横浜市トップページ > 健康福祉局 > 横浜市衛生研究所 > 横浜市感染症情報センター > 疾患別情報 > トラコーマ(トラホーム)について
トラコーマ(英語:trachoma )は、以前はトラホーム(ドイツ語:Trachom )とも呼ばれていました。ドイツ医学からアメリカ医学へという潮流の中で現在の日本では、トラコーマと呼ばれることが多いです。トラコーマ(英語:trachoma )では、結膜炎の繰り返しで結膜に瘢痕(ひきつれ)が形成され、結膜があれた粘膜となることがあります。トラコーマ(英語: trachoma )の語は、ギリシャ語で「あれた( rough )」を意味する trakhus に由来します。
トラコーマは、クラミジア-トラコマティスという病原体による眼の結膜炎ですが、失明の原因となることもあります。先進国においての発生は少ないですが、アフリカやアジアでは失明の原因として多く見られる国が多数存在するため、世界保健機関(WHO)が、トラコーマによる失明をなくすための計画を1997年から進行中です。この計画はWHOが進めている主要失明疾患対策「 Vision 2020 」の一つでもあり「GET 2020 ( Global Elimination of Trachoma by the Year 2020 : 2020年までにトラコーマを地球から排除する計画)」と呼ばれています。GET 2020では、SAFE戦略が行われています。SAFE戦略のSは、Surgery(手術)で、トラコーマにより生じた睫毛乱生症あるいは眼瞼内反症による逆さまつ毛に対する手術等です。Aは、Antibiotic Treatment (抗生物質による治療)で、トラコーマに対する抗生物質による治療です。FはFacial Cleanliness (顔の清潔)で、清潔な水で洗顔する習慣です。Eは、Environmental Improvement (環境改善)で、清潔な水の供給やハエのいない環境づくり等です。全世界における主要失明疾患については、下の表1をご覧ください。
トラコーマは、発展途上国において、低収入で衛生状態が悪く水の供給が乏しい地域でよく見られます。特に10歳未満のこどもたちでよく見られ再発も多いです。こどもたちで見られる割合は、アフリカのいくつかの国々では10-40パーセント、アジアのいくつかの国々では3-10パーセントと国により差が見られます。
こどもからこどもへの感染がよくみられますが、家庭内においては、こどもから母親への感染もよく見られます。そのため、トラコーマによる失明は、女性の方が男性に比較して2-3倍と多いです。
トラコーマと見られる病気の最初の記載は、紀元前16世紀の記録にすでに見られます。
世界保健機関(WHO)によれば、トラコーマの全世界における患者数は、1985年の3億6千万人から、2006年には8000万人と減少が見られています。世界保健機関(WHO)の進めるSAFE戦略や発展途上国の社会的・経済的発展等によっての減少と考えられます。
| 表1. 1997年の全世界における失明している人の失明原因(参考文献2による) | ||
|---|---|---|
| 失明の原因 | 全体に対する割合(%) | 備考 |
| 白内障 | 43 | 多くで白内障手術が有効 |
| 緑内障 | 15 | |
| トラコーマ | 11 | |
| ビタミンA欠乏症 | 6 | 5歳未満。「ポリオ」参照 |
| オンコセルカ症 | 1 | 回旋糸状虫症とも言う |
| その他 | 24 | 糖尿病性網膜症ほか |
| 計 | 100 | 総計4480万人 |
トラコーマは、クラミジア-トラコマティスという病原体による眼の結膜炎ですが、眼の結膜や角膜に瘢痕を形成することがあります。まぶた(瞼)の内側の結膜(眼瞼結膜)の瘢痕(ひきつれ)のために、まつ毛(睫毛:しょうもう)の生える向きが乱れる睫毛乱生症あるいはまぶた全体が眼球側にまくれ込む眼瞼内反症となることがあります。睫毛乱生症あるいは眼瞼内反症による逆さまつ毛は、角膜を刺激し角膜の潰瘍や混濁を生じやすいです。角膜の混濁は、視野の減少や失明につながることがあります。
クラミジア-トラコマティス( Chlamydia trachomatis )のA型、B型、Ba型、C型がトラコーマの病原体です。Chlamydia trachomatisには、15の血清型が区別されています。クラミジア-トラコマティスは、トラコーマ以外でも、封入体結膜炎といった眼疾患や性器クラミジア感染症、トラコーマ・クラミジア肺炎を起こすことがあることが知られています。
トラコーマが人から人へと感染することがあります。患者の眼の分泌物の中の病原体によると考えられます。患者の眼の分泌物が付着する可能性のあるタオル・ハンカチ等の貸し借りは止めましょう。眼の分泌物をエサとしてこどもたちの眼にたかるハエがいます。患者の眼の分泌物にハエが触れ人から人へと病原体を運搬する可能性があります。ハエは駆除しましょう。毎日、顔をきれいに洗いましょう。こどもの顔もきれいに洗いましょう。
2004年4月7日初掲載
2006年6月5日改訂増補