コラム SDGs(持続可能な開発目標)の 視点を踏まえた本市の取組 SDGs(持続可能な開発目標)とは 2015年9月、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、2030年に向けた国際社会  全体の行動計画である「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。  同アジェンダでは、宣言に加え、169の関連ターゲットを伴う17の目標が掲げられました。この目標が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です (次ページ参照)。 SDGsは、2001年に定められた「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)」の後継にあたりますが、MDGsが途上国の目標であったのに対し、  SDGsは先進国を含む国際社会全体の目標であり、各国内での取組も対象としています。 SDGsは「誰一人取り残さない」を基本理念としています。また、持続可能な開発の  三側面である経済・社会・環境の統合的取組に重点が置かれており、各国政府や国際機関のほか、地方政府、民間セクター、市民社会など幅広い関係者の連携が重視されています。 地方自治体にとってのSDGs SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」という考えは、基礎自治体にもあて  はまるものです。また、17の目標は、世界の都市に共通した普遍的な課題です。 SDGsの達成に向け地方政府も役割を果たすことが期待されている中、日本政府は、2016年12月に策定した「SDGs実施指針」で地方自治体の役割を重視し、地方自治体の各種計画等へのSDGsの要素の最大限の反映を奨励しています。2018年2月には、  「環境未来都市」構想を「SDGs未来都市」に発展させ、地方自治体による先進的な   取組を促しています。   SDGsを踏まえた本市の取組 このような中、本市としても、あらゆる施策においてSDGsを意識して取り組むことが求められます。各分野での施策の推進などでSDGsの理念を大事にして取り組むために、本計画の中長期的な戦略ごとにSDGsの目標に関わるか関連づけることから始めました(p.10参照)。   また、これまでの環境未来都市としての取組成果をもとに、さらなるステージアップを 図るため、SDGs未来都市の選定に挑戦しています。SDGsの理念を踏まえ、本市の  特徴・資源をいかし、国内外から高い評価を得てきた環境の取組を軸に、経済や文化による都市の賑わいを生み出しながら社会課題の解決も図る先導的な取組を進めていきます。様々な方々との公民連携により、新たな価値を生み出す大都市のモデルとなる取組を進めます。 さらに、国際面では、横浜がこれまで培ってきた都市課題解決に関する知見や経験をいかした協力に一層力を入れるほか、温暖化対策や女性活躍支援、超高齢社会への対応など新たな分野での連携・協力を進めていきます。 SDGsの17の目標 1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる 2 飢餓を終わらせ、食料安全 保障及び栄養改善を実現し、 持続可能な農業を促進する 3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する 4 すべての人に包摂的かつ 公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進 する 5 ジェンダー平等を達成し、 すべての女性及び女児の 能力強化を行う 6 すべての人々の水と衛生の 利用可能性と持続可能な管理を確保する 7 すべての人々の、安価かつ 信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを 確保する 8 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ 生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ ワーク)を促進する 9 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る 10 各国内及び各国間の  不平等を是正する 11 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する 12 持続可能な生産消費形態を確保する 13 気候変動及びその影響を 軽減するための緊急対策を講じる 14 持続可能な開発のために 海洋・海洋資源を保全し、 持続可能な形で利用する 15 