政策2 安全・安心な暮らしの実現 ◆DVの正しい理解促進に向けて広報啓発を行うとともに、DVへの相談対応と被害者支援の充実を図ります。特に若年層のデートDV防止への取組を強化します。また、性犯罪や性暴力の根絶に向けて、関係機関と連携して被害者支援に取り組みます。 ◆経済的リスクや生きづらさを抱え、生活上の困難を抱える女性への自立支援を充実させます。 ◆ライフステージに応じて変化の大きい女性の健康課題に対して支援を行うとともに、妊娠・出産等に関する若い世代への正しい知識の普及を図ります。 ◆多様な性のあり方への理解促進と、性的少数者への支援に取り組みます。 施策4 DV防止とあらゆる暴力の根絶 施策5 困難を抱えた女性への自立支援 施策6 ライフステージに応じた女性の健康支援 施策7 多様な性のあり方への支援と理解の促進 施策4 DV防止とあらゆる暴力の根絶 目標と方向性  DV防止と被害者の支援に向けて、相談支援、安全確保、自立に向けた支援の取組を進めます。特に若年層向けの啓発・教育や相談窓口の充実、児童虐待対応部署と連携した対応の強化を図ります。 さらに、性暴力や性犯罪等、性や性別に関わるあらゆる暴力の防止と社会的理解の促進、被害者等支援などの取組を推進します。 現状と課題 ○新型コロナウイルス感染症拡大以前の横浜市のDV相談件数は、横ばい(年間約5,000件)でした。しかし、新型コロナウイルス感染症による外出自粛や在宅勤務、休業や失業が増加する中、相談現場には経済的困難や家庭生活の負担増による家庭関係の不和や悪化の声が多く寄せられ、DV の深刻化が懸念されています。相談体制の充実や被害者支援とともに、暴力の未然防止や根絶につながる正しい理解の普及に向けて、広報・啓発の充実を図る必要があります。 ○DVに関する相談窓口の認知度(男女共同参画に関する市民意識調査において、相談先として具体的な名称を1つ以上回答した人の割合)は70.6%となっています。 ○DV被害者及びその同伴家族に対する安全の確保や保護から自立に向けた相談・支援を総合的に行うとともに、関係機関との更なる連携強化も必要です。 ○内閣府の調査によると、配偶者からの暴力被害について「何度もあった」と回答した人の割合は20代が一番高く(男性:25.0%、女性:20.7%)なっていますが、横浜市DV相談支援センターに相談した人の年齢は20代以下が他の世代に比べて非常に少ない(6.8%)状況です。 ○若い世代への理解促進も重要であり、若年層に身近なSNS等を活用してデートDV防止の啓発や相談対応を充実させる必要があります。 ○DV加害者更生のための支援が求められています。 ○DVの起きている家庭では、子どもに対する暴力が同時に起きている場合が少なくありません。子ども自身が直接暴力を受けている場合のほか、子どもの面前でのDVは子どもに対する心理的虐待に当たります。また、DV被害者は、加害者に対する恐怖心などから、子どもに対する暴力を抑止することできなくなる場合があり、児童虐待が深刻化することがあります。 ○法務省「犯罪白書」(令和元年度)における平成30年度の強制わいせつの認知件数は、男性が188件に対して女性は5,152件であり、性暴力の被害者は女性が圧倒的に多くなっています。 指標1 DVに関する相談窓口の認知度※ 現状値 70.6%(令和2年度) 目標(令和7年度) 80% ※男女共同参画に関する市民意識調査において、相談先として具体的な名称を1つ以上回答した人の割合 指標2 DVに関する相談件数 現状値 4,604件(令和元年度) 目標(令和7年度) 5,300件(令和6年度) 主な取組(事業) 1 DVの相談支援体制の充実 所管 政策局、こども青少年局、区  こども青少年局を統括・調整部門とし、区福祉保健センター、男女共同参画センターの3者が一体的に「横浜市DV相談支援センター」の機能を果たし、DV被害者への相談・支援を行うとともに、関係機関との連携強化により、体制の充実を図ります。また、職員等への研修を実施し、支援者の育成と資質向上を図ります。さらに、神奈川県の「かながわDV相談LINE」や国の「DV相談+(プラス)」など、SNS相談も含めて相談窓口の周知を行います。 主な取組 @ 横浜市におけるDV相談の実施     A 関係機関との連携・情報共有 事業量(現状値) @ DV相談件数 (令和元年度:4,604件)    A DV施策推進連絡会の開催 (令和元年度:1回) 2 DV被害者の自立に向けた支援 所管 政策局、こども青少年局、建築局、区  関係機関や民間団体と連携し、被害者の保護から自立に向けた切れ目のない支援を行います。