株式会社スリーハイ 住宅地と工場が隣接する都筑区東山田準工業地域の企業として、産業用電気ヒーターをはじめ「熱」に関わる幅広い製品・サービスを提供する株式会社スリーハイ。同社は、経済局が認定している横浜型地域貢献企業のプレミアム企業に選ばれています。スリーハイが販売している産業用ヒーターは、ホテルのビュッフェ料理を温めるヒーターやアミューズメント施設のレールを温めるヒーターなど、市民生活を支えている商品です。 東山田の準工業地域で操業する複数の企業が連携して自社を開放し、近隣の小学生や住民を対象に行う工場巡り「こどもまち探検」の企画実施や、地域住民と工場関係者が交流できるカフェ&ファクトリー「DEN」の運営、準工業地域に親しみを持ってもらうためのエリアマップや掲示板の整備など、地域コミュニティとの共生や協働を意識した取組を多数手がけています。 同社では、「ヨコハマ市民まち普請事業」や「地域緑のまちづくり事業」、「横浜型地域貢献企業」、「脱炭素取組宣言」、「横浜市SDGs認証制度Y–SDGs」など、様々な市の制度を活用しながら、地域協働に取り組んでいます。 ●株式会社スリーハイからのひとこと スリーハイは、多様な主体との協働や共創を強みとし、地域・教育機関・企業・NPOなど幅広い関係者と連携した活動を継続的に行っています。工場見学ツアー「こどもまち探検」、交流イベント、プログラミング教室、高校生のアイデア実用化など、地域とつながる多様な取組を実施しています。また、環境配慮型製品の開発や再生可能エネルギーの導入、地産地消やアップサイクル活動を通じて、脱炭素社会の形成にも積極的に取り組んでいます。 さらに、外国人学生のインターン受入れや多文化体験イベント、健康づくり教室や地域安全の取組、コミュニティカフェや不登校児童向け教室などの居場所づくりも進めています。加えて、工場見学や中高生の職業体験、探究学習などによる次世代育成にも力を入れ、地域住民が気軽に参加できるイベントを通じて、多世代・多様な人々が交流できる持続可能な地域づくりに貢献しています。 これからも、地域とともに歩み、持続可能な未来づくりに取り組んでまいります。 ●interview 株式会社 スリーハイ 男澤誠 代表取締役 堀江美穂 コーポレート部門リーダー 徳江彩貴 経営企画室室長 ―最初に、スリーハイの事業内容についてお聞かせください。 男澤:産業用のヒーターを製造・販売している会社です。市民のみなさんの暮らしの身近なところにも使われているのですが、商品自体の販売は法人や企業向けに展開しています。熱を発するニクロム線をゴム製のシート状のもので包み熱を発する商品で、水道の配管やETCゲートの凍結防止や融雪、防犯カメラや洗面台の曇り止め、半導体の製造ラインなどにも弊社のヒーターを使用いただいています。変わったところでは、ギター製作の際に材料となる木を曲げるためのヒーターなど、ニッチな分野のものも製造販売しています。いずれの製品もオーダーメイドの少量多品種で、丁寧なものづくりが弊社の強みです。 とはいえ、関東近郊では夏場は高温多湿となりヒーターの需要が下がるので、販路拡大のため、昨年、札幌にも営業所を作りました。タイのバンコクや台湾の展示会に出展するなど、日本のみならず、海外にも目を向けて事業を展開しています。 我々の製品が社会や市民に貢献しているという自負はありますが、商品そのものが法人向けということもあり、地域の皆さんには馴染みがない。 そこで、東山田の工場見学を中心に「こどもまち探検」を企画し、近所の小学生や住民の皆さんと交流できる取組を10年以上前に始めました。 ―横浜型地域貢献企業では、主に小学生を対象にした、「こどもまち探検」の取組が評価され、2017(平成29)年度にプレミアム表彰企業の認定を受けています。近隣の小学校と連携して実施しているまち探検について、お聞かせください。 男澤:地元の東山田にも魅力的なものづくり企業があることをこどもたちに伝えたいと思ったのです。 こどもまち探検の工場見学では、工場内で火花が散る溶接の様子、独特なにおい、工場内特有の熱気なども間近で感じてもらい、こどもたちの五感に訴えることを大切にしています。初めて見るものに、こどもたちの目はキラキラしていますし、将来の職業を選ぶ一つの選択肢として製造業が入るかもしれない、そんな期待も持てる内容です。 ―2016(平成28)年度のヨコハマ市民まち普請事業(以下、 「まち普請」という)で整備された、エリアマップや情報掲示板などは、2025(令和7)年度のパンフレットでも、企業がまちの魅力づくりを提案したユニークな取組として紹介されています。申請までの経緯を教えてください。 男澤:弊社が事業活動をしている東山田地域は、工場などを持つ企業と住宅地が密接している準工業地域で、いわゆるまち工場が集積するものづくりの街です。企業と住居が近い距離にあるからこそ、においや煙、音などに配慮しながら、住民の皆さんに理解される、時にはエールもいただけるような良好な関係が欠かせません。わたしたちも地域に溶け込んでいかなければいけない。 まち普請に「つづきっず、はい!」というグループでエントリーしたのは、東山田で暮らす住民の皆さんも企業も、互いに顔の見える関係を作りたいと思ったからです。東山田の地域コミュニティづくりを横浜市にも応援してもらいたいなと。 ただ、1次コンテストの時点では、市民よりも、企業としての立場からの提案に近くなってしまい、審査員の方から「それは、男澤さんの会社の事情でしょう。御社が、御社の責任で取り組めばよいのでは?」と厳しいご指摘がありました。幸い審査の会場では、同席いただいた町内会や他の企業の皆様からも応援コメントをいただけたので、本気で取り組もうとしているグループだと認められ1次審査を通過することができました。 ―2次コンテストは約8か月後。この準備の間に何か変わった点や気づきはありましたか? 男澤:2次コンテストまでにはコーディネーターがついて、提案内容のブラッシュアップを図るのですが、この話し合いに参加していた高校生が「男澤さんたちの提案は、課題を解決することを考えているけど、住民に近い場所で会社を経営し、一緒に働き、暮らしているということは課題ではなく、むしろ、東山田の魅力なのでは?」と言ってくれて、我々もはっと気付かされました。 企業の近くに住居があるということは、近所の住民が東山田で働けば、電車やバスに乗らずに歩いて通勤ができるということです。防犯面でも、企業がまちに溶け込んでいることで、日中は企業が、夜は住民が地域を見守ることができる、これもまちの魅力の一つですよね。 1次コンテストの課題解決から、2次コンテストではまちの魅力づくりに、視点を変えて提案をしたのですが、またしても審査員からは「企業なのだから、参加している企業が自分たちでお金を出し合ってはどうか」と言われました。 我々は企業という立場ではありますが、東山田というまちを大切に思っています。ここではあえて「企業市民」という表現を使わせてもらいますが、仕事とはいえ、我々も東山田という地域に通い、毎日8時間働いているので、住民の方に負けない愛着があります。まち普請という公的な制度を、企業である我々が使う意味はそこにあるのではないかということを、2次コンテストの場ではアピールしました。 提案内容の一つにあるエリアマップですが、自分たちの会社だけではなく、東山田で操業している地元企業や工場を幅広く紹介し、魅力を分かりやすくこどもたちに伝えるという目的があります。これは、市民活動だと私は思います。 ―まち普請の提案内容にあるエリアマップや情報掲示板、ポイントアートと、まち探検での活用についてお聞かせください。 男澤:以前は、東山田の企業を紹介した大きな地図がありました。書いてある情報は古く、文字も薄くなっていましたが、まち探検の時には、その地図を利用していました。その地図がある日突然、撤去されたのです。 東山田の広い工業団地を、小学生にわかりやすく紹介するために大切な企業紹介の地図です。まち普請ではこの地図をエリアマップとして復活させるほか、イベント案内やまちの情報を発信できる掲示板の設置、地域を案内する際の目印となるポイントアートといったアイデアも盛り込みました。それらが整備できたことで、こどもまち探検がよりスムーズに、楽しくできるようになりましたね。 エリアマップはまち普請を利用して作りましたが、その後のメンテナンスには、近所の小学生にも協力してもらっています。校外学習の一環として、こどもたちが東山田の企業を取材して回り、地図で示されている場所に会社があるかどうかを確認してくれています。 ―スリーハイも認定されている横浜型地域貢献企業のような、行政による認定や表彰には、どのような効果があると捉えていらっしゃいますか。 