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・ 回復及び生物多様性の損失を 阻止する 16 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを 提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある  包摂的な制度を構築する 17 持続可能な開発のための 実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する コラム データ活用・オープンイノベーションの推進 ~オール横浜の知恵や力を結集し、共に新たな価値を創造~ データ活用の推進 社会のデジタル化が進展し、ビッグデータ解析など、より効果的なデータの分析・活用が できる環境が整い、AI・ロボット等の先端技術は、福祉・医療、防災、観光、経済等の幅 広い分野において、サービスの高度化への活用が期待されています。さらに、分野横断的な データの活用により、新たな価値・サービスの創出が期待できるなど、データや先端技術の 活用は、社会生活、産業を劇的に発展させる可能性を秘めています。 こうした中、本市は、平成29年3月に全国の市町村で初めて「横浜市官民データ活用推 進基本条例」を制定し、30年度には「横浜市官民データ活用推進計画」を策定予定です。 市民ニーズが多様化する中、現状の的確な把握や課題の見極めなど、政策形成の各プロセ スにおいてこれまで以上にデータを有効に活用していくことが不可欠であり、データを市単 位、区単位だけでなく、地域単位で整備し地域住民と共有することで、地域課題の解決に向 けたより効果的な政策の形成につなげていくことも求められています。 このため、本市において、データ活用を基本的な取組姿勢とし、組織全体でよりデータを 重視した政策形成が行われるよう取り組んでいきます。 オープンイノベーションの推進 今後、一層複雑化・多様化する社会・地域課題を持続可能な形で解決していくには、公民 連携により新たな価値を創造する「オープンイノベーション」を進めることが不可欠です。 本市では、これまで市民、企業、大学研究機関等の皆様との協働・共創を進め、様々な施 策・事業や地域での取組において連携を図ってきました。29年度には、この動きをさらに 庁内横断的に牽引・加速するため、副市長(CIO)を本部長とする「横浜市オープンイノ ベーション推進本部」を設置し、時代の流れに対応した、民間との連携によるデータ活用や 先進的な公民連携などを積極的に進めています。 これからも、民間・行政を問わず横浜を愛する様々な人々が、それぞれの強みをいかしな がら対話と連携を進め、困難な課題にも積極果敢に挑戦できるよう、あらゆる分野の政策・ 施策・事業においてオープンイノベーションを意識し、オール横浜の知恵や力を結集した新 たな価値の創造により課題が解決される、革新的で開かれた都市・横浜を目指します。 【オープンイノベーションで目指す横浜の姿(イメージ図)】 オープンイノベーションの推進に向けた本市の取組 ■ 対話・連携の機会や場、ネットワークの充実 オープンイノベーションを推進するためには、公民が対話・連携を進める機会や場、ネ ットワークが一層重要になります。本市では民間提案窓口「共創フロント」や、対話の場 である「共創ラボ」・「リビングラボ」に取り組むとともに、「I▫TOP横浜」などの公 民連携プラットフォームの構築や公民ネットワークの強化を進めています。 ■ 先端技術の積極的な活用 より質の高い公共サービスの提供や行政運営の効率化などを 目指し、先端技術を活用した、公民連携による先進的な取組を 進めています。 ■ 先進的な公民連携の取組      ▫ 公共空間(公園・道路・港湾緑地等)の活用 都市の新たな魅力や賑わいの創出と、持続可能な維持管理 のための収益力向上を両立させるため、民間の自由な発想や ノウハウによる提案の募集や、社会実験など、公共空間活用 に向けたチャレンジを進めています。      ▫ ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の導入 2010年に英国で始まり世界的に広がっている、民間投資 やノウハウを活用した、先進的な社会課題解決手法である 「SIB」を導入するための検討・試行を進めています。 民間からのAI技術活用の提案をもとに、ごみ分別を案内するサービス「イーオのごみ分別案内」を公民で共同開発し、運用しています。 公園で「アート体験」など、 これまでにない、憩い・学び・遊 コラム I・TOP横浜、LIP.横浜の取組 ~イノベーションを創出するプラットフォーム~  多様化したニーズや価値観に対応する製品・サービスを開発していくために、企業・大学・研究機関など多様な主体が広く知識・技術を結集し、製品・サービス開発など新たな価値を創出する手法「オープンイノベーション」に注目が集まっています。 