年代別に見る 高齢者の日常生活と「活躍」 65歳〜 65歳以上の人は、横浜市の人口の23.4%を占めています。家事をしている人の割合がほかの活動と比べて高くなっていますが、それ以外は、仕事をしている人、孫の世話や家族の介護をしている人、地域活動に参加している人、趣味の成果を発表している人など、活動は様々です。 ◆ 仕事 男性の39.3%、女性の25.9%が仕事をしています。年齢階層別に見ると、男性は65〜69歳で53.5%、70〜74歳で48.1%、75歳以上で23.9%、女性は65〜69歳で38.8%、70〜74歳で28.7%、75歳以上で12.6%と次第に低下していますが、仕事を継続している人も多いことが分かります。 仕事の頻度は、週5日以上が65〜69歳では約5割、75歳以上でも約3割を占めています。65歳以上の雇用区分では、正社員・正規職員が8.2%、アルバイト・パートが37.7%、自営・会社役員が30.9%となっています。 ◆ 家事 家事をしている人の割合は、女性が97.2%、男性が63.8%となっています。一人暮らしの人を除いた場合も、この差の傾向はほぼ同様です。 ◆ 孫の世話(又は子の育児) 男女ともに2割近くが、孫の世話(又は子の育児)を行っています。行う頻度は、「ほぼ毎日」という人が約2割、「時々」という人が約8割となっており、親の就労状況等に応じて子の子育てを支援しているものと考えられます。 ◆ 家族の介護・看護 家族の介護・看護をしている人の割合は、男性で9.7%、女性では12.0%となっており、50〜64歳よりも割合は下がっています。なお、約3分の1の人は、誰とも分担せずに介護・看護を担っています。65歳以上のみの世帯が増加する中、高齢の父母や配偶者の介護等を行っている高齢者もまた多くなっています。 ◆ 地域活動等の社会的な活動 男性の25.2%、女性の32.9%が、地域活動やボランティア活動等の社会的な活動を行っています。年齢階層別に見ると、男女ともに65〜69歳よりも75歳以上の方が割合は高くなっています。活動の頻度は、「週2〜3回」から「年数回」までの間でばらつきがあります。 また、活動の内容は「自治会、町内会の活動」が最も多く、「身近な道路や公園などの清掃活動」、「高齢者や障がい者への支援や交流などの活動」が続いています。 ◆ 趣味の発表・発信 趣味のある人の割合は他の年代よりも高く、また、男性の21.1%、女性の28.2%が趣味の成果や作品の発表や発信しているとしています。 発表や発信の方法は、「発表の場や大会への参加により発表している趣味がある」が23.9%、続いて「自分又は仲間と一緒に発表の場や大会を設けて、発表している趣味がある」が14.0%となっています。「インターネット・SNSにより発信している趣味がある」は3.9%にとどまっており、実際に人と接する中で趣味の活動を行う機会がある状況がうかがえます。 (1) 「仕事をする目的」の変化 ■「収入を得るため」だけでなく 65歳以上で就労している人の割合は、全国平均と比べるとやや低いものの、年々増加の傾向にあります。 仕事をする一番の目的については、各年代ともに「収入を得るため」が最も多くなっていますが、年齢が高くなるほどその割合は低下し、生きがいや社会、人に対しての貢献を目的とする回答の割合が高くなる傾向が見られました。 内閣府が55歳以上の人を対象に実施した高齢者の健康に関する調査においても、仕事をする理由の一番は「収入がほしい」で、「面白い、自分の活力になる」、「働くのは体によい、老化を防ぐ」が続いています。 ■仕事をしていない理由 高齢者の健康に関する調査では、仕事をしていない人にその理由を尋ねています。仕事をしていない理由としては、「貯蓄や年金収入で生活でき、働く必要がないため」、「健康上の理由」などが上位となっています(図1)。65歳以上においては、経済的な理由で仕事をする必要がない場合も、生きがいや楽しみ、自らの健康のことなどを考えて、老後の過ごし方の一つとして「仕事」を選択している人も少なくないと考えられます。 なお、活動調査の結果では、現在は仕事をしていないが今後新たに仕事をすることを希望している人は、65歳以上では5%程度にとどまっています。 ■仕事をする上で重視していること 仕事をする上で何を重視しているのかについては、横浜市高齢者実態調査によると、上位は「体力的に無理なく続けられる仕事であること」、「自分のペースで進められる仕事であること」、「自分の能力を発揮できること」の順となっています(図2)。なお、65〜74歳と75歳以上とを比べてみると、「自分のペースで進められる仕事であること」の割合は75歳以上で高く、「自分の能力を発揮できること」は65〜74歳のほうが高くなっています。 (2) 何歳くらいまで仕事をしたいと考えているか? 仕事をする目的意識が変化する中で、「何歳まで仕事をしたいか」についての意向も、50〜64歳と違いが見られます。 横浜市高齢者実態調査によれば、65歳以上で仕事をしている人のうち、約3分の1に当たる34.2%の人が「働き続けられるうちはいつまでも」と回答し、「70歳まで」、「75歳まで」がこれに続いています(図3)。 活動調査や横浜市民意識調査においても、「いくつになっても、元気なうちは働くべきだ」について65歳以上の約6割の人が「そう思う」と回答しており、50〜64歳の回答よりも高い割合となっています。 (3) 仕事に代わって、日常生活の中で増えている活動 50〜64歳に比べると、仕事をしている人の割合は減少していますが、反対に、65歳以上で増えている日常生活の中での活動もあり、趣味の活動と地域活動等の社会的な活動がそれに当たります(図4)。趣味の活動をしている人の割合は、50〜64歳の63.4%よりも高い68.4%となっており、これに伴い、趣味の発信・発表をしている人の割合も50〜64歳と比較して7ポイント以上高い24.6%となっています。また、地域活動やボランィア活動などの社会的な活動については、50〜64歳の22.0%よりも高い29.1%となっています。 仕事と社会的な活動の両方をしている人の割合は、50〜64歳と比べて少なくなっており、仕事を辞めた人の一部が新たに社会的な活動に参加しているものと推測されます。 なお、内閣府の高齢者の経済、生活環境に関する調査の結果によれば、社会的な活動をしていて良かったと思うこととして、「新しい友人を得ることができた」が56.8%、「地域に安心して生活するためのつながりができた」が50.6%、「社会貢献していることで充実感が得られている」が38.2%となっています(図5)。 仕事をはじめこれまでの活動に変化が生じる中で、人や社会との新たなつながりを得ることで、安心感や充実感を得ていることがうかがえます。 (4) 介護を行う、介護を受ける ■家族の介護の実施状況 90ページで紹介したとおり、活動調査の結果では、65歳以上で家族の介護・看護を行っている人の割合は、「時々行っている」人を含めて、男性では9.7%、女性では12.0%となっています。そのうち、現在の介護・看護の状況に満足している人は42.7%で、介護・看護をしている人の64.0%が「今のまま続けたい」、又は「もっと充実させたい」と感じています。 介護をしている人の思いについては、内閣府の高齢者の経済、生活環境に関する調査で、「日常的に介護を担っている中で、どのような思いを抱くことが多いか」について尋ねています(図6)。その結果は、「介護に対する限界を感じる、投げ出してしまいたくなる」(32.5%)などの回答がある一方で、「相手への理解が深まった」(18.3%)、「相手からの感謝の気持ちを受け、やりがいを感じる」(16.7%)、「信頼関係を築くことができた」(13.8%)などが挙げられています。回答は選択肢の中からいくつでも選んでよい方式となっていますが、様々な気持ちが混在した結果であると推察されます。 ■自身が望む介護 ここまでは日常生活の中での活動の一つとして、介護という活動を行う人の側から見てきましたが、自らが介護を受ける側になった場合に望む介護の姿とはどのようなものでしょうか。 この点、内閣府が行った高齢社会に関する意識調査の結果によると、60代、70代では、望む介護として「家族に依存せずに生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が最も多く、80歳以上では、「自宅で家族中心に介護を受けたい」が一番多くなっています。