また、多様化する被害者のニーズや背景に対応するため、民間支援団体と協働し、一時保護施設等退所後の生活の安定を図るための支援を行う「退所後支援事業」や、一時保護には至らないものの支援が必要な場合に、一時的な居場所の提供と相談支援を行う「女性のための一時宿泊型相談支援事業」等を本格実施します。  さらに、市営住宅入居者募集におけるDV被害者世帯の優遇を行うとともに、居住支援協議会の相談窓口や居住支援団体と連携し、DV被害者等の入居を支援します。DV被害を認識した際に事前申込みなしで参加できる心のケア講座や、被害者のサポートグループ等のプログラムを実施します。 主な取組 @ 女性緊急一時保護施設補助事業    A 一時保護施設等退所者へのアフターフォロー B 一時保護以外の相談支援等       C 住宅確保の支援(市営住宅・住宅セーフティネット事業) D サポートグループの運営          E 女性のための心のケア講座 事業量(現状値) @ 補助団体数(令和元年度:4団体)  A 退所後支援事業(令和2年度:実施) B 女性のための一時宿泊型相談支援事業(令和2年度:実施) C 市営住宅募集における当選倍率優遇世帯数(令和元年度:6世帯) D 利用者数(令和元年度:のべ38人)  E 参加者数(令和元年度:のべ121人) 3 加害者対応に関する取組 所管 こども青少年局、健康福祉局  DV加害者更生プログラムを行っている民間団体の活動を支援します。また、「横浜市再犯防止推進計画」に基づき、誰もが安心して自分らしく健やかに暮らせるよう、更生支援を推進します。 主な取組 @ 加害者更生プログラム実施団体への支援 A 更生支援(横浜市再犯防止推進計画) 事業量(現状値) @ 支援した人数 (令和元年度:のべ569人) A 計画の推進 4 DV防止・暴力の根絶に向けた正しい理解の普及 所管 政策局、区  DVが重大な人権侵害であることが社会で共通の認識となるよう、DVの正しい理解の促進に取り組みます。被害者が、DVに当たる行為を受けていることをしっかり認識し、相談や公的支援に適切につながることができるよう、相談窓口に関する必要な情報を周知します。広報啓発活動では、DV防止を目的に被害者だけではなく加害者の気付きや、社会のDVについての理解促進を促すため、チラシやカード等の紙媒体やウェブサイト、SNSを活用した情報発信を行うほか、11月の「女性に対する暴力をなくす運動」期間において、区役所でもキャンペーンを展開します。 主な取組 @暴力防止キャンペーン(毎年11月)  ADVに関する広報啓発(通年) 事業量(現状値) @ 市内全区での広報啓発、SNS広告の実施(令和2年度) A 相談窓口に関するチラシ、カードの配布、SNSによる情報発信 5 若年層におけるデートDV防止と理解促進・性暴力に関する啓発 所管 政策局  デートDVについて、理解促進を図るとともに、被害や加害への気付きを促すため、中学生・高校生等や、教育関係者向けの講座を実施します。また、若年層のニーズを踏まえ、新たにSNSを活用したデートDV相談を検討し、試行実施と検証、本格実施を進めます。広報啓発活動では、対象を絞ったSNS広告の掲出など、若年層向けの取組を強化します。また、若年層への性暴力被害が深刻化している状況を踏まえ、国のキャンペーン等と連携した広報啓発を実施します。 主な取組 @ 若年層が相談しやすい体制の構築    A 若年層を対象とした理解促進 事業量(現状値) @ SNSを利用した相談の実施(令和3年度:試行実施、令和4年度:本格実施) A デートDV防止ワークショップ(令和元年度:17校21コマ) A SNS等による広報啓発(令和2年度:11月にSNS広告実施) 6 児童虐待対応との連携強化 所管 こども青少年局、区  児童虐待とDVは相互に重複して発生する場合が少なくないことから、DV被害者とその子どもへの支援においては、横浜市DV相談支援センターと児童相談所や区の児童虐待対応部門で連携し、適切な安全確保と自立に向けた支援を行います。また、DVと児童虐待が同時に起きることやその特性についての啓発、相談先の周知を児童虐待対応部門と一体的に行っていきます。 