特定非営利活動法人 さくら茶屋にししば 特定非営利活動法人さくら茶屋にししばは、活動に賛同する団体や個人との協力により、地域住民を対象に、世代を超えた交流を促進することを目的としている団体です。安心・安全・やさしさと楽しさ溢れるまちづくりに貢献する活動を通じ、生き生きと心豊かに暮らせる地域づくりに寄与することを目的にしています。 ランチや惣菜、コーヒーの提供、小物販売を中心にしているさくら茶屋、こども&キッズコーナーも併設しているさくらカフェ、高齢者の健康づくりや認知症カフェ、おしゃべり会を企画開催するほっとサロン事業と、当法人は地域コミュニティの活性化につながる取組を多種開催しています。 さくら茶屋は、「ヨコハマ市民まち普請事業」の整備助成金の交付を受け、2009(平成21)年度に整備されました。 ●特定非営利活動法人さくら茶屋にししばからのひとこと ほとんどの視座で2つ以上の活動をしています。 さくら茶屋は、地域住民の交流、支え合い活動には「食」を囲んでの居場所が最適と考え、カフェを立ち上げました。以後15年,20を超すイベントにも「食」を絡めながら多世代交流に力を入れています。同じ商店街に茶屋(和食中心)とカフェ(洋食中心)の2店舗を構えたことで、多世代の方々に来ていただくこととなり効果的でした。コロナ以降はイベント開催に制約が多くなりましたが、地域の実情にマッチした内容を重視し、取り組んでいます。 地域に根付いた居場所を絶やさぬよう息の長い活動をめざしますが、課題としては、現役世代をはじめとする新しい力が活躍できる環境や体制づくりです。地域の活性化も大切な視点で、現在、自治会経験者や学童の方々とも連携した取組も行なっていますが、地域で活躍する個人や団体とのつながりを広げる活動も重視していきたいと思っています。 ●interview 特定非営利活動法人 さくら茶屋にししば 岡本溢子 理事長 阿部茂男 事務局長 ※役職はインタビュー時点のもの ―さくら茶屋の活動を始めたきっかけや経緯についてお聞かせください。 岡本:きっかけは、いろいろお世話になった地域に恩返しをしたいという思いからでした。小学校教員を退職した20年ほど前、西柴団地のボランティア団体「西柴団地福祉サービス」に参加して、月2回のお茶会や2か月に1回の食事会などを開催していました。でも、なかなか参加者が増えていかない、来てほしい人が来てくれないので、もっと多くの人に気兼ねなく来てもらいたい、そんな思いが強くなっていきました。地域のみんなが気軽に来られる居場所、そう思った時に、お店を作るという目標に辿りつきました。 ―最初から、ヨコハマ市民まち普請事業(以下「まち普請」という。)の利用を決めていたのでしょうか。 岡本:いいえ。お店を作ろうとは思いましたが、資金をどうするかが問題で、どうしたら良いか悩んでいるときに、偶然、まち普請のことを知りました。それが2009(平成21)年2月のことでした。そこから一緒に活動してきた仲間に声をかけて団体を結成して、1次コンテストが6月の初めくらいだったので、もう一生懸命準備して申請にこぎつけました。審査を通過した要因は、わたしたちの情熱が審査員に伝わったからかもしれません。 ―2次コンテストまでの8か月間は、どのように準備されたのですか。 岡本:いろいろ話し合い、ボランティアを募集しよう、地域の方の意見を聞いてみようということになって全世帯(1600世帯)にアンケートを配ることにしました。封筒には、相手のお名前を一人ひとり手書きして、思いを乗せながらポスティングしました。そのかいあってか、回答率は、約20%。回答者の中には、ボランティアをすると申し出てくれた方が24名もいて、嬉しかったですね。事務局長の阿部さんはその中の一人です。パソコンでの資料づくりに長けていて、数字にも強い阿部さんの存在は本当に心強かったです。 2次コンテストでは、家賃支払いへの対応、売上げの確保といった実現性が問われます。どうやったら収入を得られるか考え、「朝塾」というものがひらめきました。