図書館員のオススメ本2015-2016


この1年の間に瀬谷図書館の職員が読んで印象に残った本をご紹介します。

ティーンズ
913.6/ハ
流れ星が消えないうちに 橋本紡/著 新潮社 2008

 大好きだった恋人加地くんを亡くしてしまった奈緒子と、加地くんの親友であり奈緒子の今の恋人巧くん。恋人・親友を亡くしてしまったふたりが歩き出す瞬間の物語。
 タイトルにもなっている「流れ星」のシーンはとっても印象的。恋愛に限らず、悩み、立ち止まっている人に読んでほしい1冊。
 波瑠さん主演で2015年11月に映画も公開されています。(職員A)

 

324

今日から成年後見人になりました

児島明日美・村山澄江/著 自由国民社 2013

 「成年後見」とは、認知症や知的障碍などで判断能力が衰えた方を支援する国の制度である。銀行の手続き、不動産の売却、遺産相続の場面などで利用されることが多い。この本では、初めて後見人になった人でもわかるよう、成年後見人の仕事についてていねいに説明してある。二色刷りでイラストもあって読みやすい。成年後見についての説明から、最初の仕事、日常の仕事、特別な仕事、それから任意後見についてまで書いてある。成年後見について知りたい方は、最初の一冊として手に取られてはいかがだろう。(職員B)

 

933/ハ  ミニチュア作家 ジェシー・バートン/著
青木純子/訳
早川書房 2015

 17世紀オランダ。当時、ミニチュアのドールハウスは家具などのパーツを揃えると、人の住む豪邸が買えるほどの高価なものだったそうです。
主人公である18歳のネラはアムステルダムの豪商ヨハンネス・ブラントの家に嫁ぎます。しかし、夫は家にはほとんど帰ってこず、一家を取り仕切る気の強い義妹のマーリンには歓迎される様子もありません。ところが、ある日夫から結婚祝いのドールハウスを贈られ、彼女の生活は変化します。しかし、決して姿を見せないミニチュア作家から届く、家族そっくりの人形や注文したはずのないミニチュア家具にはブラント家の不幸な運命が暗示されていました。やがて、ネラはヨハンネスのある秘密を知ってしまいます。
 この物語に登場するドールハウスは実在するそうで、ペトロネラ・オールトマン(ネラの本名)という女性が所有していたそうです。このお話は、それほどの大金をかけてドールハウスを豪華なミニチュア家具で装飾した人が一体どんな思いだったのかを想像したものです。恐ろしい展開を予想させつつ、ネラを導いてくれる不気味なミニチュアが、読んでいてどきどきさせてくれます。
 本作は女優としても活躍している著者による作家デビュー作で、全英図書賞の新人賞受賞作です。かなり文章量のある本ですが、ミステリー要素があり、読みやすいのでおすすめです。(職員C)

 

913.6 /ツ ツナグ 辻村深月/著 新潮社 2010

 使者(ツナグ)とは、死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口。死んだ人間に会えるのは、一生に一度だけ。高校生の使者・歩美が、つらい思いや後悔、不安を抱えた4人の男女を、たった一人の会いたい死者に会わせていく5つの物語です。幸せな結末ばかりではありませんが、じんとくるお話でした。読み終わったあと、すぐもう一度読み返した1冊です。(職員D)

 

児童
38
絵本で学ぶイスラームの暮らし 松原直美/著 あすなろ書房  2015

 世界各地での紛争やテロのニュースの中の言葉として聞くことが多くなり、「イスラム教」をなんとなく怖く感じている方もいるのではないでしょうか? イスラム教の信者は世界中に10億、20億いるとも言われているそうです。しかし教徒の少ない日本では、イスラムの考えや生活習慣について馴染みがありません。日本が観光に力を入れている事もあり、近年、イスラム教徒の観光客も増えています。身近にイスラムの存在を感じる事が多くなった今、誤解や偏見があっては友好の妨げとなります。イスラム教とイスラム教徒を正しく理解する必要があると思います。児童向けに発行されたこの本を、最初の一冊、入門書として読んでみてはいかがでしょう。アラブ人の少年、アフマド君の暮らしを通して、イスラムの基本的な考えや、行事を分かりやすく、楽しく解説した物語絵本です。ご家庭で一緒に読めば、子ども達の異文化理解もきっと進みます。(職員E)


児童書研究
019
サンタクロースの部屋 松岡享子/著 こぐま社  2015 

 子どもの頃にサンタクロースを信じること、それは大人にとっては他愛もないことかもしれない。しかし、心にできたサンタクロースのための空間は、その子にとってその子の人生を豊かにする大切なものとなるサンタクロースその人はいつかその子の心から出て行ってしまうだろうが、心にできた空間には成長に応じて別の住人を迎え入れられるだろう、と著者は語っている。
 本書は、1960年代、1970年代に著者が新聞や雑誌に発表した文章をまとめたものである。半世紀の時を経てもなお、内容は全く古びず、著者が長年私たちに伝え続けてきた「子どもにおはなしを届ける大切さ」「ことばが持つ重み」は今も変わらない。むしろ、情報が溢れ続け、様々な音が鳴りやまない現代社会において、その重要性は増しているのかもしれない。
 子どもたちが目に見えない大切なものを信じ、受け入れる収容能力を持つために、周囲の大人ができることのヒントが詰まった1冊。(職員F)


