図書館員のオススメ本2017-2018


この1年の間に瀬谷図書館の職員が読んで印象に残った本をご紹介します。

304 トランプ新大統領誕生で世界はこうなる 長谷川慶太郎/著 田原総一朗/著 SBクリエイティブ 2016

 国際エコノミストとジャーナリストである二人の著者が、今後の世界の流れを予測しています。アメリカ新大統領の誕生に伴って、ユーロ経済圏はどうなるのか、中国はどこにいくのか、日米安全保障はどうなるか、さらに北朝鮮やロシアはどうなるのかなど、多岐にわたる予測を二人の博識に基づいて話が展開します。内容は難しいものの、わかりやすい説明により興味を引き付けられます。  (コメント:職員A)


210.6 明治維新という過ち〜日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト〜 原田伊織/著 毎日ワンズ 2015

 副題に先ず身構えた。明治維新の精神的支柱・吉田松陰と松下村塾門下生がテロリスト!?
  当時からすれば彼らは急進・過激思想の危険人物で、関わりたくない物騒な人々。テロリスト呼ばわりもあながち外れではないだろう…と思い読み始めた。
 日本の近代化が江戸幕府と諸藩の連合により成し遂げられていたら、その後軍国主義に奔らず、平和国家になっていただろう。身分制度を超え編成された奇兵隊が奥州鎮撫に行かなければ、会津に苛烈な戦禍はなかったろう。著者の仮説、佐幕寄りの史観が語られる。
 明治維新は、それに勝利し明治以降の日本を牛耳った薩長土肥により、日本を近代化に導いた絶対的「正義」として、私たち国民に教え込まれてきた。官軍教育による「維新」至上主義が、歴史を歪めて伝え、吉田松陰を類まれな教育者に、テロリストを志士として英雄視するようになった。著者は本書で、薩長が書かなかった維新の実相を整理し、示すことで、日本の近代史のパラダイムシフト(いままでの基本的な価値観の大転換)を提唱している。
 維新から150年、所詮歴史は勝者のモノと達観するには早く、また、ことさらの価値を置いて維新至上主義を振りかざす必要もない。よい距離を保てる時間が経った今こそ読んでほしい、日本近代の始動を多角的に見直す一書である。                            (コメント:職員B)


910/ナ 夏目漱石、読んじゃえば? 奥泉光/著 河出書房新社 2015

 「14歳の世渡り術」という、若い世代に向けたシリーズの1冊です。『吾輩は猫である』以外読んだことがなく、内容も忘れていたため、タイトルに惹かれて手に取りました。本書では、『吾輩は猫である』では「好きなところだけ読んでかまわない」、『草枕』では「美しいという感覚が伝わればよい」「難しい漢字は調べなくてもよい」、『こころ』では「無理して読まなくていい」などと述べられています。『坊っちゃん』では「威勢の良い文体で坊っちゃんの孤独を書いている話。元気いっぱいな坊っちゃんのイメージを捨ててみよう」と書かれており、思いもよりませんでした。芥川賞作家であり、夏目漱石が大好きな奥泉氏の「もっと気楽に、夏目漱石の作品を読んでみよう」という気持ちが、伝わってきました。語りかけるような文章で読みやすかったです。この本を読んだ後で、夏目漱石のエッセイ『思い出すことなど』に挑戦することが出来ました。  (コメント:職員C)


367.2 丸刈りにされた女たち 藤森晶子/著 岩波書店 2016

 第二次世界大戦、ナチスドイツ占領下のフランスで、ドイツ兵と恋に落ちたフランス人の女性たち。彼女たちは、連合軍によるフランス解放後、人々の手により髪を丸刈りにされ、町中を引き回された・・。
 日本人女性の著者は、映画で見た、この心を引き裂かれるようなシーンが忘れられず、フランスに渡り、彼女たちがどうなったかを調べ始める。
 フランス全土でこうした事件が起こっていたが、丸刈りにされた女性たちも、丸刈りに加担した人々も、口を閉ざして語ろうとしない。フランスでは、この事件に触れることはタブーだったのだ。
 著者はあきらめず、わずかな手がかりをたどり、当事者たちと出会いを重ねる。その人たちから見えてきた、つらい過去ゆえに困難を極めた生活。それでも生き抜いてきた女性たちの、それぞれの姿に、人が生きることの尊厳を感じ、著者とともに感銘を受ける。 (コメント:職員D)


