「横浜市個人情報の保護に関する条例」 の改正について ≪中間取りまとめ≫ 横浜市個人情報保護審議会 1 地方公共団体の機関について・・・1 新保護法第2条第11項第2号に規定する地方公共団体の機関について、 これに該当する本市の各機関の名称を新保護条例に明記し、新たに市の機関として「消防長」を加えることが適当である。 2 条例要配慮個人情報について・・・2 条例要配慮個人情報を新保護条例に規定する必要はない。 3 個人情報取扱事務開始届について・・・3 個人情報を取り扱う事務を開始するときは、現行保護条例と同様、個人情報取扱事務登録簿(事務開始届)を作成し、 閲覧に供することを新保護条例で規定することが適当である。 4 本人外収集の制限について・・・4 個人情報を収集する際は、可能な限り本人から収集するよう努める責務規定を新保護条例で設けるべきである。 5 人種、信条及び社会的身分に係る情報の収集制限について・・・5 人種、信条及び社会的身分に係る情報を収集しないよう努める責務規定を新保護条例に設けるべきである。 6 保有する必要がなくなった保有個人情報の廃棄・消去について・・・6 保有する必要がなくなった保有個人情報を廃棄し、又は消去しなければならないとする規定は、新保護条例には設けないことが適当である。 7 是正の申出について・・・7 是正申出の制度については、新保護条例では規定しないことが適当である。 8 審議会設置の要否及び審議・報告事項について・・・8 審議会については、個人情報の保護に関する重要事項や個人情報保護体制を構築するための内部規程等の策定を審議事項とするほか、 次のとおり、審議・報告事項を整理することが適当である。 【報告事項とするもの】 @行政機関等以外のものに対する個人情報の目的外提供 A個人情報を取り扱う事務の委託 B個人情報取扱事務登録簿の届出 C個人情報ファイルの保有等に関する届出 D行政機関等匿名加工情報の募集提案等の状況 【審議・報告を廃止するもの】 @本人以外からの個人情報の収集 A人種、信条、社会的身分に係る情報の収集 B電子計算機処理の開始 C思想、信条等の情報の電計算機処理の開始 D市の機関以外との電子計算機の結合 E是正の申出に対する措置 F市長の勧告に従わなかった事業者の公表 G実施機関内部における目的外の利用及び他の実施機関に対する目的外の提供 H市における個人情報の取扱いに関する苦情や個人情報の取扱いに関し事業者と市民の間に生じた苦情の内容及び講じた措置等の概要 9 第三者評価委員会の設置について・・・12 各職場の個人情報の取扱いを実地調査する第三者評価委員会については、引き続き設置することが適当である。 10 運用状況の公表について・・・13 この条例の運用状況の公表については、引き続きこれを義務付けることが適当である。 11 行政機関等匿名加工情報の手数料について・・・14 行政機関等匿名加工情報の手数料の額は、施行令で定める標準額(国と同額)とすることが適当である。 12 経過措置について・・・15 現行保護条例の規定の改廃に伴って開示請求者等に不利益や不都合が生じることがないよう、 現行保護条例の規定に基づいて進めている開示請求や審査請求については、引き続き手続ができるよう経過措置を設ける必要がある。 1 地方公共団体の機関について 令和5年4月1日施行の個人情報の保護に関する法律(以下「新保護法」という。) 第2条第11項第2号に規定する地方公共団体の機関について、 これに該当する本市の各機関の名称を改正後の横浜市個人情報の保護に関する条例(以下「新保護条例」という。)に明記し、 新たに市の機関として「消防長」を加えることが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例第2条第1項では、地方自治法(昭和22年法律第67号)、 地方公営企業法(昭和27年法律第292号)等により、独立して事務を管理し、及び執行する市の機関並びに市が設立した地方独立行政法人を、 個人情報保護制度を実施する機関とすることを定めている。 市の機関を条例に規定しなくても新保護法の適用は受けるが、明確にしておく趣旨から、 新保護条例に本市における具体的な機関名を明記することが適当である。 また、個人情報保護委員会が発出した「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」(以下「ガイドライン」という。)