段階です。こうした選定プロセスにおいてプロビデンスが参考にしたのが、データの信頼性や評価手法などについて一定の基準を満たしたエビデンスを一覧で公表するいわゆる「クリアリングハウス」です。  既存のエビデンスが各政府機関や自治体、大学などに点在していては、結局各自治体の担当者が一から調査する羽目になるので、世の中全体でみれば大きな時間の無駄です。また、各担当者の調査能力次第で、適切なエビデンスを選択することができずに、効果の見込みにくい施策が選択される可能性もあります。そこで、クリアリングハウスでは、実務家にもわかりやすいように各エビデンスを所定の様式に簡潔にまとめ、簡単に検索できるよう一覧化しています 。(注8)  今回プロビデンスが参考にしたクリアリングハウスは、「健全な若者発育のためのブループリント(青写真)」(以下ブループリント)と呼ばれる子ども・青少年関連の施策をまとめたものなので、体験してみましょう。  ブループリントのトップページを開くと、施策検索画面が出てきます。施策のアウトカム(予防したいリスク)から検索できるので、プロビデンスの子どもたちが抱える慢性的な欠席、停学、心配事/鬱、軽犯罪というリスクを選択します。また、対象となる子どもの年齢、性別、人種などから、よりプロビデンスに近い設定で行われた施策を選択することもできます。ここまで細かく入力した結果、プロビデンスが採用したポジティブ・アクションが候補の一つとして出てきます。各候補施策について、施策概要、費用、効果、評価手法、因果推論の厳格さなどについて簡潔にまとめられています。また、複数の施策を選択し、効果や費用などを比較することもできます。  こうした使い勝手の良さがクリアリングハウス普及の要因ですが、それに加えて、政府等の補助金の採択要件として、クリアリングハウスのエビデンス基準が活用されていることも普及に一役買っています。日本では、そもそもインパクト評価などによるエビデンスの蓄積が浅いこともあり、クリアリングハウスのように検索性、一覧性の高いものはありません。また、補助金の採択要件に厳格なエビデンスが求められることも珍しいです。そのため、日本では政府や研究機関などがエビデンスをまとめたレポートなどを利用するのがせいぜいですが、将来的にはクリアリングハウスまで整備されることが期待されます。 〈本事例の教訓〉 ・新規施策の企画・立案や既存施策の見直しに当たっては、既存のエビデンスを最大限有効活用。 ・既存のエビデンス活用にはクリアリングハウスの活用が有効。 (3)EBPM体制をつくろう  自治体は、それぞれ異なる特色を持つユニークな存在なので、他の自治体で積み上げられたエビデンスを最大限有効活用したとしても、必ずうまくいくわけではありません。そこで、各自治体が、不断の施策改善やイノベーションを引き起こし、本当に有効な施策を見出すためには、既存のエビデンスを踏まえて効果の見込める施策を試験的に導入し、各種評価手法で施策の効果のみならず執行面や費用対効果などを評価し、その評価結果を踏まえて施策の拡充、改善、廃止を行うサイクルを確立する必要があります。そのためには、データやエビデンスの高度な応用も必要になるので、それを担う人材、予算、権限を備えた体制も構築する必要があります。こうした体制のモデルとして、ここではニューヨークの貧困対策の事例を紹介します。 (ア)ニューヨークの貧困対策  2006年、ニューヨークは、ニューヨークの高い家賃や日用品などの物価、生活保護などの所得支援などを踏まえて、これらを反映していなかった政府の貧困統計を見直しました。その結果、最低限の衣食住を満たせない絶対的貧困層については、生活保護などの所得支援のおかげで従来統計よりも低い数値になった一方で、絶対的貧困すれすれの貧困層は25万人程度多くなることが判明しました。こうしたニューヨークの貧困の実情を踏まえ、ブルームバーグ前市長は、ニューヨークの貧困問題に特命的に取り組むCenter for EconomicOpportunity(CEO)を編成しました。  CEOは、経済学者、統計学者、貧困研究者、データサイエンティストなどの専門家や事務スタッフ約60名程度で構成するチームです。評価担当者だけで10名近くに上ります。ニューヨークからの約1億ドルの予算のほか、民間からの協賛金、寄付金なども多額に上ります。エビデンスを大変重視しているのもCEOの特徴で、予算のうち5パーセント以上を評価に充てています。これほど多額の予算を評価に充当することについては、当初市議会議員などから反発を受けたようですが、市長やCEO幹部などが評価の意義や費用対効果が高いことなどをしっかり説明したことで、リーマンショック後の厳しい緊縮財政期においても評価予算が削られたことはないようです。なお、評価の中心的役割を担うのはCEOの評価チームですが、評価の実務の多くは競争的入札で選ばれた民間団体に委託しています。  