年代別に見る 若者世代の価値観と「活躍」 18〜29歳 18〜29歳の人は、横浜市の人口の12.6%を占めています。また、今回の活動調査の結果では、この年代の約3割を学生が占めています。多くの人が、仕事、家事・育児といった活動を始めていこうとする世代です。 ◆ 仕事 活動調査の結果によると、若者世代では、男性の73.4%、女性の78.9%が仕事をしています。雇用区分を見ると、仕事をしている人のうち、男性では20.2%、女性では26.6%がアルバイト・パートとなっています。 なお、この年代の労働力人口は人口減に伴って男女共に減少していますが、労働力率は、25〜29歳の女性では増加しています。  学生(学業をしている人)のうち仕事をしている人は51.9%でした。 ◆ 家事 家事をしている人の割合は、30代以降の各世代と比較して最も低く、男性が47.9%、女性が59.6%となっています。一人暮らしの人を除いた場合、家事をしている人の割合は、男性が39.7%、女性が53.7%で、同居者がいる場合と比べて6〜8ポイント程度低くなっています。 ◆ 子の育児・家族の介護・看護 この世代で子どものいる人は、活動調査の結果では7.8%で、育児(又は孫の世話)をしている人は、全体の6.9%となっています。 家族の介護又は看護をしている人は、全体の1%未満でした。 ◆ 地域活動等の社会的な活動 町内会やPTAの活動、地域の清掃活動など、何らかの社会的な活動をしている人の割合は、男性が5.3%、女性が0.9%となっています。今回の活動調査や市民意識調査の結果によると、「何らかの形で、積極的に社会の役に立つことをしたい」と考えている人の割合は他の世代よりも高い傾向にありますが、実際に活動している人の割合は、他の世代と比較して最も低くなっています。 ◆ 趣味の発表・発信 趣味の活動をしている人(趣味のある人)の割合は、65歳以上の高齢者とともに高く、男性が72.3%、女性が63.3%となっています。また、成果や作品等を発表又は発信している趣味のある人の割合は、男性が31.9%、女性が28.4%となっています。趣味のある人のうち44.5%が発表や発信をしていることになり、これは他の年代と比較して大変高い割合となっています。発表や発信の方法については、インターネット・SNSを用いたものが34.3%で最も多く、若者世代の発表・発信の大きな特徴となっています。 ◇ 仕事も、家庭のことも、地域活動等の社会的な活動もしていない人 年齢的に、仕事も家庭のことも地域活動等もしていない人は、男性が16.0%、女性が10.1%で、他の世代よりも割合は高くなっています。 (1) 仕事についての意識 ■仕事よりもプライベートを大事に 「仕事は収入のためで、仕事以外のことを大事にしたほうがよい」。こうした価値観は各年代共通のもので、活動調査においても、『そう思う』人が『そう思わない』人を大きく上回っています。年齢が若いほど『そう思う』の割合は高く、仕事以外のことを大事にしたいという意向が表れており、この若者世代では53.4%と最も高くなっています(図1)。 なお、「どちらともいえない」は、他の年代では3割から4割程度あり、若者世代では25.5%と比較的低くなっています。ライフステージやそのときの状況に応じて様々な判断があることを考えてのことと思われますが、世代による受け止め方の違いが感じられます。 ■仕事をする一番の目的は? 若者世代は、仕事の目的をどのように捉えているのでしょうか? 活動調査において、仕事をしている人に「仕事をする一番の目的」を尋ねた結果では、やはり「お金を得るため」と回答した人が最も多くなっています(図2)。これは他の年代も同様ですが、その割合は78.2%と、他の年代と比較して最も高くなっています。「お金を得るため」の割合は、30〜49歳で73.5%、50〜64歳で70.3%、65歳以上で53.6%と、年齢が高くなるにつれて低くなっており、若者世代のみの特有の特徴として捉えるよりも、年齢を重ね、様々な経験を経る中で、収入を得ることだけでなく、生きがい、社会や人への貢献等を仕事の目的として見い出す人が徐々に増えているものとして理解したほうがよさそうです。 内閣府が全国の16〜29歳を対象に実施した子供・若者の現状と意識に関する調査においても「仕事の目的」を尋ねています。選択肢の中から二つまで選ぶことができる回答方式としていますが、「収入を得るため」が84.6%で、「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」、「自分の能力を発揮するため」、「人の役に立つため」はそれぞれ15%前後にとどまっています。 ■正規雇用・非正規雇用の希望 活動調査の結果により仕事をしている人の雇用区分を見ると、20〜24歳では49.1%が「正社員・正規職員」、47.4%が「アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、嘱託社員」、25〜29歳では78.3%が「正社員・正規職員」、19.3%が「アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、嘱託社員」となっています。 