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英国のこどもの定期予防接種について

こどもの定期予防接種の英国と日本との違いについて

 本稿では、英国のこどもの定期予防接種について触れます。まず、英国のこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いをみてみましょう。

 日英の両国とも定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。

表1. こどもの定期予防接種の英国と日本との違い
  英国のこどもの定期予防接種
実施 実施せず
日本のこどもの定期予防接種 実施 ジフテリア・破傷風・百日咳、
ポリオ、
麻疹・風疹、
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、
肺炎球菌感染症、
ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および 6型・11型による尖圭コンジローマ(女子のみ)
水痘
結核(BCG)、
日本脳炎
B型肝炎
実施せず 髄膜炎菌感染症、
流行性耳下腺炎(ムンプス)、
ロタウイルスによる感染性胃腸炎
インフルエンザ
 

 こどもの定期予防接種として英国で実施されず日本で実施されているものとしては結核(BCG)、水痘、日本脳炎(JapEnc)、B型肝炎があります。反対に、こどもの定期予防接種として日本で実施されず英国で実施されているものとしては、髄膜炎菌感染症(Men)、流行性耳下腺炎(ムンプス)、ロタウイルスによる感染性胃腸炎インフルエンザがあります。

 多数のワクチンを混合したワクチン製剤が英国では見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、ポリオの不活化ワクチン(IPV)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTaP/IPV/Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
 英国における主要な混合ワクチンとしては、五種混合ワクチン(5-in-1; DTaP/IPV/Hib)、四種混合ワクチン(4-in-1; DTaP/IPV)、三種混合ワクチン(3-in-1; Td/IPV)などがあります。

 日本でも混合ワクチンが見られます。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から新たに使われるようになりました。

英国のこどもの定期予防接種スケジュールについて

 英国のこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2015年夏から)は、下の表2のとおりです。
 2013/14年冬季のインフルエンザワクチンについては、2013年9月1日から2-3歳の幼児が新たに英国のこどもの定期予防接種の対象となりました。誕生日では2009年9月2日から2011年9月1日までの幼児です。一回、インフルエンザ経鼻生ワクチンを接種します。但し、慢性心疾患・慢性腎疾患・慢性肝疾患・慢性神経疾患などのためにインフルエンザに罹患すると重症となる危険性が高く、インフルエンザワクチンをこれまでに接種したことのない幼児については、4週間以上の間隔で二回接種します。また、喘息や免疫不全などのため経鼻生ワクチンを接種できない幼児については、不活化ワクチンを一回接種します(但し、インフルエンザワクチンをこれまでに接種したことのない幼児については4週間以上の間隔で二回接種します)。なお、2014/15年冬季のインフルエンザワクチンについては、2-4歳の幼児が英国のこどもの定期予防接種の対象となりました。2015/16年冬季のインフルエンザワクチンについては、2-6歳の幼児を英国のこどもの定期予防接種の対象としました。2016/17年冬季のインフルエンザワクチンについては、2-7歳の幼児を英国のこどもの定期予防接種の対象としました。将来的には、対象を拡大して、2-16歳(17歳の誕生日まで)のこどもたちが対象とされる予定です(参考文献8)。
 また、2008年から英国では、HPV(ヒト-パピローマウイルス)ワクチンの接種が3回接種のスケジュールで始まりました。その後、HPVワクチンの研究から9-14歳の少女では6か月の間隔での2回接種でも十分な免疫が得られるとされ(参考文献6, 9)、スイスリヒテンシュタインオーストリアフランスドイツオランダなどの欧州の先進国が9-14歳については3回接種のスケジュールから2回接種のスケジュールに変更しています。英国でも2014年9月1日から、HPVワクチンについて、9-14歳については、3回接種スケジュール(0, 1-2, 6か月)から2回接種スケジュール(0, 6-12か月)に変更となりました。