本市では、『I・TOP横浜(IoTオープンイノベーション・パートナーズ)』と『LIP.横浜(横浜ライフイノベーションプラットフォーム)』の2つのプラットフォームを相互に連携させ、特区制度等を活用しながら、市内企業のIoT及びライフイノベーションの取組を進めています。 これにより、産学官金の多くのプレーヤー、本市の関連団体、国や国内外の機関と連携し、付加価値の高い製品・サービス開発など、新たなビジネスを創出します。また、生産性の向上や国内外の販路開拓等の課題にチャレンジする中小企業支援を強化します。さらに、新たな技術の活用やサービス開発による社会課題の解決にも取り組みます。 コラム ~ラグビーワールドカップ2019TM及び東京2020オリンピック・パラリンピックの成功とレガシーの創出に向けて~ ラグビーワールドカップ2019TM概要  4年に1度開催され、各国を代表する20チームが世界一を 競い合う世界最大のラグビーの国際大会です。オリンピック、 FIFAワールドカップとともに、世界三大スポーツイベントの 一つとされています。  前回のイングランド大会では、海外から40万人の観戦客が 訪れ、テレビ視聴者数は延べ40億人以上、決勝戦は1億2,000 万人と推定されています。  第9回の2019年大会は、アジア初開催となる日本で、そして横浜で開催されます。横浜国際総合競技場では、準決勝と決勝を含む7試合が予定されています。 東京2020オリンピック・パラリンピック概要  オリンピックは、4年に1度開催される世界的なスポーツの 祭典で、スポーツを通した人間育成と世界平和を究極の目的とし、 夏季大会と冬季大会を行っています。 パラリンピックは、障害者を対象とした、もうひとつのオリン ピックです。4年に1度、これまでオリンピック終了直後に、 同じ場所で開催されています。 東京2020オリンピック・パラリンピックは、約9万人の大会関係者、約27万人のスタッフに加え、約1,000万人の観客が見込まれています。横浜では、横浜国際総合競技場でサッカー競技が開催され、横浜スタジアムが野球・ソフトボール競技の主会場に決定しています。 ラグビーワールドカップ2019TM 東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた横浜ビジョン  2年連続して世界的なスポーツイベントが横浜で開催されます。国内外から多くの人々が訪れ、世界の注目が集まる、この大きなチャンスをいかし、スポーツ振興はもとより、文化芸術の振興、経済、教育分野、シティプロモーションなど幅広い取組を「横浜ビジョン」に基づき、推進します。 そして、その取組の成果を、次世代を担う子どもたちへの贈り物(レガシー)として遺し、横浜のさらなる飛躍につなげていきます。 ラグビーワールドカップ2019TM東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた横浜ビジョン(抜粋) 1 基本姿勢 ○ オール横浜でラグビーワールドカップ2019TM、東京2020オリンピック・パラリンピックの成功に最大限貢献します。  ○ スポーツと文化芸術を両輪とした取組により、賑わいと活力を創出します。 ○ 世界中から様々な人々が訪れる両大会、とりわけパラリンピックを契機に誰もが互いに尊重し、支え合う共生社会の実現を目指します。 ○ 両大会に向けた取組の成果を「次の世代への贈り物(レガシー)」として遺し、横浜のさらなる飛躍につなげます。 2 取組の4つの柱 (1) 両大会の成功に向けてオール横浜でおもてなし (2) スポーツを通じて横浜を元気に (3) 文化芸術の創造性を生かしたまちづくり (4) 横浜を世界に魅せる コラム ~「海洋都市横浜」へ、さらなる飛躍!~ 「開港都市」とともに「海洋都市」へ -横浜のさらなる挑戦- 1859(安政6)年の開港以来、横浜のまちは海とのつながりの中で発展を遂げてきました。市内では人々が海や港と親しみ、海に関わる多くの企業や研究機関等が活躍するなど、海は横浜のまちに魅力や活気をもたらすとともに、様々な可能性を持つ大切な資源です。近年、国でも海洋の役割が改めて注目され、様々な取組が推進されています※。 このような中、本市では地域の強みをいかしたまちの発展・活性化に向けて、海洋に関する活動拠点となる「海洋都市横浜」の実現を目指した取組を進めています。 ※海洋基本法(平成19年制定)及び海洋基本計画に基づき、海洋に関する取組が全国的に展開されています。 「海洋都市横浜」の目指す姿と取組  海洋分野で日本を代表する企業や研究機関等が集積する横浜の強みをいかし、平成27年に横浜や海にゆかりの深い関係者と、産官学のプラットフォーム「海洋都市横浜うみ協議会」を設立しました。