65歳~ (1)前提 横浜市の人口は、2020(令和2)年時点では約378万人でしたが、2025(令和7)年には約377万人、2040(令和22)年には約362万人となる見込みです。 一方で、65歳以上の高齢者人口は、2040年にかけて増加し続け、令和2年の高齢化率25.1%が、2040年には33.2%となり、3人に1人が高齢者となる見込みとなっています。 高齢者数の増加とあいまって「高齢夫婦世帯」及び「高齢単独世帯」も増加しています。2000(平成12)年と比較して、令和2年では、高齢夫婦世帯は約1.9倍、高齢単独世帯は約2.6倍となっており、総世帯に占める高齢夫婦世帯と高齢単独世帯は、平成12年には12.4%であったのに対して、令和2年には21.7%となっています。 横浜市の認知症高齢者数は、2022(令和4)年は約11.8万人で、65歳以上の高齢者に占める割合は12.3%でした。令和4年からの18年間で約1.5倍になることが見込まれており、2040年には約17.9万人となる見込みです。高齢者に占める割合は14.9%まで増加し、高齢者の6.7人に1人が認知症高齢者になると予想されています。(なお、軽度認知障害(MCI)も含めると2040年には約36.7万人、高齢者に占める割合は30.5%(高齢者の3人に1人程度)になると予想されています。)要支援・要介護認定を受けている認定者数は、令和2年で17万人を超えており、高齢者数の増加に伴い、今後も増加していく見込みです。 (2)横浜で暮らす高齢者の意識 横浜で暮らす高齢者の意識については、横浜市高齢者実態調査に詳しく記載されています。 2022(令和4)年度に実施された調査結果によれば、65歳以上の高齢者一般のうち、仕事をしていない人は66.3%。横浜で暮らす多くの高齢者が就労先での再就職も終え、自宅やその周辺で過ごしている様子が推察できます。退職したとはいえ、引き続き働き続けたい、働き続けられるうちはいつでも働きたいと思う高齢者の割合は42.7%です。 勤務先を離れ、自宅周辺で過ごしている高齢者の様子はどうでしょう。自治会町内会(16.1%)や健康体操(14.5%)などの地域活動に参加している高齢者がいる一方で、この種の活動に全く参加していない高齢者は57.7%。2013(平成25)年度の調査結果30.3%以降、平成28年度には42.8%、2019(令和元)年度には38.8%と増加傾向が続いており、地域コミュニティへの参加に躊躇している実態が浮き彫りになっています。 同調査では、地域活動やボランティア活動に参加したきっかけについても質問しています。健康でいたい(34.5%)についで、地域や社会貢献を理由にあげている高齢者は26.2%いました。 長寿なまちの文脈では、市内の各所で長寿なデータが出ています。全国市町村の高齢者の平均寿命を示した厚生労働省の令和2年市町村別生命表によれば、男性では2位に青葉区、8位に都筑区がランクインしています。そのほか、金沢区(28位)、港北区(30位)、栄区(42位)、戸塚区(50位)と、市内の6区が上位に入りました。女性では、青葉区が13位、都筑区が16位となるなど、横浜で暮らす高齢者の長寿な様子が示されています。 横浜の高齢者が長寿であることの背景には、横浜市民の健康意識の高さがあるのかもしれません。 (3)市民目線のニーズ探究調査 2025(令和7)年度の市民目線のニーズ探究調査によれば、この世代の9割以上が、横浜に住み続けたいと思っています。その理由の「治安が良い(約27%)」、「防災面で安心(約13%)」は、いずれも全体平均を上回り、65歳以上の市民が横浜での暮らしに安心・安全を実感している様子が見て取れます。そのほか、横浜の魅力について「国際的な雰囲気がある(約24%)」と回答する方が多い点も、この世代の特徴といえるでしょう。 隣近所との関係性については、「顔も良く知らない」が約7%とすべての世代で最も低く、また、「たまに立ち話をする」と回答した方は約35%と全ての世代の中で最も高くなるなど、近隣住民との近しい距離感が調査結果に表れています。 (4)横浜で暮らす高齢者の「豊かな選択肢」 横浜で暮らす高齢者には、健康づくりや就労・就業、地域のボランティア活動、生涯学習など、豊かな選択肢が用意されています。 例えば、定年退職を迎えた高齢者が何をしたいか考える際には、各区市民活動支援センターを訪れ、近所で募集されている地域活動やボランティア活動の紹介を受けることができます。自宅から近い距離にある地域ケアプラザでも、その地域にしかない活動を知ることができ、参加できる可能性があります。