そのほかにも、お惣菜やお弁当の販売収入などを見込んで、収支が合うように計画書を整えました。2010(平成22)年2月に無事選考されました。良かったと息つく間もなく、少しでも早く開店できるように、一つ一つ頑張って2010(平成22)年5月17日にオープンすることができました。 ―さくら茶屋は、近隣の人たちを巻き込むこと、仲間を増やすことが上手と聞きます。このあたりの極意について教えてください。 岡本:地域の人たちが応援してくれて、お客さんにもなってくれたし、ボランティアにも参加してくれました。ボランティアも最初は24人でしたが、さくら茶屋に来る人たちみんなに声をかけて、多い時には80人くらいいましたね。人を大切にするということを大事にしたんです。その人の良さを認めて、その人ができることをやってもらう、という感じなので、あまり辞める人はいないです。最近は共働きの方が増え、定年引上げなど、時代の変化も感じています。 ―今でこそ市域全体に広まっているコミュニティカフェですが、さくら茶屋が提案申請した2009(平成21)年度は、まだ創成期だったと思います。前例もない中でのまち普請への申請。相当なご苦労があったのではないですか。 岡本:確かにまち普請でコミュニティカフェとして選定されたのは、さくら茶屋が第1号でしたが、実現できたのは、横浜市の伴走支援が素晴らしかったこともあります。建築家の櫻井淳氏からコーディネーターとしてアドバイスがありましたし、都市整備局の職員も1人、付きっきりで対応してくれました。何も分からない中でしたので、ありがたかったですね。 ―さくら茶屋が先駆けとなって、現在、金沢区内には、地域による皆さんの居場所としてのコミュニティカフェが10か所あります。金沢区内への広がりをどのように感じられますか。 岡本:まち普請だけでなく、金沢区には独自の補助事業(金沢区空き家等を活用した地域の「茶の間」支援事業。以下「茶の間事業」という。)があるのですが、これはさくら茶屋の活動が評価されたからできたと思っています。地域に必要な活動に対する補助を役所が用意してくれるのはありがたいですね。さくら茶屋でも茶の間事業を利用しました。 また、区内のコミュニティカフェの運営者を集めて情報交換を行う「つながりステーション」というものも区役所主導で行っていて、もう10年続いています。これまで、行政や役所というものにあまり良い印象を持っていなかったのですが、人が替わっても仕組みとしてあれば継続する、役所にはこういう良い面もあるのかと少し見方が変わりました。 ―先ほど、地域の全世帯にアンケートを配布したというお話がありましたが、そもそもなぜアンケートを行ったのでしょうか。 阿部:西柴団地に暮らすみなさんの声・ニーズをきちんと聞きたいと思ったからです。アンケートには思いがけず多くの回答をいただき、とても驚きました。回答の半分くらいには具体的な意見も記述されていて、「まちの居場所」というものへの関心の高さを確認することができました。ここに書かれている地域のみなさんの声に応えていけば、やっていけるという手ごたえがありましたね。中には賛同とは言い難い意見もありましたが、スタッフのやる気は、それをものともしないぐらいすごかったです。 ―アンケートに表現された地域の皆さんの声を受け、具体的に取り入れたもの、実践したものはありましたか? 阿部:みなさんの意見を採り入れていたら、体操教室や英会話教室といったイベントなどの活動メニューが25もの事業になりました。やり始めるとその活動に長けた方が現れて、またスタッフが増えていくというようなこともあります。 当初はアンケートという手法を取りましたが、さくら茶屋を利用いただいている方、地域の方の声を聴くこと、対話をすることが大事だと感じています。そういったことの積み重ねが今につながっていると思います。 ―食事や飲料の提供、ボランティア募集などのアイデアに加え、運営を長く続けるために、市の補助制度も上手に活用されています。まち普請や茶の間事業のほか、利用している市の支援制度にはどのようなものがありますか。 