ページの先頭

本文へジャンプ - トップメニュー|検索

トキソプラズマ症について

流行は?

 トキソプラズマToxoplasma gondiiは、単細胞の原虫です。世界中でみられます。人に寄生して、トキソプラズマ症という感染症を起こします。アメリカ合衆国では、6000万人以上が感染していますが、ごくわずかの人でしか症状は見られません。それは、免疫の働きが、通常、病気を起こさないように、トキソプラズマを抑え込んでいるからです。

 トキソプラズマによる感染は、寒くて山が多い地域よりも、暖かくて高度が低い地域で、より多く見られます。フランスでは、トキソプラズマに感染している人の率が85%と高いですが、これは、フランスでは生の肉や加熱が不十分な肉を食べる傾向が高いことと関係しているようです。また、中央アメリカでトキソプラズマに感染している人の率が高いのは、ホームレス猫が多く、トキソプラズマ(オーシスト)の生存に適した気候であることによるようです。

どんな病気?

 免疫に異常がなければ、トキソプラズマに感染しても、一般に何の症状もありません。しかしながら、感染したときに、10-20%の人で、リンバ節が腫れたり、インフルエンザのような症状が出たりします。筋肉痛が、2、3日から数週間続くこともあります。潜伏期については、症状がないか軽い場合が多いことから、はっきりしない場合が多いです。但し、症状が出る場合には、ネコの糞の中のトキソプラズマのオーシストを摂取した場合には、5-20日、他の動物の筋肉内のトキソプラズマのシストを摂取した場合には、10日から数週間が最短の日数とされています。

 免疫不全の患者では、トキソプラズマに感染すると、中枢神経系の障害を生じることがありますが、心筋炎や肺炎を起こすこともあります。エイズ患者では、トキソプラズマ性脳炎によって頭蓋内に病変を形成することがありますが、これは以前に感染して潜伏していたトキソプラズマが再活性化することによって起こる場合が多いと考えられています。臓器移殖等のために、免疫抑制剤で治療中の患者がトキソプラズマ症となる場合には、新規にトキソプラズマが感染する場合と、以前に感染して潜伏していたトキソプラズマが再び活性化する場合とがあります。

 先天性のトキソプラズマ症は、妊娠の数ヶ月前あるいは妊娠中に初めてトキソプラズマに母親が感染する結果、起こります。妊娠前の6ヶ月以上前では、母親がトキソプラズマに感染しても、胎児への影響はないようです。母親が感染した時期によって先天性トキソプラズマ症の発生率と重症度は違います。妊娠初期の場合、胎児の感染は少ないが重症であり、流産となる場合もあります。妊娠後期の場合、胎児の感染は多いが、軽症の場合が多いです。脳症、痙攣、水頭症、頭蓋内石灰化や網脈絡膜炎や黄疸、肝臓・脾臓の腫れ等が見られる場合があります。母親を治療することによって、先天性のトキソプラズマ症の発生を減らせるので、正確で敏速な診断が大変に重要です。先天性トキソプラズマ症を治療しなかった場合には、誕生時に何の症状も示さなくても、成長とともに先天性トキソプラズマ症の徴候がはっきりして来ることがあります。発育不全、精神発達遅滞となる場合もあります。

 眼トキソプラズマ症は、眼の網脈絡膜炎の主要な原因の一つです。通常、先天性のトキソプラズマの感染によるものです。眼の眼底部分の網脈絡膜上にトキソプラズマ(シスト)が寄生する結果、網脈絡膜が剥がれ、網脈絡膜の萎縮と色素沈着を起こします。その結果、視野の異常や視力障害となります。眼の病変だけの場合、学童期まで気づかれない場合もあります。

 一般に、症状がなく健康体であれば、トキソプラズマに感染していても、治療は必要ありません。妊娠中の女性あるいは、免疫機能が低下している人等には、治療が必要な場合、sulfamide pyrimethamineやspiramycineが用いられます。

病原体は?

 トキソプラズマ症の病原体は、トキソプラズマToxoplasma gondiiです。トキソプラズマは、ヒトを含む温血動物に広く感染します。ネコ科の動物は、トキソプラズマToxoplasma gondiiが有性で増殖する唯一の宿主として知られていて、トキソプラズマ症の主要な感染源と考えられます。ネコ自身は、トキソプラズマに感染した動物の肉(エサの生肉あるいはネズミ)を生で食べることによって、トキソプラズマに感染することが多いと考えられます。他の動物の筋肉内のトキソプラズマのシスト、あるいはネコの糞の中のトキソプラズマのオーシストがネコの口の中に入ります。トキソプラズマは、ネコの小腸の上皮細胞を侵し、増殖し、オーシストを形成します。トキソプラズマのオーシストは糞とともに排出されます。できたてのオーシストは、感染する力をもっていませんが、1-5日で成熟して感染する力を持つようになります。ネコは初めてトキソプラズマに感染した後1-3週間の間だけオーシストを排出するのですが、その間に排出されるオーシストの数は大量です。オーシストは、体外の環境下で、数ヶ月生きつづけます。オーシストは、抗菌剤や冷凍や乾燥に強いです。しかし、オーシストは、70度で10分間加熱で死滅します。

