【コラム】 市民活動の現場からみる市民活動・地域活動の変化 横浜市市民活動支援センター センター長 吉原 明香 横浜市市民活動支援センターでは、市民活動団体からの日々の相談対応や取材などで、多くの活動の現場に伺い、セミナーやフォーラムでは、先進的な事例の紹介などを行っています。2009年7月から約10年間、私はそのセンター長の役割を担わせていただいています。 また、私が活動しているNPO法人の事業として「よこはま地域づくり大学校」という地縁型組織を意識した学び合いの場に、やはり10年(卒業生1,000名以上)取り組んでおり、地域づくりの変化を肌で感じてきました。そのような中から見えてくる市民活動や地域づくりの変化について書かせていただきます。 ◆市民主体のスピリット世代 横浜の市民活動・地域活動の歴史を語るうえで欠かせないのは、人口が約140万人(1960年)から約300万人(1990年)となる人口増が、たった30年の間に起こったことです。特に郊外区で顕著なのですが、都市としてのインフラが整わず、公的サービスも追いつかないという何かと「足りない」中で、「自分たちのまちの課題はまず自らが取り組む」という市民主体のスピリットが育ち、活動と実践知が積み重なっていきました。 世代で言うと、現在70〜90才代の方々が30(子育て期)〜50代(介護期)であった時代で、地縁型・テーマ型組織に関わりなく、この「市民主体のスピリット」の潮流はこの横浜に大きく流れており、私自身もこのスピリットに魅了された一人です。 ◆バランス世代 それが、数年ほど前から、大きな潮目の変化を感じています。社会的課題解決が先行せざるを得なかった時代を経て、そして今も複雑化した社会課題はもちろんありますが、一方で介護保険や障害者総合支援法などの制度の成熟化も起こっている今、いわば「自分も人も幸せに」という、新たな動機を持った活動層が生まれてきています。 自然環境の生態系が豊かに守られてこそ、その一部である人間社会が成り立ち、健全な人間社会の中でこそ、経済活動が適切に行われるということに気づき、自分の幸せを追求しつつも、「いっしょに考えよう、動こう」と他者にも呼びかけた人、それに呼応した人たちです。 また時を同じくして、企業やそこで働く人も、意図をもってこの社会のあり方、そして自分自身の生き方に「バランス」をもたらしたいと考えはじめていると感じています。 これは、SDGsなどを意識した企業活動の進展により、「経済」的な観点だけでなく「環境」「人間社会」の3つ、いわゆる「トリプルボトムライン」で企業価値を測るべきだという考え方が一般的になりつつあることも影響していますし、働き方改革も後押ししている可能性があります。 ◆人と人として出会っていくことの豊かさの意味を知る 企業活動や自分の人生そのものに、具体的変化を起こそうと、社外との接点やNPOなど仕事以外の活動の場を求め、市民活動支援センターには多くの方が相談に来られるようになってきました。 そして「自分が実はさまざまな問題の当事者でもあること」に気づく中で、その延長で他者への関心を深め「語り合い」の大事さ、「人と人」としても出会っていく豊かさの意味を知っていかれているように感じています。 ◆魅力的な活動環境づくり 今こそ、働きながら活動する時代が来ました。平成29年度の横浜市民意識調査でも、何らかの活動に携わっていると回答した方が4割もおられ、そこには働いている人たちも含まれています。「活動したい」というニーズは確実にあります。市民活動や地域活動、そしてわたしたちのような中間支援組織は、魅力的な活動先である必要があります。そのためには潜在的に活動を求めている人たちの声をよく聴き、共に考え、大胆に変化に対応していくことが求められていると考えています。