南消防団 2010(平成22)年4月1日、南区内の寿消防団と大岡消防団の二つの消防団が統合し、南消防団が誕生しました。 寿消防団は1922(大正11)年に寿消防組として、大岡消防団は1939(昭和14)年に大岡警防団としてそれぞれ発足し、1948(昭和23)年3月7日消防組織法の施行による自治体消防の発足に伴い、横浜市の機関として南区に寿消防団・大岡消防団の2団が組織されました。 2つの消防団を統合したことで、区民に分かりやすい消防団組織となっただけでなく、指揮命令系統も一本化され、大規模災害発生時に迅速に対応できるようになっています。 横浜市では、消防局に消防団課を設け、消防団の活動を支援しています。 ●南消防団からのひとこと 消防団は地域の防災活動の中核となりますので、自治会町内会と連携して防災訓練等を行い、行政と連携して災害活動や防災啓発活動に取り組んでいます。 消防団員は自営業、サラリーマン、主婦、学生、外国籍の方など様々な立場、世代の人たちが集まっています。南消防団は外国人防災指導チームによる外国籍区民向けの防災指導や声楽隊による広報活動など多様な活動に取り組んでおり、団員間の交流も活発です。一方で、団員数の確保と若い世代の育成は課題であるため消防団の魅力をPRしていく必要があります。 「自分たちの街は自分たちで守る」という想いで消防団活動をしています。大規模災害時には消防団を含めた地域のつながりによる助け合いが不可欠です。同じような想いを持ったメンバーを増やして、いざというときにしっかりと活動できるように訓練や啓発活動を充実させたいです。 ●interview 南消防団 宮本康明 団長 趙 春梁 団員 ―最初に、南消防団の活動の様子についてお聞かせください。 宮本:南消防団には6つの分団があり、定数は395名です。現在の団員は367名で、そのうち95名が女性、それと、今日同席している趙さんのような外国人消防団員が14名います。消防団は地域防災の要として、消防署と地域をつなぐ役割を担っており、「地域と顔の見える関係づくり」を目標にしています。具体的な活動としては、週末の休日や平日夜間に行っている放水訓練、救助資機材の取扱訓練、地域への防災指導、応急手当の普及指導、熱中症対策の広報活動などがあります。 消防団は、火災発生時の消火活動、大規模災害時の救助・救出活動などを行う消防機関の一つで、消防団員は、普段は本業を持ちながら活動しています。 地元や地域を守りたいという熱意を持って、消防団活動に取り組んでくれている団員が大勢います。 ―横浜に暮らす外国人は13万人を超え、この規模は一つの行政区に相当します。南消防団では、2021(令和3)年に多言語に対応する外国人防災指導チームを発足させ、在住の外国籍の方に対する防災指導や災害時の避難誘導などを行っているそうですね。日頃の外国人消防団員の活動の様子についてお聞かせください。 宮本:2013(平成25)年に消防法が改正され、外国人のみなさんも消防団に入団できるようになりました。横浜の南消防団に外国人が入団したのは2020(令和2)年からのことです。2025(令和7)年7月現在、中国、韓国、ベトナム、ブラジルの方が在籍していますが、友達から紹介された方や、普段の訓練をたまたま見かけた方、商店街での広報活動の際に声をかけてくれた方など、きっかけは様々です。南消防団は18区で唯一、外国人防災指導チームを編成しています。団員の母語を活用した、地域で暮らす外国籍の方々への防災指導、広報啓発は、外国人防災指導チームならではの活動です。 ―中国籍の趙さんが、南消防団に入団するまでの経緯についてお聞かせください。 趙:私が来日したのは2002(平成14)年ですので、日本での生活は今年で23年目になりました。その頃から、消防団の存在は知っていましたが、外国籍の自分が入団できるとは思っていませんでした。自分たちも消防団に入団できるようになったと聞き、横浜で長年暮らし、ご近所のみなさんにもとてもお世話になっているので、少しでも地域の力になれればいいなと思い、入団することを決めました。 消防団活動という舞台をいただいたので、普段は私たちにできること、例えば、消防団員の募集活動や熱中症予防の啓発活動などをしています。 日本は地震が多い国ということは、外国人も知っているのですが、本当に発災したときに、通訳など含め外国人消防団員が少しでもお役に立てたらいいなと思っています。2年前には夏季訓練会のポンプ操法に参加させていただき、とても良い思い出になっています。 ―横浜市では在住外国人の皆さんに向けた生活情報の提供、多言語での相談対応、日本語教室の開催、通訳ボランティアの派遣、日本人との交流活動などを行う「国際交流ラウンジ」を13施設運営しています。南消防団は南区の国際交流ラウンジ(みなみ市民活動・多文化共生ラウンジ)との関わりが深いと聞きました。連携が始まったきっかけについてお聞かせください。 