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マイコプラズマ肺炎について

流行は?

 マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という微生物によって引き起こされます。このマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の感染は、咽頭炎・気管支炎・肺炎(マイコプラズマ肺炎 : しばしば非定型肺炎と呼ばれます。)などをおこすことがあります。マイコプラズマに対する抗体検査によって、マイコプラズマの感染の実態が明らかになりつつあります。1歳の誕生日までに40%のこどもがマイコプラズマの感染を受けています。5 歳までに65%のこどもがマイコプラズマの感染を受けています。大人まででは97%がマイコプラズマの感染を受けています。何回も感染することがあり、重症の感染を繰り返すこともあります(Textbook of Pediatric Infectious Diseases, WB Saunders, 1998,pp2259-2286)。但し、5歳未満の幼児では、マイコプラズマの感染を受けても、症状が軽いか無症状の場合が多いです。大人では、マイコプラズマ の感染を繰り返すことは少ないですが、4-7年後に再度マイコプラズマの感染を受けマイコプラズマ肺炎を起こしてしまうことがあります。マイコプラズマ肺炎に対する免疫は、一生続くものではないので注意が必要です。

 アメリカ合衆国では、マイコプラズマの感染によって、毎年、200万人の患者が発生し、10万人のマイコプラズマ肺炎の入院患者が発生していると推計されています。

 流行は、若い人たちの間でよく起こります。欧米では、寄宿舎・兵舎・サマースクールなどでよく見られます。そのような施設での流行が起こると、施設での流行は数ヶ月続くことがあります。マイコプラズマ肺炎の発生は、年間をとおして見られますが、流行は秋が多いです。4-7年毎に大きな流行が見られ、特に日本では、4年毎のオリンピック(夏季)の年に流行が見られ「オリンピック病」とまで呼ばれたこともありましたが、最近はそのような規則的な流行ではなくなっています。

 マイコプラズマ肺炎は、5-35歳の年齢層の肺炎の大きな部分を占めています。

どんな病気?

 マイコプラズマ肺炎がだんだんと認識された出したのは1930年代からのことでした。当時よく見られた肺炎球菌による肺炎とは、明らかに違った種類の肺炎であるということから、非定型肺炎(atypical pneumonia : 異型肺炎とも言います。)と呼ばれました。肺炎球菌による肺炎が主に老人たちに見られたのに対し、非定型肺炎は寮制の学校の寄宿生や軍隊の新兵たちといった若い人たちで多く見られました。また、抗生物質のペニシリンが非定型肺炎には無効でした。また、胸部X線写真で見られる影の割合に非定型肺炎の症状が軽く見えました。この非定型肺炎の大部分をマイコプラズマ肺炎が占めていると考えられています。

 マイコプラズマ肺炎の症状としては、まず、発熱や頭痛を伴った気分不快が3-4日続きます。その間に咳がだんだんひどくなって来ます。最初は乾いた咳で痰もすくないですが、だんだんと痰も出るようになります。痰に血液が混ざってくることもあります。発熱や他の症状が消えても、咳はひどくなってきます。咳は、なかなか改善を見せず、4週間も長引きます。咳が1番ひどいのは2週目です。

 但し、マイコプラズマ肺炎の症状にはかなり個人差があり、2-3日で治ってしまう人もいれば、治るのに1ヶ月以上かかる人もいます。有効な抗生物質(エリスロマイシンやテトラサイクリンなど)による治療は、症状の期間を短縮し、治るのを早める効果が期待されます。

 マイコプラズマ肺炎の患者の気道の分泌物中にマイコプラズマが出てきます。このマイコプラズマ肺炎の患者の気道の分泌物が咳によって飛沫となります。この飛沫を吸い込むことなどによって人から人へとマイコプラズマが感染すると考えられます。有効な抗生物質(エリスロマイシンやテトラサイクリンなど)による治療を行った場合でも、これらの抗生物質はマイコプラズマの増殖の邪魔はしてもマイコプラズマを殺すわけではないので、症状の軽快後も患者の気道からマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)が数週間から数ヶ月(13週間)にわたって分離されることがあります。そのような患者が感染源となりとくに家族の感染を起こしてしまうと考えられます。

 潜伏期は、6-32日です。マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)に接触してから1ヶ月経過した時点でマイコプラズマ肺炎が発病することもあるのです。このように比較的に潜伏期が長いため、施設での流行が起こると、施設での流行は数ヶ月続くことがあります。

 アメリカ合衆国では、マイコプラズマ肺炎のことを「歩く肺炎(walking pneumonia)」と呼ぶことがあります。それは、肺炎の中では症状が軽く、入院を必要としない場合が多いからです。歩いて通院治療を受ける患者が多いのです。

 マイコプラズマ感染症となったこどもの25%が、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を起こします。また、耳の痛みを訴える者もいて、中耳炎・鼓膜炎などの耳の炎症を起こしている場合があります。また、筋肉痛・関節痛・発疹などが出現する場合もあります。

病原体は?

 マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という微生物に よって引き起こされます。マイコプラズマは、ウイルスなみに小さいです。マイコプラズマは、細菌に見られる細胞壁を持たず、そのため形が整っていません。いろいろな形が見られます。マイコプラズマは、ウイルスのように他の生物の細胞の力を借りて増殖するのではなく、細菌と同様に自分の力で増殖します。マイ コプラズマは、ウイルスと細菌との中間に位置する微生物です。マイコプラズマをウイルスに近い細菌と位置づけることもあります。細菌に見られる細胞壁を持たないために、細菌の細胞壁の合成を邪魔することによって効く種類の抗生物質(たとえば、ペニシリン)は無効です

 マイコプラズマの仲間には、他には、尿道炎や子宮頚管炎を起こす性感染症の病原体として、Mycoplasma hominisUreaplasma urealyticumとが知られています。

 培養で見られるマイコプラズマの形は、基本的には球形です。また、培養では、細長い糸状の形態となることもあり、細長い糸が枝状に連なって「カビ(真菌)の形」のように見えることもあります。ギリシア語でキノコ(mushroom)を意味するmykesから由来して「カビ(真菌)の」という意味のmyco -と、ギリシア語で「形作られた物」を意味するplasmaとに、mycoplasmaという名称は、由来します。なお、マイコプラズマの増殖の仕方には、下の図1に示すように二通りあります。二つに分裂する方法と、長く伸びて細長い糸状の形態となってから数珠(じゅず)状に分裂する方法です。

図1 マイコプラズマの増殖の仕方

予防のためには・・・

 マイコプラズマ肺炎に対するワクチン(予防接種)は今のところ、ありません。

 人ごみはできるだけ避けましょう。

 鼻をほじくるんだったら、手を洗ってからにしましょう。汚染した指を鼻の中に入れることによって、鼻の粘膜まで病原体を運んでしまう可能性があります。鼻をほじくるよりは、鼻をかんだ方が良いです。鼻をかんだ後のティッシューなどは、すぐにきちんと自分で始末しましょう。また、鼻をかんだ後にも手を洗いましょう。

 マイコプラズマ肺炎の患者と同じ部屋で眠るのは控えましょう。

 他の人に向けて咳をするのは、やめましょう。

2001年9月7日初掲載
2003年10月6日増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2008年4月1日更新
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