幅広い知識・ノウハウや資源等を有するメンバーと連携し、産業振興や、子どもたちへの教育などの取組を進めています。 また、国内外の様々な都市や団体等と交流・連携し、海洋に関する活動拠点となる「海洋都市横浜」の実現を目指して、分野横断的に様々な取組を展開しています。 コラム ~妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援の充実~ 横浜市版子育て世代包括支援センターによる支援の充実を目指します! 本市では、区福祉保健センターで、母子健康手帳の交付や乳幼児健康診査など、様々な母子 保健事業を実施し、保健師・助産師等の専門職による支援を行っています。 平成29年度からは、新たに母子保健コーディネーターをモデル配置し、妊娠期からの支援 の充実に取り組んでいます。 また、地域子育て支援拠点は、就学前の子どもとその保護者(妊娠期を含む)が気軽につど い交流等ができる施設です。個別相談に応じる横浜子育てパートナーが子育て家庭に寄り添い ながら、必要に応じて適切に関係機関につなぐなど、きめ細かい対応を行っています。 各区の福祉保健センターと地域子育て支援拠点が、それぞれの特徴をいかして、より一層、  連携・協働することにより、「横浜市版子育て世代包括支援センター」として、妊娠期から子  育て期までの切れ目のない支援を充実していきます。 コラム ~市内米軍施設の返還と跡地利用の推進~  横浜は、第二次世界大戦後に進駐した連合国軍により市の中心部や港湾施設などが広範 囲にわたり接収(最大接収面積1,200ヘクタール)され、再建・復興が著しく遅れること となりました。 それ以来本市では、市民共通の念願、市政の重要課題である市内米軍施設の早期全面返 還に向け、市民や市会の皆さまのご理解とご協力をいただきながら取組を進めてきました。 これまでの粘り強い取組の結果、今日まで多くの返還が実現しましたが、今もなお、市内 には根岸住宅地区や瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドックなど米軍施設が存在し、市民生活に多大 な負担をかけるとともに、まちづくりに大きな制約を与えています。 ○ 施設返還の促進 市内米軍施設・区域の返還については、平成16年10月に、6つの施設の返還方針が日米政府間において合意されました。 その後、17年の小柴貯油施設、21年の富岡倉庫地区に引き続き、26年6月には深谷通信所、27年6月には上瀬谷通信施設の返還が実現しました。 これらの施設の返還により、16年10月の日米合意当時の市内米軍施設面積の約7割が返還されたことになります。 16年に返還合意された施設 ・根岸住宅地区 ・池子住宅地区及び海軍補助施設(横浜市域)の飛び地 ・小柴貯油施設(17年12月返還) ・富岡倉庫地区(21年5月返還) ・深谷通信所(26年6月返還) ・上瀬谷通信施設(27年6月返還) 市内米軍施設・区域位置図 瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドック(52ha) 鶴見貯油施設(18ha) 瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドックなど、返還時期が示されていない残りの施設についても、引き続き、国への働きかけなど、早期返還に向けた取組を粘り強く進めていきます。 。 ○ 跡地利用の推進 市内米軍施設は、これまで横浜のまちづくりに大きな制約を与えてきましたが、跡地はその広大さなどから、将来の横浜のまちづくりにおいて、非常に重要な資産であるといえます。 跡地利用にあたっては、米軍施設の存在により戦後長きに渡り基地の影響を受けてきた民間土地所有者や周辺地域の皆さまをはじめ多くの方々から幅広く意見を伺いながら検討を進め、横浜の将来を見据えた戦略的な活用が図れるよう跡地利用基本計画を策定し、早期の具体化を目指していきます。 16年に返還方針が合意された米軍施設 旧小柴貯油施設(53ha) ※水域の一部は未返還 20年3月 跡地利用基本計画策定 29年8月 公園整備工事着手 旧富岡倉庫地区(3ha) 23年7月 跡地利用基本計画策定 旧深谷通信所(77ha) 30年2月 跡地利用基本計画策定 旧上瀬谷通信施設(242ha) 根岸住宅地区(43ha)(未返還) 池子住宅地区及び海軍補助施設(横浜市域)(37ha)(未返還) ※斜線区域は返還方針が合意されている区域 ○ 住宅建設対策の取組 16年10月に、日米合意された「池子住宅地区及び海軍補助施設」の横浜市域における米軍家族住宅等の建設については、26年4月に385戸から171戸に変更されました。 本市は、引き続き、自然環境の保全や周辺地域への配慮、地元をはじめ市民の皆さまへの適時・適切な説明などを国に求めていきます。 