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インフルエンザについて

インフルエンザとは・・・

 インフルエンザは鼻水、くしゃみ、咳などの風邪症状だけでなく、高熱、頭痛、筋肉痛などを起こし、気管支炎や肺炎を併発することもある重篤な全身感染症で高齢者などでは死亡原因となることもあります。こどもたちでは、同時に中耳炎や嘔気・嘔吐などが見られることもあります。インフルエンザは、突然の発病が特徴的です。3-7日で症状は軽快する場合が多いですが、咳や気分不快などが2 週間以上続く場合もあります。慢性の呼吸器疾患や心臓疾患を持っている人では、その病状を悪化させることもあります。肺炎を併発する場合には、肺炎は、主として、インフルエンザウイルスによる場合、細菌による場合、他のウイルスや細菌とインフルエンザウイルスとによる場合とがあります。
 小さなこどもたちでは、突然の高熱が最初の症状で、他のウイルスや細菌による感染症とまぎらわしいことがあります。また、小さなこどもたちでは、突然の高熱のために、熱性痙攣(けいれん)が見られることもあります。インフルエンザは、また、ライ症候群や脳症とも関係します。
 インフルエンザの潜伏期は、1-4日、平均で2日です。大人(おとな)の患者では、症状が出現する前日から発病後5日までが、周囲の他の人に感染する可能性がある時期です。こどもの患者では、この周囲の他の人に感染する可能性がある時期は長く、発病の数日前から10日以上にわたって周囲の他の人に感染する可能性があります。この間の患者のインフルエンザウイルスを含む鼻腔、咽頭、気道粘膜の分泌物からの咳による飛沫を吸い込んでの感染が多いと考えられます。なお、重度に免疫が抑制された人がインフルエンザに感染した場合には、数週間から数ヶ月にわたって、インフルエンザウイルスを排出することがあります。
 インフルエンザは、毎年、冬季の12月ころから翌年3月ころにかけて流行します。A型は大流行しやすいですが、B型は局地的流行にとどまることが多いです。急激に発病し潜伏期が短いため、流行の期間は比較的短いけれども、流行は爆発的で、地域的には発生から3週間以内にピークに達し、3〜4週間で沈静化する場合が多いです。また、インフルエンザは 学校感染症の一つです。学校保健安全法施行規則での登校基準は、「インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあっては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあっては、三日)を経過するまで出席停止とする。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。」となっています。潜伏期間が短いことから、学校での流行が懸念されるときには、学級の臨時休業も有効とされています。

インフルエンザ関連の死亡について

 インフルエンザ関連の死亡としては、肺炎を起こしての場合があります。また、肺や心臓等の慢性疾患が悪化しての場合等があります。インフルエンザ関連の死亡は、高齢者に多いです。アメリカ合衆国において、1990-1999年には、1シーズンあたり、36,000人のインフルエンザ関連の死亡があったと考えられていますが、高齢者が大部分を占めます。高齢者の死亡数に比べれば、こどもの死亡数は少ないです。
 2003-2004年冬季のインフルエンザ・シーズンでは、40州において、153人のこどものインフルエンザ関連の死亡がアメリカ合衆国では確認されています。このうち、2歳未満が61人(40%)、5歳未満が96人(63%)と多いです。一方で、2-17歳の92人のうちでは、インフルエンザ関連の合併症を起こしやすいとみなされない健康状況だったこどもたちが64人(70%)を占めます。
 2005年の勧告では、2歳未満のこどものインフルエンザ関連の死亡を少なくするため、月齢6-23ヶ月の健康なこどもと、月齢0-23ヶ月のこどもの密接な接触者とは、インフルエンザの予防接種を受けるべきことを、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )は勧告しました。さらに、2006年の勧告では、月齢6-59ヶ月の健康なこどもと、月齢0-59ヶ月(5歳未満)のこどもの密接な接触者とは、インフルエンザの予防接種を受けるべきことを、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )は勧告しました。
 最近のアメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices )のインフルエンザワクチン等の定期予防接種に関する勧告については、当・横浜市衛生研究所ホームページの「インフルエンザワクチンについて」、「アメリカ合衆国のこどもの定期予防接種について」および「アメリカ合衆国の大人の定期予防接種について」をご覧ください。アメリカ合衆国では、月齢6ヶ月以上の人に対して毎冬のインフルエンザの予防接種を勧告しています。

インフルエンザにはどんな種類がありますか?

