第U章 女性活躍・男女共同参画を取り巻く状況 1 横浜市の状況 ≪人口・世帯の状況≫ ○年少・生産年齢人口の減少、高齢者の増加 平成27年国勢調査を基準とした横浜市将来人口推計では、総人口のピークは令和元(2019)年、ピーク時人口は373万人超となっています。以降は減少を続け2065年には302万人となる見込みです。 高齢化率は令和元(2019)年24.8%、2065年には35.6%まで上昇すると予測されています。 年少人口(0〜14歳)や生産年齢人口(15〜64歳)の減少も進行しており、2065年ではそれぞれ10.6%、53.7%まで減少すると予測されています。 ○「単独世帯」が最多 家族類型別一般世帯数の割合は、これまで「夫婦と子供から成る世帯」が最も多い家族類型でした。しかし「夫婦と子供から成る世帯」は減少傾向にあり、「単独世帯」が増加し続けています。平成22(2010)年には「単独世帯」が「夫婦と子供から成る世帯」を上回り、最も多い家族類型となっています。 ○共働き世帯の増加 世帯内の就業状況については、全国的に共働き世帯は増加傾向、専業主婦世帯は減少傾向にあります。横浜市においても、同様の傾向です。 ≪働く女性の状況≫ ○女性の労働力率(M字カーブ)は上昇、働く上での実質的な男女格差はいまだあり 女性の年齢階級別労働力率(いわゆるM字カーブ)の底は、平成22年から平成27年までの国勢調査の結果を比較すると6.6ポイント上昇しており、働く女性は増加しています。 しかし、正規雇用労働者の割合や平均勤続年数は男女間で差があり、依然として働く上での実質的な男女格差があります。 国では、女性の正規雇用労働者比率が20歳代後半でピークを迎えた後、低下を続ける「L字カーブ」という新たな課題が提起されており、「経済財政運営と改革の基本方針2020」においても、L字カーブの解消に向けた取組推進が掲げられています。 ○女性管理職割合は増加傾向も、依然として低い状況 市内企業の女性管理職割合は年々増加傾向にありますが、2割に満たない状況です。 企業の考える「女性管理職の数が少ない理由」として多いのは「女性本人が希望しない」「必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」「育児・介護等による制約が多い」などですが、「特にない」も3割超となっています。 ○新型コロナによる働く女性への影響 新型コロナウイルス感染症拡大による雇用情勢の悪化は、女性比率の高い非正規雇用労働者へ特に深刻な影響を及ぼしています。国の調査では、令和2年3月以降、女性の非正規雇用労働者数について、前年同月比で大きく減少しており、令和2年12月の非正規雇用労働者数の前年同月比で86万人の減、うち女性は59万人の減となっています。 ≪仕事をしていない女性の状況≫ ○9割以上に就業経験あり、うち約8割は正規雇用のフルタイム勤務 現在仕事をしていない女性の過去の就業経験について、就業経験のある人が9割超、そのうち正規の社員・職員としてフルタイムで働いたことがある女性は約8割にのぼります。 ○結婚や出産を機にした離職が約7割 現在仕事をしていない女性のうち、約7割が結婚や出産を機に離職しています。 離職の理由については、「仕事を続けるよりも家事・育児・介護に専念したかったから」という希望による離職が約3割、家庭生活の都合による希望しない離職(「仕事を続けたかったが、家事・育児・介護に専念せざるを得ない状況だったから」「家族の転勤、転居があったから」)も約3割となっています。 ○20〜30代の約9割に就業意向あり 現在就労をしていない女性の就業意向についてみると、85%の女性に今後の就業意向があり、特に20〜30代の就業意向は9割を超えています。また、「すぐにでも仕事に就きたい、または求職中である」「現在抱えている不安や問題が解決されれば、仕事に就きたい」とする女性が4割を超えており、働きたいが働けない状況が多く見られます。 ≪企業や働く人の状況≫ ○人手不足の状況が、新型コロナの影響で急速に変化 横浜市全体の事業所の99.5%が中小企業であり、働く人の数から見ると、中小企業で働く人は約6割となっています。 新型コロナウイルス感染症拡大以前は、労働力を不足と感じる事業所の割合は全国的に増加傾向にあり、横浜市内の事業所においても人手不足の状況が続いていました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、有効求人倍率が低下しています。 ○道半ばのワーク・ライフ・バランス実現、新型コロナの影響で変革の局面に 平成30年に働き方改革関連法案が成立しましたが、ワーク・ライフ・バランス実現のための取組を実施している市内企業は約5割に留まっています。 一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、テレワークの導入は急速に進んでおり、今後の動向が注目されます。 