阿部:コロナ禍で苦労していた市民活動を支援するために、市民局が募集していた市民公益活動緊急支援助成金を利用しました。 オンラインツールの費用が支援される助成金を活用して大型モニターを購入。これまでさくら茶屋に来ていなかった方たちともつながることができました。機会があってルーマニアのこどもたちと西柴小学校のこどもたちがオンラインで交流したこともありましたし、アメリカにいるご家族が参加する学習会を企画したこともありました。 岡本:今でも、サッカー教室の反省会や保育園の卒園式後の懇親会などに大型モニターは活躍しています。みなさん新しい発想で活用してくださって、使い方はいろいろあるのだなと感心しています。 あとはサービスB(サービス・活動B等補助事業)ですね。さくら茶屋やさくらカフェという場所を維持するための家賃に補填できるので、とても助かっています。 ―自治会町内会、NPO、市民活動団体、公園愛護会など、いわゆる地域コミュニティを支えている団体は一様に、担い手不足、世代交代に課題を抱えています。新しい担い手を増やすための工夫や活動の継続性を高めるための工夫などもお聞かせください。 岡本:チラシや掲示板を通じて募集もしていますが、何よりも、直接声をかけることを意識しています。ボランティアスタッフが自分の友達を誘ったり、さくら茶屋に来店いただいたお客さんに直接声をかけたりして、仲間を増やしています。もちろん断られるときもありますけれど。店舗を持つ活動の強みでしょうか、開店していれば、ちょっと覗いて行ってもらえますから。また、募集するだけではなかなか来てもらえないので、日付を設定して説明会も行うようになりました。 阿部:どんなことをしているのか実際に見てもらうこと、見せることが重要だと思っています。こういうふうにやっているなら自分もできるかなと思ってもらえますし。そういう意味では地道な広報活動は重要ですね。口コミや宣伝で、「素人がやっていることでこれだけの人が集まっている」ということを見せることが大切だと思います。 岡本:ただ最近は、さくら茶屋でも新しくボランティアに参加してくれる人を見つけるのがほんとうに難しくなりました。要因には定年の延長や共働き世帯の増加などもあると思いますし、隣近所やご友人とのお付き合い、考え方の変化なども関係しているのかなと思ったりしています。 ―15年以上にわたり、さくら茶屋の運営を継続されてきた今だからこそ見える、今後の将来展望についてお聞かせください。 岡本:市も区も地域住民も、みんなが応援してくれているさくら茶屋ですが、わたしたちは地域住民とわたしたちの協働作業だと思っています。地域住民の協力なしでは、ここまでのことはできなかった。 阿部:アンケート一つとっても、非常に協力的です。だからこそ、そこに書かれている地域の方の要求を一つ一つ実現して、叶えていけば失敗はないと思いました。 岡本:どこまで続けられるのかというと、正直不安な面はあります。どうしてもボランティアの高齢化は否めない。 ただ、生きがいを感じてボランティア活動をしている方が多いので、できるだけ長く続けたいと思っています。近日開催の総会(2025(令和7)年6月15日開催)で、わたしは理事長を交代するのですが、活動を辞めるわけではありません。自分ができる範囲の中で活動するという形で今後も関わっていきます。 阿部:高齢のスタッフにしても、地域のためにやっていることが地域から喜ばれているので、そこにやりがいを感じて生涯現役のように続けるという方もいると思います。そこに若い人たちをどう巻き込んでいくか、というのが今後の大きな課題です。現役世代の若い方にいきなりこの活動に入ってほしいと言っても、それは難しいと思います。でも、例えばこども向けのイベントを開催して、一緒に参加している保護者と私たちが結び付けば、そこから新しいつながりができていく。まずは、つながることからです。活動を始めてみれば考え方が変わる人もいるので、そこはあきらめずに根気強く働きかけていきたいと思います。 