コラム ~参加と協働で、より住みよい地域に!~ 協働による地域づくりの推進 私たち横浜の地域社会には、多様な市民活動があり、生活者の 視点から「自分たちのまちは自分たちでよくしよう」という市民 の自発的・主体的な取組が行われています。  地域の活動は、福祉、防災、まちづくりなどと区別して行われ るものではなく、例えば「高齢者の支援」といっても、健康、住 まい、買い物などの日常生活に関わることや災害時の対応など、 様々な課題に一体的に取り組んでいます。地域福祉保健計画の地 区別計画の中でも、多様な住民・団体が参加し、行政や支援機関 と連携し、福祉保健から地域の身近なまちづくりまで幅広い生活 課題の解決を進めています。  市民と協働して暮らしやすいまちをつくっていくため、区役所 では地域の自主性を尊重しながら、各課が連携して、地域の実情 に応じた支援に取り組んでいます。  こうした取組をさらに充実させるためには、住民に身近な区役所と専門性をもつ局との連携をさらに強め、地域福祉保健計画、地域のまちづくりや防災の推進など、様々な施策を連動し進めていく必要があります。 少子高齢化が進み、家族のあり方が変化する中、市民の皆さんが日々の生活で抱える課題やニーズ、地域・社会の課題はますます多様化・複合化しています。ソフト、ハード両面から市民の皆さんの活動を一層支援できるようコーディネート力を充実させ、自治会町内会、NPO、企業、学校など市民の皆さんとともに、それぞれの活動の特徴をいかしながら協働して課題解決に取り組んでいきます。 市民と行政が協働事業を進めるうえでの参考となるよう、ポイントをまとめた 協働契約ハンドブックを 30年2月に策定 『AMPERSAND協働実践』 今後の進展に向けて~市民協働・共創スペースの新市庁舎への設置~  新市庁舎の市民協働・共創スペース は、NPO・市民活動団体、大学・研 究機関、企業などの多様な主体と行政 が手を携えて、横浜市全域にわたる地 域課題の解決や魅力ある地域づくりの ための新たな拠点として、多様な主体 が相互に交流できるような対話と創造 の「場」を提供し、ゆるやかな基盤づ くりを目指します。  市民協働・共創スペースの設置を契 機に、区役所と局、局間の連携をさら に強め、横浜市の強みである大都市と しての一体性をいかした地域支援を進 めていきます。 新市庁舎における市民協働スペースに関する 市民協働推進委員会からの意見書(概要版) 取組事例 1 記名式アンケートで「松見地区ボランティアセンター」を立ち上げ(神奈川区) 松見地区では、地域福祉保健計画地区別計画の地区懇談会で、地域の課題を話し合う中、高齢者等のちょっとした困りごとを支え合う仕組みが必要ではないか、との声が挙がりました。区役所でも、地域活動に興味・関心のある方を活動につなげたいと考えていました。 そこで、地区社会福祉協議会と連合町内会で立ち上げた「松見地区支え愛プラン推進委員会」の作業部会で、区役所、区社会福祉協議会、地域ケアプラザも参加し、協働して、「ゴミ出しの手伝い」など日常生活の様々な困りごとについて、それぞれ「お手伝いできるか」または「手助けをお願いしたいか」を尋ねる記名式のアンケート調査を5,000世帯に実施しました。アンケートには1,084件の回答があり、86%の方から記名での回答がありました。ほとんどの設問で「お手伝いできる」と答えた人数が「手助けをお願いしたい」と答えた人数を上回り、お手伝いできる人が多くいること、同時に、手助けを必要としている人も大勢いることがわかりました。                     そこで、支え合いの仕組みとして「松見地区ボ ランティアセンター」を立ち上げ、アンケートに 記名していただいた方のうち80人余りの方にボ ランティアに登録いただきました。 今では、年間100件近いボランティア活動が行 われており、支え合いの機運が高まっています。 松見地区ボランティアセンターパンフレット 2 地域の力を結集してつくった、いこいの場~「もりのお茶の間」(金沢区)  六浦東地区では、20年も前から地域住民の特技や強みを登録 した「人材マップ」を活用し、地域ぐるみで子どもたちを見守り 育ててきました。活動していく中で、子どもから高齢者まで誰で も気軽に集える「場」をつくり、高齢者や子育て世代の孤立解消 を目指そうと、区役所からの助言も受けて、「ヨコハマ市民まち 普請事業」に挑戦して、拠点づくりに取り組みました。 同事業の助成金ではまかなえない耐震補強工事が必要となり難航しましたが、豊富な地域人材と区役所、区社会福祉協議会、地域ケアプラザが連携して、知恵を出し合い、工事資金は寄付を募り、内装も外装も延べ600人もの地域住民が参加し、協力して成し遂げました。 28年11月にオープンした「もりのお茶の間」では、地域住民がそれぞれ得意なことや興味があることをいかして積極的に参加できるよう部会をつくり活動しています。