横浜市トップページ > 健康福祉局 > 横浜市衛生研究所 > 横浜市感染症情報センター > 疾患別情報 > 米国における麻疹輸入例対策について
グラフをご覧ください(下線部をクリックしてください) 。米国における年間麻疹患者発生数は、麻疹定期予防接種の2回化などによって大きく減少し、2002年には、44人(内、死者0人)と2003年までの最低値になりました。2001年には116人(内、死者0人)、2003年には56人(内、死者2人)であり、2001-2003年の3年間では計216人(内、死者2人)の患者発生です。この216人の患者の統計について米国のCDC(疾病管理センター)が報告しています(参考文献2)。
下の表1をご覧ください。麻疹の定期予防接種をまだ受けない0歳児の患者が21%を占めます。また、20歳以上の大人が101人と、47%を占めていて、麻疹はこどもの病気とは言い切れない状況です。
| 表1. 2001-2003年の米国における麻疹患者の年齢分布 | ||
| 年齢(歳) | 患者数(人) | 割合(%) |
| 0 | 46 | 21 |
| 1-4 | 22 | 10 |
| 5-19 | 47 | 22 |
| 20-39 | 77 | 36 |
| 40-44 | 13 | 6 |
| 45以上 | 11 | 5 |
| 計 | 216 | 100 |
次に、下の表2をご覧ください。米国外での感染が44%を占めています。一方、米国内での感染は、56%を占めています。ところが、米国内での感染56%の内でも、米国外での感染例から連鎖しての感染例27%、および、米国外での感染例から連鎖しての感染は確認できないが米国外からのウイルスによる感染である例8%については、米国外での感染がもとになっての感染とみることができます。米国外での感染に対する対応をしっかりすれば、米国外での感染がもとになっての感染は防げる可能性があります。そこで、米国では、外国から麻疹ウイルスが持ち込まれて国内で広がらないように、言わば麻疹輸入例対策に力が入れられています。中国、日本が米国にとっての麻疹の輸入元の主要国であると、米国のCDC(疾病管理・予防センター)は指摘しました。
| 表2. 2001-2003年の米国における麻疹患者の感染した場所等による分類 | |||
|
感染した場所 |
患者数(人) |
割合(%) |
|
|
米国外 |
米国国民 |
41 |
19 |
| 米国国民以外 |
55 |
25 |
|
|
計 |
96 |
44 |
|
|
米国内 |
米国外での感染例から連鎖しての感染例 |
59 |
27 |
| 米国外からのウイルスによる感染例 |
18 |
8 |
|
|
米国外との関連が確認できない感染例 |
43 |
20 |
|
|
計 |
120 |
56 |
|
|
総計 |
216 |
100 |
|
グラフをご覧ください(下線部をクリックしてください)。米国における年間麻疹患者発生数は、麻疹定期予防接種の2回化などによって大きく減少し、2004年には、37人と史上最低となりました。この37人の患者の統計について米国のCDC(疾病管理センター)が報告しています(参考文献4)。
下の表3をご覧ください。2004年には、1-4歳児の患者が18人で半数近くを占めています。これは、生後12-18ヶ月の幼児9人を含む患者数総計10人の集団発生の影響が強いです。
| 表3. 2004年の米国における麻疹患者の年齢分布 | ||
| 年齢(歳) | 患者数(人) | 割合(%) |
| 0 | 5 | 14 |
| 1-4 | 18 | 49 |
| 5-19 | 7 | 19 |
| 20-34 | 5 | 14 |
| 35以上 | 2 | 5 |
| 計 | 37 | 100 |
次に、下の表4をご覧ください。米国外での感染が73%を占めています。一方、米国内での感染27%の内でも、米国外での感染例から連鎖しての感染例16%については、米国外での感染がもとになっての感染とみることができます。米国外での感染に対する対応をしっかりすれば、米国外での感染がもとになっての感染は防げる可能性があります。そこで、米国では、外国から麻疹ウイルスが持ち込まれて国内で広がらないように、言わば麻疹輸入例対策に力が入れられています。なお、米国外で感染した患者27人の感染した国については、中国13人、インド4人、バングラデシュ2人、タイ2人、マレーシア・ナイジェリア・フィリピン・ロシア・サウジアラビア・英国1人ずつとなっていて、中国が半数近くを占めています。これも、中国で感染した生後12-18ヶ月の幼児9人を含む患者数総計10人の集団発生の影響が強いです。2004年においては、感染した国の中に日本は含まれていません。
3人以上の患者が発生した集団発生については、2004年は、2件ありました。生後12-18ヶ月の幼児9人を含む患者数総計10人の集団発生と次項の「米国における麻疹輸入例に対する衛生当局の対応事例」で紹介する集団発生とです。生後12-18ヶ月の幼児9人を含む患者数総計10人の集団発生については、中国の孤児院で感染した生後12-18ヶ月の幼児9人が養子として渡米して発病し、さらに、この養子の一人である18ヶ月の幼児とワシントン州で接触した19歳のカリフォルニア州出身の女子学生がカリフォルニア州の自宅に戻って発病したものです。女子学生は医学的理由以外の理由で麻疹予防接種を受けておらず、自宅で検疫の状態にありましたが、18ヶ月の幼児との接触の14-16日後に発疹が出現し麻疹が診断されました。
| 表4. 2004年の米国における麻疹患者の感染した場所等による分類 | |||
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感染した場所 |