 英国における髄膜炎菌感染症は、もともと、髄膜炎菌のC群とB群とが、多かったです。ところが、1999年11月にC群に対する結合型ワクチン(MenC)が英国の定期予防接種に導入されて、C群の髄膜炎菌感染症は大幅に減りました。C群の髄膜炎菌感染症患者発生数は、1999年に989人、2008年に22人でした。英国における2008年の髄膜炎菌感染症患者発生数は、1194人で、その内、B群が1070人(89.6%)と大部分を占めるに至りました(参考文献10)。
 2013年、欧州医薬品局(European Medicines Agency: EMA)が、4成分B群髄膜炎菌(4CMenB)蛋白ワクチンの使用を承認しました。このワクチン(4CMenB)は、欧州の1885人の乳児での試行で免疫原性が示されました。大腸菌を使った遺伝子組み換え技術により作られた三つのB群髄膜炎菌蛋白(Neiseriaヘパリン結合抗原[Neiseria heparin binding antigen : NHBA]融合蛋白、Neiseriaの付着A[Neiserial adhesion A : NadA]蛋白、および、H因子結合蛋白[factor H binding protein : fHbp])とB群髄膜炎菌の外膜の小嚢(outer membrane vesicles : OMV)との4成分(4C: 4 components)を含んでいます。このワクチン(4CMenB)は、英国(England and Wales)において、B群髄膜炎菌の88%の株に対する免疫を提供することが期待されます。2015年夏から、このワクチン(4CMenB)は、英国のこどもの定期予防接種に追加されました。生後2, 4, 12-13か月の計3回接種されます。また、このワクチン(4CMenB)は、B群以外の髄膜炎菌に対する効果も期待されています。2016年7月1日から、生後3か月でのMenC(C群髄膜炎菌ワクチン)が廃止され、MenC(C群髄膜炎菌ワクチン)の1回目は生後12ヶ月(1歳の誕生日から1ヶ月以内)となりましたが、生後12ヶ月までの乳児には4成分B群髄膜炎菌(4CMenB)蛋白ワクチンのC群髄膜炎菌への効果を期待しています。

 英国では、2009年以後、髄膜炎菌感染症の中でW群髄膜炎菌感染症の占める割合が増加しました。英国におけるW群の年間患者発生報告数は、2009年に22人、2013年に78人、2014年に119人となりました。このため、英国のこどもの定期予防接種においては、2015年夏、14歳時のC群の髄膜炎菌に対する結合型ワクチン(MenC)をA、C、Y、W135群に対する4価の結合型ワクチン(MenACWY)に変更しました。

表2. 英国のこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年7月1日から)
接種時期 予防する感染症 接種するワクチン(接種回数)
生後2ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳
ポリオ
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
DTaP/IPV/Hib(1回目: 5 in 1)
肺炎球菌感染症 PCV13(結合型肺炎球菌ワクチン[13価])(1回目)
B群髄膜炎菌感染症 MenB(B群髄膜炎菌ワクチン)(1回目)***
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(ロタウイルスワクチン[1価])(1回目: 生後6週0日から生後14週6日までに接種。生後15週0日以後は接種不可。)**
生後3ヶ月 ジフテリア・破傷風・百日咳、
ポリオ、
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
DTaP/IPV/Hib(2回目: 5 in 1)
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(ロタウイルスワクチン[1価])(2回目: 4週間以上の間隔で生後23週6日までに接種。生後24週0日以後は接種不可)**
生後4ヶ月 ジフテリア・破傷風・百日咳、
ポリオ、
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
DTaP/IPV/Hib(3回目: 5 in 1)
肺炎球菌感染症 PCV13(結合型肺炎球菌ワクチン[13価])(2回目)
B群髄膜炎菌感染症 MenB(B群髄膜炎菌ワクチン)(2回目)***
生後12ヶ月(1歳の誕生日から1ヶ月以内) ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、
C群髄膜炎菌感染症
Hib/MenC(1回接種:Hibは4回目、MenCは1回目)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(1回目)
肺炎球菌感染症 PCV13(結合型肺炎球菌ワクチン[13価])(3回目)
B群髄膜炎菌感染症 MenB(B群髄膜炎菌ワクチン)(3回目)***
2-7歳(2-4歳および小学1,2,3年)***** インフルエンザ LAIV4(経鼻生ワクチン;9月から毎年一回接種)******
3歳4ヶ月以後、早く ジフテリア・破傷風・百日咳、
ポリオ
DTaP/IPVまたはdTaP/IPV (1回接種: 4 in 1)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(2回目)
12-13歳
女子のみ
ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および 6型・11型による尖圭コンジローマ (*) HPV4 (1回目)*
HPV4 (2回目:1回目の6-24ヶ月後)*
14歳(第9学年) 破傷風・ジフテリア、
ポリオ
Td/IPV
A,C,W,Y群髄膜炎菌感染症 MenACWY(A,C,W,Y群髄膜炎菌ワクチン)(C群は2回目)****
65歳 肺炎球菌感染症 PPV23(23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン:一回接種)
65歳以上 インフルエンザ IIV(毎年一回接種、9月から)
70(〜79)歳 帯状疱疹 ZOS(帯状疱疹ワクチン:一回接種:皮下注射)
(*) 2012年9月から、HPVワクチンについて、16型・18型に対するワクチン(HPV2)から16型・18型・6型・11型に対するワクチン(HPV4)へと変更がありました。 また、2014年9月から、HPVワクチンについて、3回接種スケジュール(0, 1-2, 6か月)から2回接種(0, 6-24か月)スケジュールに変更となりました。
(**) 2013年7月から、RV1(ロタウイルスワクチン[1価])が導入されました。
(***)MenB(B群髄膜炎菌ワクチン)については、2015年5月1日以後に生まれた児が対象です。
(****)2015年夏から14歳(第9学年)時のMenC(3回目)がMenACWYに変更されました。
(*****)「2-4歳」は、2016年8月31日時点での年齢。2011年9月1日から2014年8月31日までに生まれた児です。
 「小学1,2,3年」は、2008年9月1日から2011年8月31日までに生まれた児。2016年8月31日時点で5,6,7歳の児です。
 つまり、2015年8月31日時点で、「2-4歳」と「小学1,2,3年」とで、「2-7歳」となります。
(******)LAIV(生ワクチン)が接種できない児の場合、IIV(不活化ワクチン)を接種することがあります。乳幼児がIIV(不活化ワクチン)を接種する場合には3価ワクチン(IIV3)よりも4価ワクチン(IIV4)が好ましいとされています。