男澤:弊社に限らず、市内企業はみなさん、こういった行政の制度を上手く活用して事業の発展につなげようと考えていると思います。企業ブランディングやイメージ戦略のような取組にも近いかもしれません。企業価値を高めることにつながり、経営者の視点から見ても価値あるものと考えています。 ―身近な省エネ活動を含む脱炭素化に取り組むことを宣言していただく「脱炭素取組宣言」。スリーハイにはいち早く宣言いただきました。脱炭素に取り組む際に意識していることについてお聞かせください。 男澤:大事なことは、社長だけが取り組むものではなく、社員の理解と協力を得ながら取り組むことだと考えています。例えば、SDGsの認証では、弊社では担当制を導入して、社員への浸透に注力しました。 德江:まず神奈川県の認証を受けようと進めました。SDGsは弊社としても、私個人としても初めての取組だったので、一から勉強する必要があり、大変だった半面、面白さも感じました。 こどもまち探検のような、社会貢献活動にはこれまでも取り組んできましたし、CSR活動の実績にも自負があったのですが、改めて、SDGsの枠組みに位置づけようと思うと、これがなかなか難しい。 認証手続では、社外の人が企業の社会貢献活動をどのような視点で評価するのかということを形として見せていただけたので、評価を得るための工夫、より良いものにしていくための考え方などを、しっかり理解することができました。SDGsの認証手続を進めながら、社会貢献活動に対する行政のサポートも受けた感じがしました。その後、Y-SDGsにもエントリーしたんです。 男澤:社員の皆さんにもSDGsをより身近に感じてもらえるよう、私やパートさんも参加するSDGsカードゲームも行いました。ゲームを通じてSDGsへの理解が深まる、あれは良かった。認証に際しては、社員向けの研修会もいち早く始めました。研修内容や進め方などの情報は行政が提供してくれますので、進めやすいです。最近は、プラスチックリサイクルの話題にも注目が集まっていますので、研修を充実させています。 ―横浜市の企業向けの支援制度、地域活動の支援やコミュニティ支援などの各種政策について、ご要望はありますか。 男澤:脱炭素関係で言えば、LED照明器具への変更、省エネ型のエアコン導入などへの助成はしっかり準備されている印象です。 一方、脱炭素の取組をデータとして集計するシステムの利用料といったものに対しての補助などはないので、今後は、こういった負担への助成があると助かります。 ただ、支援制度は、企業の業態によってもニーズが異なるので、すべての企業が満足することは難しいとも思います。 ―現在、市内には13万人を超える外国人の方が住んでいらっしゃいます。外国人の雇用についてはどのようにお考えですか。 男澤:オランダからの留学生をインターンとして受け入れてはいますが、今のところ外国人の雇用はしていないです。 堀江:外国の方と一緒に働くことを、今はまだイメージすることは難しいですね。短期間のインターン生であれば、多少日本語に不安があっても乗り切れますが、社員となるとコミュニケーションのためにも日本語は堪能であってほしいですし、弊社の企業風土に合うかどうかも気になります。 德江:自分たちがグローバルな視点を持って外国のスタイルに合わせるのか、その方に日本の方式に合わせてもらうほうが良いのか迷いますね。お互いの価値観の調整が必要だと思います。でも、新しい風が入るのは良いことかな、とは思います。 ―スリーハイは、近隣の農家や自治会町内会、地域ケアプラザなど、多様な団体と連携しながら地域課題の解決に取り組まれています。協働を進めるために意識していることはありますか。 男澤: まち普請とは別に、2017(平成29)年に、地域に開かれた工場として、「DEN」をオープンしました。自社の工場の一つであると同時に、会議や打ち合わせ、ものづくりをテーマとしたワークショップ、イベントなど、様々な用途で活用いただける、コミュニティ活動の拠点としての役割を持ち、工場と住民の交流も深まっています。もちろん、まち探検にも活用しています。そのDENを中心にして多くの皆さんと連携、協働していきたいと思っています。 堀江:DENはもともとコワーキングスペースとして利用できるように、プリンターやキッチン、Wi-Fiなどの設備を整えています。 