市民の“活躍”とよこはま ◆年齢別、活動別の分析から見えること 3章では市民生活における活躍≠二つの視点から見てみました。一つは、仕事や子育てなどの活躍≠フ比重が主に年代・ライフステージに応じて変化してくるという点です。 18〜29歳までの層は、学生や仕事を始める時期にあたり、その活躍≠焜Aルバイトなどを含め「仕事」が中心となっています。結婚や子育てをしている人がそれほど多くないことから、男女ともに「仕事」をしている人の割合が「家事」より多く、「仕事」をして「家事」をしない人も3割近くいます。一方で生きがいを感じるのは「仕事」ではなく「趣味」や「友人等とのつき合い」が多くなっています。 30〜49歳は家族を形成・成長する時期と重なります。30代より上の年齢層では「仕事」「家事」をしている人の割合に性差が見られるようになり、男性は「仕事」、女性は「家事」が高くなっていますが、この層は「育児」の割合が突出し、「仕事」も「家事」「育児」などの家庭のこともどちらもしている人が8割近くです。生きがいも「家族との時間」「仕事」「育児・子の成長」であり、状況に応じて役割分担や時間の配分を調整しながらいくつもの活躍≠している様子が伺えます。 50〜64歳は「育児」が一段落して家族が成熟する時期ですが、「仕事」と「家事」「育児」などの家庭のこともどちらもしている人の割合が30〜49歳に比べ少なくなり、男性の活躍≠フ場が「家事」から「地域活動等」にシフトしています。 65歳以上は退職などにより「仕事」以外の活躍の割合が多くなる時期で、特に男性では「地域活動等」の割合が増えています。また男女ともに「趣味」をする人が増え、「趣味」を生きがいとする人も半数を超えています。 また、現在行っていないことで今後行う予定がある、又はやってみたい活動があるか尋ねたところ、全体の約半数(47.5%)の人が何かしらの活動を行う予定・希望があると回答していますが、具体的な活動内容で最も多いのは「家族の介護・看護」(35.8%)でした。年齢別でも40代、50代が多く、高齢化が進展する中で、この世代の生活にとって介護が大きな要素となってきています。 もう一つの視点として、活動による意識や生活満足度の違いについて、活動をしている人としていない人を比較して見てみました。 「仕事」、「家事」、「子の育児又は孫の世話」、「家族の介護・看護」、「学業」など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動は、多くの人が複数の活動をしていることもあり、満足度などの違いが特定の活動に起因するものか判断できませんでしたが、活動時間や分担の有無など、活動をどのように行っているのかによって違いが見られました。 「地域活動・ボランティア活動」、「趣味」など自由に使える時間における活動では、活動している人のほうが生活満足度が高い傾向が見られます。本調査においては、義務的活動をしている人のうち自由に使える時間における活動をしない人が3割に上っていますが、趣味なども併せてしている人の生活満足度(70.4%)は義務的活動のみの人(58.4%)に比べ10ポイント以上高いという結果となりました。義務的活動も自由な時間の活動も、自らの生活の状況や価値観に合わせて活動できることは、やりがいや活動自体への満足感のみならず、生活全体への満足感にも少なからず影響しているようです。 ◆市民が考える「活躍」とは 一般的に「活躍」という言葉からイメージするのは、「めざましく活動すること」などで、例えばスポーツにおいて多くの人に認められるような成果を上げたり、成功をおさめたりといった場面で使われています。また、近年は「一億総活躍社会」や「女性の活躍」など、社会の中で一人ひとりが自分らしく生き生きと過ごすなど、日々の生活の様々な活動にスポットを当てて用いられることもあります。 ◆最も多くの市民がイメージする活躍”は「広く社会や人のためになることをすること」 活躍のイメージを6つの中から、自分が考える活躍のイメージに含まれるものをいくつでも選ぶ方式で尋ねたところ、活躍に該当するとして最も多かったのは「広く社会や人のためになることをすること」で6割を超えています。次に多かったものは「家族や友人など、自分の周りの人の役に立つこと」であることからも、社会や人のためになったり役に立ったりすることというイメージを持つ人が多いようです。