横浜市トップページ > 健康福祉局 > 横浜市衛生研究所 > 横浜市感染症情報センター > 疾患別情報 > 黄熱について
黄熱(おうねつ: yellow fever: YF)は、サハラ砂漠以南のアフリカおよび南アメリカの熱帯で見られます。年間で全世界で約20万人の患者が発生し、約3万人が死亡すると推計されています。アジアの熱帯で見られない理由はよくわかっていません。
黄熱が見られるアフリカおよび中南米の45か国の人たち、総計で9億人以上の人たちが黄熱の脅威を受けています。アフリカについては、32か国で約5億8百万人が黄熱の脅威を受けています。残りの13か国は中南米で、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーで発生が多いです。
病原体である黄熱ウイルスに感染しているAedes 属(ヤブカ属)あるいはHaemagogus 属などの蚊に刺されることで、人間は感染します。Aedes 属あるいはHaemagogus 属などの蚊は、感染している霊長類(サル・人間)を刺すことで感染します。黄熱ウイルスの感染経路としては、下の図1のように、ジャングル・森林においてジャングル(森林)型感染サイクルがあり、このジャングル(森林)に立ち入った人間が蚊にさされ感染して黄熱ウイルスを人間社会に持ち帰ることで都会型感染サイクルが始まり人間での黄熱の多発が起こると考えられます。ジャングル(森林)型感染サイクルの蚊は、アフリカではAedes africanus 、南アメリカではHaemagogus 属およびSabethes 属の蚊です。都会型感染サイクルの蚊は、Aedes aegypti (ネッタイシマカ。黄熱蚊とも呼ばれますが、デング熱・チクングニヤ熱・ウエストナイル熱の病原体も媒介します)です。なお、アフリカのジャングル(森林)の周辺境界部では、サル・人間と蚊との間の感染サイクルが見られ中間型(サバンナ型)感染サイクルと言います。
南アメリカでは、雨が多く、湿度が高く、温度が高い1-5月に黄熱の発生が多いです。
アフリカでは、流行の報告の多くは西アフリカからのものです。中央アフリカや東アフリカからのものは少ないです。この理由については、はっきりしていませんが、以下のような、いくつかの推論がなされています。
1. 西部の方が、人間もAedes aegypti (ネッタイシマカ)も密集しているので。
2. 東部と西部では蔓延している黄熱ウイルス株の遺伝子型(genotype)が違うので。
3. 東部においては黄熱ウイルス以外の近縁のフラビウイルス(ウエストナイルウイルスなど)に対する抗体の存在が黄熱ウイルスに対する免疫にも役立つ可能性があるので。
4. 東部においては黄熱ウイルスを媒介する蚊がより人間を刺さない傾向があるので。
日本の感染症法では、4類の感染症とされています。1999年4月から2008年末までの日本における黄熱患者発生の届け出は0人です。届出基準は、こちら(PDF版)です。媒介蚊であるAedes aegypti (ネッタイシマカ)については、日本では、南西諸島で昔生息していましたが、現在は生息が確認されていません。なお、米国や日本でも生息しているAedes albopictus (ヒトスジシマカ)については、媒介する可能性があると考えられています。
病原体である黄熱ウイルスを持っている蚊(ネッタイシマカなど)に刺されてから発病するまでの潜伏期間は3-6日間です。突然に悪寒戦慄とともに高熱がでます。嘔吐、筋肉痛、出血(鼻出血・歯齦出血・黒色の嘔吐物・下血・子宮出血など)、蛋白尿、比較的徐脈(高熱にもかかわらず48-52/分と脈拍数が遅く、Pagetの徴候と呼ばれます。発病して2日目までに見られます)、黄疸等が見られます。このうち、黄疸・出血・蛋白尿が三徴候とされます。「黄熱(yellow fever)」の「黄(yellow)」については、黄疸で患者が黄色くなることに由来します。発病して7-8日目から快方に向かい治癒することも多いですが、発病して5-10日目に乏尿・心不全・肝性昏睡などから約10%が死亡します。治癒後は終生の免疫が獲得されます。
一方、軽症例では、発熱・頭痛で突然発症し、悪心・嘔吐・結膜充血・蛋白尿が見られることがあるものの、1-3日で回復します。
なお、病原体である黄熱ウイルスを持っているネッタイシマカなどに刺されて感染しても、必ずしも発病せず、無症状の場合もあると考えられています。西アフリカの流行においては、地域人口の30%までが感染し3-4%が発病します。
黄熱は、ウイルス性出血熱の一つです。ウイルス性出血熱とは、arenavirus(アレナウイルス:ラッサ熱)、 filovirus(フィロウイルス:エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱)、bunyavirus(ブンヤウイルス:クリミアコンゴ出血熱・リフトバレー熱・腎症候性出血熱)、flavivirus (フラビウイルス:黄熱・デング出血熱)の4つのウイルスのグループに属する種種のウイルスによって起こされる発熱と出血を主症状とする感染症の総称です。詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページ「ウイルス性出血熱について」をご覧ください(下線部をクリックしてください)。
