《6》座談会/障害のある人とない人の交流を通した新たな試み 〜O!MORO LIFEプロジェクト進行中! 近藤 絵美(こんちゃん) O!MORO LIFE プロジェクト参加者 小林 由香里(ゆかりちゃん) O!MORO LIFE プロジェクト参加者 前田 昌宏(まーぼー) O!MORO LIFE プロジェクト参加者 古川 実利(ふるさん) O!MORO LIFE プロジェクト参加者 進行 太田 未来(studio-L) O!MORO LIFE プロジェクト担当者 西上 ありさ(studio-L) O!MORO LIFE プロジェクト担当者  横浜市では、昨年度から障害者差別解消を推進するための啓発活動の一つとして、障害のある人とない人の交流を通した取組O! MORO LIFEプロジェクト=iオモロライフプロジェクト)を開始しました。  障害者差別解消法の施行前、市が行うべき取組についてご検討いただいた横浜市障害者差別解消検討部会の提言では、啓発活動について、講演会等の開催などのほかに、「障害のある人と障害のない人が気軽な雰囲気の中で交流することができる機会を設け、その中で障害の理解を広げていくといった取組も有効」であり、「市独自の取組の実施」を検討するよう求めています。このプロジェクトはそれに応える試みです。楽しく自然な関わりの中で障害やお互いの理解を深め、その輪を市民主体の活動により市民の方々の間に広げていこうとするものです。  プロジェクトの参加者は、SNS等により募っており、これまで計10回以上のワークショップやイベント等に、障害のある方を含めてのべ200人の方々が参加し、みんなで考えながら、様々なバリア≠乗り越えるための活動を行っています。継続的に参加されている方も50人くらいいらっしゃいます。  今回は、このプロジェクトに参加している4人にお集まりいただき、このプロジェクトの事務局業務を受託しているstudio-L 担当者の進行により、参加のきっかけや参加してみての感想などを楽しく語っていただきました。[事業担当課/健康福祉局障害企画課] 1 O!MORO LIFE プロジェクト参加のきっかけ 【太田】では、まずO!MOROに入ったきっかけについて順番に聞いていきたいと思います。 【小林】私はコミュニティデザインに興味があって、studio-LのFacebook を追いかけていて。 【太田】studio-L に元々興味があったんですね。 【小林】それでいいなって思ったのと、前に車いすをつくる会社にいて福祉に興味があったのと、それから、障害のある人と健常者の人とみんなが一緒に楽しめるような場所をつくりたいというのがあって、それがきっかけで来ました。 【前田】私がO!MORO に関心を持ったのは、最初はO!MORO パーティーに参加したんですが、Facebookのタイムラインの投稿を見て、Bank ART というすごい雰囲気の良さそうな会場だったので、場所そのものがこれは面白そうだぞという、第六感みたいなものがビビッと来て、という感じです。 【一同】(笑) 【前田】実際に行ってみたら、みんなで話をする場のほか、車いすや白杖の体験もできました。もちろん障害のある方と一緒に何かをやっていきたいっていうのもありましたが、最初は、本当に自分の率直な面白いと思った感覚から、参加させていただきました。 【近藤】私は、ちょうど同じ日にBankART でやっていた別のボランティアの説明会に行ったのがきっかけです。隣で何か楽しそうなイベントをやっていて、顔を出して覗いていたら、スタッフの方が「入ってよ」ってやさしく声をかけてくださいました。これまで参加が続いているのは、一番はおしゃれな空間づくりと、それから、お菓子やジュースが用意されていたりということですね。 【一同】(笑) 【近藤】雰囲気づくりが、すごく入りやすくてというのがありました。他のボランティアをやっていたこともあるんですが、まちづくりとか地域活性化に興味があって、いろんな人と垣根を越えてやっていけるイベントだったので、今まで参加させてもらっています。 【太田】誰か強引に勧誘したのかな。 【一同】(笑) 【古川】私は中途失聴の難聴者で、大人になってから聞こえなくなったんですが、このように普通に話ができるということで、聞こえないということになかなか気づかれないです。