特定非営利活動法人こまちぷらす こまちぷらすは、子育てに関わるすべての人に対して、子育てに関する団体及び個人の相互の情報交流を支援し、社会とのつながりを見出し子育てに対する喜びを発見、共有し合える場を地域社会と連携し創出することで、孤立しない子育て環境の形成に寄与することを目的とした団体です。 こまちぷらすの運営する「こまちカフェ」では、季節の野菜を調理したランチ提供、各種イベント、ハンドメイド雑貨の販売を通じて、地域と親子がつながる場所を提供し続けています。まち全体で赤ちゃんの誕生をお祝いし、子育てを応援できる社会になることを目指したプロジェクト「ウェルカムベビープロジェクト」には、戸塚区内外の企業や活動団体の気持ちが詰まっています。 こまちカフェは、「ヨコハマ市民まち普請事業」の補助採択を受け、2014(平成26)年に整備されました。2025(令和7)年11月には、カフェ型居場所の運営のほか、出産祝いやワークショップなどの取組が評価されて、こども家庭庁より「未来をつくる こどもまんなかアワード」にて内閣総理大臣表彰を受賞しています。 ●特定非営利活動法人こまちぷらすからのひとこと 全ての視座において2つ以上の取組を実施していますが、団体立ち上げ当初より、主な対象としてきた産前産後家庭(出生数)の減少や共働き世帯の増加等を受け、これまでの居場所を中心としてきた事業も継続しながら、保育園との連携等、リーチアウトも取り入れた活動、学齢期のこどもたちへの取組にも力を入れています。 一方で、産前産後家庭の人数も地域で過ごす時間も減ったことから、その層の孤立孤独の防止や軽減にむけた取組の重要性も増していると考えます。法人がビジョンに掲げる「子育てが『まちの力』で豊かになる社会」に向けては、まちの多様な団体個人との連携、参加の機会については今後より一層増やしていきたいと考え、こども・学生からシニアの方が参加できるボランティアの仕組みや、企業商店と連携したプロジェクトの充実を図っています。 ●interview 特定非営利活動法人こまちぷらす 森祐美子 理事長 大塚朋子 理事 ―最初に、特定非営利活動法人こまちぷらす(以下、こまちぷらす)が活動を始めたきっかけや思いなどについてお聞かせください。 森:自分自身の子育て中の経験と体験、具体的には社会とのつながりが薄く居場所がない、情報が得られないなどから生まれる孤独感がこまちぷらすの立ち上げの原点にあります。 上の子を出産した時の孤独を感じながらの子育てと、一方で、子育てをしたからこそ得られた地域の皆さんとの関わりと支えていただいたこと、私のこの救われた経験を偶然にせず、子育て中のみなさんが安心してまちの中で子育てができるようになったらいいな、いつか自分が携われたらな、と考えていました。 そうはいってもどこから手を付けたら良いのか分かりませんし、当時の定職を手放すことへのためらいもあり、踏み出す勇気がありませんでした。 転機になったのが、2011(平成23)年3月に起きた東日本大震災です。明日がどうなるか分からない、やりたいと思うことがあるなら後回しにせずにやろうと、自分が子育てしてきた戸塚で、子育て中にできた仲間に声をかけ、6人の発起メンバーで一歩を踏み出し、団体を立ち上げることができました。それが2012(平成24)年2月1日のことです。 ―孤立しがちな子育て中のお母さんたちに情報を提供し、気軽に集える居場所という、こまちぷらすメンバーの思いが詰まった「こまちカフェ」ですが、最初から戸塚駅西口のこの場所で始めたのですか。 森:実は、現在の場所に落ち着くまでに数回移転をしています。最初は場所を借りて週に一度カフェをオープンするところからでした。 その後、いろいろなご縁をいただき、2013(平成25)年には、経済局が募集した戸塚駅東口地区でのトライアル事業に応募しました。今の場所よりもだいぶ手狭ではありましたが、店舗経営の経験のないメンバーがカフェの運営を一から学ぶことができ、とてもよい機会をいただいた事業だったと思っています。 ただ、この場所での運営は1年間の期間限定でしたので、カフェの運営をしながら次の場所を探す必要があります。できれば同じ戸塚駅東口のエリアでと思ったのですが、物件探しはなかなか難しく、最終的には戸塚駅西口の今の場所になりました。 ―「こまちカフェ」は、2013(平成25)年度のヨコハマ市民まち普請事業(以下、「まち普請」という)の補助を得てオープンした場所です。