黄熱に対する特効薬はありません。症状に応じた対症療法が中心になります。
病原体は、フラビウイルス属に属する黄熱ウイルス(yellow fever virus: YFV)です。フラビウイルス属に属するウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルスなどと抗原的に近縁です。フラビウイルス属に属するウエストナイルウイルスやデングウイルスなどによる感染でも黄熱ウイルスに対する抗体反応が陽性になることがあり、診断に際しては注意が必要です。
ウイルス血症を起こしている霊長類(サル・人間)から蚊が吸血してから、蚊の体内でウイルスが増殖し蚊が感染力を獲得するまで4-10日とされ、その間は蚊に感染力はありません。
黄熱ウイルス(yellow fever virus)の属するflavivirus(フラビウイルス)属については、属の代表ウイルスが、黄熱ウイルス(yellow fever virus: YFV)であることに因んで命名されました。flavivirus(フラビウイルス)のflavi(フラビ)の部分はラテン語で黄色を意味するflavusに由来します。
日本の医学者の野口英世博士は1876年11月24日に福島県猪苗代に生まれ、アメリカ合衆国で細菌学者として活躍し、1928年5月21日にアフリカのガーナのアクラ(Accra)で51歳で亡くなりました。野口英世博士は黄熱の病原体に関する研究中に黄熱を発病し亡くなっています。
予防のためのワクチン(予防接種)があります。日本では検疫所などで黄熱の予防接種を実施し国際証明書を発行していますので、アフリカや南アメリカなどに渡航する方は、検疫所にご相談ください。黄熱の汚染地域がある国に入国するときには、黄熱ワクチンの接種証明書を求められることがあります。接種証明書は、黄熱ワクチンの初めての接種の10日後から10年間有効です。この10年間に再度接種すると、最後の接種から10年間有効となります。黄熱の汚染地域がある国に入国するときに、黄熱ワクチンの接種証明書がないと、検疫所に6日間留め置かれ黄熱を発病しないか健康観察を受ける可能性があります。
日本の厚生労働省検疫所ホームページはこちらです。
検疫所ホームページ「黄熱予防接種要求国」はこちらです。
検疫所ホームページ「黄熱ワクチン接種機関一覧」はこちらです。
黄熱ワクチンは、弱毒生ワクチンです。発育鶏卵に接種して作られるので、卵アレルギーのある人では禁忌です。
黄熱ワクチンによる免疫効果は30-35年以上持続します。黄熱ワクチンの接種を受けているのに黄熱を発病した人は、世界的に、5人の報告があります。これらの5人が適切に管理された黄熱ワクチンを適切に接種されたのかどうかは明らかではありません。
1970年から2009年までの間に、アメリカ合衆国とヨーロッパとから黄熱ワクチンを接種しないで渡航した人たちで、9人(内、西アフリカが5人、南アメリカが4人)の黄熱患者の発生が報告されています。9人の内、8人が死亡しています。一方、黄熱ワクチンを接種して渡航した人たちでは、一人の黄熱患者の発生が報告されていますが、1988年に西アフリカの数カ国を歴訪した37歳のスペインの女性です。
黄熱ワクチン接種を一回受けても十分な免疫を獲得しない場合が1%程度あります。黄熱が発生する地域では、他にもデング熱・マラリアなどの蚊が媒介する感染症が見られることがあります。予防接種を受けても、蚊に刺されないように注意が必要です。長袖・長ズボンを着用しましょう。せっかく肌をおおっても、薄手の肌にピッチリな服だと、服の上から刺されてしまう可能性があるので、肌にピッチリではない、厚手のゆとりのある服を着ましょう。また、虫よけスプレーやローションなどを使用しましょう。国内で販売されているものは、虫よけの有効成分DEET(ディート)の濃度が低めです。海外で販売されている有効成分DEET(ディート)が高濃度の製品の方が虫よけの効果が強く持続時間も長いと思われます。
英国では、以下の人たちに黄熱ワクチン接種を勧めています。
1. 黄熱ウイルスを扱う可能性のある検査室従事者。
2. 入国にあたって黄熱ワクチンの接種証明書を求められる国への生後9か月以上の渡航者。
3. 入国にあたって黄熱ワクチンの接種証明書を求められなくても黄熱の汚染地域がある国・地域への生後9か月以上の渡航者。
初めて黄熱ワクチンを接種するのであれば、渡航の10日前までに接種を済ましておく必要があります。黄熱ワクチンによる免疫効果は少なくとも10年以上持続するので、黄熱に感染する危険が続く限り、接種後10年ごとに再接種を繰り返し黄熱に対する免疫を維持します。
黄熱の汚染地域がある国について、生後9か月以上で乳幼児の定期予防接種とすることを世界保健機関(WHO)は勧告しています。
2010年8月11日掲載