希望する雇用区分については、子供・若者の現状と意識に関する調査の全国の結果によれば、20〜24歳の男性の84.0%、女性の67.8%、25〜29歳の男性の79.8%、女性の57.3%が「正規雇用(常勤)」を希望し、女性においては、20〜24歳の25.8%、25〜29歳の36.4%が非正規雇用(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託等)を希望しています(図3)。現在の就業状況別では、正規雇用の人の96.0%、及び学生の88.4%が「正規雇用」を希望しており、さらに、現在専業主婦(夫)である人の68.9%は「非正規雇用」を希望しています。収入のことや家事・育児その他自身がやりたいこと、やるべきことの優先順位も考慮しながら、時間の使い方、働き方を選択しているものと考えられます。 ■収入、人間関係、やりがいが不満な理由の上位 活動調査の結果によると、現在の仕事に満足しているか、それとも不満であるかについて、18〜29歳では、41.7%の人が「満足」、24.5%の人が「不満がある」としており、満足している人の割合は、他の年代よりも高くなっています。 なお、現在の仕事に不満があると回答した人のその理由は、男女で少し違いが見られます。男性は「収入」が78.9%、「労働時間・労働日数」が47.4%、「職場の人間関係」と「やりがいが感じられない」が31.6%で、女性は「収入」が66.7%、「やりがいが感じられない」が53.3%、「職場の人間関係」が30.0%の順となっており、男性は女性に比べて「収入」を不満の理由とする割合が高く、女性は「やりがい」を理由とする割合が高くなっています(図4)。 また、現在の仕事に満足している人の83.5%が「現在の仕事を今のまま続けたい」、あるいは「充実させたい、又は時間を増やしたい」とし、現在の仕事に不満があるとしている人の50.0%が「現在の仕事を辞めて、転職したい」と回答しています。 次のページでは、若者世代の離職、転職の状況を見ていきます。 (2) 若者世代の離職、転職は増えているのか? ■最近の傾向 「いったん職業に就いたら、その仕事を一生続ける方がよい」という価値観が徐々に薄れていく中、若者世代では転職する人やすぐに離職する人が増えているのではないかと思いがちですが、果たしてこれらは事実でしょうか。この点、労働力調査により全国の状況を見ると、2017(平成29)年の転職者率は、15〜24歳で11.1%、25〜34歳では7.0%となっており、35〜44歳の4.6%、45〜54歳の3.4%と比べて確かに高くなっています。しかし、近年の状況を見ると、15?24歳の転職者率はおおむね11%前後で推移しており、横ばい傾向となっています(図5)。 また、新規卒業者の離職状況については、2015(平成27)年3月大学卒業者の1年目での離職率は11.8%、2年目までの離職率は22.3%、3年目までの離職率は31.8%となっており、約3割の人が3年目までに離職していますが、この割合も近年ではおおむね横ばいで推移しています。高校卒業者についても、1年目での離職率は18.1%、2年目までは29.7%、3年目までは39.3%と、大学卒業者よりも高い4割近くの人が3年目までに離職をしていますが、最近では、離職率はやや減少傾向にあります(図6)。 ■理由があれば転職に肯定的 若者世代は「転職」をどう捉えているのでしょうか。内閣府の子供・若者の現状と意識に関する調査の全国の結果によると、「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職することもやむをえない」が36.7%、「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職する方がよい」が25.4%と、前向きな理由があれば、合わせて6割以上の人が肯定的に捉えており、「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職はできる限りしない方がよい」は11.8%にとどまっています(図7)。 ■フリーターに対する認識 前述の内閣府の調査では、いわゆるフリーターを続ける生き方についても尋ねていますが、回答には若者世代のフリーターへの理解と不安が混在しています。「自分がやりたいことを探すにはいいことだ」の問に『そう思う』と回答した人が74.0%と、その人の生き方を尊重した捉え方がある一方で、「フリーターであると、後々まで不利だ」が73.3%、「誰でもフリーターになってしまうかもしれない」が70.1%と、不安や心配に思う捉え方もかなり多くなっています(図8)。 (3) 家事・育児は「協力して」 18〜29歳の若者世代で実際に家事、育児をしている人の割合は、それぞれ53.9%、6.9%となっていますが、親から独立し、又は家族を形成していこうとする人の多いこの年代の人たちは、家事、育児について、どのような考え方を持っているのでしょうか。 活動調査の結果によると、「仕事をしているかどうかにかかわらず、家事や育児は夫と妻で分担すべきだ」は72.0%(図9‐1)、「子育ては、周囲の人たちも積極的に関わったほうがよい」では74.5%、「家族を支える家事や育児、介護も、収入を得るための仕事と同じくらい大変だ」では92.6%の人が『そう思う』と回答しています。この割合は、いずれも他の年代よりも高く、若者世代が、家事・育児等の家庭のことを夫婦又は家族が協力して行っていくものとして認識していることが分かります。 家事や育児の分担について男女別に見ると、男性のほうが『そう思う』の割合は低く、性別により差が見られます(図9‐2)。 (4) 結婚や子どもを持つことを、どのように考えているのか? ■20代の結婚の状況 まず、若者世代のうち20代の結婚に関する最近の傾向を見ていきます。 平成27年国勢調査によると、20代で配偶者のいる人の割合は、男性が12.7%、女性が19.7%で、全国平均と比べると3ポイント程度低くなっています(図10)。10年前、5年前と比較すると、配偶者のいる割合は徐々に下がっています。 ■結婚に関する意識と希望 このような傾向の中、結婚というものを若者世代はどのように捉えているのでしょうか。 まず、横浜市民意識調査において、「必ずしも結婚する必要はない」について尋ねた結果ですが、18歳?29歳の51.7%が『そう思う』と回答し、他の年代よりも高い割合となっています(図11)。65歳以上では『そう思わない』と考える人の方が多く、年代により違いが見られます。 結婚して家庭を築き、子どもを育てるという家族観が薄れていく中で、多様な生き方を尊重する又は否定をしない傾向があると考えられます。 結婚の意向については、内閣府が行った結婚・家族形成に関する意識調査の結果、全国の20代の未婚者のうち男性の78.0%、女性の86.0%がすぐにでも又はいずれは「結婚したい」と考えています。結婚したい理由については、20代では、男女とも「好きな人と一緒にいたい」、「家族を持ちたい」「子供がほしい」が上位の3つで、男性では「やすらぎがほしい」、女性では「老後に一人でいたくない」がこれらに続いています。 また、結婚観として、20代の既婚者の男性の66.3%、女性の67.2%が「結婚はしたほうが良い」と回答しています( 図12)。 さらに、内閣府の家族と地域における子育てに関する意識調査によると、「若い世代で未婚・晩婚が増えている理由」として、20代男性は「経済的に余裕がないから」が最も多く、20代女性は「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」が一番で、「仕事(または学業)に打ち込みたいから」が続いています。 ■晩産化の傾向から20代の出産は減少 次に、20代で子どもを持つことについての状況ですが、晩産化の影響を反映し、20代での出産は減少しています。 2017(平成29)年の出生数は2万7763人ですが、そのうち母親が20〜24歳である子は1532人、25〜29歳は6159人でそれぞれ全体の5.5%、22.2%を占めています。2000(平成12)年ではこの割合は8.8%、36.8%でかなりの変化が見られましたが、2014(平成26)年頃からはこの割合はほぼ横ばいとなっています(図13)。 20代女性の人口千人当たりの出生数は、20〜24歳で16.1人、25〜29歳で64.3人となっています。 ■子どもを持つことについての意向 横浜市民意識調査において、「子どもはなるべくたくさん産み育てる方がよい」との考え方を尋ねたところ、若者世代では、「そう思う」と回答した人の割合は19.7%で、他の年代よりも低くなっています。50歳以上では「そう思う」と考える人の方が多くなっており、結婚に関する意識と同様に年代により考え方に違いがあります。 また、内閣府の結婚・家族形成に関する意識調査では、具体的に「子供を実際に何人くらい欲しいか」尋ねています。20代の未婚の男性で2.0人、女性で2.1人、既婚者は男性及び女性は2.4人となっています。 さらに、子育てをすることについては、若者世代にとっても様々な不安があるようです。20代では、「経済的にやっていけるか」、「仕事をしながら子育てすることが難しそう」、「子育てするのが大変そう」、「きちんとした子供に育てられるか自信がない」が不安要素の上位に挙げられ、これは未婚者、既婚者共通です(図14)。 また、「子供は欲しくない」との回答は、未婚の男性で10.7%、女性で7.8%となっています。理由については、将来の教育費など経済的な理由を挙げる人が多くなっています。