表紙

新たな地震防災戦略(素案)
令和6年12月
横浜市

目 次

はじめに p.1

第1部 基本的事項 p.2
 第1章 横浜市地震防災戦略とは p.3
 第2章 現状・課題 p.4
1 「横浜市民の防災・減災の意識、取組に関するアンケート」結果 p.4
2 令和6年能登半島地震の被災地支援に携わったほんし職員の主な意見 p.8

第2部 行動計画 p.9
 戦略の柱1「市民や地域の“発災前からの備え”の強化」 p.10
 戦略の柱2「誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みの構築」 p.13
 戦略の柱3「大規模災害時の拠点等整備」 p.17
 戦略の柱4「災害に強いまちづくりの推進(インフラの強靭化)」 p.19


1頁

 はじめに                              
 
 ほんしでは、大地震から市民の皆様の命と暮らしを守るため、阪神・淡路大震災や東日本大震災等の教訓を踏まえ、市民の皆様とともに
対策を積み重ねてきました。

 特に東日本大震災では、行政の支援がすぐには届かないという現実を厳しく受け止め、「一人ひとりの備えと地域の絆」の浸透を災害対策の基本に据えて取り組むこととしました。
 「横浜市災害時における自助及び共助の推進に関する条例」及び「よこはま地震防災市民憲章」は、自助・共助の大切さを次世代まで着実につなぐことで、減災社会の実現を目指しています。

 そして、令和6年1月1日、石川県能登半島地方を襲った最大震度7の地震も、多くの人命や家屋、ライフライン等に甚大な被害をもたらしました。
 現地で支援にあたった延べ1,600名のほんし職員は、被災地の厳しい状況を目の当たりにし、耐震化や自助・共助の推進など、これまで進めてきた取組の重要性を再確認するとともに、避難所環境や物資、配慮を必要とするかたへの支援に関する課題や、在宅避難等への対応について、ほんしも早急に対策をとるべきとの教訓を得ています。
 
いつ起きてもおかしくない大地震からすべての市民を守るには、実災害から得られた貴重な教訓を、市民の皆様とともに活かしていくことが不可欠です。
今回策定する新たな地震防災戦略を軸として、改めて、市民の皆様と心を一つにし、横浜を「災害に強靭なまち」としていきます。

2頁

第1部 基本的事項

3頁

第1章 横浜市地震防災戦略とは                    
1 位置付け
  横浜市地震防災戦略とは、市の防災計画に定める大規模地震の被害を軽減する施策について、市役所の具体的な取組をまとめた行動計画(アクションプラン)です。

2 新戦略の策定の考え方
  横浜市地震防災戦略は、平成25年度から策定・運用していますが、令和6年能登半島地震等を踏まえ、改めて次の視点で検討し、継続・拡充する取組や新たな取組を新戦略として策定することとしました。
 ・ 市民目線の反映
   能登半島地震の被災地支援にあたったほんし職員の声や、防災・減災に関する市民アンケートなどを踏まえ、必要な取組を検討し、被災地で直接得られた教訓や市民の不安・現状等に応える「市民目線」を反映した戦略とします。
 ・ 自助・共助のさらなる推進
   災害対策の基本として取り組んできた「自助・共助の推進」について、能登半島地震でもその重要性が再確認されたことから、「一人ひとりの備えと地域の絆」をより一層浸透させ、自助・共助のさらなる推進を図る戦略とします。

3 策定主体
  横浜市(横浜市危機管理推進会議)

4 計画期間
  令和7年度から令和15年度まで(加速期:令和7~11年度、推進期:令和12~15年度)
	
5 戦略の4つの柱
柱1 市民や地域の“発災前からの備え”の強化
    防災行動の促進及び多様な助け合いの強化(自助・共助の推進)、地震火災対策の推進、建物倒壊等の防止対策強化、災害時にも活きるまちづくりの推進により、市民や地域の“発災前からの備え”を強化します。

柱2 誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みの構築
    避難所環境の向上、物資支援の充実、配慮が必要な人(災害時要援護者)への支援、多様な避難への支援、早期の生活再建に向けた支援により、誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みを築きます。

柱3 大規模災害時の拠点等整備
    広域防災拠点(旧上瀬谷通信施設地区)の整備、災害応急活動体制の強化により、大規模災害時の拠点等を整備します。

柱4 災害に強いまちづくりの推進(インフラの強靭化)
    緊急輸送路等の強靭化、上下水道の強靭化、港湾施設等の強靭化により、災害に強いまちづくり(インフラの強靭化)を進めます。
 
4頁

第2章 現状・課題                          

1 「横浜市民の防災・減災の意識、取組に関するアンケート」結果

(1) 調査概要
調査対象	市内に居住する満15歳以上の個人
実施時期	令和6年6月13日~7月11日
回答方法	郵送又はインターネット回答
回答数	3,419人 (回答率34点2%)

(2) 調査項目
  ・自宅の耐震化 ・家具の固定率 ・感震ブレーカー ・家庭の備蓄 ・防災に係る訓練・研修
  ・地域の助け合い等 ・避難生活 ・災害情報 ・横浜市の災害対策に係るご意見

(3) 主な調査結果
 ア 戦略の柱1(市民や地域の“発災前からの備え”の強化)関連
  (ア) 食料・飲料水の備蓄状況
    6割以上が「3日分以上備蓄」
【図 グラフ】

