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アメリカ合衆国の大人の定期予防接種について

大人の定期予防接種のアメリカ合衆国と日本との違いについて

 本稿では、アメリカ合衆国(米国)の大人の定期予防接種について触れます。まず、アメリカ合衆国の大人の定期予防接種と日本の大人の定期予防接種との違いを見てみましょう。なお、本稿では、19歳以上を大人とします。

 日米の両国とも定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。

表1. 大人(19歳以上)の定期予防接種のアメリカ合衆国と日本との違い
  アメリカ合衆国の大人(19歳以上)の定期予防接種
実施 実施せず
日本の大人(19歳以上)の定期予防接種 実施 肺炎球菌感染症(PPSV23)(*)、
インフルエンザ
該当なし
実施せず ジフテリア・破傷風百日咳
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹
ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(**)、
水痘
帯状疱疹
該当なし
*:米国ではPPSV23だけでなくPCV13も定期予防接種とされています。
**:米国ではHPVについて男女とも定期予防接種の対象となっています。

 大人(19歳以上)の定期予防接種として、アメリカ合衆国で実施されず日本で実施されているものは、ありません。反対に、大人(19歳以上)の定期予防接種として、日本で実施されずアメリカ合衆国で実施されているものとしては、ジフテリア・破傷風百日咳麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ水痘帯状疱疹と多数あります。
 アメリカ合衆国でも日本でも、インフルエンザワクチンが定期予防接種とされていますが、接種対象者に違いがあります。アメリカ合衆国では、生後6ヶ月以上、日本では、65歳以上(一定の条件を満たす場合には60歳以上)が対象とされています。さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザワクチンについて」及び「アメリカ合衆国のこどもの定期予防接種について」をご覧ください。

アメリカ合衆国の大人の定期予防接種スケジュールについて

 アメリカ合衆国の大人の定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年版)は、下の表2のとおりです。アメリカ合衆国において、19歳以上の大人たちに対して、アメリカ合衆国のACIP(予防接種勧告委員会)・内科学会(the American College of Physicians: ACP)・家庭医学会(the American Academy of Family Physicians: AAFP)・産科婦人科学会(the American Congress of Obstetricians and Gynecologists: ACOG)・助産師学会(the American College of Nurse-Midwives: ACNM)が推奨しているものです。 毎年、年初めに更新されます。
 なお、アメリカ合衆国のこども(18歳以下)の定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年版)については、当・横浜市衛生研究所ホームページ「アメリカ合衆国のこどもの定期予防接種について」をご覧ください。

 なお、2016年版のアメリカ合衆国の大人の定期予防接種スケジュールにおいて、65歳以上の肺炎球菌ワクチンについて、改定がありました。「PCV13(肺炎球菌結合型ワクチン)を1回接種後、6-12か月後にPPSV23(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)を1回接種」から「PCV13(肺炎球菌結合型ワクチン)を1回接種後、1年以上の間隔でPPSV23(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)を1回接種」に変更されました。また、既に定期予防接種としてPPSV23(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)を1回接種済みであれば、その接種から1年以上経ってからPCV13(肺炎球菌結合型ワクチン)を1回接種します(参考文献7)。
 また、ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマに対するワクチンである9価ヒトパピローマウイルスワクチン[9vHPV: 商品名Gardasil 9]がアメリカ合衆国において認可され、アメリカ合衆国の定期予防接種でも用いることが可能になりました。
 2016年末の時点では、ヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)としては、9価ヒトパピローマウイルスワクチン[9vHPV: 商品名Gardasil 9]のみが、アメリカ合衆国国内において供給されています(参考文献10)。

 さらに、アメリカ合衆国では、A(H1N1)pdm09型インフルエンザが優勢で流行した2013-14年冬季・2015-16年冬季においてインフルエンザ生ワクチンのA(H1N1)pdm09型インフルエンザに対する効果が乏しかったことから、2016-17年冬季においてインフルエンザ生ワクチン(LAIV4)を推奨しない暫定的勧告を米国予防接種勧告委員会が2016年6月に出しています。しかしながら、一方で、米国において、2016-17年冬季でも、インフルエンザ生ワクチン(LAIV4)は、認可ワクチンであり、入手可能で、接種可能でした(参考文献8)。2017年版のアメリカ合衆国の大人の定期予防接種スケジュールでは、2016-17年冬季において、インフルエンザ生ワクチン(LAIV4)は、接種するべきでないとしています(参考文献9)。
 なお、米国では、インフルエンザ生ワクチンにおいて、A(H1N1)pdm09 型インフルエンザウイルスのHA抗原として、ワクチン株のA/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09のHA抗原が用いられていましたが、2015-16年冬季からは、このワクチン株のHA抗原の安定性が疑問視され、代わりにこのワクチン株の近似株のA/Bolivia/559/2013(H1N1)のHA抗原が用いられるようになりました。