 インフルエンザウイルスはA型(ウイルス分類上はインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルス)、B型(ウイルス分類上はインフルエンザウイルスB属インフルエンザBウイルス)、C型(ウイルス分類上はインフルエンザウイルスC属インフルエンザCウイルス)に分類されます。A型が過去にインフルエンザの大流行を引き起こしてきました。インフルエンザウイルスはウイルスの表面に赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)をもち、これを介してヒトの細胞に感染します。ヒトはインフルエンザウイルスの赤血球凝集素(H)やノイラミニダーゼ(N)に対する抗体を作ることによって感染をさけようとしますが、インフルエンザウイルスも突然変異を利用して赤血球凝集素(H)やノイラミニダーゼ (N)を微妙に変化させたり(抗原連続変異)、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せを大胆に変えて(抗原不連続変異)ヒトの抗体に攻撃されないようにします。

過去の大流行にはどういうものがありますか?

 1918年に世界的に大流行したスペイン風邪ウイルスは、赤血球凝集素(H)とノイラミ ニダーゼ(N)の変異体がいずれも1に分類され「H1N1」と表記されています。1957年のアジア風邪のウイルスは赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)のいずれもそれまでとは異なった形状を持っていたので「H2N2」と表記されています。1968年の香港風邪のウイルスは赤血球凝集素(H)のみ 形状が異なっていたので「H3N2」と表記されています。1918年のスペイン風邪では全世界で2000万人が死亡したとの記録もあります。
 インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)において、各国での流行は、冬季に限りません。英国では、下の表のように夏季や秋季に流行のピークが見られたことがあります。

表1. インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)における英国での流行のピークの月
インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)英国での流行のピークの月
1889-1890年のパンデミック 1890年1月
スペイン風邪第1波 1918年7月
スペイン風邪第2波 1918年11月
スペイン風邪第3波 1919年2月
アジア風邪 1957年9-10月
香港風邪第1波 1969年3-4月
香港風邪第2波 1970年1月
H1N1-2009パンデミック第1波 2009年7月
H1N1-2009パンデミック第2波 2009年10月

新型インフルエンザとは

 過去の大流行に観るように、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せが変化する「抗原不連続変異」を起こした、ヒトからヒトへと感染するインフルエンザウイルスを「新型インフルエンザウイルス」と言います。この場合、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せがヒトにとって感染の経験のない新しいものなので、抗体を持っている人はなく、そのために新型インフルエンザの世界的な大流行(パンデミック)が起こる可能性があります。

A(H5N1)型及びA(H7N9)型インフルエンザについて

 1997年に香港で赤血球凝集素(H)がH5であるA(H5N1)型インフルエンザウイルスによるインフルエンザの患者が報告されました。それまで、A(H5N1)型インフルエンザウイルスはトリのインフルエンザを引き起こすことは知られていましたが、ヒトのインフルエンザで分離されたことはありませんでした。赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼ(N)の組合せはこれまでにない新しいものなのですが、香港で報告された18人の患者はトリからの直接感染とみられ、ヒトからヒトへの感染は証明されておらず、日本でもこのウイルスは分離されませんでした。その後、中国国外に広がることもなく、このA(H5N1)型インフルエンザの発生は沈静化しました。
 しかし、2004年以来、東南アジア等でA(H5N1)型インフルエンザウイルスによる患者発生が続いていて、ヒトからヒトへの持続的な感染を起こして新型インフルエンザとしてパンデミック(世界的大流行)を起こさないかと心配されています。日本では、A(H5N1)型鳥インフルエンザを感染症法上の指定感染症とする指定政令が、平成18年(2006年)6月2日公布、平成18年(2006年)6月13日施行となりました。その後、A(H5N1)型鳥インフルエンザについては、感染症法上の二類感染症とされました。
 また、平成25年(2013年)3月31日に鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス[英語: avian influenza A(H7N9) virus]によるインフルエンザ患者発生が初めて中国からWHOに報告されて以来、中国でのA(H7N9)型鳥インフルエンザ患者発生が継続しました。鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスについても、今のところ、ヒトからヒトへの感染は大変起こりにくいですが、ヒトからヒトへの持続的な感染を起こして新型インフルエンザとしてパンデミック(世界的大流行)を起こさないかと心配されています。日本では、A(H7N9)型鳥インフルエンザを感染症法上の指定感染症とする指定政令が、平成25年(2013年)4月26日公布、平成25年(2013年)5月6日施行となりました。その後、A(H7N9)型鳥インフルエンザについても、感染症法上の二類感染症とされました(平成27年[2015年]1月9日公布、平成27年[2015年]1月21日施行)。A(H5N1)型鳥インフルエンザ・A(H7N9)型鳥インフルエンザを除く鳥インフルエンザについては、感染症法上の四類感染症とされました。医師の届出基準については、いずれも、こちらをご覧ください。