主な取組 @ 要保護児童対策地域協議会 事業量(現状値) @ 実施回数 (令和元年度:横浜市代表者会議2回、区代表者会議22回) 7 性暴力・性犯罪への対応 所管 政策局、市民局  性暴力を受けた被害者からの相談に応じ、関係機関や自助グループ等の情報提供を実施します。また、性暴力被害の影響からの回復を支援するため、中長期的視点に立った支援としてセルフケアグループを運営します。性犯罪を含む犯罪被害者等(犯罪等の被害に遭い、様々な問題に直面する市民とその家族、遺族)に対し「横浜市犯罪被害者等支援条例」に基づいて、警察やかながわ性犯罪・性暴力ワンストップ支援センター「かならいん」と連携しながら総合支援窓口「横浜市犯罪被害者相談室」を中心に、相談支援、日常生活支援、経済的負担の軽減、住居支援等を行います。 主な取組 @ 横浜市犯罪被害者相談室   A セルフケアグループの運営   B 自助グループ支援 事業量(現状値) @ 相談件数 (令和元年度:のべ251件)    A 参加者数 (令和元年度:のべ12人) B 参加者数 (令和元年度:のべ80人) 施策5関連取組 ひとり親家庭の女性への就労支援・自立支援 施策5 困難を抱えた女性への自立支援 目標と方向性 若年無業者や非正規職シングル、ひとり親家庭等、経済的リスクや生きづらさを抱え、生活上の困難に陥りやすい女性への自立支援を行います。就労支援や自立支援、当事者同士で支えあうための自助グループ支援などを通して、困難な状況から早期に脱し、安全・安心な環境で暮らしていくための取組を進めます。 現状と課題 ○若年無業の女性は「家事手伝い」等とみなされ、統計的に「見えづらい存在」となっています。 ○非正規職シングル女性は就職氷河期世代に多く、不本意に非正規職についている割合が高いとされています。 ○新型コロナウイルス感染症の影響により雇用情勢が悪化しています。非正規職の女性は雇用が不安定で収入が低く、特にシングルやひとり親家庭などにおいて、経済的な影響がより深刻化しやすい状況にあります。 ○総務省「国勢調査」(平成27年度)において、横浜市のひとり親家庭数(ほかの家族等との同居も含む)は26,391世帯で、そのうちひとり親と20歳未満の子から構成される世帯数は19,724世帯です。(母子家庭が17,600世帯、父子家庭が2,124世帯) ○市の支援事業(ひとり親サポートよこはま、ジョブスポット)によるひとり親家庭の就労数は、337人(令和元年度)となっています。 ○横浜市「ひとり親世帯アンケート」(平成29年度)によると、母子家庭では非正規雇用での就労が半数近くを占めています。また、児童扶養手当や養育費等も含む年間の世帯総収入の平均は、母子家庭で361万円、父子家庭で643万円となっており、母子家庭では生活費に関する悩みを多く抱えていると考えられます。 ○また、同調査では、「ひとり親家庭の支援制度を利用したかったが利用できなかった」と回答した理由として、「制度があることを知らなかったから」が多く挙げられていることから、制度の情報提供や広報・PRに関する取組強化が必要です。 ○外国人は、言語や文化・価値観、生活習慣等の違いによる地域での孤立等に加えて、女性であることで、困難な状況に置かれていることが多く、多言語での情報提供や相談体制の整備などが求められています。 ○障害のある人は、それぞれの障害の状況により、生活や就労の場をはじめ社会の様々な場面で困難に直面していますが、さらに女性であることで、複合的に困難な状況に置かれる場合があります。社会的な理解促進・普及啓発や相談体制の充実が必要です。 活動指標 指標1 市の支援事業によるひとり親の就労数 現状値 337人(令和元年単年度) 目標(令和7年度) 2,300人(令和2から6年度累計) 主な取組(事業) 1 若年無業や非正規職シングル女性への支援 所管 政策局 若年無業の女性の中でも、特に就労や人間関係の構築に困難を抱える方に対し、就業準備講座を実施します。また、非正規職で働くシングル女性の不安や今後の働き方に焦点をあてた事業を実施します。 主な取組 @ 若年無業女性の就労支援 A 非正規職シングル女性を対象としたセミナー・情報提供 事業量(現状値) @ 働きづらさに悩む若年無業女性支援の講座 (令和元年度:2コース43人) @ 働きづらさに悩む若年無業女性支援の就労体験等(令和元年度:75コマ347人) A 講座数、参加者数 (令和元年度:8コマ132人) 2 ひとり親家庭の女性への就労支援・自立支援 所管 政策局、こども青少年局、健康福祉局、建築局、区  ひとり親家庭(特に母子世帯)は、就業や子育て、生活等の様々な面で困難を抱えやすく、経済的に不安定になるリスクが高いため、「貧困の世代間連鎖」に子を陥らせない視点も含めた総合的な支援を行います。