913.6/オ 家霊(ハルキ文庫) 岡本かの子/著 角川春樹事務所 2011

 「太陽の塔」他芸術作品で著名な岡本太郎の母親が書いた短編集だ。280円文庫というシリーズで、一度は読んでおきたい名作を薄く、安価で読めるものを目指したそうだ。著作権の切れた作品ばかりなので、この値段で大丈夫らしい。最初に刊行された10冊に含まれている。ちょっとうるさく感じられることもあるが、難しい言葉などにルビがついているところと巻末に語注が付いているのがうれしい。新潮文庫にも、かの子の短編集は『老妓抄』があるが、9編入っていて、ルビや注はない。「娘」以外の3編はこれにも所収されているが、こちらは4編しか収録されていない。4編とも女性が主人公で、かの子自身のいろいろな側面が表れているのかもしれないと思った。どれも、少し難しい言葉が使ってあるが、簡潔な描写で、女性ならではの視点で描かれている。私は中でも「鮨」に魅せられた。鮨屋に通う中年男性の幼き日のエピソード。母親の子どもへの愛情にあふれ、その描写がいかにもおいしそうで、自分もこの鮨を食べてみたいと思わせる。他に、お金に困らなくなった老芸者が出入りの若い電気屋の青年に好きな発明をさせるため、囲う「老妓抄」などがある。最初はとっつきにくかったが、読んでみると自分が知らない世界に引き込まれていき、豊かな気持ちになった。(コメント:職員E))


010 図書館と江戸時代の人びと 新藤透/著 柏書房 2017

 江戸時代、名称や形の違いこそあれ、現代の「図書館」に近い施設、サービスがあり、人々は本を借りて勉強したり、読書を楽しんでいたことが近年の研究でわかってきたそうです。江戸城内にあった「紅葉山文庫」は利用できるのは将軍、老中、儒者、諸大名などに限られていたものの、資料の収集、分類、目録作成、資料廃棄、利用者の調査依頼への対応、延滞者には返却の督促等と現代の図書館での業務に通ずる姿があります。8代将軍吉宗の度重なる延滞ぶりには当時の管理担当である書物奉行の苦労が目に浮かびます。また、町人や庶民が利用できた都市部での蔵書家、村落での「蔵書の家」のネットワークの広さとその機能の充実ぶりには驚かされます。江戸時代の「図書館」とそれを活用していた人々に思いを馳せながら、現代の図書館もぜひご活用ください! (コメント:職員F)


686 今尾恵介責任編集地図と鉄道 今尾恵介/編著 洋泉社 2017

 鉄道ファンにもいろいろな種類があるが、この本は乗り鉄でも撮り鉄でもなく「地図鉄」だという筆者による地図と鉄道の本。古い地図と現在の地図を比較して駅や線路の位置の移り変わりを楽しんだり、不思議な線形の線路がどうしてそんな形になったのかを地形をもとに考えたり、フルカラーで地図を見ながら楽しめる。第3部にある「ウソが描かれた路線編」は、地図といえば正確なものというイメージを覆すような例が取り上げられていて、駅の位置や線路の道筋が大胆に間違っていたり、ないはずの駅が書かれてしまったりと不思議なことが起きているのが面白く、個人的におすすめ。 (コメント:職員G)


673 奇跡の職場 矢部輝夫/著 あさ出版 2013

 鉄道整備株式会社、通称“テッセイ”と呼ばれている新幹線清掃業務を行う会社の業務改善ストーリー。ダイヤの乱れを招かぬために、1チーム22名編成で、わずか7分間で新幹線をピカピカに磨きあげるというスゴ腕の清掃会社。テレビでも紹介され、その驚異的なスピードは、フランスの国営鉄道が見学に訪れ、アメリカのCNNが特集を組んだほどのハイレベル。3K職場だったTESSEI(テッセイ)にJR東日本職員だった著者が経営企画部長として入社し、世界最強の「おもてなし集団」に変わるまでを描いている。 (コメント:職員A)


596.6 世界のサンドイッチ図鑑 意外な組み合わせが楽しいご当地レシピ 佐藤政人/著 誠文堂新光社 2017

 トルコのサバサンド(バルック・エキメッキ)、ボストンのルブスター・ロールなど、名物として世界的に認知されているものから、その土地土地のソウルフードのご当地サンドイッチが紹介されている。
 副題にあるように、そんな具がありか!?と驚くものも多々ある。
 イングランドの「チップ・バティ」はフライドポテトを挟んだもの。アイルランドの「クリスプ・サンドイッチ」はポテトチップスを挟んだもの、イギリスにはトーストを挟んだサンドイッチもある。
 紹介されるサンドイッチには全てレシピつきなので、食べたくなったら自分で再現もできそうだ。巻末にパンのレシピもあるので、日本では手に入らないパンを使う場合も、対応できる。 (コメント:職員B)


538 ドキュメント宇宙飛行士選抜試験 大鐘良一/著 光文社 2010

 この本は、宇宙飛行士選抜試験を密着取材した、テレビのドキュメンタリースタッフ2人によって書かれました。試験は、2008年6月〜2009年1月にかけて行われました。963人の応募者の中から、10人が最終選抜試験に残ります。最終選抜は、日本JAXAでは、極限のストレスに耐える力・危機を乗り越える力を試し、アメリカNASAでは、宇宙遊泳などの技量試験やベテラン宇宙飛行士による面接をします。日本での試験は、宇宙ステーションの特殊な環境を再現した閉鎖環境施設で行われます。(出入口は1つ。銀行の金庫の様な分厚い扉で閉じて、外界と隔離します)。監視カメラと集音マイクが設置されたその中で、初対面の最終選抜者10人は1週間生活し、事前に知らされていない課題を次々こなさなければなりません。最終選抜者達は、ありのままの自分をさらけ出して、課題に挑みます。そのタフさ、冷静さ、勇気、宇宙飛行士になりたいという思いに引き込まれて、なんてすごい方達だろうと思いながら、読みました。この試験で、油井氏、大西氏、金井氏が宇宙飛行士に選ばれました。金井氏は、2017年12月にソユーズ宇宙船で宇宙へ飛び立つ予定だそうです。夜空を見上げた時に、思うことが一つ増えました。 (コメント:職員C)


