広報よこはま15ページ 2017(平成29)年12月号 人権特集 12月4日〜10日は人権週間です お互いに尊重し合い、ともに生きる社会をめざして 問合せ 市民局人権課 電話045-671-2379 ファクス045-681-5453  法務省が毎年実施する「全国中学生人権作文コンテスト」の横浜市大会にて「横浜市長賞」を受賞した作品を紹介します。  これをきっかけに人権について考えてみませんか。 平成29年度人権啓発ポスター デザイン:横浜デジタルアーツ専門学校 古谷 望美(ふるや のぞみ)さん 最優秀賞「横浜市長賞」 知る、そして伝え、行動する 横浜共立学園中学校二年 浮穴 絢香(うけな あやか)  私がハンセン病について考えるきっかけとなったのは、私が通う中学校で毎年設けられている「ハンセン病を正しく理解する週間」で、ハンセン病について学んだことだった。  それまで私は、ハンセン病について何も知らなかった。しかし、その時に私は、ハンセン病はらい菌に感染することで起こる病気であり、らい菌は極めて感染力の弱い病原体で、新薬が開発されたことにより一般的疾病として完治するものとなっていることを初めて知った。それと同時に、私には疑問がわいてきた。ハンセン病はそのような感染力の弱い病気であるのに、なぜ今なおハンセン病に対する差別が根強く残っているのだろうか。  ハンセン病についてもっと知らなければならないと思った私は、学校が一年に二回、毎年行っている「多磨全生園訪問」に参加することにした。  森に囲まれたそこには庭園や教会、神社、小さなお店や図書館などが整備されていて、一つの静かな町となっていた。そんな穏やかな空気が一変して重く感じられたのは、国立ハンセン病資料館に足を踏み入れた時だった。そこでは、一つ一つの資料が当時の残酷な状況を物語っていた。特に印象に残っているのは、患者が子孫を残さないようにさせられたということだ。療養所では、患者を大人しく療養所に居させるために結婚は許したが、その一方で子どもを産めないようにさせたのだ。すべての人に結婚も出産も当然認められている現在では、全く想像もできないことだが、当時は実際に行われていたことを知り、強い衝撃を受けた。  療養所に強制隔離され一生療養所から外に出られない、親や兄弟と一緒に暮らすこともできない、実名で名乗ることすらできない、結婚しても子どもを産むことも許されない、亡くなっても故郷の墓に埋葬してもらえない……。そんな想像を絶することが行われ、患者の方々が耐え難い苦しみを受けてきたということが、初めて現実として胸に迫ってきた。  当時、患者の強制隔離に反対した医師もいたそうだ。しかし、その適切な考えは受け入れられなかった。誤った知識や考えに多くの人が流され、従い、少数の正しい考えが握り潰されたのだ。  「無知」と「心の弱さ」―――様々な差別の原因は、そこにあるのではないだろうか。「無知」と「心の弱さ」は、誰でも持っている。私の中にも、ある。だからこそ、学ぶこと、知ることが大切だと思う。今回私は、学校で正しい知識を学ぶことができたが、もし知らないままだったら、無意識のうちに差別してしまったかもしれない。それは恐ろしいことだ。正しく「知る」ことは、差別のない社会への第一歩になるに違いない。  人は誰しも、いつどんな病気になるか分からない。そして、病気は誰のせいでもない。病気だという理由で、人が誰でも永久に持っている人権を侵すことは絶対にあってはならないと改めて考えさせられた。  多磨全生園を訪れ、園内に残る強制隔離の爪あとを目の当たりにして、その全てではないにしても私はハンセン病について現実を「知る」ことができた。ハンセン病元患者の高齢化が進む現在、私たち若い世代は目を背けずにもっとハンセン病について正しく知る必要があると思う。「知」は責任を生む。自分たちにできることを実践することが求められる。根強く残るハンセン病の差別、そしてあらゆる差別をなくすために、語り継がれる側から、行動して、語り継ぐ側へとなっていかなければならない。そして、人を尊重し思いやる心を持っているだろうかと、常に自分に問いかけていきたい。  多磨全生園の庭園の空は、すがすがしく澄んでいた。元患者の方々の心も澄む日が来るようにと祈りながら、来年もここを訪れようと心に決めた。