母子家庭等就業・自立支援センター(ひとり親サポートよこはま)において、ひとり親のそれぞれの事情に応じたきめ細やかな支援を行い、ひとり親の就労支援をサポートしていきます。  また、市営住宅の募集において、ひとり親世帯(母子・父子世帯)への当選倍率優遇や、「子育て世帯」(ひとり親世帯含む)に対して、収入基準緩和、当選倍率優遇、子育て世帯限定(入居期限なし)の住宅募集等を行います。さらに、ひとり親世帯が入居しやすいセーフティネット住宅の登録を促進するとともに、横浜市居住支援協議会相談窓口において、居住支援団体や福祉支援団体等と連携し、ひとり親家庭の住まいの確保を支援します。 主な取組 @ ひとり親家庭等自立支援事業 A 母子・父子家庭自立支援給付金事業 B ひとり親家庭の住宅確保の支援 C 女性としごと 応援デスク(男女共同参画センター) D シングルマザーの自助グループ支援 E 就労支援(ジョブスポット) 事業量(現状値) @ 利用者数 (令和元年度:4,561人) A 利用者数 (令和元年度:150人) B 市営住宅募集における当選倍率優遇世帯数 (令和元年度:800世帯) B 相談窓口におけるひとり親家庭からの相談件数(令和元年度:23件) C ひとり親家庭の利用者数 (令和元年度:9人) D 参加者数 (令和元年度:のべ18人) E 支援した人数 (令和元年度:592人) 3 性別に関わる問題の解決に向けた相談・支援 所管 政策局  家庭や職場、地域などで直面する様々な困難について、電話や面接による相談を行い、相談者の気持ちを尊重しながら、相談者が持っている力を発揮できるよう、問題解決に向けた支援をします。また、横浜市男女共同参画推進条例に基づき、セクシュアルハラスメントなど、男女共同参画を阻害する要因によって人権が侵害された場合の相談、申出を受けます。 主な取組 @ 心とからだと生き方の総合相談       A 男女共同参画に関する人権侵害相談・申出制度 事業量 (現状値) @ 相談者数 (令和元年度:3,889人)   A 相談件数、申出件数 (令和元年度:55件、5件) 4 外国人等への支援 所管 政策局、国際局、建築局 「横浜市多文化共生総合相談センター」を中心に、市内11か所の国際交流ラウンジや関係機関が連携しながら、女性が抱えやすい困難を踏まえ、市内在住の外国人等への総合的な情報提供・相談対応を行います。また、横浜市居住支援協議会相談窓口と市内で外国人の居住支援を行っているNPO法人かながわ外国人すまいサポートセンターとの連携した取組により、外国人世帯の住まいの確保を支援します。さらに、男女共同参画センターにおいて、外国にルーツを持つ女性の生活課題やニーズに関する実態把握のための調査を行います。 主な取組 @ 横浜市多文化共生総合相談センター A 国際交流ラウンジ B 外国人世帯の住宅確保の支援 C 外国にルーツを持つ女性の生活課題やニーズの把握 事業量(現状値) @ 相談件数(令和元年度:6,943件) A 相談件数(令和元年度:15,079件) B 相談窓口における外国人世帯からの相談件数(令和元年度:6件) C 外国にルーツを持つ女性の生活課題やニーズの調査 5 障害者等への支援 所管 政策局、健康福祉局  障害のある人が日常生活や就労等の場において直面する困難において、障害に加えて特に女性であることで複合的な困難に置かれやすい状況があることから、女性の相談窓口等における、障害に関する必要な配慮の理解促進など、相談体制の充実を図ります。 主な取組 @ 女性向け相談における体制の充実  A 障害福祉相談支援における体制の充実 事業量 (現状値) @ 相談窓口における障害に関する必要な配慮の理解促進(令和元年度:現状値なし) A 障害福祉相談支援機関等における女性に関する必要な配慮の理解促進(令和元年度:現状値なし) 6 自助グループ支援 所管 政策局 主な取組 @ 自助グループ支援 事業量(現状値) @ 参加者数 (令和元年度:45グループのべ5,668人) 施策2関連取組 ハラスメント防止対策 コラム デートDVをなくすために  DVは、夫婦等の間だけではなく、恋人の間でも起こります。交際相手からのDVを「デートDV」といい、殴る、蹴るといった身体的暴力だけでなく、相手が傷つく言葉を言ったり、無視をしたり、行動の制限をするといったことも含まれます。