現役時代にはあまり知る機会のなかった地元の歴史や魅力は、地域ケアプラザや各区市民活動支援センターの講座や活動などに参加し、深く学ぶことができます。地域ケアプラザには調理室も備えられており、料理教室等が定期的に開催されています。 また、日本語を学びたい外国人や外国にルーツを持つこどもたちに、日本語を教えるボランティア活動があります。そのほか、健康づくりに取り組みたいと思えば、地域ケアプラザで開催されているラジオ体操や健康体操への参加のみならず、元気づくりステーションの取組もあります。引き続きの就労や就業を希望する際には、横浜市シルバー人材センターが居住区で働ける就職先を紹介してくれます。 (5)高齢者を支える横浜市の事業・取組 2024(令和6)年3月に策定した「よこはまポジティブエイジング計画~歳を重ねても自分らしく暮らせるまちを目指して~(第9期 横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画・認知症施策推進計画)」では、心身の状態が変化したとしても、地域の助け合いや専門職によるケアにより、高齢者が自らの意思で自分らしく生きることができるよう、「生活の質(Quality Of Life)の向上」につなげていくことを目指しています。 概ね中学校区域に1館、身近な福祉・保健の拠点として整備した地域ケアプラザは、横浜独自の施設であり、2024(令和6)年7月1日現在、市内に146か所整備されています。体操教室や食事会、健康講座などの福祉や保健に関するイベントや事業を実施することに加え、専門員による相談対応や高齢者の生活支援、居宅介護支援(ケアプラン作成)なども行っています。 高齢者の社会参加を支援する取組としては敬老特別乗車証(敬老パス)や濱ともカード(高齢者のための優待施設の利用促進事業)があり、高齢者の外出を促しています。 みんなのおでかけ交通事業では、交通事業者が運行する「路線定期運行」や「デマンド型運行」のほか、地域の支え合いによる「ボランティアバス」や施設の送迎車両を活用した「地域貢献送迎バス」など、地域の実情に応じた地域公共交通の導入を推進しています。 高齢者が住宅で安心して暮らし続けられるよう、民間事業者と横浜市が協働して生活あんしんサポート事業を実施しており、掃除や配食、草むしり、電球交換、買い物代行・同行など、高齢者の日常の困りごとを支援しています。 高齢者の地域活動や社会活動を後押しする取組も様々です。 よこはまシニアボランティアポイントは、高齢者が、介護施設、地域ケアプラザ、病院、子育て支援拠点等で事業の手伝いやレクリエーション活動の補助などの活動を行うとポイントがたまり、たまったポイントに応じて寄附・換金ができる仕組みです。 高齢者と地域団体、企業の活動をつなぎ合わせ、高齢者が多様な選択肢の中から、自分の関心事や体力、事情に応じて自由に選択した活動が行えるよう、シニア×生きがいマッチング事業も実施しています。この事業を通じて、エンジニアだった高齢者が、中高生のキャリア教育を支援しているNPO法人にボランティアスタッフとして参加し、青少年の支援に取り組む事例も生まれています。 (6)中期計画の位置づけ・振り返り 政策15「高齢者を支える地域包括ケアの推進」において、政策の目標として「個々の健康状態や関心に応じて参加できる場や知識・経験を生かして活躍できる環境の整備を進め、高齢者一人ひとりが生きがいや役割を持ち、つながり支えあう地域の実現」を掲げています。 政策16「在宅医療や介護の推進」では、「医療、介護、保健・福祉の連携強化により、人生の最後まで自分らしく、地域で最後まで安心して暮らし続けることができる社会の実現」を目標に掲げています。 政策10の「地域の支えあいの推進」では、政策目標として、地域住民が地域に関心を持ち、活動に参加することで、地域でつながる機会が広がる様子や、地域福祉保健計画の推進により、多様性の理解や身近な地域の支えあいの仕組みづくりが進む様子が示されています。 2024(令和6)年9月に行った同計画の中間振り返りでは、政策16の在宅看取り率が34.1%と早くも目標値の32.4%を達成し、令和7年に実施した第三期振り返りでは数値を更に伸ばしました(34.4%)。政策10の地域ケアプラザ等による地域福祉団体・機関とのネットワーク数も第三期振り返りで年間853件と、目標値の800件を大きく上回る結果となり、いずれの指標も目標を達成しています。 (7)高齢者が地域で暮らし続けられるまちづくり 横浜市では、高齢者が可能な限り、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、日常生活圏域で、地域特性に応じた地域包括ケアシステムの構築を進めています。住まいを中心に、介護、医療、生活支援・介護予防が一体的に提供される地域包括ケアシステムを実現させるためには、日常生活圏域のレベルで政策や施策を構成することが大切です。概ね中学校区(人口規模2~3万人)程度の日常生活圏域の地域ケアプラザを中心に、高齢者支援の取組を展開しています。 これまで紹介してきた事業のうち、敬老パスや地域交通サポート事業は、買い物や趣味、コミュニティ活動への参加など、高齢者が行きたい場所への移動をサポートするものであり、健康寿命の延伸に繋がることが期待されます。同じ文脈から、高齢者のボランティア活動や社会貢献活動を支援するシニアボランティアポイント、シニア×生きがいマッチング事業などへの参加も、高齢者の健康寿命の延伸にプラスに作用します。 高齢者の在宅生活の支援としては、介護サービスに加えて、民間事業者と横浜市が協働して「生活あんしんサポート事業」を実施するなど、在宅高齢者の毎日の生活を支えています。 地域の人とのつながり、コミュニティづくりのためには、自治会町内会や地区社会福祉協議会、老人クラブなどの活動のほか、地域ケアプラザで企画開催されている各種イベント、住民発意の取組には暮らしの保健室やコミュニティカフェ、大学生によるスマホ講座などもあり、多世代交流や継続性、デジタル化などもキーワードになっています。 自分が住み慣れた地域、地元での暮らしが続けられるよう、重層的な高齢者支援が求められています。 暮らしの保健室が秘める可能性 都筑区川和町駅から徒歩8分ほどの距離にある川和団地。高齢者が増え続けているこの団地では、毎月1度、高齢者やこどもたちが集まる保健室が開かれています。名付けて、「多世代交流サロン・暮らしの保健室だんちらんたん」。同団地に暮らす訪問看護師(佐藤智子氏)が、ランタンのように住民の心を優しく照らす場を作りたいと思い、名づけた事業で、現在は自治会の活動の一つになっています。 佐藤氏が7年前に都筑区の地域づくり大学校を受講したことがきっかけになり、自治会町内会に暮らしの保健室の開設を提案、以後開催回数70回を数える息の長い活動になっています。住民がふらっと立ち寄り、身近な健康問題や暮らしの困りごとを住民同士で話し合える。時には看護師に相談することもでき、必要な時には地域ケアプラザや区役所に繋ぐ役割にもなっています。高齢化が進む団地の一つの解が暮らしの保健室かもしれません。 地域みんなでゆるやかな見守り 戸塚区地域ネットワーク見守り事業「みまもりネット」は、地域の方や民間事業者(見守り協力事業者)などが、「ちょっと気がかり」な高齢の方などに気づいたら、地域ケアプラザや区役所へ連絡し、相談や支援につなげる仕組みです。 みまもりネットでは、高齢の方などの自宅へ定期的に訪問している事業者(新聞販売店や郵便局、水道検針事業者、宅配事業者など)や、高齢の方などがよく立ち寄り顔なじみがいる事業者(コンビニエンスストアや美容室、理容店、クリーニング店、管工事事業者、宅地建物取引業者など)の皆さまに「見守り協力事業者」として登録していただき、普段の仕事の中で高齢の方などをゆるやかに見守っていただいています。 神奈川大学サッカー部と高齢者の交流 緑区にある竹山団地は昭和40年代に建設され、約6000人の住民が暮らす団地であり、高齢化率は45%を超えています。 このような中、神奈川県住宅供給公社の賃貸住宅の上層階に、神奈川大学サッカー部の学生が2020(令和2)年5月から入居しています。約60名の学生たちは団地で生活するだけでなく、竹山連合自治会と連携しながら、落ち葉清掃、小学生向け学習支援、防災訓練、花火大会、高齢者向けスマホ相談、消防団活動など、団地の活性化や課題解決に取り組んでいます。 さらに、団地内の商店街空き店舗に整備した多世代交流拠点「竹山セントラル」での健康体操教室や、サッカー部食堂「竹山キッチン」を活用したカフェなど、地域の憩いの場づくりの運営にも携わっています。健康体操教室は専門家監修のプログラムに基づき実施され、毎回約30名の高齢者が参加する盛況ぶりで、科学的な効果の検証も始まっています。 こうした地域活動から生まれる交流は、学生にとって人間的な成長の機会となり、個々の能力向上やサッカー部の戦績にも好影響を与える相乗効果が生まれています。また、学生たちの姿に触れたことでファンとなり、試合の応援に足を運ぶなど”推し活”を楽しむ住民も増えています。