「横浜市個人情報の保護に関する条例」の改正について ≪中間取りまとめ≫ 横浜市情報公開・個人情報保護審査会   1 地方公共団体の機関について・・・1 新保護法第2条第11項第2号に規定する地方公共団体の機関について、これに該当する本市の各機関の名称を新保護条例に明記し、 新たに市の機関として「消防長」を加えることが適当である。   2 不開示情報について・・・2 情報公開条例との整合性を確保するため、新保護法は、新保護条例で、独自の不開示情報を規定し、また、新保護法に定める不開示情報の例外を定めることを許容しているが、 特段の独自措置は必要ない。   3 開示請求等に対する決定期間について・・・3 開示請求等に対する決定期間については新保護法に規定する30日以内とし、延長期間についても新保護法に規定する30日以内とすることが適当であるが、 これにより開示の遅延を招くことのないよう条例に責務的な規定を設ける必要がある。 4 開示の実施方法について・・・4 新保護法に基づく保有個人情報の開示の実施については、現行保護条例と同様の実施方法で行うとともに、新たに当該文書等をスキャナにより読み取って電磁的記録を作成し、 当該電磁的記録を複写した光ディスク等の媒体を交付する方法での写しの交付を行うことが適当である。 5 開示請求に関する手数料の徴収について・・・5 新保護法第89条第2項に基づき、新保護条例に、個人情報の開示請求に係る手数料を徴収する旨の規定を設ける。当該該手数料は、請求自体については徴収せず、 開示請求者が保有個人情報の写しの交付を求める場合にのみ徴収することが適当である。 6 開示に関する手数料の額について・・・6 新保護法に基づく開示請求に係る手数料の額は、「写しの作成に要する費用の額」と「写しの送付に要する費用の額」との合計額とすることが適当である。 また、電磁的記録に係る複写の作成費用は、ページ数又はファイル数に応じた従量制とすることが適当である。 7 審査請求先となる市の機関について・・・7 新保護法に基づく開示決定等に係る審査請求については、当該処分をした市の機関を審査請求先とすることが適当である。 8 審査会の法的位置付けについて・・・8 審査会を新保護法に基づく開示決定等に対する審査請求に係る諮問を受ける機関に位置付けることが適当である。 9 審査会の調査審議の手続について・・・9 行審法には次の手続に関する規定がないが、81条機関としての審査会においても引き続きこれらの手続が行えるようにすることが適当である。 @インカメラ審理を行うこと。 A審査関係人が主張書面又は資料の写しの交付を希望する場合、審査会は、写しの交付に係る日時及び場所を指定することができること。 B審査関係人から主張書面又は資料が提出された場合、審査会は、他の審査関係人にそのことを通知するよう努めること。    10 審査会に対する写しの交付の請求に関する手数料について・・・10 行審法第78条第2項に基づいて主張書面等の写しの交付を求める場合には、手数料を徴収することとし、手数料の額及びその減免等については 行審条例の規定を適用することが適当である。 11 裁決の尊重義務について・・・11 審査庁が審査会の答申を尊重して裁決を行わなければならないとする現行保護条例の規定は、維持することが適当である。 12 簡易開示制度について・・・12 新保護法には簡易開示制度の規定はないが、利用頻度の高い制度でもあり、新保護条例に本人情報提供の仕組みとして規定し、引き続き制度を運用することが適当である。 13 出資法人等の個人情報の保護について・・・13 出資法人等の個人情報の保護について、引き続き適正な取扱いが行われるよう、市の機関が必要な措置を講ずる旨の規定を新保護条例に設けることが適当である。 14 運用状況の公表について・・・14 この条例の運用状況の公表については、引き続きこれを義務付けることが適当である。 15 経過措置について・・・15 現行保護条例の規定の改廃に伴って開示請求者等に不利益や不都合が生じることがないよう、現行保護条例の規定に基づいて進めている開示請求や審査請求については、 手続ができるよう経過措置を設ける必要がある。 1 地方公共団体の機関について 令和5年4月1日施行の個人情報の保護に関する法律(以下「新保護法」という。)第2条第11項第2号に規定する地方公共団体の機関について、 これに該当する本市の各機関の名称を改正後の横浜市個人情報の保護に関する条例(以下「新保護条例」という。)に明記し、新たに市の機関として 「消防長」を加えることが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例第2条第1項では、地方自治法(昭和22年法律第67号)、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)等により、独立して事務を管理し、 及び執行する市の機関並びに市が設立した地方独立行政法人を、個人情報保護制度を実施する機関とすることを定めている。 