「好きだから」「付き合っているから」を理由に相手を「自分のもの」として扱うことはデートDVにあたります。 内閣府の調査によると、約6人に1人が、交際相手から暴力を受けたことがあると答えています。(出典:男女間における暴力に関する調査報告書(平成30年3月)) また、ある民間の調査では、交際経験がある10代の女性の44%、男性の27%、全体では38%が何らかの被害にあったと答えています。(出典:デートDV白書VOL.5 全国デートDV実態調査報告書 2017年認定NPO法人エンパワメントかながわ発行)  DVには一連のサイクルがあり、巻き込まれると簡単には抜け出せません。サイクルが繰り返されるうちに暴力が激しくなり、被害が深刻になってしまう傾向にあります。  横浜市では、中高生や大学生等を対象に、学校等からの依頼に応じてデートDV防止の出前講座を実施しています。そこでは、自分を大切にすることや、被害を見聞きしたり、自らの被害に気付いたときに何ができるかを学びます。受講後のアンケートでは「自分には関係ないと考えていたが、他人事ではないと思った」といった学びに加え、「自分がしていることはデートDVかもしれない」という加害への気付きも報告されています。 デートDVは深刻な人権侵害であり、どんな理由があろうと許されるものではありません。恋人同士が対等でお互いを尊重し合える関係を築き、暴力に気づいたときには迅速に助けを求められるよう、デートDV防止と理解促進に向けて取組を進めていきます。 コラム 性犯罪・性暴力の根絶に向けて いつ、どこで、誰と、どのような性的な関係を持つかは、自分が決めることです。互いの同意のない、望まない性的な行為は、性的な暴力にあたります。性的な暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる重大な人権侵害であり、心身に長期にわたる深刻な影響を及ぼします。 内閣府の調査によると、女性の約13人に1人、男性の約67人に1人が「無理やりに性交等をされたことがある」と回答しています。加害者との関係は、(元)配偶者や(元)交際相手、職場関係者など、面識がある人が約9割です。また、警察へ連絡・相談した人はわずか3.7%に過ぎません。(出典:男女間における暴力に関する調査報告書(平成30年3月)) 平成29年、刑法制定以来110年ぶりに性犯罪に関する改正がありました。「強姦罪」が「強制性交罪等」に変更され、厳罰化や非親告罪化(被害者の告訴がなくても起訴できること)等が図られましたが、犯罪要件の厳しさや性的同意年齢の低さ(13歳)、公訴時効等の課題については施行後3年後の検討事項とされました。それを受けて令和2年6月、政府の性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議で「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定されました。これは令和2年度から4年度までの3年間を性犯罪・性暴力対策の集中強化期間と定め、刑事法に関する検討や手厚い被害者支援の確立、加害者対策、被害申告・相談環境の整備、教育・啓発活動などの取組を抜本的に強化していくものです。 近年、被害の告白や告発を行う「#MeToo(ミー・トゥー)」運動や、性暴力根絶を目指す「フラワーデモ」など、性犯罪・性暴力の根絶を求める行動が全国に広がりつつあります。性暴力はあってはならないという認識を社会全体で共有するとともに、性暴力のない社会の実現に向けて、実効性のある取組の加速化が喫緊の課題となっています。    コラム 若年無業女性の就労支援プログラム 子どもの頃から人間関係が苦手、学校でのいじめなどで不登校が長い、就職氷河期で職に就けなかった、などの理由により、仕事が続かないことや働きづらさに悩んでいる人がいます。特に女性は家事・介護等の役割が期待されがちなため、就労へのきっかけをつかみにくい状況もあります。 横浜市男女共同参画センターでは、そうした悩みを抱える女性を対象に、「ガールズ編 しごと準備講座」、「めぐカフェ就労体験」等のプログラムを10年にわたり実施し、修了者は400人超となり、その8割以上が様々な形での就労を実現しています。 「同じような体験をしてきた仲間の中で安心感をもち、自信を回復できた」「時間をかけて次への一歩を踏み出せた」という声とプログラムをホームページで紹介しています。 