男澤:今では、市民力を生かした地域子育ての場としても活用されています。また、キッチンを貸し出すレンタルキッチンがご縁となって、3年前からは、東山田に暮らす「はまふぅどコンシェルジュ」の方と協働して、「東山田食堂&シェアごはん」という取組も始めました。食材は近所の農家の方や食品メーカーの方に安価でご提供いただき、地産地消を意識。東山田で働く方や暮らす皆さんへのお弁当販売だけでなく、東山田地域ケアプラザとも連携して、お困りごとを抱えた方へお弁当を届けるといったこともしています。 直接本業の売上げにはつながらない取組ではありますが、企業としての信頼価値は上がっているのではないかと思っています。この場所で仕事をさせてもらうためには地域からの信頼が大事だし、顧客からも信頼されなければ売上げを見込むことは難しい。信頼価値を高めることはとても大切なことだと思っています。 自分が何かをしたいときには必ず相手がいます。その相手がどう思うかを考えながら行動できないと、その先につながってはいかない。地域の皆さんの少しずつの力で成り立っている地域活動を支えること、場を提供することも、企業の役割のひとつと考えています。 (インタビュー実施:2025(令和7)年6月19日) 【関連する事業・取組】 ■都市整備局「ヨコハマ市民まち普請事業」■ 都市整備局が所管する「ヨコハマ市民まち普請事業」は、市民の皆さんが主体となって行う地域の課題解決や魅力向上のための施設(ハード)整備を伴うまちづくりに対して横浜市が支援を行う横浜市独自の制度です。二段階の公開コンテスト、市職員による伴走支援、整備事例集等の発行、NPO等との協働事務局といった大きな特徴を持ち、創設10年目を迎えた2014(平成26)年には「新たな公共事業のあり方を示唆する独創的・画期的なもの」と評され、日本都市計画学会の石川賞を受賞しました。 スリーハイが主導した「東山田工業団地に案内板、掲示板、会社マークを設置」の事業は、ヨコハマ市民まち普請事業に応募し、2016(平成28)年度に採択されました。 ■みどり環境局「地域緑のまちづくり事業」■ 横浜市は「地域緑のまちづくり事業」を通じて、住宅街や商店街、オフィス街、工場地帯などの様々な街で、地域にふさわしい緑を増やす計画の策定と、その実現に向けた取組を支援しています。「緑や花でいっぱいのまちをつくりたい」という地域団体から緑のまちづくりの提案を募集し、選考を通過した団体と市が協定を締結した上で、助成金を交付しています。 スリーハイが参加する美里橋サークルは、2016(平成28)年度から2018(平成30)年度にかけて、準工地域フラワーロードの緑化計画に取り組みました。 ■経済局「横浜型地域貢献企業」■ 横浜市民を積極的に雇用している、市内企業との取引を重視しているなど、地域を意識した経営を行うとともに、本業及びそのほかの活動を通じて、環境保全活動、地域ボランティア活動などの社会的事業に取り組んでいる企業等を認定し、その成長・発展を支援する制度です。 スリーハイは、近隣の小学校と連携して開催する「自分たちのまちを知るこどもまち探検ツアー」の取組が評価され、2017(平成29)年度、横浜型地域貢献企業プレミアム表彰企業に認定されました。 ■経済局「脱炭素取組宣言制度」■ 横浜市では、中小・小規模事業者を対象に、身近な省エネ活動を含む脱炭素化に取り組むことを宣言していただく「脱炭素取組宣言」を創設しています。宣言された事業者は、横浜市ウェブサイトでの企業名公表のほか、省エネ診断の受診費用の補助、省エネ・創エネに資する設備を導入する際の費用補助、横浜市総合評価落札方式での加点など、横浜市からの支援を受けることができる制度です。 2025(令和7)年10月24日時点で、7000を超える事業所が宣言しており、中小企業の脱炭素化の取組を後押ししています。 ■脱炭素・GREEN×EXPO推進局「横浜SDGs認証制度〝Y-SDGs〟」■ SDGs達成に向けて取り組む事業者を横浜市が認証し、持続可能な経営・運営への転換、新たな顧客や取引先の拡大、さらには、投資家や金融機関がESG投資等の投融資判断への活用につなげるものです。市内外の企業や各種団体、NPO法人、市民活動団体など、SDGs達成に向けて積極的に取り組む事業者が対象となり、「こどもまち探検」や「DEN」にも取り組んでいるスリーハイは上位Superiorの認証を取得しています。