(P.10)において、 「地方公共団体の機関」として「消防長」が示されたことから、新保護条例には新たに「消防長」を明記することが適当である。 2 条例要配慮個人情報について 条例要配慮個人情報を新保護条例に規定する必要はない。 〔説 明〕 1 新保護法における定義 新保護法第2条第3項では、「要配慮個人情報」の定義を 「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、 犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないように その取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と定めている。 また、新保護法第60条第5項で「条例要配慮個人情報」とは、「地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が 保有する個人情報(要配慮個人情報を除く。)のうち、地域の特性その他の事情に応じて、 本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして 地方公共団体が条例で定める記述等が含まれる個人情報」と定めている。 したがって、新保護法に定める「要配慮個人情報」には含まれないもので、 その取扱いに特に配慮を要する個人情報が、本市に存在するかを検討する必要がある。 2 検討及び結論 「要配慮個人情報」には含まれないものの、差別や偏見が生じないよう配慮を要すると思慮される個人情報として 「LGBT等の性的少数者」の情報が考えられる。 しかしながら、人の性的指向(恋愛対象)及び性自認(自分の性をどのように認識しているか)は多様性に富んでおり、 どの範囲をもって性的少数者の情報とするかは極めて困難である。 一方で、新保護法第61条第1項においては、「行政機関等は、個人情報を保有するに当たっては、 法令…の定める所掌事務又は業務を遂行するために必要な場合に限る」とされており、 性的指向や性自認の情報を所掌事務等に関係なく保有することはない中で、 あえて「条例要配慮個人情報」と位置付ける必要も感じられない。 そのほか、地域の特性から「条例要配慮個人情報」と位置付けるべき情報も思い当たらず、特にこれを条例で規定する必要はない。 3 個人情報取扱事務開始届について 個人情報を取り扱う事務を開始するときは、現行保護条例と同様、個人情報取扱事務登録簿(事務開始届)を作成し、 閲覧に供することを新保護条例で規定することが適当である。 〔説 明〕 1 現行保護条例における事務開始届 現行保護条例第6条第1項では、個人情報を取り扱う事務を開始しようとするときは、 あらかじめ、市長に届け出なければならないと規定している。 また、同条第3項では、市長は第1項の届出があったときは、横浜市個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)に 報告するものとしており、審議会は、当該報告に係る事項について実施機関に対し意見を述べることができると規定している。 2 新保護法における個人情報ファイル簿及びそれ以外の帳簿の作成・公表 新保護法第75条では、個人情報ファイル簿の作成・公表義務を規定しているが、 この対象となるのは、個人情報の保護に関する法律施行令(以下「施行令」という。) 第19条第2項のとおり、本人の数が1,000件以上の個人情報ファイル(データベース等)に限定されており、 1,000件未満の場合は作成等の義務を負わない。 一方、地方公共団体が条例により個人情報ファイル簿とは別の帳簿を作成することは、新保護法第75条第5項でも認められている。 3 新保護条例で規定する理由 本市が取り扱う個人情報について保護措置を講じるためには、 いわゆる「散在情報」も含めて保有個人情報を把握する必要があることから、 現行保護条例と同様に、個人情報を取り扱う全ての事務について届出を行い、審議会に報告することが適当である。 4 本人外収集の制限について 個人情報を収集する際は、可能な限り本人から収集するよう努める責務規定を新保護条例で設けるべきである。 〔説 明〕 1 現行保護条例における本人外収集制限 現行保護条例第8条第1項では、「実施機関は、個人情報を収集しようとするときは、 本人から収集しなければならない」とされており、本人以外から収集できる例外としては 「法令又は条例の定めがあるとき」や「出版、報道等により公にされているとき」、 「公益上特に必要があると認めるとき」等がある。 