〇男性の育休取得率は上昇傾向も2割に満たず 男性の育児休業取得に対する市民意識は、肯定的な考え方の割合が約8割となっています。しかし、実際の男性の育児休業取得率については、近年は増加傾向にありますが2割に満たない状況にあります。 男性の家事・育児への参画促進を働きかけるとともに、育児休業を取得しやすい職場環境づくりが求められています。 ≪DV被害の状況≫ ○新型コロナによる深刻化懸念 近年、市内のDVの相談件数は5,000件前後で推移していますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛や休業等が長引く中、生活不安やストレスによる被害の深刻化が懸念されています。なお、全国のDV相談件数は、令和元年度に過去最多となり、令和2年度(11月分まで)も前年比1.5倍で推移しています。横浜市においても、今後の動向について注視していく必要があります。 ○DVの理解度 配偶者やパートナー、交際相手の間で行われるそれぞれの行為が、「暴力にあたると思う」と回答した割合は、精神的暴力6事例の平均値は約6割、性的暴力2事例の平均値は7割超となっています。 ≪自殺に関する状況≫ 〇コロナ禍における女性の自殺者の増加 厚生労働省の人口動態統計において、横浜市の自殺者数は、平成22 年以降減少傾向にあり、男女別にみても、男性は平成22年、女性は平成23年をピークに減少傾向にありました。 令和2年の全国の自殺者数の対前年比は、警察庁の公表する自殺者数※では、6月までは減少していましたが、7月以降は増加しており、中でも女性の増加が目立っています。 ≪男女の地位の平等感、性別役割分担≫ ○男女の地位は「男性が優遇」多数 男女の地位の平等感について、「男性の方が優遇されている」(「優遇されている」と「どちらかといえば優遇されている」)と思う人が多い分野は、「政治の場」「社会通念・慣習・しきたりなど」が圧倒的で、「家庭生活」「就職活動の場」「職場」も高い割合です。一方、「学校教育の場」は「平等になっている」と感じる人が多くなっています。 ○家庭生活における役割分担状況 夫・パートナー等がいる働く女性の家事・育児・介護の分担状況をみると、「自分がほとんど担っている」「自分が主で、夫・パートナー等が一部を担っている」が8割超となっており、共働き世帯であっても、家事・育児・介護の負担は女性に偏っています。 ○コロナの影響により家庭における役割に変化の兆し 新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛や在宅勤務により、家で過ごす時間が多くなったことから、家事・育児に関する夫の役割が増えたと回答した割合は3割近くにのぼります。 一方で、家で過ごす時間が多くなったことから増えた家事・育児の捻出方法に関する調査において、「自分の余暇時間を削った」という回答は女性が約8割に対して男性は約5割、「パートナーが時間を増やした」という回答は女性が1割に対して男性は約3割となっており、女性に負担が偏りがちと考えられます。 2 国際社会及び国の動向 (1)国際社会の動向 ○国際基準と国連機関 国際社会においては、平成7年(1995年)の第4回世界女性会議において採択された「北京宣言・行動綱領」が女性活躍・男女共同参画の国際的な基準となり、以降5年ごとに、世界全体で進捗と課題を振り返る取組が行われてきました。 平成22年(2010年)には、女性の地位向上を進めてきた4つの国連機関を統合・強化した「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)」が発足し、女性の政治参画とリーダーシップの促進、女性の経済的エンパワーメント、女性・女児に対する暴力の撤廃などが重点分野として取り組まれてきました。 平成27年(2015年)には、「国連持続可能な開発サミット」においてSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、持続可能性に関する世界の諸問題についての17のゴールが示されました。この中で目標5「ジェンダーの平等の達成とすべての女性と女児のエンパワーメント」は、すべてのSDGsを達成するために不可欠な手段であるとして、国際的な取組の加速化が図られています。 ○主要国首脳会議等での取組 ジェンダー平等や女性のエンパワーメントに関しては、主要国首脳会議(G7)やアジア太平洋経済協力(APEC)等においても継続的に取り上げられてきました。 令和元年(2019年)5月、フランスでG7男女共同参画担当大臣会合が開催され、「男女平等に関するパリ宣言」が取りまとめられました。6月のG20大阪首脳宣言では、女性のエンパワーメントに関する項目が本格的に盛り込まれ、9月には、APEC女性と経済フォーラム(チリ・ラ・セレナ)において、2030年までの努力目標を定めた「女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ」が取りまとめられました。 ○日本の状況と国際協調の必要性 この間、日本においても様々な取組が行われていますが、世界経済フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数2021において、日本は156か国中120位となりました。特に経済分野(156か国中117位)と政治分野(同147位)が低く、男女平等や女性活躍の取組において国際的に後れを取っている状況が明らかになっています。 令和2年(2020年)は北京宣言から25周年、UN Women設立から10年、SDGs採択から5年の節目の年です。折しも新型コロナウイルス感染症の拡大により世界規模での社会的危機下にあります。国連は4月の報告書で、新型コロナウイルス感染症が女性及び女児に及ぼす悪影響は、健康から経済、安全、社会保障に至るまでのあらゆる領域で大きくなっていることを指摘し、女性への影響を踏まえた政策的対応の重点事項を示しました。また、同年4月の国連事務総長声明では、各国政府に対し、「女性に対する暴力の防止と救済を新型コロナウイルス感染症に向けた国家規模の応急対応のための計画の重要項目とすること」を要請しています。ジェンダーの視点に立った政策立案と具体的な対応に向けて、国際的な協調がますます重要になっています。 (2)国の動向 国においては、平成11年(1999年)に男女共同参画社会基本法が制定され、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現を、21世紀のわが国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において施策や法整備が推進されてきました。 ○ 平成25年(2013年)4月、「待機児童解消加速化プラン」策定。集中的な保育所整備等 ○ 平成25年6月、「日本再興戦略」を閣議決定。翌年6月の「『日本再興戦略』改訂2014」において、「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築」の打ち出し ○ 平成27年(2015年)6月、すべての女性が輝く社会づくり本部にて「女性活躍加速のための重点方針2015」を決定。以後毎年重点方針を決定。同年8月、「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が10年間の時限立法として成立(平成28年(2016年)4月全面施行)。 ○ 平成27年12月、「第4次男女共同参画基本計画」を閣議決定 ○ 平成28年(2016年)3月、国の公共調達においてワーク・ライフ・バランス等推進企業を加点評価する指針を決定 ○ 平成28年9月以降、働き方改革実現会議を開催。翌年3月に「働き方改革実行計画」を決定 ○ 平成29年(2017年)6月、「子育て安心プラン」公表、待機児童解消策の強化等 ○ 平成29年7月、性犯罪に関する刑法の一部改正。強姦罪の構成要件変更、性犯罪の厳罰化等 ○ 平成30年(2018年)5月、政治分野における女性の参画拡大に向けて、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」公布・施行 ○ 平成30年7月、「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)公布、働き方改革の総合的かつ継続的な推進、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等 ○ 平成30年10月、女性に対するあらゆる暴力の根絶について、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」の全都道府県への設置を達成 ○ 令和元年(2019年)6月、女性活躍推進法改正。令和2年6月1日から常時雇用する労働者数301人以上の企業について、一般事業主行動計画の策定や情報公表の取組を強化。令和4年4月1日から、労働者数101人以上の企業まで、一般事業主行動計画の策定・情報公表の義務化を拡大 ○ 令和元年6月、労働施策総合推進法改正。パワーハラスメント防止対策の法制化、大企業は令和2年6月1日から、中小企業は令和4年4月1日から、パワーハラスメント防止対策の義務化等 ○ 令和2年(2020年)6月、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を閣議決定、「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置 ○ 令和2年9月、「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」を設置 ○ 令和2年12月、「第5次男女共同参画基本計画」を閣議決定