コラム 障害のある人とのコミュニケーション 〜知的障害のある委員の会議への参加から〜 健康福祉局障害企画課 各会議事務局  「障害のある人とのコミュニケーション」と聞いて、何が思い浮かぶだろうか。聴覚障害のある人であれば手話や筆談、視覚障害のある人であれば点字や音声・・・・では、知的障害のある人は? 漢字にルビをふること? 分かりやすい言葉を使うこと? それだけではない。  横浜市障害者施策推進協議会等で知的障害のある当事者の委員である、奈良ア真弓さん、永田孝さんに会議への参加を通して、知的障害のある人とコミュニケーションを図る上で大切なことは何かを聞いた。会議への参加は、特定の誰かが本人に対して、分かりやすく伝え、分かりやすい資料を作成すればよいものでもない。会議は、数多くの参加者の様々な発言内容を理解し、それを受けてまた発言をするという、コミュニケーションの重要性が詰め込まれた場である。  健康福祉局障害企画課が事務局となる会議では、知的障害のある委員にとって必要な配慮として、支援者の同席や「○×カード」の用意等を行っている。支援者の役割は、会議の資料や説明の中に難しい言葉があった際の説明や、発言のタイミングや内容に迷ったときの対応等であり、「○×カード」は、他の委員の発言が良いと思った際に「○」、会議の進行が速すぎるときや、難しい言葉を使って説明がされたときに「×」を出すといった使い方をするものである。 ◆奈良ア 真弓さん 〜ちゃんと説明してほしい〜 ―― 委員として参加して、良かったと感じる配慮はどのようなことですか? 奈良ア 会議の発言内容を文字化してプロジェクターで映してくれました。委員や事務局の発言内容を目で追えるので、ありがたかったです。また、会議資料に出てくる難しい言葉の解説を作ってくれたことも良かったので、これからも続けてほしいです。 ―― 良くなかったことや嫌だと感じたことがあれば教えてください。 奈良ア これまでに出た会議の中には、資料のページを説明に合わせてめくってくれることがありましたが、最悪でした。また、私の発言を勝手に解釈して伝えられてしまうことも嫌でした。発言内容が分からなければ、私に聞いてほしいです。ただ、何度聞いても発言内容が分からない方が委員として参加している会議に出たことがあり、そうした場合に司会者がどこまで解釈するべきか悩みます。 ―― 他にも会議で困ったことはありますか? 奈良ア 「○×カード」はどこで挙げていいのか分からなかった。ここで会議をストップしてしまっていいのか、ストップした後にどうなるのか心配でした。障害のあるなしにかかわらず、「×」のカードを出せる相手と出せない相手がいます。 ―― 知的障害のある方への配慮として必要なことなどを聞かせてください。 奈良ア 知的障害といっても、漢字にルビをふってほしい人もいれば、ひらがなの文章の方が読みやすい人、逆にひらがなばかりだと読めない人もいます。必要な配慮は人それぞれ違うので、どんな配慮が必要なのか、その人に聞いてください。また、分からないだろうからと決めつけず、ちゃんと説明してほしいし、私の言ったことが分からなければ、聞き返してください。私はそうしてほしいです。 ◆永田 孝さん 〜みんなで話すことが大事〜 ―― 知的障害のある方への配慮で必要なことについて教えてください。 永田 同じ知的障害でも特徴や性格は違うので、相手によって対応を変えることが大切です。例えば、私はひらがなの文章の方が読みやすい。一人ひとりに、どう対応すればよいかを聞いてほしいです。また、自分の障害のことは個人情報なので、許可なく他の人に話してほしくないです。 ―― 会議に参加して感じたことはどのようなことですか? 永田 資料は長々とした文よりも短い方が分かりやすいので、文章は2行くらいまででお願いします。文字は分かりやすくしてほしいです。ルビはふってほしいけれど、ルビがあっても意味が分からない言葉があります。文が読めても内容を分かっているとは限らないので、内容が理解できたか聞いてほしいです。その方が分からない部分を聞きやすいので、ちゃんと内容を理解できます。 ―― 他に「こうしてほしい」と思ったことを教えてください。 永田 資料だけがあっても分からないので、会議の前に言葉で説明をしてほしいです。その上で、前もって意見や質問を用意できるとよいです。また、会議当日に支援をしてくれる人も、その場にいてほしいです。 ―― 会議の最中に何か困ったことはありましたか? 永田 会議中は分からない言葉があっても、進行の妨げになるのではないかと思い、みんなの前で言うことはできません。また、「○×カード」が用意されていますが、みんなの前では出しにくく遠慮してしまいます。 ―― 会議に参加して大事だと思ったことを教えてください。 永田 自分だけでなく、知的障害のあるいろんな人が会議に出て、みんなで話すことが大事です。また、会議で、他の障害のある人など、いろんな人の考えを聞くことは勉強になります。  必要な配慮は人それぞれだが、その人に合った配慮がなされることが当たり前になってほしいと思う。また、改めて、一人でも多くの知的障害のある方が会議の場等に参加する機会を増やしていくことも重要であると感じた。