このO!MORO に参加したきっかけは、O!MOROの最初のパーティーに参加した同じ聴覚障害のある友だちから、「是非行った方がいい」、「聴覚障害者がいないと、置いてきぼりにされる」というか「皆さんに知っていただくためにも参加してほしい」と言われまして、それで私は参加しているのですが、その友だちはなかなか参加できなくなって。なんか任されちゃったので参加しています。でも楽しい。毎回楽しく過ごせているので、ありがたいと思っています。 2 福祉≠ニの関わりは? 【太田】皆さん結構コミュニティデザインに興味があったり、まちづくりに興味があったりということで参加をしてくれてたんだって今日よく分かりました。もともと福祉の業界にいた方ではない方が多いのかなっていう印象を受けたんですが、皆さん、今まで福祉との関わりってどうでした? 【小林】私は車いすの業界に入って福祉というものに触れるようになったのですが、福祉にいなくても、一人ひとりの苦手とか弱さとか、そういうところを補い合える場づくりにすごく興味があったので、そういう意味でO!MORO はすごく関連性があるように思いました。それから、この間は、高校の友人を誘ってO!MORO のイベントに参加したんですが、その人は全く福祉とは無縁の人ですが、すごく楽しかったと言ってくれて。全盲の友だちがいて、その全盲の友だちの誘導をその高校の友人にしてもらったのですが、日頃やったことがない、視覚障害の人とのコミュニケーションのとり方をはじめて知って、O ! MORO の活動にも興味を持ってくれたようです。それが個人的には一番うれしかったです。答えになっていないかもしれないですが。 【太田】そういうのが聞けたらすごくいいです。 【前田】私は、以前仕事で2年間だけ、福祉関係の国家資格に関わる仕事をしていたことがありました。法律の仕事でしたので、いろんな方と触れ合うというよりは、法律の文章をちゃんと見ていくというようなことをしてました。実際にO!MORO で、いろんな皆さんと触れ合っている中で、障害ってなかなか一言で簡単に片づけられるものではなくて、いろんな方としっかりと向き合わないと、いろいろなことが分からないということを今、切実に感じているところですね。 【近藤】ちょっと話が飛ぶかもしれませんが、私は子供の頃に川崎市に住んでいて、市場などで様々な国の方が働いているのを見て、こういう街がもっと発展していくにはどうしたらいいんだろうって、中学生くらいのときから考えていました。 【一同】えー。すごい。 【近藤】それで、大学で国際交流とか国際政治経済を勉強しましたが、その中で、国籍だけじゃなくて、いろいろなバリアがあって、そういうものを取り除くというのはどの場面でも必要になってくるんだなって感じていました。それで、バリアを無くしていくにはどうしたらいいかなっていうことを考えて、街に出て、活動に参加していくうちに、O!MORO に魅かれていったんだと思います。 【太田】古さんは、市役所で仕事をしているから、いろんな人たちと日々触れ合っていますよね? 【古川】まあ、それほど触れ合ってはないですね。 【一同】(笑) 3 O!MOROに参加して、変わったこと、感じたこと 【古川】ちょっと話が逸れていいですか? 【太田】いいです、いいです。 【古川】私は当事者団体の、難聴者協会というところに入って活動をしているのですが、やっぱり、お互いの傷とか痛みを分かり合っているので、居心地がいいんですね。でも、そうすると、そこにいたいという気持ちばかりになってしまうので、できるだけ外に出て、まだ理解が深くない人たちとももっと触れ合うような機会を求めているというところがあります。 【太田】なんか勉強になるね。 【古川】O!MORO に参加して、聴覚障害についてまだ知らない人たちと触れ合う機会が増えて、どうやって自分のことを伝えようかとか、考える時間が多くなったように思います。 【太田】実際、O!MORO をやっている中で、自分のことをこんなふうに伝えたというエピソードがあれば、教えてほしいです。 【古川】伝えたというよりは、歩み寄って来てくれて、私も歩み寄ってという感じです。例えば、手話をちょっと教えてほしいと言われて教えてあげたり、それで、また次回、一緒に手話を使ってくれてという、ちょっとした触れ合いがやっぱりいいですね。