「公益上特に必要があると認めるとき」の場合は、審議会の意見を聴くこととされている。 これは、収集の妥当性や安全管理措置上問題がないかを第三者機関により客観的に確認するためである。 2 新保護法における収集制限の扱い 新保護法では、本人外収集に関する制限は設けていない。 新保護法第61条第1項で「行政機関等は、個人情報を保有するに当たっては、 法令(条例を含む。)の定める所掌事務又は業務を遂行するため必要な場合に限り、 かつ、その利用目的をできる限り特定しなければならない」とし、 第64条では「偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」と規定している。 国としては、利用目的を特定し、不正な手段によらず個人情報を収集すれば、 これまで各地方公共団体で行ってきた個人情報保護の水準を維持できるという考えである。 さらに、ガイドラインでは、個人情報保護やデータ流通について直接影響を与えるような事項であって、 新保護法に委任規定が置かれていないものについて条例で独自の規定を定めることを許容しておらず、 その一例として「個人情報の取得を本人からの直接取得に限定する規定」(P.74)を挙げている。 3 本人外収集の制限を責務規定として存置する理由 個人情報を、本人から収集できるにもかかわらず、本人以外から収集した場合には、 違法ではないとしても、トラブルの発生が懸念される。 これまで行ってきた本市の個人情報の保護水準を低下させず、市民の信頼を損ねないためには、 本人からの直接取得に限定する規定までは設けられないにしても、本人から収集することができる場合には、 当該本人から収集するよう努めることを責務規定として新保護条例に定めるべきものと考える。 5 人種、信条及び社会的身分に係る情報の収集制限について 人種、信条及び社会的身分に係る情報を収集しないよう努める責務規定を新保護条例に設けるべきである。 〔説 明〕 1 現行保護条例における収集制限 現行保護条例第8条第3項では、「思想、信条及び宗教に関する個人情報並びに社会的差別の原因となるおそれがある個人情報を収集してはならない」 とされており、「法令等の定めがあるとき」や「公益上特に必要があると認めるとき」は例外として収集できるものとしている。 また、「公益上特に必要があると認めるとき」の場合は、審議会の意見を聴かなければならないと定めている。 これらの情報は、差別の発生や個人の権利利益の侵害を招く可能性があるため、現行保護条例において収集を禁止しているものである。 2 新保護法における取扱い 新保護法では、個人情報の収集の制限としては、第62条で本人から書面で個人情報を取得するときは あらかじめ利用目的を明示しなければならないことを規定し、第64条で偽りその他不正な手段による収集を禁止するほかは、 特に規定を設けていない。 国としては、利用目的を特定し、不正な手段によらず個人情報を収集すれば、 これまで各地方公共団体で行ってきた個人情報保護の水準を維持できるという考えである。 現行保護条例の規定を維持しても、直ちに新保護法に反するとも思えないが、 「そのような条例があっても新法を運用した場合と結果は同じ」というのが国のスタンスであり、 「法と重複する内容の規定を条例で定めることは、同一の取扱いについて適用されるべき規定が法と条例とに重複して存在することとなるため、 法の解釈運用を委員会が一元的に担うこととした令和3年改正法の趣旨に照らし、許容されない。」(ガイドラインP.74)との見解も一考の余地がある。 3 収集制限を責務規定として存置する理由 これまで行ってきた本市の個人情報の保護水準及び市民の信頼を低下させないためには、 法律と重複するような規定を条例で設けることまではできないにしても、権利利益の侵害を招く可能性が特に高い人種、 信条及び社会的身分に係る個人情報にあっては、収集しないよう努めることを責務規定として新保護条例に定めるべきものと考える。 6 保有する必要がなくなった保有個人情報の廃棄・消去について 保有する必要がなくなった保有個人情報を廃棄し、又は消去しなければならないとする規定は、新保護条例には設けないことが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例第9条第3項では、実施機関は、保有する必要がなくなった個人情報を、 確実、かつ、速やかに廃棄し、又は消去しなければならないことを規定している。 