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リステリア症について

流行は?

 アメリカ合衆国では、毎年約2500人が重症のリステリア症(Listeriosis)となり、そのうち、約500人が死亡していると推定されています。アメリカ合衆国では、毎年約5000人が食物由来の感染症で死亡していると推定されていますので、そのうち約10%がリステリア症によることになります(参考文献1)。アメリカ合衆国では、1998年に、リステリアに汚染されたホットドッグによるリステリア症の大きな発生があり、22の州で101人の患者が発生し21人が死亡しました。1985年には、ロサンゼルスで、リステリアに汚染された牛乳から造られたソフトチーズ(メキシカンスタイルチーズ)によるリステリア症の大きな発生があり、142人の患者が発生し46人が死亡しました。患者の85%が周産期(出産の前後)の患者でした。また、カナダ南東部の Nova Scotia では、1981年に、リステリアに感染したヒツジからの肥料を使った畑のキャベツを使ったキャベツサラダによるリステリア症の大きな発生があり、41人の患者が発生し18人が死亡しました。患者の83%が周産期(出産の前後)の患者でした。フランスでは、1992年に、豚の舌の瓶詰めによるリステリア症の大きな発生があり、279人の患者が発生し63人が死亡しました。最近の日本では、リステリア症の大きな発生はありません。

 2011年9月2日、アメリカ合衆国コロラド州で8月28日以来7人のリステリア症患者発生の報告があったことを、コロラド州公衆衛生・環境局がCDC(疾病管理予防センター)に通報しました。2010年まで、コロラド州は8月のリステリア症患者発生の報告は平均で2人程度であることから、明らかな患者発生の増加です。2011年9月6日までの調査で、この7人のリステリア症患者のすべてが、発病の前の月にメロンを食べていて、この内3人については"Rocky Ford"という名称で売られているメロンを食べていたことが、明らかになりました。これらの患者が購入したメロンの生産地を探ると、コロラド州のJensen農場でした。 コロラド州以外でもリステリア症患者発生の報告がありました。Jensen農場のメロンを食べて発症した患者から分離されたリステリアについては四つのPFGE(パルスフィールド電気泳動)型が見られ、この四つのPFGE型のリステリアは、患者の家にあったメロンや、販売店やJensen農場のメロンからも分離されました。2011年9月14日、Jensen農場は、自発的にメロンの回収(リコール)を始めました。 2011年9月29日までに、この四つのPFGE型のリステリアによる患者発生は、19州から84人が報告されています。患者の年齢は35-96歳で、60歳以上が88%でした。55%が女性で、妊婦が2人でした。15人が死亡しています。摂食状況の情報を得られた62人中57人(92%)が発病の前の月にメロンを食べていました。リステリア症の潜伏期は通常1-3週間ですが、3-70日間の範囲でも見られるため、9月29日以降に発病する患者がさらに把握されることで、このメロンによるリステリア症患者集団発生の患者数はさらに増える可能性があります(参考文献2)。

 リステリア症になりやすいのは、以下に示す人たちです。 リステリア症になりやすい人がリステリア症になった場合の致死率は20-30%と高いです。リステリア症になりやすい人はリステリア症に対して特に注意が必要です。

 *妊娠している女性 : 健康な成人より20倍リステリア症になりやすいです。

 *胎児・新生児 : 妊娠中の感染は、妊娠している女性よりもおなかの中のこども(胎児)に深刻な影響を与えます。胎児の段階で感染し、リステリア症の新生児として出産されることもあります。

 *免疫機能が弱まっている人たち。臓器移植を受けた人たち。

 *ガン・糖尿病・腎臓病の人たち : これらの人たちは、免疫機能が弱まっている場合があります。

 *エイズ患者 : 正常な免疫機能の人たちより300倍リステリア症になりやすいです。

 *ステロイドによる治療を受けている人たち : これらの人たちは、ステロイドによる影響で免疫機能が弱まっている場合があります。

 *老人 : 老齢になるにつれて免疫機能が弱まっている場合があります。

 *健康な成人・こどもは、ときにリステリア症になっても、重症になることはまれです。

どんな病気?