369.2 へろへろ 鹿子裕文/著 ナナロク社 2016

 福岡市にある、型破りな老人介護施設「宅老所よりあい」---在宅ケア・デイサービスと、小さな老人ホーム、地元の人たちが集まるカフェもある---は、なんと、「老人ホームに入らないための老人ホーム」。「ぼけても普通に暮らしたい。」一人の生活者としてのお年寄りを支える施設だ。
 あまりに個性的で老人ホームにことわられたお年よりがいることに憤慨したスタッフが、どんな個性的なじいさま・ばあさまでも全力でケアする施設をめざし、手作りバザーをはじめあの手この手で資金づくり、地元の人をまきこんでの施設づくり。ついに、詩人の谷川俊太郎さんを動かしてのチャリティコンサートも実現、「よりあい」に寄せた詩も生まれた。
 そして、この「宅老所よりあい」は、『ヨレヨレ』という雑誌まで出しているのだ。介護を明るく、元気にする雑誌は、一般の書店でも人気だとか。
 この本は、その『ヨレヨレ』の編集者が書いたものだ。個性的ではみだしもんのパワフルな人たちのはちゃめちゃなドキュメントで、「え〜! ここまで無理むり〜!」と思いながらも、ひき込まれて読み、そしていつか元気になっている、そんな本です。 (コメント:職員D)  


 ホ  闘牛の影(岩波少年文庫) マヤ・ヴォイチェホフスカ/著 岩波書店 1997

 自分が家業を継ぐべきかどうか、高校卒業時にすごく悩んでいたことがあったため、当時が思い出されて、すごく共感できた。舞台はスペイン、九歳の男の子マノロが主人公だ。マノロが三歳の時に亡くなったため、顔も覚えていない父は、その町で伝説的に有名な闘牛士だった。人々は、マノロも当然闘牛士になると思い込んでいたし、マノロもそうすべきかと思っていた。しかし、マノロは臆病な自分を知っていた。そして、父と同じ道を進むために闘牛の訓練を始めなければならなかった。マノロは自分なりに努力を続けたが・・・ 著者はポーランド生まれだが、第二次世界大戦時に、アメリカに亡命した。フランス、スペインなど各地で暮らした経験から、大人向けの小説を書いていた。この小説は、最初は大人向けの短編として書かれたが、ふとした動機から子ども向けの長編に書き改めたそうだ。そして1965年に、アメリカで最も優れた児童文学に贈られるニューベリー賞を受賞した。日本では、1967年に翻訳・出版されたが、長らく絶版だった。1997年に、岩波少年文庫に所収されることになり、訳者が若干の訂正を加えた。主人公は小学校中学年だが、内容は中高生向けといってもいいくらい、自分の進路に悩む姿が描かれている。自分のこれから行く先を悩んでいる人も、そうでない人も今一度立ち止まって考えてみるために、一読されてはいかがだろうか。 (コメント:職員E)  


726 馬場のぼる 馬場のぼる/著 こぐま社 2017

 ちょっとずるくて貪欲で、でもどこか詰めが甘くて痛い目に遭いながらもたくましくこの世を生き抜いていく「11ぴきのねこ」シリーズのねこたちは、ねこなのにやけに人間臭くて憎めない愛すべき隣人たちです。その生みの親、馬場のぼる氏の絵本作品、漫画作品、更には死後アトリエや生家から見つかった膨大なスケッチやメモ、子ども時代の絵や習字といった馬場作品を支えた土台部分も取り上げ、氏の魅力を余すところなく伝える一冊です。
 作品への思い、飄々とした作風の陰にある大変な努力とそれを表には出さないプロとしての矜持を知ると、愉快で楽しい馬場作品に一層の奥深さを感じます。
 そして、手塚治虫氏をはじめとした日本を代表する漫画家仲間との交友関係も興味深いものがあります。特に手塚作品に馬場氏が、馬場作品に手塚氏がちらりと描かれているというのは、ニヤリとさせられる友情エピソードです。 (コメント:職員F)


116 詭弁論理学 改版(中公新書) 野崎昭弘/著 中央公論新社 2017

 議論上手になれなくても議論を楽しめる「ゆとり」を身につければいい、という目的のもと、論理について学べる本だ。本書で展開される様々なパラドックスや論理パズルは、まじめに考えているとだんだん頭が痛くなってくる気もするが、それを楽しむこともまた一興なのではないかと思う。強弁をふるわれたときに、耐えるのではなくパターン分けして楽しむなどの工夫も、役に立つ一冊。 (コメント:職員G)