施策6 ライフステージに応じた女性の健康支援 目標と方向性 誰もが生涯を通じて適切に健康管理を行えるよう取組を進めます。特に女性は、思春期から妊娠・出産、更年期、高齢期などライフステージごとの変化が大きく、特有の健康課題があることから、心身の状態に応じて必要なサポートを得られるよう支援します。また、性や妊娠・出産に関して、女性が自らの意思で選択し健やかに生きられるよう、若い世代への正しい知識の普及啓発を図ります。 現状と課題 ○若い世代に妊娠や不妊、出産に関する正しい知識を伝える取組が求められています。 ○妊娠を継続することや子どもを産み育てることを前向きにとらえることができない「予期せぬ妊娠」では、母子の健康に大きな影響を及ぼし、生後間もない虐待による死亡につながる場合もあります。 ○出産する女性の3人に1人が35歳以上で出産しており、全国比で高い数値となっています。 ○産後うつ等の心の不調を抱える人を早期に把握し支援を行う上で、産婦健康診査の重要性は高まっています。(令和元年度受診率:83.4%) ○がんと診断される人のうち、20〜50代前半では女性のり患数が男性を大きく上回っており、この世代では女性ががんになるリスクが高くなっています。診断後に、約2割が退職したという調査があり、がん治療と就労の両立が課題です。(国立がん研究センターがん対策情報センター「患者体験調査報告書平成30年度調査」) ○特に乳がんのり患数は40代から増加します。検診等により少しでも早く発見し、早い段階で治療につなげることで、治療による身体的な影響も少なくなり、QOL(生活や人生の質)の向上につながります。 ○横浜市「第2期健康横浜21中間評価報告書」(平成29年度)によると、横浜市の健康寿命と平均寿命との差が男性は9.9歳、女性は12.6歳、平均自立期間と平均寿命の差が男性は1.8歳、女性は3.7歳となっており、男女差があります。高齢化が進む中、健康寿命の延伸に向けては、働く世代の健康づくりや、企業や事業所が行う健康管理への支援が重要です。 ○介護保険制度において要支援となった原因は男女で傾向が異なっており、男性は「高齢による衰弱」「脳血管疾患」「心臓病」などの生活習慣病が多いのに対し、女性は「骨折・転倒」「関節疾患」が多くなっています。 ○総務省「就業構造基本調査」(平成29年度)によると、横浜市の医療・福祉分野における従事者割合は女性が約8割となっています。国際連合報告書「政策概要:新型コロナウイルスの女性への影響」では、医療労働者に女性が多いことから、新型コロナウイルス感染リスクが高いことが指摘されています。新型コロナウイルスが与える女性の健康に関する影響について、注視していく必要があります。 活動指標 指標1 産婦健康診査の受診率 現状値 83.4%(令和元年度) 目標(令和7年度) 89.0%(令和6年度) 指標2 子宮頸がん・乳がん検診の受診率 現状値 子宮頸がん52.2% 乳がん51.6%(令和元年度) 目標(令和7年度) 各50%維持(令和4年度) 主な取組(事業) 1 誰もが安心して出産・子育てができる環境づくり 所管 こども青少年局、区  母子ともに安全・安心な出産を迎えるため、妊婦健康診査の費用助成や受診勧奨を行います。女性のための健康相談への対応や不妊・不育に関する相談体制を充実させるほか、不妊に関する理解促進の取組や、特定不妊治療(体外受精・顕微授精)に対する助成を実施します。「にんしんSOSヨコハマ」では様々な事情から予期せぬ妊娠をした人等の相談窓口として、妊娠による不安や悩みへの相談支援を充実させます。また、妊娠中から産後までの心身が不安定になりやすい時期に、必要な支援が受けられ、安心して子どもを産み育てられるよう、妊娠期からの切れ目のない支援の充実に取り組みます。 主な取組 @ 妊娠・出産・不妊に関する相談支援の充実 A 安心・安全な妊娠・出産に向けた産科医療(妊婦健康診査等) B 妊娠期からの切れ目のない支援の充実 事業量(現状値) @ 特定不妊治療費助成件数(令和元年度:4,275件) @ 不妊・不育・専門相談件数(令和元年度:55件) @ にんしんSOSヨコハマ相談件数(令和元年度:509件) A 妊婦健康診査事業(令和元年度:323,591回) B 母子保健コーディネーターによるセルフプラン作成件数(令和元年度:18,239件) B 産後母子ケア事業の利用者数(令和元年度:1,299人) 2女性特有のがん対策 所管 健康福祉局、医療局 女性特有のがんである子宮頸がん、乳がんは20〜40代の子育て・働き世代の女性にも多いことから、検診の結果、要精密検査となった場合には、早期治療につなげるためにできるだけ早い時期に精密検査を受診して、診断を確定することが重要です。