手話ができなくても、壁を乗り越える一歩、心のコミュニケーションというのができたことが何度かあるかなって思います。 【太田】今、古さんがO!MORO に参加したことでの変化について話をしてくれましたが、参加して気づいたこととか、発見したことなんかも含めて、皆さんはどうですか? 【小林】私はもちろん楽しいので続けているんですが、何かどうしても、障害者差別解消法っていう言葉が前提にあるというところで、障害者という言葉に縛られているのかなと感じる場面もあります。話し合いでも、障害者の人の立場、健常者の人からの考え方っていうところで、なんか二つに分かれてしまう部分を結構感じるんですよね。障害のある人とない人がその場にいるから、意見が二分するというのもあると思いますが、障害者という言葉で語らなくても、みんなで何か一つのことをしよう、この人はこんなことがちょっと苦手ということをお互いに言い合えたり、伝え合えたりすれば、別に障害者っていうキーワードはいらないんじゃないかと思っています。  全盲の友人、よしやんっていうんですけど、一緒にO!MORO にも2回参加させてもらっていますが、そのよしやんからすると、O!MOROに参加したとき、「みんなもっと軽く考えていいんじゃない?」って、彼は思っていたみたいで、私もなんとなくその言葉で、自分が「ん?」って思っていたところが明確にされたような気がしました。だから、障害者という言葉に括られずに、いろんな立場の人と触れ合うということがしたいなと思います。参加の前と後で、そんな感じがあります。 【前田】障害っていう言葉そのものがやっぱり重いというか、なんかちょっと特別感があって、障害のある方とそうじゃない方に分けてしまうようなイメージを世の中が持っているのかなっていうのをいろんな方とお話しする中で感じました。バリアっていう言葉の方がもっとしっくりくるのかなと思っていて、ゆかりさんが言ったように、得意なこと、不得手なことがどの人にもあるのと同じですよね。目が見えなくても耳が聞こえなくても、何ができて何ができないのかって、単純に人と比べることはできないのかなって思います。 4 O!MOROの企画、グルメツアーで 【太田】近ちゃん、どうですか。 【近藤】バリアというのはみんなが持っているものなんだなって感じています。身体的なものだったり精神的なものだったりすると思いますが、子育てをする上で悩みを抱えるのもバリアだったり、みんな同じなんだというのは、驚きで新しい発見だったと思います。  それから、O!MORO のグルメツアーに行ったときに、お店の人がすごく親切にしてくれるんだけど、話している内容がちょっとバリアを感じさせる、違和感のあるお店があって、なんでなんだろうって疑問も感じました。自分は今までそこまで意識していなかったんですが、グルメツアーとか、O!MORO のミーティングに参加することで、意識的にそういうことを感じられるようになったかもしれないです。 【古川】今のグルメツアーの話ですが、前回のO!MOROの際に、車いすの松島さんがみんなに手伝ってもらってお店(居酒屋)に入って、お店の方は優しい方でしたが、「みんなに手伝ってもらっていいね」とか、そういう言葉をかけられたのが松島さんはショックだったっていう話で、私もすごくそれは分かるなって思いました。例えば「耳が聞こえないからって特別扱いしない」と言われたという話をよく聞きます。でも、特別扱いしてほしいとは誰も言ってなくて、ただ「聞こえないから電話ができません」と伝えただけで、「特別扱いになる」とか「他の皆さんと同じにしてください」という話になってしまう。でも皆さんと同じことができないから配慮してもらう訳で、それで特別扱いというのは違いますよね。松島さんの話を聞いて、そのお店の方の言葉の中に特別扱いしてもらっていいね、というニュアンスを感じました。 【太田】松島さんの話で補足です。そのお店、居酒屋に行ったときに、近ちゃんが言ってくれたように「みんなに手伝ってもらえていいわね」って言われたのと併せて、赤ちゃん言葉で話をされたということがありました。それが松島さんの中ではすごく腹が立つ。でもお店の人は全く悪気がない。それで、すごくみんなでモヤモヤして、こういう場合は一体どうしたらいいんだって。結局答えは出なかったんですが、そんなエピソードがありました。 