 ネコが初めてトキソプラズマに感染しても、はっきりした症状が出ない場合が大部分です。ただし、ネコ免疫不全ウイルスによるネコのAIDS(後天性免疫不全症候群)等のために免疫機能が低下し中枢神経系・眼・消化器等の異常や流産・死産がネコのトキソプラズマ症として出現することがあります。

他の動物の筋肉内のトキソプラズマのシスト、あるいはネコの糞の中のトキソプラズマのオーシストが口の中に入ることによって、ヒトを含めていろいろな動物がトキソプラズマに感染しますが、感染した動物の組織内でトキソプラズマはシストを形成します。これらのシストは、骨格筋、心筋、脳などに通常存在し、宿主の生涯を通じて留まります。生肉の中には、トキソプラズマの生きているシストが含まれている可能性があるのです。ただし、肉を十分に加熱すればトキソプラズマのシストは死滅します。(図1「トキソプラズマのライフ・サイクル」:このページの末尾)

予防のためには・・・

 トキソプラズマ症では、通常大部分で症状が見られないか見られても軽微なこと、および通常では免疫のはたらきが体の中に残ったトキソプラズマを抑え込んでしまうことから、大部分の人は、トキソプラズマについてそれほど心配することはありません。しかし、免疫の働きが弱まっている人、妊娠している人あるいは妊娠しようとしている人では、トキソプラズマ症を防ぐためにしっかりと注意することが必要です。

 免疫の働きが弱まっている人は、トキソプラズマの血液検査を受けましょう。トキソプラズマが陽性であれば、体内のトキソプラズマの再活性化によるトキソプラズマ症を防ぐための薬の必要性の検討を要する場合もあります。トキソプラズマが陰性であれば、トキソプラズマに感染するのを防ぐためにしっかりした注意が必要です。

 妊娠しようと考えているひとは、トキソプラズマの血液検査を受けましょう。トキソプラズマが陽性であれば、胎児が感染して先天性トキソプラズマ症を起こす心配はありません。トキソプラズマが陰性であれば、トキソプラズマに感染するのを防ぐためにしっかりした注意が必要です。

 すでに妊娠している人は、産婦人科の主治医に相談しましょう。

 庭いじり(gardening)や土・砂に触れるようなときには、手袋を着けましょう。ネコはしばしば庭や砂場をトイレとしてしまうことがあり、ネコの糞の中にトキソプラズマのオーシストが出て来る可能性があるので、土・砂には注意する必要があるのです。土・砂に触れた後は、水とセッケンでよく手を洗い流しましょう。食事や料理の前には特に注意する必要があります。

 生肉を扱うのは、妊娠中でなく健康な人にしてもらいましょう。それができないときには、生肉を扱うときには、ゴム製の清潔な手袋をするようにしましょう。生肉が接触したまな板、洗い場、包丁等は、よく洗い流しましょう。その後で、水とセッケンでよく手を洗い流しましょう。

 すべての肉をよく加熱しましょう。肉の中心部からピンク色が失せて肉汁が出なくなるまで加熱しましょう。十分に加熱し終わるまで、味見はしないようにしましょう。

 自分のネコがトキソ゜ラズマに感染するのを防ぎましょう。屋内から外に出さないようにして、エサはドライフードか缶詰にしましょう。ネコは生肉や加熱が不十分な肉を食べてトキソプラズマに感染することがあるのです。ネコに肉を与えるにしても、十分に加熱した肉でなければなりません。ネコがネズミを食べてトキソプラズマに感染する可能性もあります。

 新しいネコを自分の家に入れるのを止めましょう。そのネコは屋外にいたことがあるかもしれないし、生肉を食べていたかもしれません。ホームレス猫に触れるのを止めましょう。かかりつけの獣医に自分のネコに関してトキソプラズマについて相談しましょう。

 ネコのトイレの掃除は、妊娠中でなく健康な人にしてもらいましょう。それができないときは、手袋をしてネコのトイレの掃除を毎日しましょう。ネコの糞の中のトキソプラズマのオーシストは、すぐには、感染する力をもっていませんが、1-5日で成熟して感染する力を持つようになるので、毎日掃除して早めにネコの糞を除去したほうが安心なのです。ネコのトイレの掃除の後は、水とセッケンで手をよく洗い流しましょう。

 トキソプラズマの予防接種(ワクチン)は、ありません。

図1 トキソプラズマのライフ・サイクル

図1 トキソプラズマのライフ・サイクル

2000年11月24日初掲載
2001年2月19日増補
2004年6月22日図改訂

このページのTOPへ

横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2008年4月16日更新
ご意見・問合せ:kf-eiken@city.yokohama.jp - 電話:045-370-9237 - FAX:045-370-8462
©City of Yokohama. All rights reserved.