また、がん治療と生活・仕事の両立支援等ライフステージに応じた対策等を推進します。 主な取組 @ 子宮頸がん・乳がん検診 A がん治療と仕事の両立支援 B がん患者の社会参加の支援 事業量(現状値) @ 子宮頸がん・乳がん検診受診率 (令和元年度:子宮頸がん52.2% 乳がん51.6%) A がん治療と仕事の両立支援に関する啓発 (令和元年度:事業者向け啓発映像・パンフレットのHP掲載) B がん患者へのウィッグ購入費用助成 (令和元年度:1,388件) 3健康づくり・介護予防・高齢者の支援 所管 政策局、健康福祉局、区 健康寿命と平均寿命の差を踏まえ、若い世代から継続的に健康づくりに取り組み、将来の介護予防につなげるため、健康行動の習慣化や定着化に向けて取組を推進します。また、高齢者の社会参加や生きがいづくりにつながる活動の支援を行います。 主な取組 @ 介護予防と連携した健康横浜21の推進 A 元気づくりステーションの推進 事業量(現状値) @ 介護予防と連携した健康づくりの取組 (令和元年度:ロコモティブシンドローム/オーラルフレイルに関する啓発) A 元気づくりステーション参加者数 (令和元年度:のべ118,464人) 4 性に関する適切な教育、妊娠・出産・不妊に関する正しい知識の普及啓発 所管 政策局、こども青少年局、教育委員会事務局  学校教育を通じた性に関する適切な教育を推進するため、教職員対象の研修等を実施します。また、若い世代に妊娠や不妊、出産に関する正しい知識を伝える取組を充実させます。 主な取組 @ 学校教育を通じた適切な性に関する教育の推進 A 妊娠・出産・不妊に関する正しい知識の普及啓発 B 若年女性のための性の健康セミナー 事業量(現状値) @ 教職員対象の研修(令和元年度:1回) A 思春期保健事業(令和元年度:11回) B 参加者数(現状値なし) 5 女性特有の健康課題へのアプローチ 所管 政策局  産後、更年期、女性のがん等、女性特有の健康課題について情報提供し、健康の維持や疾病予防、治療方法の選択に主体的に取り組めるよう支援します。また、女性の健康課題別に運動により予防や症状の軽減を図る取組を実施します。 主な取組 @ 女性特有の健康課題に着目した講座やセミナー 事業量(現状値) @ 参加者数(令和元年度:のべ5,273人) 施策2関連取組 企業の取組支援(健康経営/SDGs) コラム 妊娠・出産相談窓口「にんしんSOSヨコハマ」 「にんしんSOSヨコハマ」では、思いがけない妊娠や、子どもを産むこと、子どもを育てることに悩む方が、孤立することなく気軽に相談支援を受けられるように、電話やメールで相談に応じています。匿名での相談も受け付けています。 専門の相談員が、様々な事情により悩みを抱えた方の状況を丁寧に受け止めながら、適切な情報提供を行います。 また、ご相談内容によっては、各区の福祉保健センターや専門支援機関への紹介も行います。 【こんなご相談に対応しています】 〇思いがけない妊娠にとまどっている 〇妊娠したかもしれないと不安だ 〇子どもを産み育てることに不安や悩みを抱えている 〇妊娠中の体調のことで悩んでいる など [電話相談]045-662-5524 [メール相談]右記QRコードから専用サイトにアクセス 施策7 多様な性のあり方への支援と理解の促進 目標と方向性 性的少数者が深刻な生きづらさを抱えている実態を踏まえ、多様な性のあり方に関する社会的な理解の促進や、暮らしの中での様々な困難への対応、差別・偏見の解消などの取組を推進します。また、性的少数者に対して、各現場や職場において必要な配慮が広がるよう、社会への啓発とともに、企業・学校・行政等への研修の充実を図ります。 ○性的少数者の割合は20人に1人とも言われますが、差別や偏見を恐れてカミングアウトしていない人も多く、可視化されにくい状況にあります。 ○「世の中は男性と女性だけで、異性を好きになることが当たり前」とされてきた社会において、性的少数者は性的指向や性自認を理由とした偏見や差別、暮らしの中での困難に直面しているといわれています。 ○誤解や理解不足から生じる偏見や差別を解消するために正しい知識を身につけ、理解を深めるとともに、当事者への支援が求められます。