【小林】松島さんの話は私も聞いて、赤ちゃん言葉とかがすごい嫌だっていうのは分かるんですが、そのお店の人が悪気がなく言ってしまうというのも、なんとなく分かってしまう感じがします。別に自分が言うってことではないですが。でも、そのときに、私は喧嘩してもいいと思っていて、「自分はそれが嫌なんだ」っていうのを言って、それで初めて「そんなこと言っちゃったんだ」という気づきが生まれることもあると思います。何で言えないのか、そこはちょっと複雑なんですが、怒ってもいいし、言ったっていいんじゃないかなって思いました。怒ってもいいっていう空気感を作り出すのは難しいですが、それもこれから必要なことなんじゃないかなと思っています。別に障害者の人だから怒っちゃダメとか、逆に障害者の人が健常者の人に強く言うのはダメとか、それ自体が間違っているんじゃないかなって思ったりしています。そこのやりとりがスムーズになるような社会ができたらいいのかなって。ちょっと大きな話になりましたが、そんなことを思ったりしました。 【太田】お店の人に松島さんが言われたということも、実はお店を出てから知ったということがあって。タイムリーにその場で聞いていたら、みんなの反応も違っていたかもしれないって思います。 【西上】対話ですよね、O!MORO でやっていることは。聞きにくいことでも聞いてみるとか、聞こえなかったら「もう一回言って」って言う。それからみんなですごいびっくりしたんですが、車いすで入れない場所に行くときに、松島さんが「歩ける」って言って、全員が、「え、歩けるの? もっと早く言ってよ」みたいな感じで。 【一同】(笑) 【西上】その会話がすごく普通でした。対話できることが、多分このO ! MORO の場の面白さで、かつ、それを楽しいこと、例えばグルメツアーに行こう、旅行に行こう、山に登ろう、登れないかもしれないけど登ってみようみたいな。そのチャレンジする面白さと対話が結びついているっていうのがこの場の魅力です。他の自治体ではほぼやっていないことであり、横浜市ならではの新しいチャレンジなんだろうなと、思います。 5 O!MOROの面白さ 【太田】古さん、どうですか。 【古川】今の話を聞いていて、やはり健常者の人もどうしていいか、どう声かけていいか分からない。そして、こちらも、障害者の人も、こうしてほしいってことがなかなか言えないっていうジレンマみたいなものをすごく感じますね。私もやっぱり、言うタイミングとか、言っていいのかどうかって迷うときはあります。でもやっぱり楽しいことをしていれば、そんなに気にならないんじゃないかなっていうのも正直思います。チャレンジ、普段できないことをやってみたいなっていうのはすごく思いますね。 【太田】なんか、本当に、O!MORO の面白いところって、できるかどうか分からないけどとりあえずやってみる。みんなでできなかったことを楽しむみたいな、そこが真骨頂な気がしていて、それを絶対うまくいかせなきゃいけない、成功させなきゃいけないって考えた途端に、いろんなバリアが発生するなって私は思っています。だからもしかしたら、高尾山も登れないかもしれない。 【一同】(笑) 【太田】だから下見も事前準備もほぼなし。それでやってみるっていうところがいいのかなって思っています。 【古川】楽しければいいと思いますよね。 【西上】前田さんは、カレンダーチーム(O!MONO プロジェクトの中の1チーム)のLINE 入ってますよね? あれも面白くないですか? 【前田】面白いですよ。今はカレンダーじゃなくて、カードゲームですが。世間話がちょいちょい入ってくるんですよね。うちのグループラインももっと面白くしなきゃなと反省をしています。 【太田】真面目だもんね。(笑) 【前田】誰かちょっと面白いこと言ってくれないかな。 【西上】カレンダーチームは、みんながしたいことを詰め込んで、ワイワイやるとどうなるのかっていう、そのLINEのグループ自体が社会実験みたいになってるんですよね。写真だけ挙げると、(視覚障 害の)こうちゃんは、何がLINE に挙がったか見えないし、写真が分からないんですよ。でも、その写真、何十枚も挙げるときに全部にコメント付けるかっていうと、それまた大変で、今度はみんなが写真を挙げなくなる。特に説明が必要なものにはコメントを付けるけど、それ以外は、かなちゃん、説明してあげてみたいな人もいれば、一枚ずつコメント付けなきゃダメでしょって思っている人もいる。