軽食やランチを提供するサロン事業や、家事や庭仕事、買い物等、困った時に有償で利用できる「ねこの手」 活動なども行っている、高齢者支援や子育て支援といった支え 合い事業、地域住民の手作り品販売などのレンタルボックス・ スペース事業、大人の生涯学習や子どもを対象とした寺子屋な どのスクール事業を運営しています。 こうした取組を通して地域はもちろんのこと、大学、病院、 小学校、区役所、区社会福祉協議会、地域ケアプラザなどの ネットワークが形成され、活動の幅が広がっています。 コラム ~「一人ひとりの市民が互いに人権を尊重しあい、 ともに生きる社会」の実現を目指して~ 人は、誰もがかけがえのない存在であり、一人ひとりが多様な個性と豊かな可能性を有しています。人権とは、その基盤となる一人ひとりの尊厳と固有の権利です。それらが保障されることによって、人は希望を持ち、努力し、可能性を発揮することができます。 本市は、「一人ひとりの市民が互いに人権を尊重しあい、ともに生きる社会」の実現を目指し、「横浜市人権施策基本指針」(以下「指針」という。)を策定しています。 指針では、市民一人ひとりの人間としての尊厳が守られる社会の実現のため、本市職員は、次の基本姿勢をはじめとする人権に関する認識の上に、取組を行うとしています。 基本姿勢 (1)人権尊重を基調とした市政 横浜市は、人権の尊重を市政運営の基調とします。 (2)差別を受けている人々の立場にたつ 横浜市は、差別や偏見のために傷つき苦しんでい る人や「生きづらさ」を抱えている人の立場にたち、 差別をなくす姿勢で市政運営にあたります。 (3)市政を担う職員の人権意識の向上 人権尊重を基調とした市政を運営するために、職 員には豊かな、また、鋭い人権感覚が求められます。 全ての職員は、担当職務に習熟することはもとよ り、常に自己啓発に努め、人権感覚を磨き、幅広い 人権に関する理解と問題意識をもって業務の遂行に あたります。 (4)地域社会全体の取組への支援 人権問題は、社会の問題として認識されなければ、真の解決には至りません。それぞれの分野における様々な人権に関わる課題を解決していくためには、一人ひとりの市民、地域団体、事業者における主体的な取組が求められます。 横浜市は、広く啓発を行うとともに、そうした取組を積極的に支援していきます。 ◆取り組むべき人権課題◆ 女性、子ども、高齢者、障害児・者、同和問題、外国人、疾病、職業差別、ホームレス、性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)、自死・自死遺族、インターネット等による人権侵害、災害に伴う人権問題、先住民族、拉致被害者等、犯罪被害者等、刑を終えて出所した人、人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)、ハラスメント、生活困窮者など ※なお、人権問題に直面している人々は、複数の人権課題を抱えることによって、複合的な困難を強いられている場合も多くあります。 コラム 横浜市強靱化地域計画 ◆「国土強靱化」  これまで日本は度重なる大災害により大きな被害を受け、その教訓から対策を強化してきました。例えば、伊勢湾台風を契機に災害対策基本法が制定され、阪神・淡路大震災を契機に建築物等の耐震基準が強化されました。また、東日本大震災では、観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震とそれに伴う大津波は災害を完全に防ぐことの難しさを教訓として残し、あらためて自助・共助の大切さが認識されました。  このような大規模自然災害の教訓を踏まえ、どのような⾃然災害が起きても人命を守り、また経済・社会への被害を最小化、災害から迅速に回復する「強さとしなやかさ」を持った国づくりを推進するため、「強くしなやかな国⺠⽣活の実現を図るための防災・減災等に資する国⼟強靱化基本法」が平成25年に制定され、国及び地方が一丸となって国土強靱化に取り組んでいます。 ◆横浜市強靱化地域計画 本市防災計画は、「被害を出さない地域・社会の実現」を目標として掲げ、発災時の体制や対応、緊急輸送路整備等の防災対策、地震等の被害を軽減する減災対策から災害からの復旧・復興の体制や対応までを幅広く定めており、国土強靱化の多くの要素を含んだ計画になっています。 また、「横浜市強靱化地域計画」は、地震や風水害など様々な災害を横断的にとらえ、これまでの防災・減災対策に加えて、地域の見守り活動等の日ごろからの取組で災害時の共助につながるものや、災害時に機能を発揮する都市基盤整備や公共施設の保全・更新を合わせて位置付けた幅広い計画です。 本計画や横浜市強靱化地域計画により、市民の皆様が安全で安心して暮らせる都市を目指して取組を進めていきます。 