 リステリア症は、リステリア( Listeria monocytogenes:LM)という細菌によって引き起こされる感染症です。リステリア症では、発熱・筋肉痛、ときには吐き気や下痢といった胃腸炎症状を引き起こすこともあります。これらの症状だけのこともありますが、さらに、神経系統まで感染が広がると、頭痛、首が硬くなる、昏迷、ふらつき、痙攣等が起こることがあります。リステリア症では、髄膜炎・髄膜脳炎・敗血症を起こすことがあります(侵襲性リステリア症)。

 リステリアに感染した妊娠女性は、軽いインフルエンザのような症状を示すことがあります。リステリアの菌血症となると、急激な発熱に筋肉痛、関節痛、頭痛、背部痛を伴うこともあります。発熱、悪寒、頭痛、軽いめまいや胃腸炎症状などが見られることもありますが、感染しても何の症状も見られないこともあります。それでも、おなかの中のこども(胎児)は、大きな影響を受け、胎児の感染から早産、新生児の髄膜脳炎・敗血症あるいは胎児の死亡・死産を引き起こすことがあります。妊娠女性の感染から、流産・早産・死産などとなるまでの期間は、数日から数週間です。妊娠女性の感染から、流産・早産・死産などの重篤な結果になりやすい時期は、通常の妊娠期間を三等分すると、最後の3番目の時期です。これは、妊娠26-30週でリステリアなどに対する妊娠女性の細胞性免疫が低下することが影響していると考えられます。
 新生児の感染は、出生前に子宮内で、あるいは出産時に膣内で起こることがあります。感染した胎児や新生児の致死率は、20-30%です。

 リステリア症の妊婦の報告222人分を集めての、Mylonakisらによる調査研究があります(参考文献8)。
 191人のリステリア症の妊婦の症状について、症状なしが29%、発熱が65%、インフルエンザ様の症状が32%、腹痛あるいは背部痛が21.5%、頭痛が10.5%、嘔吐あるいは下痢が7%、筋肉痛が4%、のどの痛み4%でした。

 リステリアに汚染された食物を食べてから、6時間-10日間で発熱や胃腸炎のような症状が出る場合もありますが、髄膜炎・髄膜脳炎・敗血症などのリステリア症(侵襲性リステリア症)の重い症状が出現するまでには3-70日間かかります。重い症状が出るまでの時間の長さは、患者の健康状態やリステリアの菌株の種類、菌の量などに左右されるものと思われます。

 リステリアに汚染された食物を食べることによってリステリアに感染し、リステリア症になる可能性があります。しかし、通常、リステリアに汚染された食物を食べても、リステリア症になる可能性はたいへん小さいです。リステリアに汚染されたものを食べても、何の症状もなければ、何の検査も治療も受けなくてよいでしょう。しかし、自分がリステリア症になりやすい人たちに属し、リステリアに汚染された食物を食べて2か月以内に発熱等具合が悪くなるようなことがあればすぐに医療機関を受診して、リステリアに汚染された食物を食べたことを医師に相談した方が良いでしょう。

 リステリア症の診断は、本来、無菌状態である血液・羊水・脳脊髄液・関節液・組織などからのリステリアの分離培養によります。

 リステリア症の治療には、抗生物質が多い量で使用されます。妊娠中にリステリア症にかかった場合、早急に抗生物質を投与することで、しばしば胎児や新生児の感染を防ぐことができます。しかしながら、老人や抵抗力が弱い人たちでは、抗生物質による治療の効なく死に至る場合もあります。抗生物質としては、ペニシリン・アンピシリン等が有効とされます。ペニシリンのアレルギーがある場合には、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(trimethoprim-sulfamethoxazole : TMP-SMX)やバンコマイシンなどが使われることがあります。TMP-SMXは、妊婦や乳児に使用できない時期があります。セファロスポリン系抗生物質は効果がなく、使われません。脳脊髄液に異常がない菌血症では2週間、髄膜炎では3週間の治療が考慮されます。脳炎、脳膿瘍(4-6週間)や心内膜炎(6-8週間)などではそれ以上の治療が考慮されます。治療が短すぎると再燃(再発)がありえます。
 妊娠中の治療期間については、症例報告では、短くて2週間から長くて分娩まで継続と様々です。妊娠中の治療期間については、2週間では再燃(再発)の恐れがあり、短くとも3-4週間とするべきだとする専門家もいます。

 動物でもリステリア症が見られ、羊、ヤギ、牛などの反すう動物でよく見られます。ウサギ、モルモット、犬、猫、豚、家きん、カナリア、オウムなどで見られることもあります。羊、ヤギ、牛などは、リステリアに汚染された飼料を食べることで感染します。pHが高い(酸性度が低い)飼料でリステリアが増殖し、飼料を食べた羊、ヤギ、牛などでリステリア症の集団発生を起こすことがあります。リステリア症の動物を扱った人の皮膚にリステリアが感染することもあります。
 羊、ヤギ、牛などの反すう動物でよく見られるリステリア症は、脳炎、流産、敗血症などです。反すう動物の脳炎の潜伏期は、10日間から3週間です。反すう動物の敗血症は、新生児期・幼若期に多いです。牛の乳腺炎、羊の眼炎など局所の感染が見られることもあります。

病原体は?