みんなの言葉を見ながら、いいバランスとか、いい加減って何なのかっていうのを日々学習していく。初期の頃のLINE と今のLINE が全然違うんですよ。雑談の楽しみを糧に、正しいこともやるっていう雰囲気がカレンダーチームは少しずつ育ってきているような印象です。 【太田】どうですか。 【前田】雑談ができていなくて申し訳ない。 【一同】(笑) 【太田】サロンチームのLINEはなんか業務連絡が多いですよね。もっとみんな、ふざけてもいいなって思います。古さん、ちょっとふざけてみてくださいよ。 【前田】古さんは、あのスタンプが絶妙な感じがします。 【古川】スタンプは楽なんで。 【一同】(笑) 【太田】うん、みんな待ってると思う。 【古川】じゃあ、これからふざけましょう。 【一同】(拍手) 【太田】やっぱり楽しいってことから対話も広がるし、お互いに聞きたいことが聞きやすくなるなって思うので、そこら辺は意識するといいのかなって思いました。他に、皆さんの中で変化ってありました? 6 自分の中の変化 【近藤】年上の方と話してても、それはそれでまた全然違う発見があるし、会社とか職場とか学校とか、そういうものに全く縛られないつながりですが、共通点があったり、違う部分があったり、いろんな発見があって楽しいです。それで、あだ名で呼ばれると、すごくテンションが上がるというか・・・・。 【一同】(笑) 【前田】僕は、一人でいるときも、街のいろいろなところに目を向けるようになったという感じがします。電車のホームにも、車いす用のQRコードがあるし、いろいろな設備が街にビルドインされてることに気づくようになりました。車いすの方の目線がどれくらいかも気にするようにもなりましたし、いろんな見方がちょっとできるようになったように思います。 【古川】O!MORO に参加して、自分自身が変わったかどうかは分かりませんが、周りの人たちがすごく変わったように感じています。声をかけてくれるようになりましたね。やっぱり聴覚障害があると、それだけで話せないって思ってしまうかもしれないんですが、声をかけてくれるようになったのがうれしかったです。 【太田】みんなが古さんとしゃべろうとすると、一生懸命身ぶり手ぶりで伝えようとしているのが、傍から見ていて面白いなと思います。なんかすごい動きをつけてしゃべるじゃないですか。皆さん、先ほど、障害のあるなしって何か違うんじゃないのって話をしてくれたので、その関連で、障害者と健常者の違いについての考えとか、思いとか感想とかでもいいんですが、そこもちょっとお聞きしたいと思います。 7 障害者、健常者の違いとは? 【小林】事前に言われて考えたんですが難しくて・・・・。障害ってそもそも社会とか環境がつくり出しているものなんじゃないかなとは思っています。例としていいか分かりませんが、ここが北極でいきなり環境が変わったとしたら、私も環境に適応できないということで障害者になるのかなって思ったり、背の高い人たちがいる中に背の低い人が一人だけいたら、それも障害者になるのかなとか、いろいろ考えたんですが。障害っていうのは、結局、社会とか周りの社会性とか環境とかが生み出してるものですよね。だから、人間同士の関わりが変われば、障害って言葉は無くなるのかもしれない。健常者、障害者という括りをはずすことは、人間同士の関わりとか、社会が変わることによって無くせるんじゃないのかなって、そんな感じです。 【前田】僕も障害っていうことを社会が生み出している、つくっている概念なんじゃないのかなというのは思いますね。 【近藤】健常者と言われる人であっても、誰でも障害者になる可能性はあるし、困った状態になることもあります。その違いだけなのかなと思います。難しい意味を社会で付けちゃってる気がするんですね。誰でもそういう可能性はあると考えて、いつでもそこで助けを求めたりとか、手を貸してあげるという環境をつくるということが大事なのかなって考えました。 【古川】ちょっと別の話になりますが、この間、ダイアログ・イン・サイレンスという、ヘッドフォンをして音が聞こえなくなる、その聞こえない状況でいろいろなお題をクリアしていくというイベントに参加したんですが、普段健常者と呼ばれている人たちが聞こえない状況になると、やっぱり意思疎通が難しくなって、みんなの方が障害者になっていて、やっぱり障害は社会とか環境がつくってるんだというふうに思いました。 