NPO法人 Sharing Caring Culture 青葉区・都筑区を中心に、言葉や文化の壁を感じている在住外国人親子の居場所づくりのため、外国人向けの地域子育て情報誌の発行や、多文化親子交流会の実施などを通して、地域の人や情報とつながるコミュニティ支援を行っています。 国際局の「多文化共生市民活動支援補助事業」を活用し、外国人家族向けに横浜北部地域の子育て情報を英語とやさしい日本語で編集して、子育て情報を纏めた冊子「OYACO(おやこ)」を出版。編集・発行にあたっては、外国人9名が関わりました。 来日歴が浅く孤立しがちな親子の居場所づくりや、支援を受けた外国人が自国の文化や言語を伝える側になる地域参画などの活動が評価され、2024(令和6)年11月には、こども家庭庁より「未来をつくる こどもまんなかアワード」の「こども・若者活動奨励章」を受章しました。 ●NPO法人 Sharing Caring Cultureからのひとこと 団体設立当初から、外国人が支援される側、日本人が支援する側という関係ではなく、対等な立場で共に運営してきました。外国出身者の地域参画と活躍促進を通じて、多文化共生社会の実現を目指しています。 当事者が主体的に活動していることもあり、外国出身者の参加率が高いことが特徴で、横浜北部地域ならではの多文化コミュニティとなっています。多文化でありながら、「子育て」という共通のテーマでつながっている点も特徴です。近年は、多様な文化的背景を持つ家族が集まるコミュニティであることから、他のNPOや企業からの協働の依頼をいただく機会も増えてきました。 今後は、図書館での外国語のおはなし会や、中高校生向けのダイバーシティをテーマにしたワークショップを実施し、多文化理解教育に力を入れていきます。外国出身者とともにこどもたちの人権感覚を育み、誰にとっても暮らしやすいまちづくりに寄与したいと考えています。 ●interview NPO法人 Sharing Caring Culture 三坂慶子 代表理事 ― 最初に、三坂さんがNPO法人Sharing Caring Culture(以下、「SCC」)で、現在の活動に取り組もうと思ったきっかけや経緯についてお聞かせください。 三坂:こどもの頃の経験と教員時代の経験をきっかけに、外国にルーツを持つ家族の日本での子育てを支援したいと考えるようになりました。私が小学生の頃、父の転勤で3年間ほどアメリカに住んでいましたが、言葉の壁がある中で母が子育てに苦労しており、海外での子育ては大変だとこどもながらに感じていました。また、10年ほど英語講師を務めたのち、小学校で教員として勤務していましたが、外国ルーツのこどもの親は、日本語を学ぶ機会が少ないため、親だけでの買い物が難しく、こどもが通訳役を担っている状況を目にし、外国ルーツのこどもたちやその親の支援ができないかと思うようになりました。 その後、小学校で民族文化講師をしていた韓国やフィリピンの方と知り合い、来日したばかりの頃は苦労が多かったという話を聞き、支援グループを作ろうということになりました。 最後に、当団体の名称について。アメリカに住んでいた時、母が教会で行われた料理教室に参加したところ、英語は話せなくてもアメリカの珍しい料理を作れるようになったと喜ぶ姿を見て、そうした文化的な活動は人を繋ぐことができることを実感しました。日本語教室のような、教える側・教わる側という関係ではなく、料理やダンスなどのように、皆がフラットに関われる団体にしたいという思いから、団体名に「カルチャー」という言葉を入れました。 ―団体を始めた頃のお話をお聞かせください。 三坂:2014(平成26)年に団体を設立し、初めて料理教室を開催しましたが、私たちの知り合い以外に参加者がいませんでした。より多くの方に参加してもらうにはどうすればよいかを考えた結果、料理教室にこどもを連れてくるという参加者側のハードルや、調理室を借りるといった運営側の課題に気づき、自分の教員経験や英語力が生かせる、親子交流会の企画に辿り着きました。親子交流会の一回目に参加してくれたのはタイ出身の親子のみでしたが、その方は「こういう活動に参加したかった。探していた。」と言ってくれました。彼女にはママ友がたくさんいて、口コミでどんどん参加者が増えていきました。親子交流会で集まった人たちの中から料理教室をしたいという方も出てきて、コミュニティ内での活動の好循環を感じています。 ―NPO法人を作ることになったきっかけをお聞かせください。 三坂:2015(平成27)年に受講したソーシャルビジネス・スタートアップ講座での学び、更には2017年に子育て情報冊子「OYACO(おやこ)」を作成したことが大きかったです。特に後者の発行に際しては、外部の方に「これだけのものを作れるのであれば、協働の可能性を広げられるように法人格を取った方が良いのでは」とのアドバイスも受けましたので、市民局の市民活動支援センター(現在の市民協働推進センター)に相談に訪れ、NPO法人を設立するために必要なことを教えてもらいました。 「OYACO(おやこ)」の編集に携わったメンバーとはミッションが共有できておりましたので、当時のメンバーが法人の設立メンバーになり、2019(令和元)年にNPO法人となりました。 ―子育て情報冊子「OYACO(おやこ)」は緑区、青葉区、都筑区、港北区の病院や施設などの情報を網羅的に掲載されるなどの特徴がありますが、そのほかの特徴などについてお聞かせください。 三坂:居住区に関わらず、生活圏での情報提供が必要だと考えていました。私たちはNPOなので、行政区単位を気にせず、区域を越えることができます。外国人の生活圏に合わせた情報提供、横断的かつ柔軟に必要とされる情報の掲載を意識しました。 また、外国籍のメンバーが中心になって、オンラインでのアンケートや座談会を開催。子育て当事者としての困りごとを調査し、冊子編集に生かしました。日本人には当たり前でも外国人には分かりにくい「幼稚園と保育園の違い」、「お薬手帳の使い方」、「救急車の呼び方」などの情報です。 編集に際しては、母国でジャーナリスト経験のあるメンバーから、構成や内容へのアドバイスをもらいました。日本人の考える情報冊子の構成とは異なり、当事者の体験談を入れるなど、情報だけでなく、読み物として作りたいという意見が外国人メンバーからあったからこそ、面白い冊子ができたと思います。 ―冊子の作成にあたっては市の補助事業も効果があったでしょうか。 三坂:国際局の補助金(多文化共生市民活動支援補助事業)があったこと、2021(令和3)年に英語とやさしい日本語で改訂冊子を発行することができました。当時は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、母国に帰れない外国人が多くいました。これまでは常備薬を母国で買い、日本に持って帰って使用していたのができなくなり、日本では同じ効き目の薬は何があるのかといった具体的な困りごとが出てくるなど、外国の方の課題も変わってきていると感じ、「OYACO(おやこ)」を改訂することになりました。 ―国際交流ラウンジと連携した取組についてお聞かせください。 三坂:都筑区の国際交流ラウンジ「つづきMYプラザ(都筑多文化・青少年交流プラザ)」でものづくりやアートでつながる活動を開催しています。SCCのような外国人支援団体として登録すると、無料で使えるため、親子交流会の定期的な開催にとても使いやすいです。参加者がお弁当を持ち寄って、親子交流会の後にランチをしながら情報交換ができたり、仲良くなった人同士が公園で会う約束をしたり、交流会の場だけでは終わらない関係づくりには開催意義を感じますし、国際交流ラウンジの存在はありがたいです。 他には、日本語指導が必要なこどもを持つ親から、小学校で通訳をお願いしたいという相談がSCCに寄せられた際にも、プラザの方が小学校との調整を担ってくれています。 ―横浜市では、在住外国人の支援や多文化共生社会の形成など、様々な政策・施策を企画・実施しています。このような横浜市の取組について、どのように捉えていらっしゃいますか。また、多文化共生や在住外国人の活躍について、何か感じることはありますか。 三坂:はじめは支援される立場に立っていた外国人も、日本での生活が長くなるにつれて、自分たちも地域貢献に参加したいとモチベーションが変化していきます。最近ではSCCのボランティアサポーターになりたいという問合せも多く寄せられています。 ただ、ボランティアと一口で言っても、そのかかわり方、期待していることは人によって異なります。有償か無償か、継続的か単発かといった、各々のニーズを見極めながら、丁寧に役割を打診していくことが求められていると感じています。 