表2. アメリカ合衆国の19歳以上の大人の定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年版)
接種対象年齢 予防する感染症 接種するワクチン(英字略語表記等)
及び
接種回数
19歳以上
(毎冬)
インフルエンザ IIV(* ; 不活化ワクチン)を1回接種。なお、18歳以上の卵アレルギーの人は卵タンパクを含まない遺伝子組み換えワクチン(recombinant influenza vaccine: RIV: 商品名Flublok)を使用できます(但し、軽度の蕁麻疹[じんましん]程度の卵アレルギーの人であれば、アレルギー反応への対応策を準備の上での卵タンパク含有量の少ないIIVの使用も考慮されます)。抗原量が少ない皮内接種用(intradermal)IIVは、18-64歳で接種できます。高用量(high-dose: 抗原量が多い)IIVは、65歳以上で接種できます。詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザワクチンについて」をご覧ください。
19歳以上 破傷風(T)・ジフテリア(d)・百日咳(ap) Tdによる十年毎の追加接種。但し、Tdapを一回も接種したことがない11歳以上の人は、Tdapをまず接種してから、Tdによる十年毎の追加接種を行います。
妊婦については、妊娠毎に妊娠27-36週でTdapを接種します(前回のTdapあるいはTdとの間隔について考慮は不要です)。
19-26歳(女性)、
19-21歳(男性)
ヒトパピローマウイルス
16型18型・31型・33型・45型・52型・58型による
子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ
HPV (1回目:9歳から。女子は4vHPV[商品名Gardasil]、9vHPV[商品名Gardasil 9]または2vHPV[商品名Cervarix]。男子は4vHPVまたは9vHPV。定期接種は11-12歳の男女ですが、11-12歳で接種を受けなかった場合には男性は13-21歳、女性は13-26歳でも接種できます)
HPV (2回目:1回目の1-2ヶ月後)
HPV (3回目:1回目の6ヶ月後)
19歳以上(麻疹流行性耳下腺炎[ムンプス]または風疹について予防接種や免疫の証明がない、1957年[**]以後の出生の人、及び、妊娠中でない風疹に免疫がない子どもを生む年代の女性) 麻疹(M)・流行性耳下腺炎(ムンプス)(M)・風疹(R) MMRを1-2回接種(高等教育機関学生・医療従事者・海外旅行予定者について28日以上の接種間隔で2回接種、その他について1回接種。妊娠中でない風疹に免疫がない子どもを生む年代の女性は1回接種。)
19歳以上(予防接種や免疫の証明がない人) 水痘 VAR(水痘ワクチン)を2回接種(4週間以上の接種間隔で)。既に一回接種済みであれば、一回接種追加。1980年より前に米国で生まれた人は、水痘に免疫があるとみなします。なお、妊婦や医療従事者については、1980年より前に米国で生まれたことのみでは免疫があるとみなしません。妊婦で免疫がない場合には、妊娠が終了してから1回目接種、4-8週間後に2回目接種。
60歳以上 帯状疱疹 HZV(あるいはZOS:帯状疱疹ワクチン)を1回接種。以前に帯状疱疹に罹患したことがある場合でも接種します。米国FDA(食品医薬品局)は50歳以上での使用を認可していますが、米国の定期予防接種では60歳以上での使用となっています。
65歳以上 肺炎球菌感染症  まず、PCV13(肺炎球菌結合型ワクチン)を1回接種し、その1年以上後にPPSV23(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)を1回接種。
 なお、既に定期予防接種として65歳以上でPPSV23(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)を1回接種済みであれば、その接種から1年以上経ってからPCV13(肺炎球菌結合型ワクチン)を1回接種。
*:IIVは不活化インフルエンザワクチン(inactivated influenza vaccine)。3価のものはIIV3あるいはTIV(trivalent inactivated influenza vaccine. : 3価不活化インフルエンザワクチン)、4価のものはIIV4あるいはQIV(quadrivalent inactivated influenza vaccine. : 4価不活化インフルエンザワクチン)と表記します。アメリカ合衆国では、従来からのIIV3に加え、2013-2014年冬季からIIV4も使用可能となりました。生ワクチン(LAIV)については、2016-17年冬季において推奨されていません。アメリカ合衆国におけるインフルエンザワクチンについては、当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザワクチンについて」もご参照ください(米国・英国・日本の対比表も掲載しています)。
**:アメリカ合衆国では、1957年より前に生まれた人は、麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹について、以前の流行時に罹患したことがあり、免疫を持っていると考えられています。

 ヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)については、15歳未満で1回目の接種をして、5か月以上の間隔で2回目の接種をした人は、計2回の接種で免疫を獲得したとみなします。15歳未満で1回目の接種をして、5か月未満の間隔で2回目の接種をした人は、計2回の接種では免疫を獲得したとみなせず、1回の接種を追加して、計3回の接種で免疫を獲得したとみなします。。

 なお、アメリカ合衆国におけるインフルエンザワクチンでは、卵の成分を含まないものとして、遺伝子組み替え技術を用いたリコンビナント(recombinant: R)HA(hemagglutinin)ワクチン(RIV3: 商品名FluBlok)があります。2014年版では、重度の卵アレルギーがある18-49歳の大人がこのRIV(リコンビナントインフルエンザワクチン)の接種対象とされていましたが、2014年10月に米国FDA(食品医薬品局)が推奨年齢を拡大したことから、2015年版では、重度の卵アレルギーがある18歳以上の大人が接種対象とされました。2016-17年冬季には、4価のリコンビナントHAワクチン(RIV4: 商品名Flublok Quadrivalent)が認可されました。

 複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。

参考文献

  1. WHO Vaccine Preventable Diseases Monitoring System: Immunization schedules by antigen.
     全世界の国々の予防接種スケジュール(WHO)
    http://www.who.int/immunization_monitoring/en/globalsummary/scheduleselect.cfm
  2. Centers for Disease Control and Prevention. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) Recommended Immunization Schedules for Persons Aged 0 Through 18 Years and Adults Aged 19 Years and Older --- United States, 2013. MMWR January 28, 2013;Early Release vol. 62(Suppl 1).
    http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm62e0128.pdf [pdf:1,013KB]  (PDF版)
  3. Centers for Disease Control and Prevention. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) Recommended Immunization Schedule for Adults Aged 19 Years or Older --- United States, 2014. MMWR February 7, 2014; vol. 63(No. 5), p. 110-112.
    http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6305a7.htm
  4. 米国CDCの予防接種スケジュール・ウェブサイト: http://www.cdc.gov/vaccines/schedules
  5. ACIP Pneumococcal Work Group. Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Among Adults Aged 65 Years and Older: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR). September 19, 2014 / 63(37); p. 822-825.
  6. Centers for Disease Control and Prevention. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) Recommended Immunization Schedule for Adults Aged 19 Years or Older --- United States, 2015. MMWR February 6, 2015; vol. 64(No. 4), p. 91-92.
    http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6404a4.htm
  7. Kim DK, Bridges CB, Harriman KH. Advisory Committee on Immunization Practices Recommended Immunization Schedule for Adults Aged 19 Years or Older - United States, 2016. Morb Mortal Wkly Rep(MMWR), February 5, 2016;vol. 65(No. 4):p. 88-90. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6504a5.
  8. Grohskopf LA, Sokolow LZ, Broder KR, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines. MMWR Recomm Rep 2016;65(No. RR-5):1-54.
    DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.rr6505a1
  9. Kim DK, Riley LE, Harriman KH, Hunter P, Bridges CB. Advisory Committee on Immunization Practices Recommended Immunization Schedule for Adults Aged 19 Years or Older --- United States, 2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep February 10, 2017;vol. 66(No. 5):p. 136-138.
    DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6605e2
  10. Meites E, Kempe A, Markowitz LE. Use of a 2-Dose Schedule for Human Papillomavirus Vaccination - Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices. MMWR(Morb Mortal Wkly Rep) December 16, 2016;Vol.65, No.49:p.1405-1408.
    DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6549a5

2013年2月15日初掲載
2014年11月26日改訂
2015年3月5日改訂
2016年2月10日改訂増補
2016年11月18日改訂増補
2017年4月5日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2013年2月15日作成
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