 病原体となるリステリアは、自然の中の土や水の中に見られます。土や肥料の中のリステリアで野菜が汚染されることがあります。リステリアは自然界に広く分布するため、動物とリステリアとの接触を回避することは難しいです。動物でも病気を起こすことがあり、家畜で流産や死産の原因となることがあります。また、動物は病気になることなくリステリアを運び、肉などの動物由来の食物のリステリア汚染の原因となることがあります。いろいろな生の食物、熱を加えていない肉や野菜、滅菌されていない生の牛乳あるいはそれから作られた食品がリステリアを含むことがあります。

 リステリアは最近になって発見された病原体ではありません。1911年には動物に感染することが知られましたし、1929年にはヒトに感染することも知られました。

 リステリアは過酷な環境下でも生きる力が強い細菌です。他の細菌に比べて熱・塩・酸・冷凍・乾燥に強いです。冷蔵庫中の温度(摂氏4-10度)でもよく増殖します。氷点下の-4度でもゆっくりとですが増殖可能です。さすがに-18度では増殖しません。リステリアは、10%の食塩水の中でも増殖し、30%の食塩水にも耐えます。アメリカ合衆国では、ローストビーフの加熱の基準は、以前はサルモネラを破壊する基準でしたが、現在では、より熱に強いリステリアを破壊する基準となっています。

 制酸剤・H2ブロッカーの服用や胃潰瘍手術後などで胃の中の酸度が低まると、リステリア症に、より、かかりやすくなるとされています。

 リステリアは、食物の味や匂いを変えません。

 リステリア( Listeria monocytogenes:LM )は、細菌学の先駆者として有名なLister卿に因んで命名されたものです。 monocytogenes は、リステリアに感染したウサギなどの動物の血液中にしばしば多くの単球( monocyte )を認めたことに由来します。

 リステリア属( genus Listeria )には、monocytogenes 、ivanovii 、seeligeri 、innocua 、welshimeri、martii、grayi の七つの種が属しています。monocytogenes 、ivanovii の二つが病原性があります。monocytogenes は、人と動物とに病原性があります。以前はListeria bulgarica あるいはmonocytogenes の血清型5型とされていたivanovii は、主として動物に感染し、人に病気を起こすことは極めてまれです。ivanovii は、羊や牛の流産や羊の敗血症を起こすことがあります。seeligeri も極めてまれに人に病気を起こすことがあります。
 monocytogenes には、1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、4d、4e、7の十二の血清型が認められています。1/2a、1/2b、4bの三つの血清型で人のリステリア症の95%を起こしています。集団発生では4b型が多く見られます。

 Listeria monocytogenes の消毒は、1%次亜塩素酸ナトリウム、70%エタノールやグルタルアルデヒドが有効です。高圧蒸気滅菌(121度で15分)や乾熱滅菌(160-170度で1時間)も有効です。

 約0.6-10.6%の人たちが、症状なしに腸内にListeria monocytogenes を持っています。そのため、便からListeria monocytogenes が分離されても、リステリア症と確定はできません。健康な人たちは、リステリアに曝露しても発病することは、まれですが、リステリアを大量に含んだ食品を摂取したときなどに、潜伏期6時間から10日間で発熱性胃腸炎を発病することがあります。この発熱性胃腸炎は、1-3日の内に軽快します。あるいは、羊、ヤギ、牛などの流産で胎児等と接することにより、獣医師などで丘疹や小膿庖を生ずることがあります。また、Listeria monocytogenes 結膜炎が家きんの処理工場の従事者で報告されています。

図1: リステリアの感染からリステリア症発病まで

予防のためには・・・

 健康な人たちは、リステリアに汚染された食物を食べても発病しないことが多いのですが、リステリア症になりやすい人たちはごく少量のリステリアに汚染された食物を食べただけで発病する可能性があります。リステリア症になりやすい人たちは、特定の食物を避けたり、適切な食物の扱い方をすれば、リステリアの感染を予防することができます。リステリアの感染を予防するするためには、次のようなことに注意した方が良いでしょう。

