図書館員のオススメ本2016-2017


この1年の間に瀬谷図書館の職員が読んで印象に残った本をご紹介します。

336.4 即戦力の人心術 マイケル・アブラショフ/著 三笠書房 2008

 米国海軍の新任艦長のドキュメンタリーだが、 リーダー育成書としても有用。海軍のお荷物と言われていた最新鋭駆逐艦のダメ船員を様々な場面で奮起させ、米海軍最強のチームに育て上げるまでのドキュメンタリーとして大変面白い。また、この手腕は、現在のビジネスマンの管理職が職員の意欲を喚起する手法として十分通用する。ちなみに訳者は、元トリンプ日本法人の社長で、在職した9年間は職員の残業ゼロを達成させるとともに業績も連続して向上させた実行力の持ち主。訳者自身もあとがきで本書を絶賛している。    (コメント:職員A)

 

935 70歳の日記 メイ・サートン/著 みすず書房 2016

 一昨年の「今年の一冊」で、私はメイ・サートンの『今、かくあれども』(みすず書房 1995年)を紹介した。老人の精神の尊厳を示し、まだ若かった私に強烈な印象を残した小説だった。 その作者、サートンの『70歳の日記』が邦訳された。実際に彼女自身が老いた時、『今、…』の主人公カーロのよう強くいられたのだろうか…との興味で読んでみた。ところが70歳の彼女はちっとも老人ではなかった。一人で暮らし、庭仕事や、来客、手紙の返事に追われ、講演会や詩の朗読会、旅行で遠方にも出かける。小説や詩の執筆に取り組み、独りの時間を何より大切にする。自立した女性の日常が綴られている。少々退屈にも感じながら読み続けていたが、不意に次の言葉に出会った。私が今、一番聞きたかった言葉だと感じた。「自分が七〇歳で、しかもこんなに若い気がすることが信じられない。(中略)人は先のことを不安に思うけれど、実際にそうなってみると、不安に思っていたのとはまったく違うというのが真実ではないだろうか。」 老いを闇雲に恐れ、心配する必要はないらしい事を知った。 サートンは83歳で亡くなっている。『82歳の日記』もあり、既に邦訳されている。彼女が最晩年まで自立した魂で、凜と生きていることを期待して、私が人生の終盤を意識する時になったら読もうと思っている。                 (コメント:職員B) )

 

913.6/ミ  仏果を得ず 三浦しをん/著 双葉社 2007

 勉強の嫌いな不良の健は、修学旅行でみた文楽鑑賞で、人間国宝の笹本銀大夫の迫力ある語りに圧倒・魅了されます。高校卒業後、文楽研修所を経て、銀大夫に弟子入りした健は、実力はあるけれども変人の三味線・兎一郎と組まされます。師匠に振り回されたり、恋をしながら、修行に励み、300年前から続く義太夫の世界に、のめりこむ健。そして、義太夫の世界には昔の話だけではなく、今現在にもつながる人々の愛しさ、愚かさが、描かれていることを感じ取り、成長していきます。文楽の演目が色々出てきますが、難しくなく、健を応援しながら、楽しく読めました。      (コメント:職員C)

 

721 ねこのおもちゃ絵 長井裕子/著 小学館 2015

 猫大好き浮世絵師・歌川国芳と、そのお弟子さんたちによる猫の浮世絵が、これでもか!と紹介されている本です。国芳は猫を何匹も飼っていて、絵を描く時でも懐に猫を入れていたとされる程の無類の猫好きとして知られています。今年は展覧会なども開かれていたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。 この本で紹介されているのは主に明治期のおもちゃ絵が多いので、国芳の作品はそんなに多くないのですが、洋装していたり牛鍋屋に行っていたりと当時の文化の様子もわかって猫好きでなくても楽しい本です。個人的には「流行猫の温泉」という絵がお気に入りです。入浴中の猫がやけに艶っぽくて笑いを誘います。            (コメント:職員D)

 