また、日本人の母親が子育てに専念しなければいけないという意識が強い一方で、外国の方は育児と自分の時間のバランスを重視しており、スイッチを切り替えるために、外と繋がりたいという意識もあるようです。例えば、親子交流会の場で、外国の方と会話を交わすことで、こんなに頑張らなくてもいいんだ、と感じる日本人の母親もいます。日本人だけだと同じような考え方に偏りがちですが、多様な考えに触れることで、広い視点、多様な価値観が日本人にも理解され、こどもを介して次の世代にも引き継がれていくと思います。 ―市民局の市民協働提案事業を通じ、国際局や教育委員会事務局と協働し、外国人による多言語での絵本読み聞かせ、図書館での多文化ギャラリー展示、生活情報の支援など、外国人親子と地域をつなぐアウトリーチ活動にも挑戦されているそうですね。 三坂:「多言語おはなし会」の開催に加えて、外国の文化を紹介する展示を企画しました。図書館のような公的な場所で多様な文化に触れられることで、日本人だけでなく、外国出身者にとっても図書館が開かれた場になればと思っています。2025(令和7)年は、アフリカ開発会議が横浜で開催されることもあり、中央図書館、神奈川図書館、港北図書館にて、SCCのナイジェリアメンバーを中心にしたアフリカ展示を行うことになりました(2025(令和7)年6~7月に実施済み)。 ―現在力を入れて取り組んでいることはありますか。 三坂:外国人と共生するためには、多様な視点を知り、違いを受容することが重要だと感じています。中学生や高校生を対象に開催しているワークショップ(ダイバーシティトークワークショップ)は、違いを理解しあうために始めた新しい取組です。外国人との接点が少ない中高生にも取り組みやすいよう、外国人の困りごとを可視化したカードを活用するワークショップで、カード作成にあたっては、様々な国籍を持つSCCメンバーの日本での生活経験が生かされました。 ある高校では、日本の部活動に関する文化や習慣を、外国人にどのように伝えるかについて話し合ってもらいましたが、沢山の意見が出ました。多文化共生は抽象的な概念ですが、身近にいる隣の外国の方が困っていることにどのように寄り添って対話をすれば良いのかを考えることが、第一歩だと思っています。 ―NPO法人の活動を続けていくために大切だと感じていることや、今後どのような団体になりたいというビジョンはありますか。 三坂:先日受講したオーストラリアでのリーダーシップ研修を通じて、変化の多い時代におけるリーダーのあり方を再認識しました。海外のNPOは、政府からの補助金や寄付金を多く集めており、社会における認知度や存在感が日本とは大きく異なることも実感しました。外国人にとっても暮らしやすい日本にするためには、社会に課題を届けられるNPOとして、私たち自身が力をつける必要性があると感じています。また、リーダーシップは、状況や関わる人によって柔軟に変化し、入れ替わるものであることも学びました。チームメンバー一人ひとりが自分の得意分野や、その時々に求められる役割に応じて、リーダーシップを発揮し合えるような組織づくりを心がけていきたいと思います。 ―団体を続けるうえで難しいと感じることはありますか。 三坂:現在のコアメンバーは、SCCを自分の家族のように捉えてくれています。自分一人ではできないことも、SCCで様々なアイデアを出し合い、やりたいことができる、すごく楽しくて生きがいになっていると言ってくれています。 活動を通じて多くの人が集まる一方で、ボランティアをやりたいと思って来てくれた方の思いを汲み取ることができず、その方が離れていってしまったこともあります。外国出身者とともに運営することを大切にしており、ボランティアの受入れについて、多様な人が活躍できる組織としての仕組みづくりが課題です。 ―今後の市政運営や政策立案に期待することについてお聞かせください。 三坂:外国人によって滞在歴や日本語の学習歴も様々なので、支援する際にも一律ではない、柔軟な選択肢を意識した政策が重要だと思います。また、居住する地域によっても構成される国籍の違いから取組も変わってくるのではないでしょうか。 こども青少年局の「子ども・子育て支援事業計画」の策定前に、当事者の意見を聞くグループトーク「横浜での子育てワイワイ会議」があり、2023(令和5)年にファシリテーターとして都筑区、港北区、瀬谷区を回りました。