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麻疹(はしか)について

流行は?

 世界中で見られる感染症です。予防接種があまり行われていない国では、2、3年毎に大きな流行を繰り返し、主に晩冬から春にかけて発生を多く見ます。予防接種が十分に行われている国では、事情が大分違います。例えば、アメリカ合衆国では、1963年に麻疹ワクチンが認可されましたが、1963年以前は2、3年毎に大きな流行を繰り返し大きな流行の年には年間約50万人の麻疹患者の報告と約500人の麻疹による死亡とがありました。しかし、1963年以降は麻疹患者の報告は激減し、2、3年毎の大きな流行もなくなり、1983年には年間1497人の麻疹患者の報告にまで少なくなりました。ところが、1983年以降は、麻疹患者の報告は再び増加に転じました。すでに1回の麻疹ワクチンの接種を受けた者の間での麻疹の流行、あるいは、1歳未満の乳児の麻疹罹患の増加が見られました。1回の麻疹ワクチンの接種だけでは、完璧に近く流行を防ぐほどの免疫は獲得できず、また、母親も昔の自然に麻疹に感染して免疫を獲得した母親に比べると赤ちゃんに1歳のお誕生日まで持続する十分な免疫(抗体)を伝えられないことが考えられました。そのため、現在では、アメリカ合衆国では、MMRワクチン(麻疹・風疹・ムンプスの三種混合ワクチン)の形で1歳のお誕生日を過ぎた時点で1回と就学前に1回との計2回接種することになっています。アメリカ合衆国では、麻疹予防接種(MMRワクチン)の2回接種の勧告は1989年に出されました。麻疹予防接種率の向上および麻疹予防接種(MMRワクチン)の2回接種化の結果、麻疹患者の報告は再び減少し、2004年の年間では、37人と史上最低の値となっています。アメリカ合衆国の年間麻疹患者数推移のグラフをご覧下さい(下線部をクリックして下さい。)。アメリカ合衆国では、現在でも、散発的に麻疹患者の発生がありますが、患者が外国から麻疹ウイルスを運びこんだ場合とその外国から運びこまれた麻疹ウイルスに感染した場合とが、大部分とされています。日本もアメリカ合衆国への麻疹ウイルスの輸出国の一つとされたことがあります。一方、アメリカ合衆国には、宗教上あるいは信念上等の理由から予防接種を拒否する人たちもいます。外国から運びこまれた麻疹ウイルスをきっかけにそのような集団のなかで麻疹が流行する可能性は残っています。また、アメリカ合衆国では、最近、麻疹患者の報告に占める大人の割合が増加しつつあり、麻疹がこどもの病気とも言えない状態になりつつあります。

 日本においては、2005年度まで麻疹の定期予防接種は一回だけでした。しかし、2006年度から、MRワクチン(麻疹・風疹の二種混合ワクチン)の形での二回接種が基本となりました。接種時期については、第一期は「生後十二月から生後二十四月に至るまでの間にある者」、第二期は、「五歳以上七歳未満の者であって、小学校就学の始期に達する日の一年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にあるもの」となっています。横浜市における麻疹・風疹の定期予防接種については、こちらをご参考にしてください(下線部をクリックしてください)。

 横浜市では、年間を通して麻疹の発生が見られます。但し、他の季節と比べると晩冬から春の季節が発生が多いようです。

どんな病気?

 鼻やのどの粘膜に麻疹ウイルスが付着、侵入し増殖を始めることによって麻疹の感染が始まります。麻疹の感染が始まってから発疹が出る前の前兆症状まで10-12日(7-14日のこともあります)、麻疹の感染が始まってから発疹が出るまでだと平均で14日(7-18日のこともあります)かかります。前兆症状は、2-4日(1-7日のこともあります)続きます。前兆症状としては、発熱とともに咳や鼻水が出始め、結膜炎を伴うこともあります。熱は38度程度に達しますがやがて下がります。また、麻疹に特徴的なコプリック斑が、前兆症状が始まってから2-4日後に、第一、第二臼歯に対応する頬の内側の口腔粘膜に出現します。コプリック斑は粘膜にまかれた少量の白砂のように見え、周囲の粘膜は赤くなっています。コプリック斑が出現してから1-2日後に発疹が出現し始め、発疹が出現すると1-2日でコプリック斑は消えてきます。