岡本:さくら茶屋を始めた当初は、どのくらいの頻度で開店するものか分かっていなくて、休まないものだと思っていました。月曜日から土曜日まで祝日も含めてずっと開けていたら、自分自身が疲れてしまったため、今は自分が無理なくできるペースで参加しています。 お店としても、コロナ禍前は店内飲食が中心でパーティメニューなども提供していましたが、コロナ禍以降はテイクアウトが中心になっており、店内飲食に戻っていません。準備をする側も無理なく続けるには、状況に応じて少しずつ形態を変えていく必要がありますね。今後は、利用者が自分たちで必要なものを準備する場所貸しなども考えていきます。 (インタビュー実施:2025(令和7)年6月10日) 【関連する事業・取組】 ■都市整備局「ヨコハマ市民まち普請事業」■ 都市整備局が所管する「ヨコハマ市民まち普請事業」は、市民が自ら行う身近なハード整備の提案に対し、コンテスト形式での選考を経たものを対象に、最高500万円の整備費用を助成する横浜市独自の制度です。2005(平成17)年開始(当時は、職員提案のアントレプレナーシップ事業としてスタート)。市民が共に汗をかいてまちづくりを行う意味を込めて「普請」という言葉が用いられ、事業のキャッチフレーズは「私たちのまちを 私たちがつくる きっとまちが好きになる。」。 二段階の公開コンテスト、市職員による伴走支援、整備事例集等の発行、NPO等との協働事務局といった大きな特徴を持ち、創設10年を迎えた2015(平成27)年には「新たな公共事業のあり方を示唆する独創的・画期的なもの」と評され、日本都市計画学会の石川賞を受賞 しました。 さくら茶屋の提案内容は、2009(平成21)年度に当事業に選考されました。当時の提案事業「西柴団地商店街の空き店舗を利用した地域活性化プラン(金沢区)」では、店舗設備の撤去・改修のほか、全世帯の住民アンケート調査を通じたニーズ把握、趣味の教室の開催、多機能型のタウンカフェを維持運営しています。 ■健康福祉局「サービス・活動B等補助事業」■ 健康福祉局では、ボランティアを始めとした地域住民が、要支援者※を対象とする介護予防・生活支援の活動を行う場合に、その活動に係る費用に対する補助金を交付しています。具体的には、体操・運動等の活動、趣味活動等を通じた日中の居場所づくり、定期的な交流、サロン、会食のほか、買物代行、調理、栄養バランスのとれた食事の提供、定期的な訪問による見守りが補助対象となる活動になります。 ※(1) 要支援1・2の要介護認定がある方及び、要支援相当で基本チェックリストを活用して事業の対象となった方(事業対象者)で、地域包括支援センター等による介護予防ケアマネジメント等でサービス・活動B等の活動がケアプランに位置づけられた方 (2)(1)として活動を利用していた方で、要介護1~5に認定区分が変更となった後も、継続的に活動を利用する方 ■市民局「市民公益活動緊急支援助成金」■ 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた市民公益活動への支援として、市民の暮らしを支える地域の居場所づくりや高齢者の見守り、こども食堂や親子サポートなどの活動継続及び事業展開を支援する助成金を交付しました。 助成によりオンラインコミュニケーションツールの導入などが行われたほか、市民協働推進センターに配置されたコーディネーターが、団体の活動を支援しました(2020(令和2)年度のみの限定事業)。 ■金沢区「金沢区空き家等を活用した地域の「茶の間」支援事業補助金」■ 金沢区内の空き家や空き室、空き店舗等を活用することで、多世代の交流や子育て支援、高齢者の生活支援等、身近な地域の課題解決や地域の活性化に向けた取組を支援する事業です。ボランティアグループやNPO団体、自治会町内会等が利用できる制度です。 ■金沢区「金沢区市民活動サポート補助金」■ 金沢区では、地域の活性化や豊かなコミュニティづくりなどを目指す、区民の自主的な活動を支援するため、補助金を交付しています。