当事者の声を拾っていく、とても良い仕組みだと思いましたが、そのワークショップは日本語でしか参加できず、外国人の声を聞くことができなかったのが心残りでした。そこで、都筑区子育て支援拠点ポポラとともに外国人保護者が意見交換する場を設け、こども青少年局や地域子育て支援拠点から多数のオブザーバーにも参加いただきました。 今回策定された「第3期横浜市子ども・子育て支援事業計画」には「外国につながるこども」に関連する内容も記載されていますので、私たちの地道な活動がこうして政策に反映されるという実感を強く持ちましたし、これからも続けていく必要があると思っています。 (インタビュー実施:2025(令和7)年5月29日) 【関連する事業・取組】 ■国際局「多文化共生市民活動支援補助事業」■ 国際局では、外国人材受入環境整備・多文化共生の推進に向けて、「日本人と外国人の相互理解の促進」、「在住外国人の生活支援」、「地域日本語教育の推進」、「在住外国人の活躍促進」に関する、市民団体やNPO法人の活動への支援を2019(令和元)年度より実施しています。 2019~2023(令和元~令和5)年度の間、23の市民団体やNPO法人が補助金を活用し、横浜の多文化共生の推進に貢献してきました。 NPO法人SCCは、2021(令和3)年度に同補助金申請を行い、地域の母親や多様な文化的背景を持つメンバーによる子育て情報冊子 OYACO(おやこ)制作プロジェクトを実施しました。同冊子の制作にあたっては、外国籍の子育てに関するヒアリング調査、既発行の英語版子育て情報冊子の大幅改訂及び多言語(やさしい日本語)化のほか、冊子のPRイベントも開催し、特に外国人との共生社会をテーマにした人権啓発映画を上映しました。 (2025(令和7)年度までの補助事業) ■経済局「ソーシャルビジネス・スタートアップ講座」■ 経済局では、少子高齢化などの様々な社会的課題にビジネスの手法を用いて解決に取り組むソーシャルビジネスの創業を応援する講座を開催してきました。この講座は、これからソーシャルビジネスをはじめようとしている市民を対象に、先輩起業家や学識者、中小企業診断士、公認会計士等を講師に、ビジネスモデルや経営ノウハウを体系的・実践的に学び、社会課題を解決するためのアイデアをビジネスプランにつなげる連続講座です。講座実施に加え、創業に必要な知識をバランスよく学ぶこと、交流会を通じたネットワークづくりなどを支援してきました。 SCCの三坂代表は、2015(平成27)年の同講座を受講したことで、現在の活動や取組のベース構築、ネットワークづくりにつなげることができました(現在、当講座は終了していますが、新しい技術や視点で地域・生活等に関する課題解決を目指す起業前後の方を対象に、実践的な知識習得を支援するプログラムを展開しています)。 ■国際局「国際交流ラウンジ運営事業」■ 国際局では、市内在住の外国人のための生活情報提供、相談を多言語で実施するとともに、日本語教室の開催、通訳ボランティアの派遣、日本人との交流活動などを行うため、市内13か所に国際交流ラウンジを設置しています。NPO法人や公益財団法人等により運営されており、多くの市民ボランティアが協力しています。 SCCは、広く都筑区民を対象にした国際交流イベントの企画・実施など、国際交流ラウンジと協働して地域課題や社会課題の解決に取り組んでいます。 ■市民局「市民協働提案事業」■ 市民協働提案事業は、市民の皆様及び行政から地域や社会の課題解決のための協働事業の提案を受け付け、所管課との調整・伴走支援、審査により採択された団体へ助成金を交付し、提案が実現されるよう支援していく事業です。団体単独の事業でも、市の単独の施策でもなく、市と市民がともに実施する提案が対象です。市民(団体)・行政が感じている課題感に、団体側・行政側それぞれの得意や強みを生かして取り組みます。 これまでに、発災時の被災者のくらしの復興を目指した市民活動団体間の連携・協働につながるネットワークづくりを目指した取組や、地域療育センター内でのきょうだい児の預かり保育の取組などが採択され、協働による事業実施を実現してきました。 SCCは、「外国人親子と地域をつなぐ図書館でのアウトリーチ活動」事業を提案し、採択され、2025(令和7)年度より費用助成を受けながら国際局・教育委員会事務局とともに協働事業に取り組んでいます。