 *動物性の生の食物(例えば、牛肉、豚肉、にわとり・七面鳥の肉等)はよく加熱すること。

 *生野菜は食前によく洗うこと。

 *加熱していない肉は、野菜や調理済みの食物、食べる用意ができている食物から離しておくこと。加熱していない肉を盛っていた皿をそのまま食事に使わないこと。

 *滅菌していない生の牛乳、あるいは滅菌していない生の牛乳で作った食物を避けること。

 *加熱していない生の食物を扱った後は、手、包丁、まな板をよく洗うこと。

 さらに、リステリア症になりやすい人たち(例えば、妊娠中の女性や免疫不全の人たち等)は、次のようなことにも注意した方が良いでしょう。

 *ソフトチーズ(例えば、フェタチーズ、ブリーチーズ、カマンベールチーズ、ロクフォーチーズ、メキシカンスタイルチーズ等)は、避けること。プロセスチーズ、クリームチーズ、コッテイジチーズやヨーグルトは、避ける必要はありません。ハードチーズについては、2001年12月に、日本でも、輸入されたリンドレスゴーダチーズからリステリアが検出されたことがありますのでやはり避けた方が良いでしょう。

 *残り物の食物や食べる用意ができている食物(例えば、ホットドッグ)は、食べる前に強く熱を加えること。 食物の内部も摂氏74度以上に達するよう加熱しましょう。

 リステリアは、食中毒の原因となる可能性のある病原体です。日本でも、2000年夏には、輸入された生ハムからリステリアが検出され、業者による自主回収がなされました。また、輸入チーズからもリステリアが、検出されることがあります。

 人についても動物についてもリステリアに対してのワクチン(予防接種)はありません。

 2011年9月、アメリカ合衆国においてメロンを食べてのリステリア症患者集団発生が見られました。アメリカ合衆国のFDA(食品医薬品局)が、次のようなリステリア症予防のためのメロンの安全な食べ方を推奨しています。

 *メロンを取り扱う際には、取り扱う前および取り扱う後において、いずれも20秒以上、お湯と石けんとで手をよく洗いましょう。

 *清潔なブラシで、メロンの表面をごしごしこすり洗いし、清潔な布あるいはペーパータオルで拭いて乾かしてから、清潔な包丁でメロンを切りましょう。

 *切ったメロンをすぐに食べましょう。切ったメロンをすぐに食べないときは、すぐに冷蔵しましょう。摂氏4度以下(摂氏0-1度が最善)で冷蔵し、7日間を超えての冷蔵はしないようにしましょう。

 *4時間以上室温で放置したメロンは食べずに捨てましょう。

参考文献

  1. Paul S. Mead, et al. ; Food-Related Illness and Death in the United States ; Emerging Infectious Diseases ; Vol. 5, No 5, September-October 1999, p.607-625.
  2. Centers for Disease Control and Prevention. Multistate Outbreak of Listeriosis Associated with Jensen Farms Cantaloupe --- United States, August-September 2011. MMWR October 7,2011;Vol. 60 / No. 39:p. 1357-1358.
  3. Technical Factsheets: "Listeriosis". Center for Food Security and Public Health, College of Veterinary Medicine, Iowa State University. May 1, 2005. p. 1-5.
  4. JOSE A. VAZQUEZ-BOLAND, MICHAEL KUHN, PATRICK BERCHE, TRINAD CHAKRABORTY, GUSTAVO DOMINGUEZ-BERNAL, WERNER GOEBEL, BRUNO GONZALEZ-ZORN, JUERGEN WEHLAND, AND JUERGEN KREFT; Listeria Pathogenesis and Molecular Virulence Determinants; CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Vol. 14, No. 3. July 2001, p. 584-640.
  5. Vanitha Janakiraman; Listeriosis in Pregnancy: Diagnosis, Treatment, and Prevention; REVIEWS IN OBSTERICS & GYNECOLOGY; VOL. 1, NO. 4, 2008, p. 179-185.
  6. Bennett Lorber; Listeriosis; Clinical infectious diseases; 1997; 24 (January); p. 1-11.
  7. Agency for Health Protection and Promotion, Ontario, Canada; Listeria monocytogenes : A Clinical Practice Guideline; September 03, 2008, p. 1-3.
  8. Mylonakis E, Palion M, Rohmann EI, et al. Listeriosis during Pregnancy: a case series and review of 222 cases. Medicine [Baltimore]. 2002;81: p. 260-269.
  9. Catherine Taillefer, Marc Boucher, Celine Laferriere, and Lucie Morin. Perinatal Listeriosis: Canada’s 2008 Outbreaks. J Obstet Gynaecol Can. JANUARY 2010;32(1):p. 45-48.
  10. Health Canada; IT'S YOUR HEALTH: Listeria and Food Safety. March 2010, p. 1-4.

2000年10月24日初掲載
2002年2月13日改訂
2002年10月8日改訂
2011年11月7日増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2011年11月7日更新
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