なお、望む介護の姿については、男女で違いがあるようです。女性は男性に比べて家族に依存しないようにしたいとの傾向がより見られるのに対し、男性は女性に比べて自宅で家族から介護を受けたいという割合が高くなっています(図7)。 内閣府の高齢者の健康に関する調査の結果においても、「必要になった場合の介護を依頼したい人」として、女性は「ヘルパーなど介護サービスの人」を挙げる人が多く、男性は半数以上の人が「配偶者」を挙げています。 (5) 老後の不安と理想とする老後の暮らし ■老後の不安 65歳以上の単独世帯や65歳以上の夫婦のみの世帯が増加を続け、それぞれが世帯数の約1割を占める状況も生じている中で、高齢者はどのような心配ごとや困りごと、不安を感じているのでしょうか。 横浜市民意識調査の結果によると、70歳以上の7割弱が「自分の病気や健康、老後のこと」を挙げ、「家族の病気や健康、生活上の問題」が続いています(図8) 。 また、内閣府の高齢社会に関する意識調査では、回答の選択肢は異なりますが、やはり老後の不安のトップは「健康上の問題」で、以下、「経済上の問題」、「生きがいの問題」の順となっています(図9)。年齢階層別に見ると、「健康上の問題」は40代から80歳以上までのすべての年齢において70%以上で大きな差はありませんが、「経済上の問題」は年齢が高くなるほど割合は低く、「大きな不安はない」という人の割合は年齢が上がるにつれて高くなる傾向にあります。反対に、「生きがいの問題」を不安なこととして挙げる人は50代から70代にかけて増加しており、老後の生きがい、やりがい、楽しみを見い出すことの大切さを感じていることがうかがわれます。 ■一人暮らしの不安 65歳以上の単独世帯が増えていますが、活動調査の結果から、生活全体の満足感と心配ごとについて、65歳以上の人のうち、一人暮らしの人と一人暮らしでない人では違いがあるか見てみました。 その結果としては、心配ごとについて「自分の健康」を挙げる人の割合は一人暮らしの人の方が5ポイント程度高かったものの、全体として心配ごとや困りごとが多い又は少ないという明確な傾向は見受けられませんでした。また、生活全体の満足感についても大きな差は見られませんでした。社会的な活動への参加状況にもあまり差はありません。 ■理想とする老後の暮らしとは? 理想とする老後の暮らしは、その時々の状況やその人の考え方によって様々であると考えられますが、統計調査の結果からも一律でない多様なものであることが垣間見えます。 まず生活したい場所ですが、横浜市民意識調査において「多少生活が不便でも、静かな郊外に住む方がよい」について尋ねていますが、70代以上では他の年代よりも「そう思う」の割合が高かったものの約3割にとどまり、「そう思わない」も2割以上と回答は分かれています(図10)。 また、内閣府の高齢社会に関する意識調査の結果によれば、高齢期に生活したい場所は、「自宅」が大多数となっていますが、必要な条件として、「買い物をする店が近くにあること」などよりも「医療機関が身近にあること」が男女ともに多くなっており、医療を身近で受けられる環境を強く望んでいることがうかがえます。 次に誰と暮らしたいかについてですが、横浜市民意識調査の「老後は子どもや孫と一緒に暮らしたほうがよい」について、男性では「そう思う」が40代から30%を超え、70歳以上で47.1%で最多となっていますが、どの年代も「どちらともいえない」の回答が比較的多く、理想をあまり固定的なものとして捉えていないことや子や孫との同居が必ずしも良い面ばかりではないという思いから迷いがうかがえます(図11)。 また、内閣府の家族と地域における子育てに関する意識調査では、理想とする家族の住まい方を尋ねていますが、60代、70代では、子どもの世帯との同居を希望する回答も3割ほどあるものの、「夫婦のみの二人暮らし」と回答した人が最も多く、回答にばらつきが見られます(図12)。子どもの世帯との近居を望ましいとする割合もそれほど高いとは言えない結果となっています。