また、「自分らしく生き生きと過ごすこと」も半数近くが活躍に当たるとして選んでいます。 一方で、めざましく活動することという意味合いに近い「世間の注目を集める目立った成功や成果を上げること」はおよそ4割の人がこのイメージを持っていますが、6つの中では最も少ないという結果となりました。 年齢別に見ると(図1)、「目立った成功や成果」は30代以下では半数を超えていますが、年代が上がるにつれ減少し70代以上では2割弱となっています。同様に「周りの人の役に立つ」「感謝される」では20代以下、「感動を与える」は30代、「社会や人のため」では40代がピークで、おおむね年代が上がるとともに減少傾向にあります。一方で、「自分らしく」は年代が上がるほどイメージをする人が増え、ほかの5つとは異なる傾向を示しています。 性別による差はあまり大きくありませんが、「感謝される」はどの年代でも男性の方が多く、「自分らしく」はどの年代でも女性が男性を上回っています。 ◆活動内容と活躍のイメージ 自分がしている活動と活躍≠フイメージの関係について見てみると、(図2)「仕事」をしている人は「目立った成功や成果」のイメージが他の活動をしている人と比べても多い反面、「自分らしく」は少なくなっています。一方、仕事をしていない人は「目立った成功や成果」「社会や人のため」「感謝される」は全体より低く、「自分らしく」が多くなっています。「家事」をしている人は全体の割合とあまり差異はありませんが、家事をしていない人は「社会や人のため」「自分らしく」というイメージを持つ人が少ないようです。また、「育児」をしている人は仕事をしている人と傾向が似ていますが、「社会や人のため」や「周りの人の役に立つ」が全体より多くなっています。 一方で、介護をしている人は「自分らしく」を除く全てのイメージが全体より少なく、「目立った成功や成果」や「感動を与える」では、全体と大きく差が開いています。同様のことは地域活動をしている人にも見られますが、「自分らしく」がとても多いのが特徴といえます。 また、生活全体に満足している層と不満な層に分けてみると、満足層は不満層と比べて「自分らしく」や「周りの人の役に立つ」「社会や人のため」が多く、不満層は「目立った成功や成果」をイメージする人が満足層に比べて多めでした。 ◆おわりに 今回の市民生活白書では、人や社会に何らかの関わりを持って行っている暮らしの中の活動を活躍≠ニし、市民生活の今を捉えることを試みています。 社会の変化の中で、活動の場や時間、役割を自ら希望し選択することができる機会も増えてはいますが、一方で、例えば高齢単身世帯の増加は、生活に関する様々な活動を一人でこなさなければならない人が増えているということでもあります。 活動の仕方にも変化が見られ、団体に所属して活動したり、目的や課題意識を共有する仲間とともに行動することもあれば、特に最近では、災害時のボランティアなどのように、役割やメンバーが固定されずに、活動者が活動したい期間や時間に希望に沿った役割のみを部分的に担うことで、全体の目的に貢献するような参加の方法も増えてきています。また、クラウドファンディングのように、場所の移動すら伴うことなく、自分の興味や思いに合うプロジェクトの一部分として参加することも珍しくありません。 自分のしたいときに、したいことを、したい分だけ行う。時には気の進まないことであっても、結果として感謝されたり、周りの人の役に立っていることもあるのです。 今回実施した「日常生活の中での活動に関する調査」の中で、現在行っている活躍、今後できそうな活躍について、自由に記述する項目を設けたところ、 ・仕事をすることで家族との楽しい生活を支える ・家族のため家を居心地よく整える ・孫の面倒を見て親のサポートをする ・親の様子を見に行く ・地域のイベントに参加して盛り上げに一役買う ・犬の散歩の際に周辺のごみを拾う ・健康であり続けること など、ふだんの暮らしの中で行われ、また行えそうな様々な活躍≠ェ挙げられました。 大げさに社会や地域のためにと理想を掲げなくとも、このような私たち一人ひとりの日々の活動が、周りに影響を与え、それらが合わさって今の横浜を成り立たせていると考えれば、それは社会にとって価値のある活躍≠ネのだと言えるのではないでしょうか。 《作成協力》 岩崎 学 内海 宏 杉野 展子 谷口 和豊 土屋 隆裕 吉原 明香 (50音順/敬称略)