CEOは、2015年までに、28の市役所部局や200以上の慈善団体等と連携し、就労支援や教育、保健、犯罪防止などの多岐の分野にわたる74以上の施策を企画、執行、評価してきました。ここで重要なのは、貧困解消に役立つ施策を企画する段階から、CEOと担当部局が緊密に連携していることです。CEOがエビデンス面で施策の企画・立案に助言するのみならず、評価に必要なデータや評価手法などを含む評価計画についても、執行前にしっかり固めておくのです。いざ評価をする段階になって、評価に必要なデータがそろっていないというのはありがちなミスですが、こうした緊密な連携がそうしたミスを未然に防ぎます。また、執行や評価段階においては、データ収集、評価などの技術的な面で担当部局を支援します。加えて、職員がエビデンスに基づく効果的な執行ができるようトレーニングするほか、評価によって得られたエビデンスの組織横断的な共有にも努めています。 (イ)CEOの評価戦略  これだけスタッフにも予算にも恵まれているCEOですが、評価はやみくもに行うのではなく、意味あるエビデンスの見込みがある施策を狙って戦略的に活用しています。典型的には、施策を最低1年程度は実施してみて、あらかじめ定めた業績指標の達成状況をモニタリングします。そのうえで、見込みがありそうな場合には、執行評価、インパクト評価、費用対効果分析などを実施するのです。一般的には、まずは執行評価を行い、執行上の課題や成功事例を確認します。また、効果が出るのに十分な時間がたてば、インパクト評価によってアウトカムを達成しているかを因果推論します。費用対効果分析は、インパクト評価に合わせて行うことも多いですが、別個のケースもあります。  こうした厳格な評価は予算も時間もかかるものなので、評価によって解明する疑問をあらかじめ明確にします。単に「この施策に効果があるか」ではなく、「なぜサービス提供者Aは、他のサービス提供者よりも効果を上げているのか」、「この施策はどのような対象者に対して最も効果を上げているか」などのように、細かいニュアンスの疑問を設定するのです。そうすることによって、施策の細かい改善に有効なエビデンスを得ることができます。  なお、先ほど施策を1年程度実施してから評価すると紹介したとおり、執行評価、インパクト評価などの厳格な評価は、施策がある程度成熟してから実施されます。また、評価は1度のみならず複数回実施されるのが通例です。2度目以降は、それ以前の評価結果を踏まえ、施策の改善に資するものが選択されるのです。また、こうした評価結果は、予算配分の重要な判断材料となります。評価によるエビデンスを踏まえ、効果があれば拡大されますし、効果のない施策は廃止されることもあります。また、エビデンスを踏まえた施策の改善は、施策が予算を得るうえで当然行われます。 (ウ)CEOに救われたジョブ・プラス  EBPM体制を構築することのメリットを事例から紹介しましょう。1990年代に、ニューヨークは、非営利のシンクタンクMDRCと連携して、ジョブ・プラスという市営住宅に住む貧困層への就職支援施策を実施しました。これは、@市営住宅での就職支援や技能訓練、就業継続支援、A家賃と連動した就職への経済的インセンティブ、B住民間での就職情報等の交換促進、の3点を特徴とするものです。  本施策をいくつかの市営住宅で試験的に実施して、RCTで評価したところ、ジョブ・プラス参加者は非参加者と比較して、月額1,100ドルの所得上昇が見込めることが判明しました。施策費用は、参加者当たり月に1,800ドルかかったので、費用対効果は十分でないように見えますが、ジョブ・プラス終了後も参加者の所得上昇は続くので、長期的には施策の便益が費用を上回ることがわかりました。  これだけの効果があるにもかかわらず、当時のニューヨークは、ジョブ・プラスの施行期間が満了したのを受けて2004年に施策の廃止を決めました。その復活は、リーマンショック後に大量の失業者が生まれ、CEOが効果のある就労支援策を検討する中で、過去に実績のあったジョブ・プラスに行きつくのを待たなければなりませんでした。2009年以降、CEOが、失業者にあえぐハーレム地区の市営住宅でジョブ・プラスを再試行したところ、改めて効果が確認できたので、2013年には市内23の市営住宅に広く展開しました。  2017年、ニューヨーク市議会の議決と市長のサインを経て、CEOにジョブ・プラスの再評価とさらなる拡大の是非についての提言を義務付ける条例が成立しました。大きく3つの評価を行うもので、1つ目は、市営住宅に設置されたジョブ・プラス拠点のサービスに対する住民の評価で、アンケートやインタビューなどの定性的な手法で実施します。2つ目は、ジョブ・プラスの効果を追加で検証するインパクト評価です。