市の機関を条例に規定しなくても新保護法の適用は受けるが、明確にしておく趣旨から、新保護条例に本市における具体的な機関名を明記することが適当である。 また、個人情報保護委員会(以下「個情委」という。)が発出した「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」 (以下「ガイドライン」という。)(P.10)において、「地方公共団体の機関」として「消防長」が示されたことから、 新保護条例には新たに「消防長」を明記することが適当である。 2 不開示情報について 横浜市の保有する情報の公開に関する条例(以下「情報公開条例」という。)との整合性を確保するため、 新保護法は、新保護条例で、独自の不開示情報を規定し、また、新保護法に定める不開示情報の例外を定めることを許容しているが、特段の独自措置は必要ない。 〔説 明〕 1 条例で独自に不開示情報を定める必要性 新保護法第78条第2項によって、「行政機関情報公開法第5条に規定する不開示情報に準ずる情報であって情報公開条例において開示しないこととされているもののうち 当該情報公開条例との整合性を確保するために不開示とする必要があるものとして条例で定めるもの」については、 新保護法施行後も独自に不開示情報として定めることができるとされている。 そこで、情報公開条例について検討するに、第7条第2項に定められている不開示情報のうち第2号、第3号、第5号及び第6号については、 新保護法において同内容の定めが置かれている。 情報公開条例第7条第2項第1号及び第4号については、実質的に新保護法第78条第1項の不開示情報への該当性を判断することで、 不開示とすべき情報を不開示にすることが可能である。 したがって、新保護条例で、不開示情報を追加して規定する必要はないと考えられる。   2 条例で不開示情報の適用除外規定を定める必要性 新保護法第78条第2項によって、新保護法の不開示情報として定められていても、情報公開条例において開示すべきとされている事項については、 条例で当該不開示情報から除外することができるとされている。 新保護法第78条第1項第7号イ「国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは 国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」及び同号ロ「犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」については、 情報公開条例上にこれらと同じ表現の規定はない。しかし、情報公開条例はこれらを開示する趣旨ではなく、第7条第2項第6号のいわゆる「行政運営情報」として 不開示とする趣旨である。 また、このほかに新保護法との関係が問題になる条例の規定も見受けられないので、条例で独自に適用除外規定を定める必要性はないと考えられる。 3 開示請求等に対する決定期間について 開示請求等に対する決定期間については新保護法に規定する30日以内とし、延長期間についても新保護法に規定する30日以内とすることが適当であるが、 これにより開示の遅延を招くことのないよう条例に責務的な規定を設ける必要がある。 〔説 明〕 新保護法第83条第1項では、「開示決定等は、開示請求があった日から30日以内にしなければならない」と規定しているが、 現行保護条例第26条第1項では、「開示請求があった日の翌日から起算して14日以内」としている。 また、新保護法第83条第2項では、この期間を30日以内に限り延長できる旨規定している。 この点について、「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」(P.16)では、条例において決定期間を短縮することは可能だが、 その場合でも延長期間は30日を超えることはできない旨が説明されている。 つまり、決定期間をこれまでどおり14日以内に設定したとしても延長できる期間は30日以内となり、トータルで44日しか確保されないことになる。 令和2年の実績によれば、約2割が44日以内に処理できておらず、この場合、実務に支障が生じると言わざるを得ない(60日以内であれば100%処理ができている。)。 したがって、新保護法の原則を短縮する規定を設けるのは適切ではないが、これまで横浜市は原則14日以内で処理してきた経緯があり、 過半は14日以内で処理ができているのであるから、新保護法の適用により開示が遅延することのないよう、条例に責務的な規定を設ける必要がある。 4 開示の実施方法について 新保護法に基づく保有個人情報の開示の実施については、現行保護条例と同様の実施方法で行うとともに、新たに当該文書等をスキャナにより読み取って電磁的記録を作成し、 当該電磁的記録を複写した光ディスク等の媒体を交付する方法での写しの交付を行うことが適当である。 