  (イ) トイレパックの備蓄状況
    6割以上が「3日分未満の備蓄」
【図 グラフ】

  (ウ) 直近3年間の防災訓練等への参加状況
    「何も参加していない」の割合が約6割
【図 グラフ】

- 5頁 -

  (エ) 感震ブレーカー設置状況
    「設置しておらず、今後設置する予定もない」が約5割
【図 グラフ】

  (オ) 住宅の耐震化状況(昭和56年5月以前の建物)
    「耐震診断、耐震改修等を実施する予定はない」が約3割
【図 グラフ】 

  (カ) 家具転倒防止器具設置状況
    「固定(転倒防止)していない」が約3割
【図 グラフ】

 イ 戦略の柱2(誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みの構築)関連
  (ア) 避難所での避難生活で心配なこと
    「トイレやプライバシー、衛生面、就寝環境、治安対策、空調設備」を心配する声が上位
【図 グラフ】

- 6頁 -

  (イ) 災害時要援護者への支援について
    「(家族以外で)避難等を支援する人はいない」が約4割
【図 グラフ】

  (ウ) 自宅建物が全壊している場合の避難先
    「避難所以外」に避難を想定している割合が約3割
【図 グラフ】

  (エ) 自宅で避難生活をする際に心配なこと
    「飲料水・食料の確保、ライフラインの復旧、トイレ」を心配する声が上位
【図 グラフ】

7頁

 ウ 戦略の柱3(大規模災害時の拠点等整備)及び戦略の柱4(災害に強いまちづくりの推進(インフラの強靭化))関連
  (ア) 災害対策について、ほんしに力を入れて取り組んでほしいこと
    「物資の備蓄、ライフラインの耐震向上、緊急情報等の伝達強化」をはじめ、「応援部隊・支援物資の受入れ態勢整備、災害時医療体制の強化、避難所の快適性向上」が上位

8頁

2 令和6年能登半島地震の被災地支援に携わったほんし職員の主な意見

 (1) 戦略の柱1(市民や地域の“発災前からの備え”の強化)関連
  ア 自助・共助について
   ・ ほんしで同規模の災害が発生した場合のフォローはかなり厳しいと感じた。行政も市民も一人ひとりが、いつ災害が起きてもおかしくないという認識を持ち、準備をすることが必要。
   ・ 公助にも限りがある中、一人ひとりに自助・共助の重要性を認識していただくことや、防災意識を高めていただくことが重要であり、行政としてそのような働きかけが必要。
   ・ トイレパック、非常食・水、防寒具など、市民一人ひとりが自分と家族を守るための備えについて啓発が必要。

 (2) 戦略の柱2(誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みの構築)関連
  ア 避難所等の環境について
   ・ 避難所でも、プライベート空間の確保など可能な限り日常に近い生活を送ってもらえるよう、必要な物品等を事前に備えておくことが大切だと考える。夏・冬は空調設置が不可欠。
   ・ 被災地では高齢の避難者への福祉ケアに携わった。ほんしでは高齢者のみならず、妊産婦、外国人、トランスジェンダーなど多様な避難者を考慮した避難所運営が求められると思う。
  イ 物資について
   ・ 発災3日後、すでに救援物資は一定程度届いていたが、物資管理や配送などは十分に機能していない印象を受けた。プッシュ型支援は整備されてきているが、発災直後の現場では混乱を伴うことがあり、非常に難しい業務だと感じた。
   ・ 発災後2週間が経過しても物流体制が混乱し、現場作業の妨げとなっていた。物資の管理や避難所への配送などが機能する対策が重要。
  ウ 災害時のトイレ環境について
   ・ 当たり前のトイレが使えなくなるということが避難生活に最も影響を及ぼすことを再確認し、様々なトイレ対策を進める必要性を感じた。
   ・ トイレが使えなくなると、トイレを我慢して体調不良となる避難者が多くなる恐れがある。
  エ 災害時要援護者への支援について
   ・ 施設や職員の被災により福祉避難所が開設できなかったり、開設しても避難者を受け入れられなかったりするケースが相次いだ。ほんしも教訓として対策を講じる必要がある。
   ・ ひきこもり、認知症等の事由により避難所での共同生活に難しさを感じてやむなく在宅で過ごす方が一定数存在した。在宅避難の場合、個別訪問にもマンパワーの制約があり、本人がSOSを発してくれないと、困りごとの把握が難しい。対策の検討が必要と考える。
  オ 多様な避難について
   ・ ペットとともに避難する方も多く、ほんしでも避難所での受入れ場所は事前に決めておく必要がある。
   ・ ほんしの人口規模を鑑みると、避難所以外の避難者(在宅避難、車中泊避難等)が相当発生すると見込まれるため、これらの避難者への物資供給や情報把握などの検討が必要と考える。
  カ 生活再建への支援について
   ・ 罹災証明書発行のための一連の事務は、被災自治体の職員では手が足りず、ほんしを含め全国の自治体職員が従事した。ほんしの人口規模では、罹災証明書の申請件数に比して圧倒的なマンパワー不足になることが想像されるため、デジタル活用等により事務手順を効率化しておくことが不可欠と考える。
   ・ 大規模かつ広域にわたり被災する中では、ボランティアによるきめ細やかで息の長い支援活動は大きな役割を果たすと感じた。

 (3) 戦略の柱3(大規模災害時の拠点等整備)及び柱4(災害に強いまちづくり(インフラの強靭化))関連
   ・ 道路損傷や土砂崩落などが多くあり、交通網が寸断したことで、災害情報の把握、救助や物資運搬に大きな影響があることを実感した。緊急輸送路の強靭化と復旧体制の強化が必要。
   ・ 建物や構造物の耐震化の状況により、被害が変わることを目の当たりにした。
   ・ 上水道や下水道が長期にわたり途絶すると、飲料水、生活用水やトイレ環境など、市民生活に大きく影響するため、対策が必要。