当時、まち普請の利用を考えた経緯や背景についてお聞かせください。 森:経済局のトライアル事業終了後を見据えて、戸塚駅周辺で物件を探していた頃、戸塚駅東口を中心とした商店会に所属されている店主の方からまち普請をご紹介いただきました。 一次審査を通過すれば、コーディネーターの伴走支援と検討費の補助、二次審査を通過すれば整備費用に充てられる補助金が出るということをお聞きし、応募することを決めました。 ―まち普請への申請に向けた諸準備と並行して、戸塚駅界隈での物件探し、メンバー間での意識あわせと、この時期はさぞお忙しかったのではないでしょうか。まち普請を活用してみての感想や制度への印象についてお聞かせください。 森:まち普請一次審査の時点では、新しい物件の目途は立っていない状態でしたが、常設型のカフェを作りたいというメンバーの思いを盛り込んだ提案「母親や地域を元気にしていく親子のためのカフェ」をプレゼンテーションしました。 審査会の会場には、現店舗のある戸塚駅西口の商店会(戸塚宿ほのぼの昭和会)に加えて、その前に活動していた戸塚駅東口の2つの商店会の関係者のみなさんも応援に駆けつけてくれて、私たちの提案を後押ししてくれました。 まち普請については、1次コンテストの通過後、個々の提案内容を担当してくれるコーディネーターや市職員の方々の伴走支援、フォローがとてもありがたかったです。 現在の場所にこまちカフェをオープンさせる前の私たちは、目の前に現れ続ける課題を日々解決することに一生懸命で視野も狭くなっていて、メンバー間でのコミュニケーションがおろそかになり、気づけば自分たちが本当にやりたかったことが何だったのか見えなくなっていました。そんなとき、市職員のみなさんが辛抱強く私たちに本当にやりたいことは何か問いかけ続けてくれたことが私たちにとっては有り難く、その後の活動の広がりにつながりました。自分たちが向き合わないといけないことにちゃんと向き合えるような伴走支援は、今自分たちが他団体に伴走する側になってどれだけ難しいことかと実感しています。 まち普請は、市が予算を投じて、市民視点で地域のための場をつくっていくことを支援してくれる枠組みなので、子育て中の人たちだけのためでなく、地域への波及効果、まち全体への視点が重要と何度も伴走支援のなかでお話いただきました。私たちもそれを考えるなかでどんな価値を社会に提供できるのかを明確にすることができたり、メンバー間の意識のすり合わせをしたりすることにもつながりました。 大塚:まち普請の準備をしていたちょうどその頃、私もこまちぷらすの一員として、まずはボランティアから活動を始めました。 こまちぷらすのメンバーになる前は、ママがやっている親子カフェというものに興味を持ち通っていたのですが、実際働いている子育て中のお母さんたちがお子さんをおんぶしながら接客するなど、スタッフのみなさんが生き生きと活動している様子を見て、素敵だなと、自分も一緒に何かやりたいと思い、活動に参加することになりました。 ―行政からの支援や補助以外に、プロモーションやクラウドファンディングなど、活動を支援してくれるファンづくりに積極的に取り組んでいらっしゃいます。取り組む際に意識していることはありますか。 森:プロモーションという意味では子育て中の方がSOSを出しにくい時でも足を運びたくなるよう五感に訴えるような発信や、こまちぷらすは「まちで子育て」を意識しているので子 育て中の方以外の方も足を運びたくなるような仕掛けをしています。こまちぷらすの事業や場に関心をもっていただくため、料理や場所の雰囲気が伝わるようなチラシ・イベントカレンダーの発行やスタッフによる情報の発信など、写真や動画を効果的に活用しています。また、LINE登録などプッシュ型で情報を届けるツールを活用したり、情報が流れていかないように法人のホームページに情報をストックしたりということも意識しています。 一方、寄付を募るクラウドファンディングは、単なる資金調達ではなく、関わっていただいたり関係性を深めたり共感の輪を広げる機会として捉えてスタッフが制度設計しています。寄付者の方とのコミュニケーションとして、寄付してくださった皆さんの似顔絵をカフェに掲示し、交流会を開催するなど、私たちと寄付してくださる方一人ひとりとの双方向の関係づくりを大事にしています。 ―企業や他の団体と協働したウェルカムベビープロジェクトに代表されるように、協働・共創も意識しながら取組を進められています。詳細についてお聞かせください。 大塚:地域のこどもの誕生を、まちで祝福しようと始めたのが「ウェルカムベビープロジェクト」です。公民連携の窓口「共創フロント」でヤマト運輸株式会社の方と出会ったことがきっかけとなり生まれたもので、当時、まち普請で市域に広まっていた拠点や居場所の運営を支援しようと、まち普請でも担当してくださった市職員の方からご紹介いただきました。 プロジェクトの理念に協賛いただいた企業のみなさまから提供いただく子育てグッズのほか、地域のボランティアの方が縫ってくださった背守りや、手書きのメッセージカードなど、いずれも思いやぬくもりのある育児用品の数々を、ヤマト運輸の方が各ご家庭に運び、届けます。 「子育てをまちでプラスに」の合言葉のとおり、こまちぷらすと戸塚のまちで暮らすみなさんと企業とが協働して取り組む事業になりました。戸塚区内で毎年生まれる赤ちゃんの約2人に1人にお届けしているほか、実施地域も市内の鶴見区、茅ケ崎市、川崎市川崎区、千葉県松戸市へと広がっています。 ―最近は、未就学児に留まらず、小学生以上のこどもたちの支援、居場所づくりにも取り組んでいるそうですね。先ほど拝見させていただいたカフェ内に設けられたhaco+(はこぷらす)には、小学生が手作りの雑貨を出品されていました。 大塚:私たちの活動のベースには、「子育てがまちの力で豊かになる社会を実現する」というビジョンがあります。このビジョンに照らして考えれば、幼少期のみならず、小学生や中学生なども私たちの取組の対象となります。 こどもたちがカフェでの接客等を体験する「こどもカフェ店員」というプログラムがあるのですが、そこに小学生が参加するほか、夏休み期間等には、中学生がお皿洗いやお子さんの見守りのボランティア体験等に来てくれます。こどもたちが多くの大人と出会い、学びながら成長できる機会になっています。ふらりとカフェに立ち寄って、片付けを手伝うことを楽しみにしてくれる子もいます。戸塚区で暮らしているみなさんにとって、こまちカフェが居場所や様々な世代との交流の場になると嬉しいですね。 ―事業を支えてくれる新しい人材を生み出しているのは、ボランティアの登録制度「こまちパートナー」だそうですね。今日も、赤ちゃんの面倒を見てくれるパートナーがいらっしゃいました。 大塚:こまちパートナーに登録いただいている方の中には、保育園のパート勤務日の合間にこまちカフェに来て、子育てボランティアに取り組んでくださる方もいらっしゃいます。今日も、カフェを利用しているママの食事の間、赤ちゃんを抱っこしてくれていました。 こまちパートナーには、毎月開催されている説明会へ参加いただき、私たちとの面談を経て登録となります。スポットで参加いただけるボランティア、無理なく続けられるボランティアの存在は、こまちぷらすの心強いパートナーです。 ―神奈川県内の他団体支援に加え、全国各地の団体支援や居場所づくりの支援にも取り組まれていらっしゃいます。いわゆる中間支援と言われるものへの取組についてお聞かせください。 森:2012(平成24)年にこまちカフェを開店して以降、地元の戸塚区に根差した子育て支援の取組に挑戦してきましたし、これからも実践者であり続けたいと思っています。続けることができたのはいろいろな方々に支えていただき、私たちの力を引き出してもらう機会にも恵まれたからだと思っています。このご恩をこれから事業を立ち上げようとしている方々に今度はお送りできればと思い、現在は横浜市内外の個人や団体の方によるカフェ型居場所の立ち上げ支援にも取り組んでいます。2018(平成30)年からは、居場所づくりのノウハウを伝える連続講座を開催し全国各地から受講いただいたほか、一昨年と昨年度は岡山や長野、北海道等に三~四か月ずつ通い、講座を開催して各地でカフェ型の居場所の立ち上げ支援をしてきました。これまでの受講生は百人を超えます。 今年度は、ゆるやかなつながりが広がる居場所づくりをテーマにした連続講座を神奈川県からの委託事業として企画・実施しています。私たちの経験を県内のみなさんにもご紹介し、背中を後押しできるような講座を目指しています。 伴走支援に取り組む際には、現在の場にこまちカフェを立ち上げる時に私たち自身がそうしてもらったように、見守り続けるような支援の実践を心がけています。 ―こまちぷらすでは、2030年のビジョンを絵で示しています。大きな木と葉っぱ、世界中の居場所とつながるなど、優しい絵と高い理想が印象的です。改めて、将来展望についてお聞かせください。 大塚:こよりどうカフェのオープン、ウェルカムベビープロジェクトの展開、オンラインショップなど、2030年のビジョンのうち、現時点で半分ぐらい達成できた実感があります。今後は、こまちスクール構想などを通して学齢期のこどもたちがまちの面白い大人たちや自分自身と出会いながらやってみたいことにチャレンジできる機会をつくっていきたいと思います。 森:私たちは、子育てが地域の当たり前な風景になる社会の実現を目指しています。2030年のビジョンの絵の後ろにはレンコンの模様をしのばせていますが、レンコンは切るところ、断面によって空いている穴の位置が変わります。こまちぷすとしてはフランチャイズ展開をするのではく、ほかの地域でも、その地域に住んでいる方々がその土地の歴史や文化に合わせて居場所を立ち上げやすい環境づくりや「まちで子育て」がしやすい土壌づくりをしていきたいと考え、その展開方法(スケールディープ)を表しています。地域ごとに異なる場や活動が生まれて、お互いがゆるやかに繋がり合えるようなネットワークが理想です。 特に郊外部における孤立、また居場所や活動を通した人と人との関係性の再構築は、日本国内のみならず、海外でも注目度の高いテーマの一つで最近は海外からの視察も増えています。 国内はもちろん国を超えて視点や知見を交換しあって、学び合える関係性をつくっていきたいと思います。 (インタビュー実施:2025(令和7)年7月28日) 【関連する事業・取組】 ■都市整備局「ヨコハマ市民まち普請事業」■ 都市整備局が所管する「ヨコハマ市民まち普請事業」は、市民の皆さんが主体となって行う、地域の課題解決や魅力向上のための施設整備を伴うまちづくりに対して横浜市が支援を行う横浜市独自の制度です。市民が共に汗をかいてまちづくりを行う意味を込めて「普請」という言葉が用いられ、事業のキャッチフレーズは「私たちのまちを 私たちがつくる きっとまちが好きになる。」 二段階の公開コンテスト、市職員による伴走支援、整備事例集等の発行、NPO等との協働事務局といった大きな特徴を持ち、創設10年を迎えた2014(平成26)年には「新たな公共事業のあり方を示唆する独創的・画期的なもの」と評され、日本都市計画学会の石川賞を受賞しました。 こまちぷらすが運営するこまちカフェは、ヨコハマ市民まち普請事業に採択され、2014(平成26)年度に整備されました。 ■戸塚区「とつかの子育て応援ルーム とことこ」■ 戸塚区役所内にて、子育て支援の情報提供や生後6か月から小学生未満のこどもの一時預かり、戸塚駅周辺で利用できるベビーカー無料貸出、ミルク用のお湯の提供、体重計貸し出しなどを行っている施設です。 こまちぷらすは、情報コーナーの運営を担当しており、各家庭のニーズにあった、子育てに関する様々な情報を情報コンシェルジュが案内しています。 ■市民局「特定非営利活動法人の認定・指定」■ 市民局では、特定非営利活動促進法(NPO法)等に基づき、所轄庁として、特定非営利活動法人(NPO法人)の認証、認定、指定、監督等の事務を行っています。 こまちぷらすは、NPO法等に基づく認定を受けた、認定NPO法人です。 ■政策経営局「共創フロント」■ 政策経営局では、民間事業者の皆様からの公民連携に関する相談・提案をいただく窓口「共創フロント」を開設しています。企業の皆様からのご提案については、共創推進課が提案者と市役所各部署との橋渡し役を担い、実現に向けた検討や調整を行っています。共創推進事業本部が設立された2008(平成20)年度から2024(令和6)年度までの間に、571件の公民連携事業が実現しました。 こまちぷらすが実施しているウェルカムベビープロジェクトは、ヤマト運輸株式会社からの共創フロントへの提案がきっかけとなり生まれた事業となります。こどもが誕生したことを、地域やNPO団体および企業が一体となってお祝いするために、出産祝いキットの配達をヤマト運輸株式会社が手掛けています(2015(平成27)年度から)。戸塚区から始まった当該事業は、以後、鶴見区や茅ケ崎市、川崎市川崎区、千葉県松戸市へと広まっています。