〔説 明〕 1 文書等の写しの交付方法 新保護法第87条第1項では、開示の実施方法について、文書等に記録されているときは閲覧又は写しの交付により、電磁的記録に記録されているときはその種別、 情報化の進展状況等を勘案して行政機関等が定める方法により行うと規定されている。 このうち、文書等の閲覧又は写しの交付の具体的な方法については、法令等において特段の定めはないので、 横浜市においてその具体的な方法を定めて実施することとなる(個人情報の保護に関する法律についての事務対応ガイド(行政機関等向け)6−1−8−1(1)@参照)。 現行保護条例下で文書等の写しの交付を求められた場合は、当該文書等を複写し、写しを交付しているが、開示請求者の便宜を考えると、 文書等をスキャナにより読み取って電磁的記録を作成し、当該電磁的記録を媒体に複写して交付するという方法も認めることが適当である。   2 電磁的記録の開示の実施方法 現行保護条例第31条第1項第3号では、電磁的記録の開示の実施方法について「当該保有個人情報に係る部分の視聴、閲覧、写しの交付その他の電磁的記録の種類、 情報化の進展状況等を勘案して規則で定める方法」と規定されており、横浜市個人情報の保護に関する条例施行規則第15条では、電磁的記録の種類ごとに、閲覧、 視聴及び媒体に複写した電磁的記録の交付といった方法が規定されている。 これらの方法は、横浜市の各機関で対応可能なものであり、開示請求人が望む方法で開示できるという利点もある。 そこで、新保護法に基づく保有個人情報の開示の実施についても、電磁的記録の開示の実施方法は、同条と同様の方法で行うことが適当である。 5 開示請求に関する手数料の徴収について 新保護法第89条第2項に基づき、新保護条例に、個人情報の開示請求に係る手数料を徴収する旨の規定を設ける。 当該該手数料は、請求自体については徴収せず、開示請求者が保有個人情報の写しの交付を求める場合にのみ徴収することが適当である。 〔説 明〕 新保護法第89条第2項では、開示請求をする者は、条例で定めるところにより、実費の範囲内で、条例で定める額の手数料を納付することとしている。 国においては、写しの交付を求めるか否かにかかわらず、請求自体について手数料を徴収している。 一方、横浜市では、閲覧だけであれば手数料は徴収せず、写しの交付を求める場合に、規則で定める実費相当額を徴収する取扱いとなっている。 新保護法の施行に伴い、徴収する金銭の性質を「手数料」に改める必要はあるが、市民の使い勝手等を考慮すると、写しの交付を求める場合にのみ徴収し、 閲覧だけであれば徴収しないという扱いを維持することが適当である。 6 開示に関する手数料の額について 新保護法に基づく開示請求に係る手数料の額は、「写しの作成に要する費用の額」と「写しの送付に要する費用の額」との合計額とすることが適当である。 また、電磁的記録に係る複写の作成費用は、ページ数又はファイル数に応じた従量制とすることが適当である。 〔説 明〕 1 手数料の内訳 現行保護条例第59条において、写しの交付を受ける者は、写しの作成及び送付に要する費用を負担しなければならないと規定されている。 このうち、写しの作成については、文書等又は電磁的記録を印刷する場合は、用紙の枚数に応じた従量制の費用の負担を求めており、 電磁的記録をDVD等の媒体に複写し、当該媒体を交付する場合には、媒体の費用相当額の負担を求めている。 また、写しの送付については、郵送に係る費用の負担を求めている。   新保護法に基づく開示請求に係る手数料の額については、現行保護条例と同様に、写しの作成及び送付に要する費用の合計額を手数料の額とすることが適当である。   2 電磁的記録を媒体に複製する場合の手数料 電磁的記録を媒体に複製する方法による写しの作成に係る費用負担の現行の仕組みは、当該電磁的記録の量にかかわらず、媒体の費用相当額だけを求めるものである。 しかし、用紙への複写による写しの交付の場合には従量制で、電磁的記録の場合には従量制ではないというのは、均衡を失する。 そこで、電磁的記録を媒体に複製して交付する場合も、用紙への複写による写しの交付の場合の考え方にならい、適切な手数料額を徴収することが適当である。   3 文書等を電磁的記録にして開示する場合の手数料 新保護法に基づく開示請求に係る新たな開示方法として、文書等をスキャナにより読み取って作成した電磁的記録を媒体へ複製し、当該媒体を交付する方法を定めるが、 この場合の手数料の額についても、文書等の用紙への複写の場合とのバランスを考慮することが妥当である。 7 審査請求先となる市の機関について 新保護法に基づく開示決定等に係る審査請求については、当該処分をした市の機関を審査請求先とすることが適当である。 