患者数(人) |
割合(%) |
|
|
米国外 |
米国国民 |
14 |
38 |
| 米国国民以外 |
13 |
35 |
|
|
計 |
27 |
73 |
|
|
米国内 |
米国外での感染例から連鎖しての感染例 |
6 |
16 |
| 米国外からのウイルスによる感染例 |
0 |
0 |
|
|
米国外との関連が確認できない感染例 |
4 |
11 |
|
|
計 |
10 |
27 |
|
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総計 |
37 |
100 |
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2004年3月12日にインドのニューデリーから米国に帰国した19歳の男子学生の麻疹患者についてアイオワ州衛生局が3月13日に米国CDC(疾病管理・予防センター)に報告しています。この学生は医学的理由以外の理由で麻疹予防接種を受けていませんでした。この学生はアイオワ州のA大学の約28人の学生と2人の監督者とからなる団体の一員としてインドに渡航しました。このA大学の学生たちは高率で医学的理由以外の理由で接種を受けていませんでした。インド滞在中にA大学の学生から6人の麻疹患者が発生しました。団体は3月7日に米国に帰国する予定でした。アイオワ州衛生局は発疹出現以後少なくとも4日間(他の人への感染の可能性のある期間)はインドに留まるようこの6人の学生に勧告しました。麻疹の潜伏期間中の帰国を避けるために、この6人の学生の接触者で麻疹に免疫のない学生については、最後の接触から18日間インドに留まるよう勧告しました。この勧告にもかかわらず、接触者で麻疹に免疫のない学生である19歳の男子学生が3月12日にインドのニューデリーから米国に帰国し麻疹を発病したのでした。
この学生はインドのニューデリーからアムステルダム(オランダ)、デトロイト(ミシガン州)の空港を経てアイオワ州の Cedar Rapids に戻っています。この帰国の途中で咳症状と結膜炎が出現しています。アイオワ州に到着して24時間以内に発疹が出現し、3月13日に内科医師が診察し麻疹としてアイオワ州衛生局に報告しています。この3月13日には、アイオワ州衛生局とミシガン州衛生局とが、空港にいた旅客や従業者等が麻疹ウイルスの曝露を受けた可能性・危険性について記者発表しています。飛行機の同乗者や空港に居合わせた人たちについて、感染の可能性を検討し、感染の可能性があれば ACIP ( Advisory Committee on Immunization Practices. : 米国において、ワクチンの使用に関する勧告を行う委員会。)の勧告に従って、麻疹予防接種あるいは免疫グロブリン注射を実施することが考慮されました。今までのワクチンや感染によって十分な免疫を持っているとは期待できない接触者について、麻疹ウイルスの曝露後、72時間以内であれば、麻疹予防接種、あるいは、6日以内であれば、免疫グロブリン注射を実施することが考慮されました。14日にはアイオワ州で、15日にはミシガン州で麻疹予防接種のためのクリニックが開設されました。この学生の同行者や接触者に麻疹が発生しないか、居住地の衛生当局が警戒しました。
この学生との接触後10日ほどで、2人の患者が接触者から発生しました。いずれもアイオワ州の住民です。一人は、飛行機でこの学生の隣に座っていた乗客です。2回の麻疹(MMR)予防接種歴がありましたが発病しました。もう一人は、この学生との濃厚な接触者です。麻疹予防接種歴がないため、接触の約26時間後に麻疹(MMR)予防接種を受けましたが発病しました。
この学生と接触者2人との、計3人の患者については、自宅において自発的な隔離状態に置かれました。アイオワ州衛生局と地元の衛生当局とが、家庭訪問と電話で観察下に置きました。また、患者のうちの一人が受診して接触した医療従事者2人が、十分な免疫を持っているとは期待できない接触者でしたが、麻疹予防接種あるいは免疫グロブリン注射といった予防的処置を勧奨される期間内に受けなかったため、自発的な検疫の状態に2週間置かれました。医療従事者2人は2週間家庭に留まりました。なお、「隔離」も「検疫」も周囲との接触を絶つ点については同じですが、患者については隔離(isolation)、患者以外の接触者等についは検疫(quarantine)と言葉が使い分けられています。
さて、米国では学齢期までに2回の麻疹予防接種を済ませることになっています。麻疹予防接種を2回とすることで、以前の麻疹予防接種を1回実施していた時代よりもさらに患者発生が減少し、米国では2004年の年間麻疹患者発生数は37人と史上最低を記録しています。このような米国ですが接種対象となるこどものすべてが接種を受けるわけではありません。ワクチン成分に対するアレルギーあるいは免疫不全等の医学的理由から接種を受けないこどもがいます。また、医学的理由以外の理由で接種を受けないことを認めている州がいくつかあります。医学的理由以外の理由で麻疹予防接種を受けていない人については、麻疹予防接種を受けている人に比べて22倍以上麻疹にかかりやすいとされています。医学的理由以外の理由で麻疹予防接種を受けていない人が増加すると、麻疹予防接種を受けている人が麻疹にかかる危険性も増加すると考えられています。医学的理由以外の理由で麻疹予防接種を受けていない人が、海外で麻疹にかかり、米国に麻疹ウイルスを持ち込んでしまう可能性があります。海外旅行する人たちは麻疹に対する免疫を持つように、つまり、免疫のない人は麻疹予防接種を受けるように、米国の ACIP は勧めています。
2004年4月5日掲載
2004年9月3日増補
2005年12月12日増補改訂