<コラム> 横浜市立大学(YCU)×データサイエンス 〜YCUデータサイエンス学部が社会をリードする〜 公立大学法人横浜市立大学 教育推進課学術企画担当(学長室担当)係長 奈良井 聡 YCUデータサイエンス学部が育成する人材  横浜市立大学では、平成30年4月にデータサイエンス学部を新設する。YCUデータサイエンス学部が育成する人材とは、単にパソコンを使って目の前にあるデータや数字を解析するだけの人材ではない。データが生まれた現場の人間とコミュニケーションをとり、データが生まれた背景・課題を的確に理解したうえで、膨大なデータを解析し、課題解決や新たなビジネス提案をすることができる人材である。そのために必要な教育は、単なる情報教育でもなく、数理教育でもない。それらをベースにしつつ、経済・経営学、計算科学、医療統計学等、将来“データサイエンティスト”として活躍するために必要な基本的な知識を修得し、企業や病院などの協力を得て実社会におけるデータを活用した演習によりコミュニケーション能力の涵養を図り、実社会における“応用”を学ぶことが必要なのである。  なぜ横浜市立大学にデータサイエンス学部なのかと思われる方も多いだろう。横浜市立大学は、文理4学系12コースからなる国際総合科学部と医学部の2学部を有し、これまで高い国際性、コミュニケーション能力を基礎として、人文・社会科学、自然科学及び医学の学問融合的な視点から課題解決を目指す教育研究を実施してきた。つまり、上述したデータサイエンス教育を行うための学問分野や強みを有しているのだ。これらの教育研究資源を具体的に連携・融合させた学部こそがデータサイエンス学部なのである。 【学部概要(1学部1学科)】 データサイエンス学部 データサイエンス学科 授与学位:学士(データサイエンス) 入学定員:60名 横浜市と連携したデータ活用の推進・取組  横浜市においては、平成29年3月に官民データの一層の活用などを定めた「官民データ活用推進基本条例」が成立・施行するなど、全国の自治体に先立ち、データ活用に関する政策を進めている。このような動きの中、横浜市立大学では、データサイエンス学部の設置に先立ち、これまでも横浜市消防局、医療局などと連携し、データ解析を通じた課題解決の取組を進めている。  たとえば、平成28年9月に横浜市医療局と共同で記者発表をした「横浜市の医療政策に医療ビッグデータを活用全国の基礎自治体で初めて、NDB(ナショナルデータベース)データの分析に着手」の取組では、医学部臨床統計学教室がデータの分析を担当している。医療ビッグデータであるNDBの解析を通じ、横浜市域のがんに関する医療実態の把握など、データサイエンスを通じた課題解決に取り組んでいる。  データサイエンス学部の設立により、横浜市の姿勢、取組を踏まえながら、これまで以上にデータ活用の推進、研究とあわせて横浜市とともに具体的な課題解決に取り組んでいく。 公立大学である横浜市立大学の役割  横浜市立大学は横浜市が有する公立大学であるため、教育・研究・附属2病院における診療、法人・大学運営を通じて、横浜市に広く貢献することが求められている。もちろん、データサイエンス学部の設置にあたってもその点は重視されており、各所からの期待も高い。  まず、大学の存在意義として、人材育成をすることについては言うまでもない。その対象には、学生のみならず、社会人も含まれる。特にデータサイエンスの手法・考え方は、社会人にとってもニーズが非常に高い。データサイエンス学部では、他大学の学生や社会人が履修し、本学での単位が認められる制度である科目等履修生制度や、生涯学習として市民に対して開講しているエクステンション講座において、学部科目やデータサイエンスに関する講座を実施し、できる限り多くの機会を通じて、広く人材育成に貢献していく。  また、データサイエンスは企業との連携が欠かせない分野であり、地域の企業との連携も視野に入れている。既に、平成29年4月に横浜市経済局が主体となって立ち上げたIoTオープンイノベーション・パートナーズ(I?TOP横浜)に横浜市立大学(主にデータサイエンス学部)が参画しているため、更に地域企業及び横浜市との連携を図っていく予定である。  これらの取組を通じ、データサイエンス学部に対する期待に応え、ひいては公立大学として市民の期待に応えられるよう、人材育成や地域企業との連携に取り組んでいきたい。