〔説 明〕 新保護法に基づく開示決定等に係る審査請求の手続には、行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下「行審法」という。)の規定が適用される。 そして、行審法第4条第1号では、開示決定等の処分をした行政庁に上級行政庁がない場合は当該処分をした行政庁が、同条第4号では、当該処分をした行政庁に上級行政庁が ある場合は当該上級行政庁が審査請求先となることが、それぞれ規定されている。 これによれば、処分者が執行機関又は公営企業管理者の場合は自らが審査請求先となり、処分者が消防長の場合は市長が審査請求先となる。 しかし、現行条例上は、実施機関に対して審査請求をする制度となっており、この取扱いを変更する必要性も見出せない。 そこで、行審法第4条の特例を設けることを認める新保護法第107条第2項の規定に基づき、開示決定等をした市の機関を審査請求先とすることが適当である。 8 審査会の法的位置付けについて 横浜市情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)を新保護法に基づく開示決定等に対する審査請求に係る諮問を受ける機関に位置付けることが適当である。 〔説 明〕 新保護法第105条第3項によれば、開示決定等に係る審査請求については、行審法第81条に基づく機関(以下「81条機関」という。) に諮問した上で裁決すべきこととされている。 横浜市には既に81条機関として横浜市行政不服審査会が存在するが、審査会は、現行保護条例に基づき開示決定等に係る諮問を受けていたので、 今後も審査会が諮問を受けることが制度の安定的運用に資するものと考えられる。そのため、条例において審査会を81条機関に位置付けることが適当である。 なお、81条機関が、行審法第81条に定める事項以外の機能を担うことは何ら禁じられていないので、現行の情報公開条例第22条第1項及び第2項に 定める審査会の重要な役割を、引き続き審査会に担わせることが適当である。 9 審査会の調査審議の手続について 行審法には次の手続に関する規定がないが、81条機関としての審査会においても引き続きこれらの手続が行えるようにすることが適当である。 @インカメラ審理を行うこと。 A審査関係人が主張書面又は資料の写しの交付を希望する場合、審査会は、写しの交付に係る日時及び場所を指定することができること。 B審査関係人から主張書面又は資料が提出された場合、審査会は、他の審査関係人にそのことを通知するよう努めること。 〔説 明〕 新保護法に基づく諮問に係る調査審議手続に適用される行審法には、情報公開条例に定める調査審議手続の一部に対応する規定が定められていない。 1 @について 文書等の非開示とされた部分を確認しなければ、当該部分を非開示とした判断が妥当であったかを適切に判断することができないため、インカメラ審理は、 処分の妥当性を判断する上で必須の権限である。新保護法下においても、その必要性は変わるものではない。   2 Aについて 事前に日時・場所を指定することでスムーズな交付が可能になり、横浜市の事務処理の便宜のほか、審査関係人の利益にも資すると考えられる。 3 Bについて 情報公開条例第25条第2項は、審査請求人等に意見書又は資料の提出があったことを知らせ、反論等の機会を設けることで、調査審議の充実を図る趣旨である。 このような機会を設けることは、新保護法下においても審査関係人の利益に資すると考えられる。 4 結論 新保護法第108条は、審査請求の手続に関する事項について条例で必要な規定を定めることを認めているので、同条に基づいてこれらの手続規定を設けることが適当である。 なお、これらの手続規定は、引き続き、情報公開条例に置くものとする。 10 審査会に対する写しの交付の請求に関する手数料について 行審法第78条第2項に基づいて主張書面等の写しの交付を求める場合には、手数料を徴収することとし、 手数料の額及びその減免等については横浜市行政不服審査条例(以下「行審条例」という。)の規定を適用することが適当である。  〔説 明〕 新保護法に基づく審査請求に係る諮問についての審査会での調査審議には、行審法の規定が適用される。 そして、行審法は、審査請求人等が審査会に提出した主張書面等の写しの交付を求める場合、当該審査請求人等は実費の範囲内において条例で定める額の手数料を 負担すべきことを規定している(行審法第78条第4項及び第81条第3項)。 この点、横浜市においては行審条例第2条及び第14条で手数料の額を定めており、A3までは白黒1枚につき10円、カラーは1枚につき50円、 A3を超える場合は実費相当額となっている。また、書面の送付を求める場合には、当該手数料のほか、送付に要する費用を負担することとしている。 現行保護条例では、写しの作成に要する費用と送付に要する費用を実費負担する取扱いとなっていたが、負担する額の考え方に実質的な違いはないため、 行審条例の規定を適用することが適当である。 