 麻疹の発疹は、発疹が出る前の前兆症状が出現してから3-5日後に、出現します。赤い斑状丘疹で、通常5-6日は出現しています。髪の毛の生え際の、耳の前や下、首の脇にまず出現し、顔や上頚部に広がり、24-48時間かけて体幹部や四肢へと広がります。赤い斑状丘疹は不連続ですが、とくに上半身では多くは癒合して、顔が一面真っ赤になることもあります。発疹が出て来ると一度下がっていたものが再び発熱し40度に達することもある高熱が出ますが、3-5日の内に熱は下がり、発疹は出現したのと同じ順序で消えていきます。発疹の跡にはしばらく銅褐色の変色が残りますが、これもやがて消えます。

 麻疹の合併症は、5歳未満の乳幼児と20歳以上の大人で起こる確率が高いです。

 1985-1992年のアメリカ合衆国のサーベイランス・データによれば、麻疹報告例の、8%で下痢が見られ、7%で中耳炎(こどもで多い)が見られ、6%で肺炎(死因となることもある)が見られました。また、急性の脳炎が0.1%で見られ、発疹出現後の平均6日後(1-15日後のこともあり)に発熱、頭痛、嘔吐、首が固くなる、傾眠、痙攣、昏睡等の症状で出現しました。脳炎となった場合の致死率は15%、何らかの神経学的な障害が残った者25%でした。

 妊娠中に母親が麻疹にかかると、早産、自然流産、低体重児出産の確率を高めます。但し、麻疹が原因の先天奇形はまれとされています。

 麻疹は、主にこどもたちに見られる赤い発疹を生じる感染症の代表格です。似た病気に風疹がありますが、麻疹は風疹の兄貴分のような立場です。欧米では、麻疹を第一病first disease、9日はしかnine-day measles と言うことがあるのに対して、風疹を第三病third disease、3日はしかthree-day measlesと言うことがあります。

病原体は?

 病原体は、パラミキソウイルスに属する麻疹ウイルスです。牛疫や犬のディステンパーといった病気の病原体のウイルスたちが近縁のウイルスです。ウイルスの大きさは、200ナノ・メーターほどです。麻疹ウイルスは、熱、光、酸などによって不活化されやすいです。空中や、ものの表面では数時間でかなりの部分が不活化します。そこで、ものの表面についた麻疹ウイルスを手を介して口や鼻に運ぶよりは、患者が咳をして生じた飛沫を吸い込んで感染してしまう場合の方が多いとされています。麻疹患者が在室して咳をしていた部屋では2時間後位までは、感染力のある飛沫が空中を漂っている可能性があります。患者から他の人に感染する力は強く、患者の身近の麻疹の免疫のない人は90%以上の確率で感染すると言われています。前兆症状が始まってから、発疹出現の4日後位までの間、麻疹ウイルスは、患者の鼻やのどから出てきます。そこで、麻疹は、発疹出現の4日前位から、発疹出現の4日後位までの間に患者から他の人にうつります。

予防のためには・・・

 麻疹にかかった人は、学校や職場を休んで、通院以外の外出を控えましょう。学校保健法での登校基準は「発疹に伴う発熱が解熱した後3日を経過するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。」となっています。

 よく手を洗うことは、ものの表面についた麻疹ウイルスを手を介して口や鼻に運ぶことを防ぐために役立ちます。しかし、その前に、患者が咳をして生じた飛沫を吸い込んで感染してしまう可能性が高いです。

 麻疹にはワクチン(予防接種)があります。かかりつけ医によく相談しましょう。

 麻疹ワクチンは、結核に感染している人のツベルクリン反応を1か月間ぐらいは弱めてしまうことが知られています。麻疹ワクチンの後、1か月以内にツベルクリン反応検査を行ってしまうと、本当は陽性のところを陰性と誤って判断してしまう可能性があります。この危険をさけるためには、ツベルクリン反応検査を麻疹ワクチン接種に優先して行う、あるいは、ツベルクリン反応検査を麻疹ワクチン接種の4-6週間後に行うことが必要です。

2000年9月12日初掲載
2002年11月22日改訂増補
2004年3月19日改訂増補
2005年12月12日改訂増補
2006年9月22日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2008年9月30日更新
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