910/イ  ひみつの王国 評伝石井桃子 尾崎真理子/著 新潮社 2014 

 石井桃子さんをご存じですか。『ノンちゃん雲に乗る』で終戦後の児童文学に颯爽とした風を吹き込み、児童文学や絵本の作家・名編集者・翻訳者として、様々な子どもの本を世に送り出し、書き手や編集者を育て、戦後日本の子どもの本の世界を築いてきた人。『ちいさなうさこちゃん』『くまのプーさん』『ピーターラビットのおはなし』・・・。今もロングセラーとして親しまれている多くの絵本を日本に紹介したのも、彼女の仕事です。
 しかし、彼女が若いころ、戦前の女子大の卒業生としてキャリアウーマンの道を切り開いた一人で、創業まもない文藝春秋社で女性初の編集者として活躍した、“モダンガール”であったことは、案外知られていません。その控えめな人柄と卓越した語学力や事務処理能力により、高名な作家はもちろん、時の首相の犬養毅の家庭でも家庭教師として信頼されるようになります。
しかし、その能力ゆえに心ならずも戦時体制に組み込まれてしまい、戦後そのことから背をむけるように、女性2人で農業に没頭し「ノンちゃん牧場」を経営・・・。この間のことは、石井桃子本人も、あまり発言していないそうです。
 本書の著者の尾崎真理子は、幼いころ石井桃子の手がけた絵本に親しみ、新聞記者として文芸欄などを担当した人ですが、晩年の石井桃子へのインタビューも含めて、丁寧に石井の残した著作や手紙にあたり、石井を巡る人々に取材を重ね、力作ながら読みやすい本にまとめています。
 知られざる石井桃子の若き日の姿も含め、その101年に及ぶ生涯をたどった本書は、一人の女性の魅力的な伝記というだけでなく、20世紀の女性史であり、文壇史であり、子どもの本の歴史であり、そしてなによりその時代を生きたあまたの人びとの声の聞こえる記録として、21世紀を生きる私たちに手渡された、読み終わったとき、そんな感慨を覚える本です。 (職員G)

 

490  「平穏死」10の条件 長尾和宏/著 ブックマン社 2012

 生きている限り皆いつか死にます。その死をいかに平穏に迎えるかを考えたとき、この本は大変役に立ちます。たとえば、がん。日本人の多くが罹患しており、壮絶な最期を遂げる可能性があります。また認知症もいつの間にか発症して症状が進めば、自身の意思が反映されずに終末期に向かう可能性があります。著者は、終末期は自宅で迎えたいと希望しながら病院で亡くなった患者の死を多く経験し、その受け口となる在宅医療現場に身を移し、どうあるべきかを読者に解いてくれます。いつか迎える死を自分自身の問題としてとらえ、平穏に自分らしく死を迎えるための参考書としてもってこいの一冊です。(職員H)


児童
ものがたり/ヒ 
ほらふき男爵の冒険 斉藤洋/文
はたこうしろう/絵
偕成社 2007

 この物語の主人公はヒエロニュムス・カール・フリードリッヒ・フォン・ミュンヒハウゼン男爵です。
 ミュンヒハウゼン男爵は18世紀のドイツに実在した人で、おしゃべりをするのが大好きで、話をするのがとっても上手だったそうです。
 この男爵の話す冒険物語は、あまりに不思議で面白いことばかりなのでなかなか信じてもらえません。なので“ほらふき男爵”と呼ばれています。(※ほらふきっていうのは小さなことを大げさに言ったり、ありもしないことをほんとうのことのように言ったりする人です)
 さあ、この男爵のお話、あなたは信じますか?
 周りになかなかお話を信じてもらえないのは男爵だけではありません。ジョン・バーニンガムさんの『いつもちこくのおとこのこ ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』もおすすめ。(職員A)


文庫本
913.6/フ
橋ものがたり 藤沢周平/著 新潮社 2003

 藤沢周平の本は、井上ひさし氏によれば、大別すると五つのジャンルに分けることができるそうだ。史伝物、お家騒動物、青春物、職人人情物、そして市井人情物。この短編集は、その五番目の分類に当たる。橋をモチーフにして、男と女の出会いと別れを描いた十編の話が収められている。橋が約束の場所であったり、渡ってはならない所であったり、いろいろだ。簡潔な文章でありながら、どれもこれも男と女の心情が胸に響いてくる。運命というものがあるなら、それに翻弄されまいとする人々の気持ちが伝わってくる。読み終わった後、心がほっとする短編集だ。(職員B)