916/ヤ ちいさなちいさなベビー服 八束澄子/著 新日本出版社  2015

 倉敷中央病院内にあるボランティア手芸サークル「グリーンはぁと」。そこでは病院内で必要となる様々な縫物を行なっています。抗がん剤治療のため髪の毛が抜けてしまった患者さん用の帽子やホータブルトイレのトイレカバー、小児病棟の子どもを励ますタペストリーなど、作るものは非常に多彩。その中に早産などで亡くなった赤ちゃんのための小さな小さなベビー服もあります。産声をあげることもなく亡くなった赤ちゃんも、お腹の中で確かに生きていた大切な家族と迎え入れられ、そして送れるようにと、ボランティアが心を砕いてどこにも売っていない小さな小さなベビー服を作っています。赤ちゃんとその家族に寄り添おうとする「グリーンはぁと」の活動を中心に、命と真剣に向き合い格闘する倉敷中央病院の関係者の真摯な姿と熱い思いが描かれています。            (コメント:職員E))


382 中国 虫の奇聞録 瀬川千秋/著 大修館書店  2016 

 セミというと、日本では恋に身を焦がすはかない虫のイメージですが、中国では不老不死の霊虫として珍重され、セミをかたどったアクセサリーを高貴な人が好んで身に着けたりしていました。 中国と虫のかかわりはとても深く、酒に酔って寝ている間に、アリの国に行って栄耀栄華をつくす「南柯の夢」や、夢の中で蝶になって飛んでいるうちに、自分が人間か蝶かわからなくなるという「胡蝶の夢」などの話は、日本でも有名ですが、まだまだ知られざる楽しい話が、中国三千年の文学や歴史の中にはたくさんあります。 広大な中国の大地を食い尽しながら移動するバッタの大群が、王朝の興亡を左右したり、後宮の美女三千人の無聊を慰めるために放たれるたくさんの蝶と、それを集めさせられた民の苦労・・・。                                      著者のあとがきによると、この本は、肉親の介護で自宅から2キロメートル圏外には出られない生活の中で書かれたそうです。そんな中でも、草むしりをしている庭で繰り広げられる様々な昆虫の暮らしに見入り、同じように驚きと好奇心をもって虫たちを観察したであろう、昔の中国の人に思いを馳せ・・・。その共感が本書を豊かなものにしているようです。      (コメント:職員F)


913.6/ハ  下流の宴 林真理子/著 毎日新聞社 2010 

 「一億総中流」と言われていたのは過去の話で、 今は格差社会になってしまった。この物語の主人公由美子もそんな中流の家庭に身をおいてきたつもりだったが、息子のせいで危機に陥ってしまう。 勉強が大嫌いで、高校を中退してアルバイト生活。オンラインゲームで知り合った年上の女性と結婚するというのだ。しかも、彼女は専門学校卒で息子と同じくアルバイト店員。由美子は父親が早くに亡くなってしまったため苦労したが、医者の娘だったというプライドがあった。そこで、二人の結婚の条件として、息子が医者になるのならという途方もないことを言い出した。果たして、息子はからきしやる気がなく、最初から話にならない。ところが、相手の女性が挑戦すると言う。さて、事の顛末は? また、息子と正反対の見栄っ張りの長女の結婚の行方は? 元々毎日新聞の連載小説だったせいか、次にどうなってしまうのか、気になって仕方なく、ページを繰る手を止められない小説だ。  (コメント:職員G)

 

626  土を使わないはじめての野菜づくり 中島水美/著 新星出版社 2012

 庭先やベランダなどで手軽に野菜づくりを始めたい方にオススメ。土を使わない水耕栽培だが高価な栽培容器はいらない。栽培に使う液体肥料やペットボトル以外はほとんどを100円ショップで揃えられる。液体肥料もインターネットの購入サイトで簡単に購入できる。市販の液体肥料でも代替可能。葉物は短期間で収穫でき、トマトなども4か月程度で収穫可能。無農薬の自家栽培が簡単に行える。 (コメント:職員A)


210.6  それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子/著 朝日出版社 2009

 今年度、新潮社から文庫本も発売されました。単行本発行当初から、タイトルで気になっていた本をこの機会に読んでみました。今からすれば無謀としか思えぬ「戦争」になぜ踏み出したのか?その疑問への答えが書いてあると期待しました。 本書は東大教授の著者が、栄光学園高等学校の生徒と対話をしながら、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、第二次世界大戦に分けて、日本の近現代史について話した講義を書き起こしたものです。国際関係や日本国内の政治、社会、その時々の情勢が多面的に解説されていて、日本が戦争に突き進んで行く、歴史の大きなうねりは分かったように思います。 しかし、うねりの中で、市井の人々が「戦争しかない」と思い込んでいく姿には迫りきれてない感があり、当時の一般の「日本人」が戦争を「選んだ」ことに共感、納得するまでにはいたりませんでした。同調性の強い国民がいつのまにか、選ばずして…なら、現代の私にも通じる所があります。その時代の人々が読んでいた空気が、近現代の日本社会で形成されていく過程は分かり、それを少しながら感じることができました。 (コメント:職員B)