趙:私が2年前まで、みなみ市民活動・多文化共生ラウンジ(以下、ラウンジ)のコーディネーターとして勤めていたことがきっかけになりました。この地域は中国だけでなく、韓国、ベトナム、フィリピン、ネパールといった国々の方が住んでいますが、日本に来たばかりの頃は日本ならではのルールや習慣が分からず、苦労しています。そういう人たちが日本の生活に早くなじんだり、日本人と交流を深めたりできるような企画、イベントを実施していました。南消防団に入ってからは、防災訓練の際に、ラウンジとも連携しながら取り組んでいます。 ―趙さんはじめ、多くの外国人が南消防団で活躍していると聞いています。南消防団長として、外国人防災指導チームの日頃の活動や活躍をどのように捉えていますか。 宮本:消防団活動に外国籍の皆さんに参加いただいていることは、本当にありがたいことだと思っています。約40年前、全国に100万人いた消防団員は現在74万人となり、大きく減少しています。 私たちは、自分たちの街は自分たちで守るという強い使命感を持って消防団活動に取り組んでいますが、団員不足で人手が足りないと、どうしても活動そのものの継続性に影響が出てしまいます。そのような中で、外国籍のみなさんはもちろん、南区の企業にお勤めの方、南区に暮らしている学生のみなさんも、地域を守るという思いに共感し、一緒に活動してくれています。これほど嬉しいことはありません。 ただ、外国籍の消防団員には公権力の行使の制約という課題もあります。消防車の運転手としての緊急走行はできない、火災発生時に消防警戒区域を設定できないなどの制約があり、日本人と同じように災害活動をすることが認められていません。 先ほど、趙さんが紹介されたポンプ操法の訓練の際、彼から「宮本団長、私たちはどれだけ訓練を積んでも、実際の火災現場で皆さんと同じように活動することはできないのですよね。」と言われ、その言葉は今でも心に重く響いています。外国籍の皆さんも私たちと同じように、真剣に訓練に取り組み、一生懸命汗をかきながら活動しています。その姿勢には本当に頭が下がり感謝しております。 外国籍の消防団員はこういった制約を承知の上で入団して活動しています。外国籍の消防団員の活躍の場をもっと広げていければ良いと思っています。 ―防災備蓄庫の設置、防災資機材・食料等の備蓄が進められている地域防災拠点(指定避難所)では、発災時には被害情報等も集まる重要な施設です。この地域防災拠点が外国籍の皆さんには馴染みがなく、防災訓練にも参加しづらいといった話を聞きます。 宮本:外国籍の方も地域防災拠点の存在は知っているのですが、言葉の壁があり、避難しづらいと聞きます。自分が被災した場合をイメージしてみても、日本語が伝わらない地域防災拠点に向かうことは、躊躇してしまいます。 ですが、そのような時に母語で会話ができる外国人防災指導チームの皆さんが地域防災拠点にいて、通訳を引き受けてくれるとしたら、外国籍の方たちは地域防災拠点に行きやすくなると思います。これからは、外国人防災指導チームと地域防災拠点運営委員会との連携にも力を入れていきたいと思います。 趙:南区でも高齢化が進んでいますが、外国人には若い世代も多く、活躍が期待できます。私たち外国籍の消防団員が懸け橋として、何をすればよいか伝えることで、発災時にみなさんの力になれるかもしれません。 ―各区の消防署には、総務・予防課に消防団係が設けられ、消防団の皆さんの活動を支援しています。南消防団と南消防署の日頃の連携や協力体制についてお聞かせください。 宮本:消防団の訓練や相談事などの窓口は消防署ですし、常に連携や協力を意識しながら活動しています。私たち消防団には地域を守るという思いはありますが、機材を使うノウハウ、消火・救出活動などは消防署の指導があって初めて身につけることができるものです。南消防署と南消防団は、地域防災を進める際のまさに車の両輪のような関係だと思います。両方が揃って初めて、災害に強いまちづくりが進められるのです。我々消防団は有事に向けて訓練をしていますが、実災害における経験が不足しています。この経験は、日ごろから火災現場での消火活動や救助活動に取り組んでいる南消防署の署員でないと持ち合わせていないので、訓練メニューを考える際に消防署の皆さんからいただくアドバイスは経験不足を補うためにとても重要です。 先日は、南消防署の協力により、取り壊しが決まった建物の扉の施錠を実際に切断する訓練(破壊訓練)を行いましたし、来月にはプールを借りて救助訓練を行います。南区には3本の川が流れており、水難事故も多い。ライフジャケットを着用してゴムボートを漕艇する訓練などを消防署の指導を受けながら行う予定です。有事の際に適切に行動するためには、消防署との連携が不可欠。地域だけではなく、消防署との顔の見える関係づくり、信頼関係も重要になります。 ―外国人や女性、大学生など、南消防団には様々な方が団員として参加されていますが、団長として団を取りまとめていくために意識していること、工夫していることはありますか。 