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A型インフルエンザウイルスのアマンタジンに対する耐性について

はじめに

 この項では、A型インフルエンザウイルスのアマンタジンとリマンタジン[インフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)]に対する耐性について触れます。「耐性」については、こちらをご覧ください。
 また、インフルエンザウイルスのアマンタジンとリマンタジン以外のインフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)に対する耐性についても、こちらをご覧ください。

アマンタジンとリマンタジンとに対するA型インフルエンザウイルスの耐性について

 さて、インフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)として、米国では、主に、M2イオン-チャンネル阻害剤(アマンタジンとリマンタジン)とノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルとザナミビル)とがありました。この内、M2イオン-チャンネル阻害剤のリマンタジンについては、日本では認可されていません。なお、ノイラミニダーゼ阻害剤はA型およびB型のインフルエンザに有効ですが、M2イオン-チャンネル阻害剤については、A型インフルエンザにのみ有効という違いがあります。また、アマンタジン(商品名シンメトレル)については、パーキンソン病の治療薬としても用いられています。
 A型インフルエンザウイルスのM2蛋白の26番、27番、30番、31番、34番の位置のアミノ酸が一つ変わるような遺伝子の変異だけで、A型インフルエンザウイルスはアマンタジンとリマンタジンとに対して耐性を獲得するため、A型インフルエンザウイルスによってアマンタジンとリマンタジンとに対する耐性は比較的獲得されやすいとされています。また、そのような遺伝子の変化があって、耐性を獲得したA型インフルエンザウイルスとなっても、ウイルスの増殖力、人間から人間への感染力、人間への病原性は弱まらないと考えられています。
 近年、人間のA型インフルエンザウイルスにおいて、アマンタジンとリマンタジンとに対する耐性がある割合が増えました。世界的に見ても、2001-2002年のインフルエンザ-シーズンでは1.8%だったのが、2003-2004年のインフルエンザ-シーズンでは12.3%と増加しました。米国では、2003-2004年のインフルエンザ-シーズンでは1.9%だったのが、2004-2005年のインフルエンザ-シーズンでは11%と増加しました。

2005-2006年冬季インフルエンザ-シーズンの米国におけるCDC(米国疾病管理・予防センター)による暫定的勧告(2006年1月14日)

 米国において、2005-2006年冬季インフルエンザ-シーズンの2005年10月1日から2006年1月12日までで、23州の患者から分離された120のA香港(H3N2)型インフルエンザウイルスについてCDC(米国疾病管理・予防センター)で検査したところ、アマンタジンとリマンタジンとに対する耐性を示す、M2蛋白の31番の位置のアミノ酸の変化が、109(91%)のウイルスで見られました。なお、分離された三つのAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスについてCDC(米国疾病管理・予防センター)で検査したところ、アマンタジンとリマンタジンとに対して感受性がありました。また、2006年1月14日の時点で、ノイラミニダーゼ阻害剤に対する耐性については、米国での検体についてCDC(米国疾病管理・予防センター)で検査した限りでは、認めていません。
 2006年1月14日の時点で、米国でのインフルエンザウイルス陽性の1557検体について、A型が1499検体(96.3%)、B型が58検体(3.7%)でした。A型1499検体の内、765検体の亜型を検査したところ、760検体(99.3%)がA香港(H3N2)型インフルエンザウイルスで、5検体(0.7%)がAソ連(H1N1)型インフルエンザウイルスでした。
 2005-2006年のインフルエンザ-シーズンの2006年1月14日の時点で、米国においては、A香港(H3N2)型インフルエンザが主として流行し、分離されたA香港(H3N2)型インフルエンザウイルスについて、アマンタジンとリマンタジンとに対する耐性を示すものが大部分であったことから、2006年1月14日、2005-2006年のインフルエンザ-シーズンの米国におけるアマンタジン・リマンタジンによるインフルエンザの治療・予防に関してCDC(米国疾病管理・予防センター)は暫定的勧告を出しました。「米国において、残りの2005-2006年のインフルエンザ-シーズンにおいて、アマンタジンもリマンタジンも、A型インフルエンザの治療・予防に使用してはいけない。インフルエンザの治療・予防のために抗ウイルス剤を使用するとすれば、オセルタミビル・ザナミビルが選択されるべきである。2005-2006年のインフルエンザ-シーズンを通じて、インフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)に対する耐性の検査は継続され、その結果等により、必要に応じ、勧告は更新されることになるだろう。インフルエンザワクチンが、インフルエンザの罹患やインフルエンザ関連の死亡を防ぐための主要手段であることに変わりはない。」という暫定的勧告です。
 さらに、2006-2007年のインフルエンザ-シーズンの米国におけるアマンタジン・リマンタジンによるインフルエンザの治療・予防に関しても、米国予防接種勧告委員会(ACIP)は、「米国においては、アマンタジンとリマンタジンとに対するA型インフルエンザウイルスの耐性の広がりを最近のデータが示していることから、アマンタジンもリマンタジンも、A型インフルエンザの治療・予防に使用してはいけない。アマンタジンとリマンタジンとに対しての感受性が再確認されるまでは、インフルエンザの治療・予防のために抗ウイルス剤を使用するとすれば、オセルタミビル・ザナミビルが選択されるべきである。」としています。
 また、2007-2008年のインフルエンザ-シーズンの米国におけるアマンタジン・リマンタジンによるインフルエンザの治療・予防に関しても、米国予防接種勧告委員会(ACIP)は、「感受性検査により高度の耐性が示されているため、アマンタジンもリマンタジンも、A型インフルエンザの治療・予防に使用してはいけない。」としています。