913.6/ア 等伯 上・ 安部龍太郎/著 日本経済新聞出版社 2012

 戦国時代に、当時の絵画界の権威・狩野派に挑んだ長谷川等伯の物語です。能登の武士の家に生まれた長谷川又四郎信春(等伯)は、絵の才能を見込まれ、絵仏師の修行に打ち込みます。その仏画は能登・越中・加賀でも高く評価されます。しかし、信春は、都へ出て修行し狩野永徳に負けない絵師になりたいと、33歳で都へ旅立ちます。絵の道を究めようとする信春もそうですが、夫の絵の才能を理解する献身的な妻・静子、父を驚かせるほどの絵の力量を持つ心優しい息子・久蔵、静子亡き後、信春を支えるしっかりものの清子など、まわりの人々が魅力的でした。日本美術に疎かったのですが、上下合わせて719ページを夢中で読むことができました。同著者と、新聞連載時に挿絵を描いていた西のぼる氏との共著『絵物語長谷川等伯』もぜひご覧ください。          (コメント:職員C)


302 池上彰の世界の見方 池上彰/著 小学館 2015

現在、国内で最も著名なジャーナリストと 言っても過言でない池上彰氏が、若い世代に多様な世界を伝えようと、現代世界をわかりやすく解説したシリーズの第1作。 本書は導入編として「地図」「お金」「宗教」「資源」「文化」「情報」の6つの観点から世界情勢を見ていきます。地名の表記に隠された政治的背景、お金の成り立ちと現代の経済の仕組み、資源と政治の関係性、テレビアニメにも反映される文化の違いなどが易しい言葉で丁寧に説明されており、私たちが生きている「今」の基盤が見えてきます。大人が読んでも「なるほど!」の連続。日々のニュースがより一層わかりやすくなりますよ!       (コメント:職員E)  


369.2 お年よりと絵本でちょっといい時間 山花郁子/著 一声社 2003

 今、老人ホームやグループホームなどで、レクリエーションの時間に、絵本の読みきかせを、ボランティアやスタッフの方が、入居者の方と楽しむところが増えています。  この本の著者山花郁子さんは、図書館司書として、絵本の読み聞かせを実践する中で、絵本が子どもだけではなく大人も元気にすることを身を もって実感、それから、すべての世代の人への読書活動推進に長年活躍してきた方です。高齢に なったお母様の介護をきっかけに、老人ホームでの読み聞かせを思い立ちます。手探りで始めたボランティア活動「歌と語りの会」に参加する様々なお年よりたち。毎月、季節の絵本や紙芝居を読み、思い出を語りあい、唱歌を歌ううち、ひとりひとりの人生のそれぞれの思いが立ち上がり、伝わってきます。  この本は、その毎月の実践を、読みきかせを巡る季節の随想とともにまとめたものです。お年よりと楽しめる絵本や歌の解説も充実。また、ボランティアをするときの心得にも触れています。何より、本書にあふれる、いきいきとした温かい力に、元気になれる1冊です。             (コメント:職員F)


369.2 認知症「食事の困った!」に答えます 菊谷武/著 女子栄養大学出版部 2015

認知症の家族がごはんを食べてくれなくて困るということはないだろうか? まるで子供に返ったかのように、好きなものしか食べないとか、戸惑うことも多い。そんな時、頼りにしたいのがこの本だ。まずは、認知症の症状自体の説明、そして高齢者に起こりやすい摂食機能障害とその対応、噛みにくい人、飲み込みにくい人いろいろだ。そのあとは、 Q&A方式でどうやって対応するのがよいか、いろいろなケースを説明してくれている。カラーのイラストが多くてとっつきやすいし、文章も読みやすい。読んで参考にしたい。           (コメント:職員G)