また、行審法は、審査会が経済的困難その他特別の理由があると認めるときには、条例で定めることで手数料を減額し、 又は免除することができるとする規定を置いている(行審法第78条第5項及び第81条第3項)。 これについても行審条例第3条及び第14条に減免規定が定められているため、当該規定を適用するものとする。 11 裁決の尊重義務について 審査庁が審査会の答申を尊重して裁決を行わなければならないとする現行保護条例の規定は、維持することが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例第53条第3項では、審査庁が審査会から答申を受けたときは、当該答申を尊重して裁決を行わなければならないと規定されている。 新保護法に基づく審査請求に係る審査庁の審理手続に適用される行審法には、答申を尊重して裁決をすべき旨を明示した規定がないが、 横浜市では、これまでも審査庁の公正・客観的な判断を担保するため、答申の尊重義務をあえて明文で規定してきたものであるから、今後も同様に、 審査庁の答申尊重義務を条例で明示することが適当である。 12 簡易開示制度について 新保護法には簡易開示制度の規定はないが、利用頻度の高い制度でもあり、新保護条例に本人情報提供の仕組みとして規定し、引き続き制度を運用することが適当である。 〔説 明〕 現行保護条例には、簡易開示制度が規定されている(第32条)。これは、各実施機関があらかじめ定める保有個人情報について口頭などの簡易な方法で請求し、 当該実施機関の定めた方法により開示する制度である。 現行保護条例における簡易開示制度は、令和2年度は職員の採用試験、市立大学の入学試験など42の試験・選考その他の事業で合計1,086件の実績があり、 利用頻度の高い制度であるので、新保護条例に本人情報提供の仕組みとして規定し、引き続き制度を運用することが適当である。 13 出資法人等の個人情報の保護について 出資法人等の個人情報の保護について、引き続き適正な取扱いが行われるよう、市の機関が必要な措置を講ずる旨の規定を新保護条例に設けることが適当である。 〔説 明〕 出資法人等において個人情報の保護が推進されるよう、実施機関が必要な措置を講ずる義務については、出資法人等の公共的な性格や、 市の業務の経常的な受託などにより市と密接な関係を有し、一般の事業者以上に個人情報の保護を求められることから、 横浜市電子計算機処理等に係る個人情報保護条例(平成元年3月横浜市条例第13号)の施行時に規定されたものである。 出資法人等の性格・市との関係性が継続される限り、個人情報の適正な取扱いが求められることに変わりはない。 現行保護条例第60条を根拠として、出資法人等には、保有個人データ開示の標準規程を設けること、異議の申出について所管局が関与すること、 運用状況を報告することを求めていることから、当該規定は今後も維持することが適当である。 14 運用状況の公表について この条例の運用状況の公表については、引き続きこれを義務付けることが適当である。 〔説 明〕 新保護法第165条においては、市長等が新保護法の運用状況を毎年度個情委に報告し、個情委はその概要を公表することとされている。 市の運用状況の報告・公表については、現行保護条例第65条、情報公開条例第35条及び横浜市行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に 関する条例第18条にも同じく規定され、これらが一体的に運用されている。 積極的な情報公開という観点からは、個人情報についてのみ個情委からの公表で対応するのではなく、引き続き一体的な情報の公表を図ることが望ましく、 現行保護条例第65条に相当する規定を設けることが適当である。 15 経過措置について 現行保護条例の規定の改廃に伴って開示請求者等に不利益や不都合が生じることがないよう、現行保護条例の規定に基づいて進めている開示請求や審査請求については、 手続ができるよう経過措置を設ける必要がある。 〔説 明〕 新保護法の施行後は、現行保護条例の本人開示請求等に係る規定は廃止され、本市に対する個人情報の開示請求等については、新保護法の規定に基づいて行われることとなる。 この点、現行保護条例の本人開示請求等に係る規定が廃止される時点で、開示決定等の処分がまだ行われていない等、現に手続の途上にある案件が存在することが考えられる。 このような案件については、新保護法の規定によって開示決定等をすることはできないし、現行保護条例に基づく開示決定等をすることもできない。 そこで、このような不利益を防止するため、手続の途上にある案件について、廃止前と同様の手続で開示決定等を行えるようにするための経過措置を設ける必要がある。 このほかにも、現行保護条例の規定の改廃に伴い、開示請求者等に不利益や不都合が生じることが考えられるものについては、適宜、経過措置を設けることで、 不利益や不都合が生じないようにする必要がある。