【横浜市の強靱化のイメージ】 コラム ~ICTの活用~  1 ICTによる新たな社会経済状況の変化 IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどのICTによる技術革新が進み、新たな製品や サービスが次々と創出されています。  これからは、暮らし、ビジネス、ものづくり、交通、防災、行政サービスなどの様々な分野 や場面において、あらゆるものがICTでつながり、データが活用されることによって、多様 なニーズにきめ細やかに対応したモノやサービスが提供され、また、ロボットや自動運転の活 用により人間の負担が減少することで、様々な課題解決が可能となる社会が実現すると期待さ れています。こうした社会の変化を、国では狩猟社会・農耕社会・工業社会・情報社会に続く 新たな段階の社会「Society5.0」※と表現しています。  Society5.0が実現した未来の社会では、ICTによるネットワークとそこに流れるデータは、 道路や鉄道、電気やガス、水道と同じ、私たちの生活や社会にとって欠かせない新たなインフ ラとなっていきます。  これまで、上下水道の整備、交通網や鉄道、港湾や工業地域、都市開発などの社会インフラ 整備が、市民の生活を支え、横浜経済の発展を支えてきたように、新たな社会インフラである ICTやデータを積極的に活用していくことが、これからの本市に必要です。 【図:Society5.0で達成される経済発展と社会的課題解決の例】 ※ Society5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済 発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を指す用語。(内閣府HPより) 2 ICTの活用が横浜にもたらす新たな価値 IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどのICTやデータの活用は、社会的課題の解決や、経済の活性化、安全・安心な都市づくりなど、本市が目指す政策に大きく役立ち、新たな価値をもたらすものと考えられます。 (1)社会的課題の解決 新たな技術を活用することで、本市の抱える課題に対し、これまでとは異なる手法による革新的な解決が期待できます。例えば、自動運転によって人の移動や品物の無人配送が実用化されれば、郊外部の活性化、高齢者の買い物や通院の支援、地域交通、環境問題などの、多くの社会的課題の解決につながるでしょう。 また、AIによる医療データの解析により、あらゆる病気の予兆などを分析できれば、分析結果を病気の予防につなげ、医療費の社会負担を軽減することも期待できます。 (2)付加価値の高い産業の集積による横浜経済の発展 Society5.0の社会では、ICTやデータを活用して新たなモノ・サービスを創り出す付加価値の高い産業の集積が、経済発展の原動力となります。横浜経済の強みであるものづくり・IT産業の集積や人的資源の豊かさをいかし、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどを活用した新たなサービスの創出を積極的に進め、研究・製造開発の拠点を育成・誘致し、本市に集積させていくことが重要です。これらの先端企業が本市に数多く集まることで、新たな人やビジネスも集まり、横浜経済のさらなる活性化につながるでしょう。 (3)安全かつ安心な都市づくり ICTやデータの活用により、交通、港湾、上下水道、都市環境などインフラの運営や管理をより効率的かつ効果的に行うことで、事故が少なく災害に強い安全で強靱な都市づくりを実現することができます。 一方で、これらの技術の活用には、セキュリティが最も大きな課題とされています。 IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの先端技術やデータの活用に求められる、新たなセキュリティの対策にも積極的に取り組み、本市がセキュリティ面でも安全・安心なスマートシティとなることで、未来の安全・安心な都市づくりが可能となります。 (4)効率的かつ効果的な行財政運営・市民サービスの質の向上 行財政運営においても、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどのICTやデータを活用した新たな取組を進めることで、業務の効率性を高め、より利便性の高い市民サービスを提供することが期待できます。 人口減少・超高齢化、都市間の競争、産業構造の変化、地球温暖化、郊外部の活性化、公共施設の老朽化など、本市の様々な課題に対応するためには、ICTやデータの活用が不可欠です。本市でも、社会の変化や技術の革新に的確に対応しながら、政策推進・行財政運営の双方において、ICTやデータの活用に積極的に取り組みます。