新保護法にこれに相当する規定はないが、「法令の定める所掌事務を遂行するため、 必要な場合に限り個人情報を保有することができる」と規定している新保護法第61条第1項において、 同様の趣旨が含まれていることから、同趣旨の規定を条例で設けることは許されないと国は説明している (個人情報保護委員会事務局発行の「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」(以下「Q&A」という。)(P.7))。 また、今後のデータ利活用等の場面においては、国や県等と、クラウド上で個人情報を共有する場面も想定されるが、 本市にとって不要となった情報が国等にとっても不要とは限らず、本市の都合だけでは消去できない場面も考えられる。 したがって、保有個人情報の廃棄等に係る規定は、新保護条例には設けないことが適当である。 7 是正の申出について 是正申出の制度については、新保護条例では規定しないことが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例第50条では、利用停止請求ができる場合を除き、 「何人も、実施機関が自己を本人とする保有個人情報を第6条から第10条までのいずれかの規定に違反して 取り扱っていると認めるときは、当該実施機関に対し、当該保有個人情報の取扱いの是正の申出をすることができる」と規定している。 この運用状況をみると、平成19年度以降の実績は9件にすぎない。 その内容は、実施機関の条例違反を問うものではなく、実施機関とのトラブルに関するものが多く、 苦情申出の手段として使われているのが現状である。 このような事例は新保護法(第128条)に基づく苦情処理や従来から行われている広聴制度等により適切に対応できるため、 新保護条例では規定しないことが適当である。 8 審議会設置の要否及び審議・報告事項について 審議会については、個人情報の保護に関する重要事項や個人情報保護体制を構築するための 内部規程等の策定を審議事項とするほか、次のとおり、審議・報告事項を整理することが適当である。 【報告事項とするもの】 @ 行政機関等以外のものに対する個人情報の目的外提供 A 個人情報を取り扱う事務の委託 B 個人情報取扱事務登録簿の届出 C 個人情報ファイルの保有等に関する届出 D 行政機関等匿名加工情報の募集提案等の状況 【審議・報告を廃止するもの】 @ 本人以外からの個人情報の収集 A 人種、信条、社会的身分に係る情報の収集 B 電子計算機処理の開始 C 思想、信条等の情報の電計算機処理の開始 D 市の機関以外との電子計算機の結合 E 是正の申出に対する措置 F 市長の勧告に従わなかった事業者の公表 G 実施機関内部における目的外の利用及び他の実施機関に対する目的外の提供 H 市における個人情報の取扱いに関する苦情や個人情報の取扱いに関し事業者と市民の間に生じた苦情の内容及び講じた措置等の概要 〔説 明〕 1 法改正後の審議会の役割 新保護法第129条では、「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要であると認めるときは、 審議会その他の合議制の機関に諮問することができる」と規定されている。 保護条例の改正等、個人情報保護の重要施策については、審議会は今後もその専門性を発揮することが期待されているといえる。 一方、国はガイドラインにおいて「個人情報の取得、利用、提供、オンライン結合等について、 類型的に審議会等への諮問を要件とする条例を定めてはならない」(P.70)とも説明している。 今回の法改正の目的が、別個の法律や条例による規律により生じていた旧法制の不均衡・不整合を是正し、 個人情報等の適正な取扱いのために必要な全国的な共通ルールを法律で設定することにあることを踏まえると、 新保護法の解釈指針を個情委が示し、全国一元的に運用していく必要があることも理解できるものである。 そこで、審議会の役割は、新保護法にどう対応していくかの基本的な考え方、例えば、 行政機関等匿名情報の提供に当たっての基本方針や、望ましい安全管理措置等の水準の策定等に、力点を置いていくべきと考える。 個人情報の提供の是非等については、諮問事項とはしないことが法の趣旨に合致するものであるが、 実施機関が求める場合にアドバイスするなどは、当審議会としても対応していくべきものと思われる。 