 上の表2の標準的な接種以外にも、英国では、B型肝炎に感染している母から生まれて、B型肝炎に感染する恐れのある乳児に対しては、B型肝炎ワクチン(Hep B)を、誕生時、生後1ヶ月、生後2ヶ月、生後12ヶ月に接種することがあります。結核の蔓延地に行く(あるいは、結核の蔓延地出身の父母や祖父母と住んでいる)など、結核に感染する恐れのある乳児に対しては、BCGワクチン(BCG)を、誕生時に接種することがあります(16歳まで接種できます)。妊婦に対して、妊娠毎に、妊娠28週から38週までに(理想的には妊娠28-32週に)百日咳を含むワクチン(dTaP/IPV)を接種することがあります。また、妊婦に対しては、冬季であれば、妊娠のどの時期であっても、インフルエンザ不活化ワクチン(IIV)を接種します。

 複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。

参考文献

  1. Immunisation against infectious disease - 'The Green Book'(英国の予防接種の解説書)
    URL=https://www.gov.uk/government/collections/immunisation-against-infectious-disease-the-green-book
  2. NHS(英国); The complete routine immunisation schedule 2013 to 2014. 5 July 2013.
    URL=https://www.gov.uk/government/publications/the-complete-routine-immunisation-schedule-201314
  3. NHS(英国); The flu immunisation programme 2013/14 --- extension to children. 26 July 2013.
  4. WHO Vaccine Preventable Diseases Monitoring System: Immunization schedules by antigen.
     全世界の国々の予防接種スケジュール(WHO)
    URL=http://apps.who.int/immunization_monitoring/globalsummary/schedules
  5. 欧州CDC(ECDC); Vaccine schedule platform(欧州各国の定期予防接種スケジュール) :(英語).
  6. SAGE(The Strategic Advisory Group of Experts on immunization), Meeting of the Strategic Advisory Group of Experts on immunization, April 2014 - conclusions and recommendations, Weekly epidemiological record(WER), 23 MAY 2014, 89th year / No. 21, 2014, p. 221-236.
  7. 予防接種」:[英国 NHS choices ホームページ] :(英語).
  8. NHS(英国); Childhood flu immunisation programme 2014 to 2015: update and provisional roll-out schedule. 15 July 2014. :(英語).
  9. WHO; Human papillomavirus vaccines: WHO position paper, October 2014; Weekly epidemiological record(WER); 24 OCTOBER 2014, 89th year / No. 43, 2014, p. 465-491.
  10. Health Protection Agency, Meningococcal serogroup B infections in England, Health Protection Report(weekly report), Vol 3, No 3, 23 January 2009.
  11. Public Health England; The complete routine immunisation schedule.
      ; Collection "Immunisation".

2010年2月2日初掲載
2012年10月15日改訂増補
2013年4月11日改訂増補
2013年11月21日改訂増補
2014年11月14日改訂増補
2015年11月16日改訂増補
2016年11月17日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2010年2月2日作成
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