≪2≫「データ活用」を取り巻く環境の現在 @ いま、なぜデータ活用が求められるのか〜社会の変化と国の取組 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 1官民データ活用推進基本法の制定  近年、我が国では、スマートフォンが急速に普及するなど、個人の情報収集・発信力が飛躍的に増大する環境が整ってきました。更に、IoTやAIといった最新の技術を活用してデータの収集・処理を進めることで、BtoCのみならずBtoBへとデータを活用したサービス展開が可能となってきています。しかしながら、環境整備が進む一方で、ITやデータを活用するという国民の意識向上に時間を要し、実際にデータ利活用が進んでいるとは言い難い状況が続いてきました。このような中、超少子高齢社会を迎え様々な社会課題を抱える我が国において、データを基盤とする社会を見越した環境を先行して整備していくことが必要との趣旨から、2016年12月、議員立法により「官民データ活用推進基本法」(以下「基本法」という。)が制定されました。   2 基本法の理念等  基本法の目的は、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、それにより国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することです。基本法において官民データとは、電子データであって、国、地方公共団体、独立行政法人、その他の事業者において、日々の事務や事業の遂行に当たり管理・利用・提供されるすべてのデータを対象としています。例えば、個人がサービス提供を受けるために、事業者が該当サービスを受ける個人のデータを扱う場合もありますが、そのような個人に係るデータについても官民データの対象に含まれます。ただし、国の安全を損なうものや公の秩序維持を妨げるもの、公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがあるものは対象外としています。基本理念としては、官民データを活用する観点から、データを根拠とし、データに基づく施策の企画・立案を掲げており、これはEBPM(Evidence Based PolicyMaking:根拠に基づく政策立案)を法律上初めて明記したものです。さらに、官民データの安全な利用の観点から重要であるセキュリティ対策や個人情報の保護への配慮も求めています。また、円滑なデータ流通を促進するための重要な理念として、標準化による多様な主体の連携を確保するための規格の整備、互換性の確保を求めるとともに、AI、IoT、クラウドといった先端技術の活用を推奨しています。   3 基本計画の概要  基本法では、政府に対し「官民データ活用推進基本計画」の策定を義務付けており、2017年5月30日、閣議決定により「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(以下「基本計画」という。)が策定されました。基本計画では、経済再生・財政健全化や地域活性化、安全・安心の確保といった諸課題に対応し、8つの分野(電子行政、健康・医療・介護、観光、金融、農林水産、ものづくり、インフラ・防災・減災等、移動)を重点分野に指定しました。将来的な分野横断的なデータ連携も見据えつつ、2020年を一つの区切りとした上で、重点分野ごとに施策を推進することとしています。   4地方の官民データ活用推進計画の策定  基本法では、都道府県に対して基本計画に即した「都道府県官民データ活用推進計画」の策定を義務付けるとともに、市区町村に対して基本計画に即しかつ都道府県官民データ活用推進計画を勘案した「市町村官民データ活用推進計画」の策定に努めるよう定めています。なお、基本計画では、2020年度末までに、全都道府県での計画策定を目指すことが明記されています。こうした中、国は、地方公共団体の効率的な計画策定に寄与するため、2017年10月13日に「都道府県官民データ活用推進計画策定の手引」及び「市町村官民データ活用推進計画策定の手引」を公表しました。本手引の内容については、関係府省庁・団体と協力して全国の地方公共団体に対して、地方ブロック会議や地域セミナーの場を活用し、説明を行うこととしています。2017年度には各地域ブロック等27か所で実施しました。2018年度についても引き続き実施予定です。地方公共団体における官民データ活用推進計画は、基本法に掲げる基本施策のうち、地方公共団体に関係する、次の五つの取組を柱として構成することとしています。@手続における情報通信の技術の利用等に係る取組(オンライン化原則)A官民データの容易な利用等に係る取組(オープンデータの推進)B個人番号カードの普及及び活用に係る取組(マイナンバーカードの普及・活用)C利用の機会等の格差の是正に係る取組(デジタルデバイド対策等)D情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等に係る取組(標準化、デジタル化、システム改革、業務の見直し(BPR))地方公共団体が計画を策定するに際しては、本手引に記述されている施策すべてを盛り込むことは求めず、既存の情報化計画等を利用するなど、着手できるところから始めて、順次拡充を目指すことを前提としています。また、国の施策だけでなく他の地方公共団体における先進的な取組も活用しながら、当該地方公共団体の特性や実情に合わせた計画を策定、推進していくことを期待しています。   5 おわりに  今後も政府においては、官民データの活用を推進するため、引き続き、必要な環境・ルールの整備を行うこととしており、特に、地方公共団体による官民データ活用推進計画の策定を支援していきたいと考えておりますので、御意見や御相談等ございましたら、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室や関係省庁に御相談ください。