913.6/ヒ 夢を売る男 百田尚樹/著 幻冬舎 2013

 『海賊とよばれた男』などの代表作がある百田尚樹の「出版界のタブーに切り込む問題作」という売り文句が気になって読んでみましたが、この著者だからこそ説得力を持って書ける本なのかなと納得してしまいました。
 年々売上が厳しくなる出版業界の中でも、自分の本を書いて表現したい人は増え続けています。丸栄社の編集長、牛河原はそのような人々を言葉巧みにおだて、詐欺とも思える手法で自費出版の契約をさせます。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター、独自の教育論を本にしたい主婦など、章ごとに様々な「客」が登場しますが、牛河原は彼らの書いた原稿を陰では「クズ」扱いしつつ、出版の夢を叶えていきます。読む人に出版業界への不信感さえ抱かせ、まさに「問題作」といえますが、どの章も笑えるところがありますので短編集のようなつもりで気楽に読んでいただきたいです。(職員C)


913.6 /ナ 楽隊のうさぎ 中沢けい/著 新潮社 2000

 小学生の時いじめられていた克久は、中学で思いがけずブラスバンド部に入ります。打楽器担当になり、地道な練習を重ね、先輩、先生、仲間と全国大会をめざすうちに、音楽に夢中になりながら成長していきます。読んでいるうちに吹奏楽が聞きたくなりました。なぜ「うさぎ」なのかは、この本を読んでみてください。(職員D)


児童
36
みんなのチャンス 石井光太/著 少年写真新聞社 2015

路上生活をする子どもは世界で4億人。
働く子ども、児童労働者は世界で1億6800万人。
家族がなく仲間と暮らすストリートチルドレン達…
彼らの姿を写した写真の上に、過酷な世界の現実が淡々と語られる。
家が無く、家族が無く、食べ物が無く、学校に行けず、
将来への希望が断たれる子ども達が世界には沢山いる。
日本社会でも貧困は皆無ではないけれど、
この本の写真の子ども達とは、比べるまでもなく恵まれている。

「日本に生まれたぼくたちは、…気付いていないだけで、
本当は多くのチャンスを持っている。」

50頁もない写真絵本ですが、心と頭にズシンと響きます。
子ども向けにつくられていますが、家族みんなで読んで下さい。(職員E)


ティーンズ
590
家を出る日のために 辰巳渚/著 理論社 2008

質問1 「一人前」とはどういうことか。
質問2 「一人前」と「大人」とは、同じだろうか、違うだろうか。
質問1、2は本書からの引用です。みなさんはそれぞれどのように答えますか?
成人式を迎えても、とても「一人前」とは言えなかった若かりし頃。その自信のなさは生活力のなさから来ていたのだなと、この本を読んで納得しました。
この本は「暮らしとは生きること」、そんなごく当たり前だけどとても大切なことを、若い世代に分かり易く語っている本です。自分のことは自分で決める、身体を使って身の回りのことを自分でする、そんな積み重ねが、自分の根幹を作り出し、多少の嫌なことにも負けない自信を生み出すのだと著者は述べています。
これから「一人前」になる方も、とっくに「一人前」の方も、「一人前」になろうとしている人を育てている方も、今一度暮らし方、すなわち生き方を見つめてみませんか。(職員F)


319  アホウドリを追った日本人 平岡昭利/著 岩波書店 2015 

 日本の領海のはずれに点在する、鳥島、尖閣諸島、南鳥島・・・・。岩礁ばかりで人の住めないこれらの島に、明治期、日本人が競って進出していった。彼らを何が惹き付けたのか。
 それは、アホウドリだ。その羽やはく製はヨーロッパで珍重されて高値で取引された。また、島に堆積した鳥糞はリンを多く含み、肥料や軍事物資に不可欠であったため、ゴールドラッシュならぬバードラッシュとなり、一攫千金をもくろむ山師たちが、時の政財界の大物を後ろ盾に、密猟に向かったのだ。アホウドリは人を知らなかったため棒と網さえあれば多量の羽を得ることがでた。当時の横浜の貿易品にも、鳥羽が重要品目とされている。
 しかし、乱獲により、アホウドリは激減、密猟者たちはあらたな生息地を求めて、ハワイや南沙諸島に進出、それがやがて日本海軍の領土拡張作戦とつながっていく。そして、その乱獲ぶりがアメリカで世界ではじめて自然保護運動を引き起こすきっかけともなっていった・・・。
 辺境に住むアホウドリをめぐり、中央の歴史からは見えない、日本近代の裏面を丁寧に追い、山師たちのあきれるほどのバイタリティや、貧しさゆえに彼らに雇われた人々の悲惨な暮らしもいきいきと伝わってくる。司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』の主人公、秋山真之も思いがけない形で登場するなど、知られざるエピソードも興味深く読める。(職員G)