大佛次郎生誕120周年 ブックガイド

 大佛次郎は1897年(明治30)、横浜市英町(現・中区)に生まれました。横浜のホテルニューグランドの一室に仕事場を置き、住まいのある鎌倉と行き来しながら多くの名作を発表しました。 終生変わることのない愛情を故郷に寄せた大佛次郎は、愛猫家としても知られています。生誕120周年を迎え、大佛次郎記念館の協力によりブックガイドを作成しましたので、ご活用ください。 
 このブックガイドの作品以外にも、大佛次郎の著作は多数(小説だけでも長・短編あわせて約500作品)あります。図書館で読むことも、大佛次郎記念館で読むこともできます。横浜生まれの文豪・大佛次郎の世界をお楽しみください。

小説

『白い夜 大佛次郎セレクション』(未知谷 2007)

 1939年発表の表題作品「白い夜(原題:郷愁)」をはじめ、「レスナー館」(1935年発表)、「愛情」(1938年発表)など、戦前のモダン横浜を舞台にした短編を集めています。また、「離合」(1963年発表)は1958年に訪れたヴェネチアが舞台となっており、時空を超えて広がる鮮やかな情景と静かな情感が心にしみる作品です。

「角兵衛獅子(かくべえじし)」(『角兵衛獅子 鞍馬天狗傑作選 1』 文藝春秋 2007ほか)

 現鞍馬天狗は、弱きを助け強きをくじく、幕末維新期を舞台に活躍するヒーロー。この「角兵衛獅子」は、鞍馬天狗シリーズ全47作(1924〜1965年発表)の中でも、子どもの読者向けに最初に書かれたものです。繰り返し映画化されたことからも分かるように、子どもも大人も、鞍馬天狗のファンになってしまう魅力的な小説です。

「赤穂浪士」(『赤穂浪士 上』新潮文庫 2007ほか)
「赤穂浪士」(『赤穂浪士 下』新潮文庫 2007ほか)

 1927年発表。大佛次郎は従来「義士」であった赤穂四十七士を「浪士」と表現し、当時あふれていた失業者の姿を重ねるなど、作品に世相を反映させました。浪人・堀田隼人や大泥棒・蜘蛛の陣十郎など魅力的な人物を創作しつつも、史料を尊重する大佛次郎の姿勢が示された、当時のベストセラーです。

「霧笛」(『新潮日本文学 25』新潮社 1972ほか)

 1933年発表。明治初年の横浜居留地を舞台に起きた事件を描いています。"明治の古い横浜″に郷愁を抱いた大佛次郎。若き主人公千代吉は自分の分身と述べた作者の青春への愛惜が作品の中に偲ばれます。戦後執筆した「幻燈」と共に開化物の代表作です。

「幻燈」(『幻燈 大佛次郎セレクション』 未知谷 2009ほか)

 1947年から翌年にかけ発表。明治6年頃の横浜を背景に混沌とした世相を、執筆当時の敗戦下に重ね合わせています。元旗本の青年が、急激な社会変化の中で新しい希望を抱き、歩み出すまでを愛情を込めて描いています。

「帰郷」(『新潮日本文学 25』新潮社 1972ほか)

 1948年発表。主人公は戦時中、元将校ながらヨーロッパを放浪していた守屋恭吾。物語は色彩鮮やかなマレー半島のマラッカから始まり、戦後の日本へ移ります。鎌倉、横浜山手、京都…日本の伝統美を見つめつつ、時世に警鐘を鳴らしました。芸術院賞受賞作品。

ノンフィクション

「ドレフュス事件」(『大佛次郎ノンフィクション全集 第1巻』朝日新聞社 1971ほか)

 1930年発表。19世紀末のフランスでおきたスパイ冤罪事件「ドレフュス事件」を描いたノンフィクションです。フランスの歴史的事件を描きながら、日本の軍部が政治干渉を強める当時の社会状況に警鐘をならす思いで書いた、とその執筆意図を後に記しています。

「パリ燃ゆ」(『大佛次郎ノンフィクション全集 第3巻〜第5巻』 朝日新聞社 1971ほか)

 1961年から64年にかけて発表。フランス第三共和政の歴史を題材にしたフランス4部作最後の作品。普仏戦争後の混乱収まらぬパリで、民衆や労働者が政府軍に対抗して打ち立てた革命的自治政権、1871年のパリ・コミューンを描いています。実際の現場を訪れ、資料を駆使して描いた本作には、民衆のエネルギーと時代のうねりが渦巻いています。

「天皇の世紀」(『天皇の世紀 1〜10』 朝日新聞社 2005ほか)

 今から約50年前の1967年に、新聞社の明治維新百年記念事業としてスタート。大佛次郎が病没するまで1555回が新聞に連載、明治天皇誕生から戊辰戦争開始までが描かれました。現地取材を重ね、さまざまな史料を駆使し幕末維新の歴史を紡いだ、大佛次郎のライフワークです。

猫・エッセイ

「スイッチョねこ」(安泰/絵 フレーベル館 1975)

 いたずら子猫のしろきちは、虫に興味津々。あんなにいい声をしているのだから、きっと美味しいに違いないと思ったのです。ところが、しろきちは思いがけずに虫を飲み込んでしまい…。子猫の様子がなんとも愛らしいお話です。

『猫のいる日々』(徳間書店 2014)

 大佛次郎は生涯に500匹以上の猫を飼い、「次の世には私は猫に生まれて来るだろう」とまで書いています。その愛猫家が猫との日々を綴ったエッセイは60編に上りますが、猫好きもそうでない人も、思わず引き込まれてしまうこと請け合いです。

『「ちいさい隅」の四季』(神奈川新聞社 2016)

 横浜に生まれ鎌倉に住んだ大佛次郎は、14年間にわたって529回の連載記事「ちいさい隅」を神奈川新聞に書き続けました。一年をめぐるように、四季折々の風物や日常の感慨を記したエッセイ52編をまとめた ベスト版です。

『大佛次郎と猫』(大佛次郎記念館/監修 小学館 2017)

 たま・トンベエ・小とん・シロ・アバ子…大佛家の猫たちがくり広げるおもしろおかしいエピソードや、猫の「おもちゃ絵」など数々の猫コレクションを、写真をふんだんに使って紹介します。猫と暮らす、悩ましくもユーモラスな日々をご堪能ください。


 図書の選定と紹介文作成は、大佛次郎記念館職員が担当しました。
 紹介図書は、横浜市立図書館で所蔵しています。同じ作品名で複数の出版がある作品は、所蔵冊数の多い版を紹介しています。お近くの図書館に所蔵がない場合は、予約(取寄せ)もできます。
 お気軽に各階カウンター、電話、Eメールにてお問い合わせ ください。


大佛次郎記念館
〒231-0862 横浜市中区山手町113番地(港の見える丘公園内) 祝日を除く月曜日休館
TEL:045-622-5002  
※平成29年10月9日は大佛次郎の120回目の誕生日です。この日のほかにも、生誕120周年記念の催しが予定されています。詳細はHPをご覧ください。
【展示案内】〜7/9 大佛次郎のヨコハマ・スピリット、7/13〜11/12 大佛次郎と501匹の猫、 11/16〜3/11 大佛次郎の戦後日本(仮) 

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