なお、ガイドラインによれば、「地方公共団体は、法第166条に基づき、専門性を有する委員会に助言を求めることも可能」(P.70)とあることから、 専門性を有する個情委の知見は十分に活用すべきものである。 また、横浜市は全国最大の基礎自治体であり、その扱う個人情報の量も、それに起因する諸問題の数も莫大である。 これらの問題を個情委と共有することは、個情委側のノウハウ蓄積にも意味があり、 また、新保護法を踏まえた諸問題に対する望ましい対処方法等が同様の課題を抱える他都市にも共有されれば、全国的な事務執行の効率化にも資するものといえる。 2 審議会への報告事項等 1を踏まえ、審議会は、個人情報の保護に関する重要事項等について審議するほか、審議会への報告事項を次のとおり整理する。 現行条例での取扱い 目的外の利用・提供を原則禁止 公益上特に必要があると認めるときは、審議会の意見聴取が必要(第10条) 新保護法での取扱い 目的外の利用・提供を原則禁止(第69条) 次に該当するときは、提供可とされたが、審議会に報告するものとする(新保護条例で整備)。 @ 統計の作成又は学術研究目的のとき。 A 本人以外の者に提供することが本人の利益になるとき。 B 提供することに特別の理由があるとき。 理由 個人情報の外部提供という重要事項に際し、 審議会に報告し、アドバイスをもらうことで、安心して提供できるようにし、適切なデータ利活用につなげるため。 現行条例での取扱い 個人情報を取り扱う事務を委託するときに個人情報の保護措置について審議会の意見聴取が必要(第14条) 新保護法での取扱い 事務委託の際の手続規定はないが、受託者にも安全管理措置が求められるので(第66条)、委託の場合は審議会に報告するものとする。(新保護条例で整備) 理由 ガイドラインに示された保護措置を確実に講じるとともに、その保護水準を維持するためには、第三者の目で確認が必要なため。 現行条例での取扱い @ 個人情報取扱事務登録簿の届出(第6条) A 個人情報ファイルの保有等に関する届出(第18条) 新保護法での取扱い 新保護法に特段の規定はないが、新保護条例において従前どおり審議会に報告することを規定 理由 権利保護水準の維持を図るため。 3 現行保護条例上の審議事項のうち審議会への報告事項としないもの 次の事項については、新保護条例においては審議会への審議・報告事項としないことが適当である。 現行条例での取扱い @ 本人外収集の制限(第8条第1項) A 思想、信条等の情報の収集制限(第8条第3項) 新保護法での取扱い 相当規定無 理由 これら収集制限は責務規定として整理するため。ただし、審議会への相談等はできるようにする。 現行条例での取り扱い 電子計算機処理の開始(第12条) 新保護法での取扱い 同上 理由 保護条例制定時からの社会情勢の変化を考慮すれば、電子計算機処理の報告を条例で規定する必要性は低い。 現行条例での取り扱い 電子計算機の結合(第13条) 新保護法での取扱い 同上 理由 @ オンライン結合に特別の制限を設ける規定は「条例に規定が置かれることが許容されないもの」との国の見解がある(ガイドラインP.74)。 A 情報セキュリティに関する技術的な仕様や安全確認は、デジタル統括本部との協議にも一定の意味がある。 4 市大及び市会に係る個人情報保護施策等への審議会の関わり 新保護法においては、市大には民間事業者と同じ規律が適用されることになり、例えば個人情報のデータベースを第三者に提供できる要件は公的部門と異なっている。 また、市会については、国会や裁判所と同様、個人情報保護は自律的に行われるべきとして、新保護法の適用が基本的に除外されている。 そこで、市大や市会に係る個人情報保護施策等に対して審議会がどのような関わるべきかについて検討する。 現行保護条例のもとでは、いずれも条例の適用を受け、審議会は一定の役割を果たしてきた。 新保護法における一部の規律の適用が異なるとしても、求められる個人情報保護施策に大きな相違はないと考えられるので、 市大等の意向次第では、次表に定める市の機関の場合の関与事項を一つの基準とし、引き続き審議会が関わっていくことが適当である。 なお、個人情報の取扱いについて民間規律が適用される、横浜市立市民病院及び脳卒中・神経脊椎センターについても、このことは同様に考えられる。 