【近藤】障害がある人は何が障害かっていうのを感じて分かっている人で、健常者っていうのは、そのことをあんまり分かっていない人のことかなとも思いました。 【太田】深い。 【小林】それぞれの障害や悩みをイメージできれば一番簡単なんですが、やっぱり当事者にならないとどうしても分からないという部分はあると思います。大事なのは、対話をして、お互いに「こういうところが弱いんだ、助けてくれ」だったり、「こんなことだったら自分でできるよ」だったり、お互いの対話とそれをいかに許容できるか。社会がもうちょっと優しい感じになればいいんじゃないかなと思いました。 8 アートで、スポーツで 【古川】もうひとつ、O!MOROの話じゃないですが、この間、ヨコハマ・パラトリエンナーレを見て来ました。テーマが「とけあうところ」で、アートを通して、障害者とか障害者じゃないとか、その壁を乗り越えているというか、無くなっているという、すごく不思議に感じました。 【西上】アートのどこにその壁がないっていうふうに思いましたか? 【古川】言い方は分かりませんが、脳性マヒの人が踊っていても、別に不思議じゃなくて、逆にかっこよかったりする。普段、街歩いててかっこいいと思うかというとそうでもないけれども、アートとして成立しているから、なんかかっこいいなあというふうに思うんじゃないかなと。そこがアートの力だというふうに思いました。 【小林】私はパラリンピックのアイススレッジホッケーっていうのがあって、それがめちゃくちゃかっこいいななと思っています。座ってそりに乗って、アイスホッケーをするんですが、スピード感もあって、別に障害があるとかないとかじゃなくて、単純にかっこいいと思いました。車いすバスケも生で見たことがあって、あれもすごいかっこよくって、私は多分普通のバスケットボールよりも好きなんですが、単純にかっこいいと思えるようなものが、障害とか差別とかを無くすものになるのかなとも思ったりします。その感覚をもうちょっとO ! MORO でも芽生えさせることができたら楽しいなって思いました。 【近藤】私は知的障害のある人の絵とかを見たときに、自分が描くようなものとか世界と全然違うなっていつも思って、色調とか塗り方とか、よく感銘を受けることがあります。それから、テレビで、歩くと光る義足を作っているのを見たときに、アートとバリアというのは実は親和性が高いのかもしれないと思いました。アートもバリアも常識を打ち破るというところが共通点で、そういうところからの発想、アイデアというのは、アート、芸術活動を動かす原動力になっている、新しい閃きの場なんじゃないかなって最近感じるようになりました。 【古川】車いすバスケって、やったことありますか? 【小林】私、やったことはないです。 【古川】すごく楽しいです。力がいるのかなって思ってたんですが、全然そんなことはなく、軽くすーっと行くんですよ。爽快です。楽しいですし、車いすバスケをやってる方と一緒にやると、彼らの方がもちろんすごくうまくて、そこにはバリアなんてないですよね。同じ土俵に立つと、そういうバリアがなくなるのかなと感じます。 【太田】なんか純粋にいいものはいい、カッコいいものはカッコいいというその感覚が大事なのかなと思います。 9 これからO!MORO でやってみたいこと 【太田】時間も迫って来ているので、最後のお題です。今後のO ! MORO でこんなことをやっていけたらいいなというところをお願いします。 【小林】この間、よしやんが地引網をしたいって言ってたので、地引網をしたいです。みんながやりたいことをそれぞれバリアがあっても笑顔で取り組むというのがO ! MORO のいいところだと思うので、対話しながらやりたいことを1個1個実現させていけたら楽しいなと思います。 【近藤】今後やっていきたいことは、今月29日にあるカフェイベントを成功させること。 【太田】失敗してもいいんだよ。 【近藤】あっ、そっか。でも、何とか形にするのが、今のやっていきたいことの一つです。 【前田】もっといろいろな場をつくっていきたいと思っていて、みんなで卓球するのもいいですし、スポーツでもいいし、ハードルもあるかと思うんですが映画を観るとか、一緒に楽器を演奏するとか、そういうこともやりたいです。