参加時期に一年ずれのあるグループの比較からインパクト評価を行うものですが、ジョブ・プラスに参加することで72パーセント高い確率で就職し、四半期に838ドルの追加所得を得ることができるとの結果が出ました。3つ目は、ジョブ・プラスの執行面に関する調査で、様々な課題を抱える市営住宅でジョブ・プラスモデルを忠実に実施することの難しさが判明しました。今後、CEOが提出するエビデンスに基づき、市として更にジョブ・プラスを拡充するかが判断される予定です。 〈本事例の教訓〉 ・施策の不断の改善とイノベーションを行うためには、十分な専門人材と予算を備えたEBPM推進組織を設置し、個別施策担当部局との緊密な連携体制を構築することが必要。 ・評価は戦略的に行うもの。業績評価で達成状況をモニタリングしつつ、施策の熟度や目指す改善などに応じて執行評価、インパクト評価、費用対効果分析等の評価手法を繰り返し行い、施策の拡大・改善・廃止の判断材料とする。 5 まとめ  EBPMの肝は、施策効果のエビデンスを重視する姿勢であり、それを支えるのはインパクト評価(因果推論)です。しかしながら、効果が実証されている施策であっても、必ずうまくいくわけではなく、施策のPDCAの段階や熟度、改善を目指す点などに応じて適切なデータやエビデンスを踏まえる必要があります。そのための手法は、施策課題の分析、業績指標を活用したモニタリング、執行状況の評価、費用対効果の分析などであり、これらを戦略的に活用することで、施策が貧困や失業などの課題解決に確実に結びついていくのです。  米国のいくつかの自治体の事例を紹介してきましたが、米国においても、インパクト評価によって得られる施策の本当の効果を重視するEBPMが広まったのは、オバマ政権以降の話です。冒頭に紹介したビリー・ビーンの採用したデータやエビデンス重視の手法が、有効であると認識されるや否やメジャーリーグだけでなく世界中の野球界に広まったように、EBPMが有効であると認識されるからこそ、EBPMの手法も全米のみならず、世界中に急速に広まりつつあります。  2013年、ニューヨークのデブラデシオ現市長は、2025年までに80万人を貧困から脱出させる「ワン・ニューヨーク」というプランを発表しました。本稿でも一部紹介したように、CEOが中心となって様々な対策を講じたところ、2013年から2017年までに28万人が貧困状態を脱出できました。こうした目覚ましい実績の背景には、本稿で説明したような戦略的なEBPMの活用があり、この実績ゆえに市役所や市議会のみならず市民にもEBPMが広く受け入れられているのです。  日本では始まったばかりのEBPMですが、これが日本の地方自治体でもスタンダードになるのは時間の問題だと思います。そうであれば、横浜市で働く機会に恵まれた私としては、横浜市はフォロワーになるのではなく、ニューヨークが全米の地方自治体をリードしているように、日本の地方自治体のEBPMをリードする存在であってほしいと思います。 注1  ジョナサン・シルバの例は、What Works Media Projectから引用。 注2 H e n d r a 他 『E n c o u r a g i n gEvidence on a Sector-FocusedAdvancement Strategy Two-YearImpacts from the WorkAdvanceDemonstration』 (2016) 注3  Tessler 他『Meeting the Needsof Workers and Employers』(2014) 注4 本項目の事例紹介全体を通じて、Lanzerotti 他『Geek Cities : HowSmarter Use of Data and EvidenceCan Improve Lives』(2013)、NYCenter for Economic Opportunity の年次報告書2017 を参照。 注5 Perez 他『The CitiStat Model: How Data-Driven Government CanIncrease Efficiency & Effectiveness』 注6 Balfanz 他『The Importanceof Being in School : A Report onAbsenteeism in the Nation’s PublicSchools』(2012) 注7 The Annie E. Casey Foundation『Using Programs that Work』(2017)注8 クリアリングハウスは、各国政府機関や大学などによって、教育、子どもの健全な発育、犯罪防止などの政策分野ごとに構築されているのが通例です。有名なものとしては、英国のWhat Works Centre や米国教育省のWhat Works Clearinghouse などがあります。