横浜市では、誰にも相談できずに孤立し、ひきこもりや自殺という深刻な状況に陥りがちな青少年層を中心に、臨床心理士による個別相談のほか、性的少数者であることを隠すことなく、安心して過ごすことができる交流の場を提供しています。 ○国の自殺総合対策大綱では、性的少数者の自殺を考えている人の割合の高さと、その背景には性的少数者に対する無理解や偏見等があることにふれ、教職員の理解を促進することとしています。 ○様々な事情によって、婚姻の届出をせず、あるいはできずに、悩みや生きづらさを抱えている性的少数者や事実婚の方を対象とした「横浜市パートナーシップ宣誓制度」を令和元年12月から実施しています。宣誓された方が、自分らしく、いきいきと生活することを応援していくとともに、周囲の理解促進を図り、一人ひとりが互いの人権を尊重し、多様性を認め合い、ともに生きる社会の実現を目指します。 活動指標 指標1 多様な性のあり方を理解している市民の割合※ 現状値 70.9%(令和2年度) 目標(令和7年度) 80% ※ヨコハマeアンケート「LGBTなど性的少数者に関するアンケート」において、性的少数者に対するイメージについて「多様性や個性のひとつである」と回答した人の割合 主な取組(事業) 1 研修・教育・啓発の推進 所管 市民局、教育委員会事務局  多様な性のあり方への理解促進のため、市民や企業等への啓発、市職員及び学校教職員への研修を実施します。あわせて、市役所や学校において、性的少数者に配慮した具体的な取組を進めます。 主な取組 @ 教職員等の理解促進 A 職員の理解促進 B 市民・企業等への啓発 事業量(現状値) @ 性的少数者に関する研修 (令和元年度:通年) @ 性的少数者に関する相談窓口の周知 (令和元年度:1回) @ スクールカウンセラー研修会 (令和元年度:10回 ) A 性的少数者及び多様な性に関する研修(令和元年度:通年) A 多様な性のあり方に関するハンドブック (令和元年12月発行(令和2年8月改訂)) B セミナー等の開催 (令和元年度:12回 ) 2相談・支援事業 所管 政策局、市民局  性的少数者であることを理由に困難な状況に置かれている方々等に対し、臨床心理士による個別専門相談や安心して過ごすことができる交流スペースの提供を行うほか、自助グループ等への支援を実施します。 主な取組 @ 個別専門相談「よこはまLGBT相談」 A 交流スペース「FriendSHIP よこはま」 B 性的少数者のための自助グループ支援 事業量(現状値) @ 相談件数 (令和元年度:21件 ) A 参加者数 (令和元年度:95人) B 参加者数 (令和元年度:のべ37人) 3 パートナーシップ宣誓制度 所管 市民局  性的少数者や事実婚の方など、同性・異性を問わず、お互いが人生のパートナーであることを約束した2人が宣誓を行い、市が宣誓を受けたことを証明する制度です。日常生活における様々な場面で2人の関係を証明する手段として活用されることが期待されます。なお、宣誓された方は、市営住宅の入居に際して同居可能な親族としてみなされます。 主な取組 @ 横浜市パートナーシップ宣誓制度 事業量(現状値) @ 宣誓組数 (令和元年度:76組) コラム 性の多様性を認め合う社会に向けて  性的少数者(いわゆるLGBTなど)の中には、生まれついた性別への違和感や、恋愛対象が同性であることが理由で、自分が周囲と異なると思ってしまい、偏見を恐れて、自分のことを周囲に伝えられず、悩みを抱えてしまう方もいます。  横浜市では、こうした悩みや生きづらさに寄り添っていくため、「個別専門相談」や「交流スペース」を提供しています。 また、令和元年12月から、性的少数者や事実婚の方を対象に、互いが人生のパートナーであることを宣誓する「横浜市パートナーシップ宣誓制度」を実施しています。宣誓者からは「2人の関係を証明できるものができて良かった」「宣誓を契機に、初めて家族同士を会わせることができた」など喜びの声をいただいており、この制度が、性の多様性に関する周囲の理解を促すとともに、多くの性的少数者の方に希望と勇気を与えるものになることを願っています。 セクシュアリティのあり方は、皆それぞれです。一人ひとりが、互いに多様性を認め合い、誰もが自分らしく生きることができる社会を目指すことは、とても大切なことです。  LGBTとは  LGBTは性的少数者を表す言葉のひとつであり、LGBT以外にも多彩なセクシュアリティが存在します。