自分がやっていて楽しいと思うこともみんなと共有したいなって思います。運動会とかも是非やりましょう。 【近藤】運動会、やってみたい。 【太田】横浜スタジアム。 【前田】会場がでかい。 【太田】広ーいところで、一部分だけでこじんまりやるとか。 【前田】贅沢。 【太田】それで写真撮ったら、なんじゃこりゃって。 【古川】私は、某番組のパクリなんですけど、O ! MORO村をつくりたい。 【小林】それ、いいですね。 【古川】373万人、横浜市の人口ですが、そのうちの10万人くらいの人が身体障害者手帳を持っているということです。他の障害者手帳もありますし、手帳を持っていない人でも障害のある人はたくさんいると思いますので、そう考えると、100人いたら3人とか4人くらいは障害者ということかと思います。障害のある人と障害のない人が一緒になって、O ! MORO村でみんながどうやって幸せに暮らしていけるのかという、そういう試みも面白いんじゃないかなと思いました。 【一同】面白い。 【太田】時間が来てしまいました。今日はいろいろな話が聞けてとても楽しかったです。ありがとうございました。それでは皆さん、原状復帰です。テーブルを元の場所へ! (掲載資料から) O!MORO LIFE プロジェクト(オモロライフプロジェクト)事務局 studio-L 太田 未来    「かかあ天下って手話でどうやるの?」そんな問いかけに聴覚障害のあるメンバーが笑いながら手話を教え、いったいどんなシチュエーションで使うのかと周りからつっこみを入れられながらも一生懸命に手話を覚えようとするメンバーがいる。O!MORO のワークショップ会場はいつもこんな雰囲気に包まれています。  昨年度、横浜市の「障害のある人とない人との交流を通した啓発事業」のプロポーザルが行われました。気軽な雰囲気の中で、障害のある人とない人との交流を通じて、障害に対する理解を深め、障害のある人に適切な配慮ができる人の輪を市民の間に広げていくことがテーマとなっており、このプロジェクトは私たち studio-L にとって新たなチャレンジとなりました。プロジェクトが始まった背景には、障害者差別解消法の施行に伴い立ち上がった検討部会からの提言があります。市民の声からはじまったこのプロジェクトは、市民の力で『小さな気づきや変化をたくさん起こす』とても意義のあるものだと感じています。このプロジェクトでは、小さな気づきをいかにたくさん生みだすかを重視しました。どんな人でも日々の生活には、障壁(バリア)や生きづらさを感じることがあるでしょう。例えばベビーカーを利用している人は、自動ドアの場所にしか行きたくないと言います。外国人にとっては忙しそうな若い人には声をかけづらく、早口の日本語は聞き取れません。障害のある、なしにかかわらず、気軽に参加できる場をつくり、対話の生み出し方から考える。それを実行し、どのようなところに障壁(バリア)があり、それをどのように乗り越えているのか、解決のアイデアを共有し、それを発信していく。リアルな体感とアイデアは共感の輪を広げると考えました。  多様な人たちに参加してもらうため、プロジェクトのネーミング、ロゴ、会場の空間づくりにおいては、“福祉”とは直接的に結びつかないデザインとし、思わず参加したくなるような楽しそうな仕掛けを随所にちりばめました。結果、これまで“福祉”に全く関わりのなかった人も参加するなど、新しい出会いの中からグルメツアー、登山などおもしろい活動が生まれています。  話し合いの場では、参加者の主体性に任せています。時にはバリアフルな会場でワークショップを開催することもあります。取り分けるのに協力が必要なお茶菓子にしたりすることで、対話がうまれやすい工夫をしています。対話や外出を増やすほど、参加者同士が自然と声かけ、お互いをさりげなく思いやる行動が増え、冗談を言い合える友人のようになっています。これからは、参加者のみなさんがこのプロジェクトを通じて体験した「いろいろな人が出会える機会をつくる」、「一人ひとりの違いを知る、どんなバリアの乗り越え方があるのかを知る」、「一緒に楽しみながら、笑いの輪を広げる」、この3 つのことをより多くの市民に体験してもらうために、参加者の活動はこれからも試行錯誤していくことでしょう。