 2007-2008年のインフルエンザ-シーズン以後も、世界的にA型インフルエンザウイルスのアマンタジン・リマンタジンに対する耐性が高率に認められ、現在では、米国でも日本でも、アマンタジン・リマンタジンはA型インフルエンザの治療・予防に使用されなくなっています。

 日本では、国立感染症研究所と全国の地方衛生研究所等とが協力して、アマンタジン、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス薬に耐性をもつウイルスの調査を行っています。詳しくは国立感染症研究所のウェブページ(抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス)を御覧下さい。
 近年の日本の冬季インフルエンザシーズンにおける抗インフルエンザウイルス剤に対するインフルエンザウイルスの耐性株の割合(%)は、下の[表1]のとおりです。
 近年の日本においては、オセルタミビル、ペラミビルに対する耐性株をA型インフルエンザウイルスでわずかに認めるものの、ザナミビル、ラニナミビルに対する耐性株は、0%です。一方、アマンタジンに対する耐性株はほぼ100%であり、抗A型インフルエンザウイルス剤としてのアマンタジンの使用は差し控えるべきでしょう。

[表1] 日本の冬季インフルエンザシーズンにおける抗インフルエンザウイルス剤に対するインフルエンザウイルスの耐性株の割合(%)
インフルエンザ
ウイルス亜型
A(H1N1)pdm09A(H3N2)B
抗 インフルエンザウイルス剤キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤ノイラミニダーゼ阻害剤M2阻害剤キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤ノイラミニダーゼ阻害剤M2阻害剤キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤ノイラミニダーゼ阻害剤
年冬季
インフルエンザシーズン
バロキサビルオセルタミビル
、ペラミビル
ザナミビル、
ラニナミビル
アマンタジンバロキサビルオセルタミビル
、ペラミビル
ザナミビル、
ラニナミビル
アマンタジンバロキサビルオセルタミビル
、ペラミビル
ザナミビル、
ラニナミビル
2018-19 1.6 0.5 0 100 24.7** 0 0 100 0 0 0
2017-18 0 1.7 0 100 0 0 0 100 0 0 0
2016-17 - 1.1 0 100 - 0 0 99 - 0 0
2015-16 - 1.9 0 100 - 0 0 100 - 0 0
2014-15 - 0 0 100 - 0.3 0 100 - 0 0
2013-14 - 4.1 0 100 - 0 0 100 - 0 0
2012-13 - 1.8 0 100 - 0 0 100 - 0 0
2011-12 - 0 0 100 - 0.3 0 100 - 0 0
2010-11 - 2.0 0 100 - 0.7 0 100 - 0 0
2009-10 - 1.0 0 100 - 0 0 100 - 0 0
*註. 2019年3月12日現在の国立感染症研究所の抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスによります。インフルエンザウイルスの耐性株の変異については、オセルタミビル 、ペラミビル耐性は、 A(H1N1)pdm09においてNA蛋白のH275Y変異、A(H3N2)においてNA蛋白のR292K変異があります。アマンタジン耐性は、A(H1N1)pdm09、A(H3N2)においてM2蛋白のS31N変異があります。バロキサビルマルボキシル耐性は、PA蛋白のI38T/M/F変異があります。
**註. 薬剤未投与例に限ると4.3%(3/69)

 なお、2007−2008年冬季インフルエンザシーズン以降、世界的にAソ連型インフルエンザ・ウイルスにおけるオセルタミビル(タミフル)耐性株の急増が報告されました。当・横浜市衛生研究所ホームページの「2008年度(平成20年度)のインフルエンザワクチンについて」を参照してください。状況の変化に伴い、2008年12月19日には、米国におけるCDC(米国疾病管理・予防センター)による暫定的勧告が新たに出されました。こちらをご覧ください。

参考文献

  1. Centers for Disease Control and Prevention. High Levels of Adamantane Resistance Among Influenza A(H3N2) Viruses and Interim Guidelines for Use of Antiviral Agents --- United States, 2005-06 Influenza Season. MMWR 2006;55:44-46.
  2. Centers for Disease Control and Prevention. CDC HEALTH ALERT : CDC Recommends against the Use of Amantadine and Rimantadine for the Treatment or Prophylaxis of Influenza in the United States during the 2005-06 Influenza Season. January 14, 2006.
  3. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) ; Prevention and Control of Influenza : Recommendations of ACIP. ; MMWR. Recommendations and Reports. July 28,2006/Vol.55/No.RR-10,p.1-41.
  4. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) ; Prevention and Control of Influenza : Recommendations of ACIP, 2007. ; MMWR. Recommendations and Reports. July 13,2007/Vol.56/No.RR-6,p.1-54.

平成18年2月15日掲載
平成19年1月29日増補
平成20年1月4日増補
平成21年1月21日増補改訂
平成21年1月26日増補改訂
平成29年12月12日増補改訂
平成31年1月9日増補改訂
平成31年3月18日増補改訂

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成
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