関与事項 諮問・意見聴取する事項 (1) 個人情報の保護に関する重要事項 (2) 本市の個人情報保護体制を構築するための内部規程等の策定のための意見聴取 (3) 特定個人情報ファイルの保有の開始又は重要な変更に伴う特定個人情 報保護評価書の第三者点検(PIA) その他審議事項 (1) 個人情報の保護に関し必要と認める事項の調査審議報告事項 報告事項 (1) 行政機関等以外のものに対する目的外提供 (2) 個人情報を取り扱う事務の委託に伴う措置 (3) 個人情報取扱事務登録簿(事務開始届)の届出 (4) 個人情報ファイルの保有等に関する開始・変更・廃止の届出 (5) 行政機関等匿名加工情報の提供 ※ なお、全てに共通する審議会の権限として、その職務を遂行するため必要があると認めるときは、 市の機関の職員その他関係者の出席を求め、これらの者の意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができるものとする。 9 第三者評価委員会の設置について 各職場の個人情報の取扱いを実地調査する第三者評価委員会については、引き続き設置することが適当である。 〔説 明〕 第三者評価委員会は、本市における個人情報の適正な取扱いを確保する等のため、 各職場における個人情報の取扱状況を第三者の視点で実地調査を行い、問題点等を指摘する委員会である。 新保護法には当該委員会に代わる機能は設けられていないが、安全管理措置に必要となる体制の整備は何ら否定されるものではないので、 本市の個人情報保護の水準を低下させないためにも、存置することが適当である。 10 運用状況の公表について この条例の運用状況の公表については、引き続きこれを義務付けることが適当である。 〔説 明〕 新保護法第165条においては、新保護法の運用状況を毎年度個人情報保護委員会に報告し、同委員会はその概要を公表することとされている。 市の運用状況の報告・公表については、現行保護条例第65条、横浜市の保有する情報の公開に関する条例第35条及び 横浜市行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に関する条例第18条にも同じく規定され、 これらが一体的に運用されている。 積極的な情報公開という観点からは、個人情報についてのみ同委員会からの公表で対応するのではなく、 引き続き一体的な情報の公表を図ることが必要であり、現行保護条例第65条と同様に運用状況の公表に係る規定を設けることが適当である。 11 行政機関等匿名加工情報の手数料について 行政機関等匿名加工情報の手数料の額は、施行令で定める標準額(国と同額)とすることが適当である。 〔説 明〕 新保護法第119条第3項では、行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約を地方公共団体の機関と締結する者が納める手数料は、 「実費を勘案して政令で定める額を標準として条例で定める額」と規定されているが、施行令ではこの標準額が国の行政機関の場合と同額とされた。 Q&A(P.21)では、本件手数料を条例で定めるに当たり、標準額と異なる額を定める場合には、 地方公共団体の特殊事情や実費の相違等の合理的な理由が必要となることが示されている。 新保護法が本件手数料についてあえて標準額を定めたのは、行政機関等匿名加工情報は、 地方公共団体の区域を越えて全国的に利用される可能性があるからであり、横浜市としてこれと異なる額を設定する必然もないことから、 本件手数料については標準額とすることが適当である。 12 経過措置について 現行保護条例の規定の改廃に伴って開示請求者等に不利益や不都合が生じることがないよう、 現行保護条例の規定に基づいて進めている開示請求や審査請求については、引き続き手続ができるよう経過措置を設ける必要がある。 〔説 明〕 新保護法の施行後は、現行保護条例の本人開示請求等に係る規定は廃止され、本市に対する個人情報の開示請求等については、 新保護法の規定に基づいて行われることとなる。 この点、現行保護条例の本人開示請求等に係る規定が廃止される時点で、開示決定等の処分がまだ行われていない等、 現に手続の途上にある案件が存在することが考えられる。 このような案件については、新保護法の規定によって開示決定等をすることはできないし、現行保護条例に基づく開示決定等をすることもできない。 そこで、このような不利益を防止するため、廃止前と同様の手続で開示決定等を行えるようにするための経過措置を設ける必要がある。 このほかにも、現行保護条例の規定の改廃に伴い、開示請求者等に不利益や不都合が生じることが考えられるものについては、 適宜、経過措置を設けることで、不利益や不都合が生じないようにする必要がある。