宮本:国籍や性別、年齢問わず、消防団では全員が同じ条件下で、同じ訓練メニューを行いますので、団員の安全を確保することを最も重視しながら指導、接することを意識しています。出動した現場で団員が怪我をしないようにするため、訓練時には安全を最優先に真剣に取り組む姿勢を大事にしています。そのほかは、どの団員に対しても平等に接すること、言葉づかいに気を付け謙虚にふるまうこと、一人ひとりの団員の自主性を大切にすることを意識しています。 ―消防団といえば、上からの命令は絶対、上意下達のイメージが強い印象ですが、団長から自主性といった言葉が出たことは意外でした。 宮本:消防団への入団は義務や強制ではなく、あくまでも本人の自由意思によるもので、市長の承認を得て消防団長が任命しています。大事にしたいのは消防団に入ろうと思ってくれた団員の地域を守ることへの熱い思いです。 積極的に地域に貢献したい、お世話になった地域に恩返ししたい、発災時に困った誰かの力になりたい、そういう前向きな動機を持った団員が多いので、自主性や主体性が表れる団員の意見や提言にはできるだけ耳を傾け、きちんと答えて、活動の実践につなげていくことを意識しています。 ―在住外国人の地域活動への参画や活躍促進が、多文化共生社会のキーワードになっています。今後の外国人消防団員の活躍のためにご自身がやりたいことはありますか。 趙:私以外にも、地域に貢献したい、誰かの役に立ちたい、活躍したいと思っている外国人は多くいて、横浜で暮らしていると思います。 外国籍の消防団員として、入団した当初、何をすればいいのか全く分からない状態でしたが、先輩方が色々と気配りしてくれました。仕事が忙しくてあまり活動に参加できずに在籍していてよいのか悩んでいた時も、仕事優先で時間がある時に来てくれれば構わないと声をかけてくれました。皆さんのそうした声掛けや気遣いのおかげで続けてこられたと思います。新しく入団した外国人には長く続けてほしいと思うので、消防団として大事にしてほしいことを伝えたり、お互いのアイディアを出し合って、外国人防災指導チームとしてどう活動していくかを一緒に考えたり、コミュニケーションを大事にしていきたいです。 ―南消防団の今後についてお聞かせください。 宮本:他の区の消防団からは、外国籍の消防団員がいて、分団長などの役職者含め女性団員も多い南消防団は、多様性があり多文化共生が進んでいると言われています。団員の皆さんの意見を聞きながら、救命講習など皆さんがやりたい訓練などをやったり、新しい取組を働きかけたりすることで、皆さんの意識や雰囲気が変わってきたと感じています。「訓練をやって良かった」「新しい発見をした」という言葉を分団長や団員から聞かせてもらうと本当に良かったと思います。これからも国籍や性別に関係なく、消防団員一人ひとりが自分の考えをもって主体的に活動し、地域を守るという思いで活動をしてほしいと思います。 自分たちで考えて自発的に動ける団というのが今の消防団のあるべき姿ではないかと思っています。地域に密着し、どこにどんな人が住んでいるかを知っているのは 私たち消防団。消防署と地域の方々を繋ぐ役割をしっかりと果たしていきたいです。 (インタビュー実施:2025(令和7)年7月22日) 【関連する事業・取組】 ■消防局「消防団費」■ 地域防災の要となる消防団の充実強化を図るため、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」に定める本市の責務を果たす予算事業です。消防団の器具置場、車両及び資機材の整備や団員への年額報酬・出動報酬の支払い、消防団広報の促進を行っており、近年は消防団員の負担軽減を目的としたDX化の推進も消防団費の事業として実施しています。 消防団が将来にわたり地域防災力の中核として欠くことのできない存在であることを鑑み、地域特性に応じた資機材整備や環境整備等の様々な取組を行い、消防団員のモチベーションアップや魅力ある消防団づくりにつなげることを目的としています。 横浜の消防団員の充足率は、93.0%。全国の主要都市の中でも、横浜の充足率は高く、100%の達成を目指しています。(さいたま市:84.5%、千葉市:84.8%、東京(23区):82.5%、川崎市:79.6%、相模原市:73.6%、名古屋市:73.0%、福岡市:88.4%) ※各都市の充足率は全て2025(令和7)年4月1日時点 ■消防局「消防団の報告事務のデジタル化」■ 消防団の報告事務は、年間41000件の報告書作成、団内での承認作業、消防署への来所など、団員の大きな負担になっていました。実証実験を経て、2023(令和5)年4月から全消防団で、報告事務をアプリによりデジタル化したことで、消防団員の大幅な負担軽減及び活動の充実強化につなげています。当該アプリでは、活動報告のほか、資機材点検報告、車両点検報告、各種情報共有などもデジタル化されました。