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パキスタンのこどもの定期予防接種について

こどもの定期予防接種のパキスタンと日本との違いについて

 本稿では、パキスタン・イスラム共和国(The Islamic Republic of Pakistan)のこどもの定期予防接種について触れます。パキスタンは、東方はインド、西方はイラン、北東方面は中国、北西方面はアフガニスタンと国境を接します。南方はインド洋(アラビア海: Arabian Sea)に面します。
 まず、パキスタンのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
 両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。

表1. こどもの定期予防接種のパキスタンと日本との違い
  パキスタンのこどもの定期予防接種
実施 実施せず
日本のこどもの定期予防接種 実施 ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
結核(BCG)、
ジフテリア・破傷風百日咳
ポリオ
麻疹
肺炎球菌感染症
日本脳炎
水痘風疹
ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ
(*)
実施せず B型肝炎 流行性耳下腺炎(ムンプス)
髄膜炎菌感染症
インフルエンザ
ロタウイルスによる感染性胃腸炎
A型肝炎
*: HPVワクチンについては、日本では女子のみ対象。

 こどもの定期予防接種として、パキスタンで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎水痘風疹ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および 6型・11型による尖圭コンジローマがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずパキスタンで実施されているものとしては、B型肝炎があります。

 多数のワクチンを混合したワクチン製剤がパキスタンでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。

 日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。

パキスタンのこどもの定期予防接種スケジュールについて

 パキスタンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)は、下の表2のとおりです。
 なお、下の表2には含まれていませんが、パキスタンではロタウイルスワクチン(RV)の定期予防接種への導入の準備が進められています。

表2. パキスタンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)
接種時期 予防する感染症 接種するワクチン(英字略語表記等)
出生時 結核 BCG(1回接種)
ポリオ経口・生ワクチン OPV(1回目)
生後6週間 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(1回目)*
B型肝炎 HepB(1回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) Hib(1回目)*
10価肺炎球菌結合型ワクチン PCV10(1回目: 2012年10月9日から導入されました)
ポリオ経口・生ワクチン OPV(2回目)
生後10週間 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(2回目)*
B型肝炎 HepB(2回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) Hib(2回目)*
10価肺炎球菌結合型ワクチン PCV10(2回目: 2012年10月9日から導入されました)
ポリオ経口・生ワクチン OPV(3回目)
生後14週間 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(3回目)*
B型肝炎 HepB(3回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) Hib(3回目)*
ポリオ不活化ワクチン IPV(1回接種: 2015年8月20日から導入されました)
10価肺炎球菌結合型ワクチン PCV10(3回目: 2012年10月9日から導入されました)
ポリオ経口・生ワクチン OPV(4回目)
生後9ヶ月 麻疹 Measles(1回目)
生後15ヶ月 麻疹 Measles(2回目)
15-45歳の女性 破傷風トキソイド TT(1回目:受診時あるいは妊娠中できるだけ早く)
TT(2回目:1回目の4週間後)
TT(3回目:2回目の6ヶ月後)
TT(4回目:3回目の1年後)
TT(5回目:4回目の1年後)
*:パキスタンでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチンで接種されます。

 複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。

 なお、パキスタンにおける国語はウルドゥー語です。しかし、英語も使われていて、パキスタン政府のホームページには、英語表記のページがあります。

参考文献

  1. WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system. Global summary.
     全世界の国々の予防接種スケジュール(WHO):(英語)。
  2. 欧州CDCVaccine schedule platform(欧州各国の定期予防接種スケジュール) :(英語).
  3. 日本国外務省:世界の医療事情パキスタン(イスラマバード・ラワルピンディー・ラホール)
       :パキスタン(カラチ周辺):(日本語).
  4. GAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟[The Global Alliance for Vaccines and Immunization])
    パキスタン
    :  パキスタンが南アジアで初めてこどもの肺炎球菌ワクチンを導入(2012年10月9日)
    :  パキスタンがポリオ不活化ワクチンを導入(2015年8月20日):
    :  パキスタンが携帯電話活用等でワクチン接種率向上(2016年3月9日)
    :  パキスタンが女性のワクチン接種従事者養成(2016年3月17日): (英語).
  5. パキスタン国家保健サービス省(Ministry of National Health Services, Regulations and Coordination)
     EPI(Expanded Program on Immunization: 予防接種計画)
      ;定期予防接種スケジュール
      ;定期予防接種のワクチン
     NIH(National Institute of Health: 国立衛生研究所):(英語).
  6. ユニセフ(UNICEF)-パキスタン事務所
    : パキスタンが南アジアで初めてこどもの肺炎球菌ワクチンを導入(2012年10月9日)
    : パキスタンでのポリオ排除の「英雄」に対する攻撃をUNICEFとWHOとは非難する(2012年12月19日)
    : 日本からユニセフにパキスタンでのポリオ排除計画に2億2600万円(2013年3月11日)
    : カナダからパキスタンでのポリオ排除に4千万カナダドル(2016年4月12日): (英語).
  7. パキスタン国パンジャーブ州 EPI(Expanded Program on Immunization: 予防接種計画): (英語).

2016年4月19日初掲載

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2016年4月19日作成
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