インフルエンザの予防法について

 インフルエンザは飛沫感染といって、セキやくしゃみを介して感染しますので、人混みをさけ、帰宅後はうがい、手洗いを欠かさないことが大切です。特に、インフルエンザにかかっている恐れがあって、セキなどの症状のある人は、周囲の人を感染させないために、マスクの着用が望ましいです。マスクを持っていない場合には、セキ・くしゃみの際に、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ1メートル以上離れることが望ましいです(咳エチケット)。また、そのような時などに用いられた、鼻汁・痰などを含んだティッシュを、すぐに蓋(ふた)付きの廃棄物箱に捨てることができるような環境の整備も望ましいです。

 また、インフルエンザには予防接種(ワクチン)という予防法があります。しかし、前述のようにインフルエンザウイルスは抗原連続変異や抗原不連続変異を 引き起こすことがあるので、流行するインフルエンザウイルスの予想が大きくはずれると予防の効果がない可能性もあります。インフルエンザワクチンについて、詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページ「インフルエンザワクチンについて」をご覧下さい(下線部をクリックして下さい)。
 そのほか、以前は、抗A型インフルエンザウイルス剤として、アマンタジン(一般名)という薬(商品名:シンメトレル)がA型インフルエンザの予防や初期の治療に効果があるとされました。以前は、アマンタジンは、A型インフルエンザの感染において、発病を防ぐことに約60-90%で有効とされました。しかし、近年は、アマンタジンが有効でない、耐性があるA型インフルエンザウイルスの占める割合が増加して、最近は、大部分が耐性があるA型インフルエンザウイルスとなっています。
 さらに、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として、オセルタミビル(一般名)という薬(商品名:タミフル)やザナミビル(一般名)という薬(商品名:リレンザ)がA型およびB型のインフルエンザの予防や初期の治療に有効です。家族の一員がインフルエンザと診断された際には、他の家族が服薬することでインフルエンザの発病を予防することに有効です。なお、オセルタミビルやザナミビルなどの抗インフルエンザウイルス剤はインフルエンザワクチン(不活化ワクチン)接種により人が抗体を作ることを妨げません。そのため、流行期においてインフルエンザに対する十分な免疫がない人がいた場合、インフルエンザを予防するためには、最初に予防接種(不活化ワクチン)を行って、接種が終わって2週間経過してしっかりして十分な免疫がつくまでの間、最初から抗インフルエンザウイルス剤を服薬して予防するという方法も考えられます。
 病院内において、院内感染の可能性があれば、インフルエンザ患者の同室患者・接触者には、タミフルあるいはリレンザの予防投与が考慮されます。タミフルは接触から48時間以内の開始が有効です。リレンザは接触から36時間以内の開始が有効です。いずれも、早く開始することが望ましく、24時間以内の開始が推奨されます。ある病棟内で複数の病室での患者発生が見られるなら、その病棟の全患者への予防投与も考慮されます。
 アマンタジンやオセルタミビル、ザナミビルといった薬によるインフルエンザの予防を化学的予防(chemoprophylaxis)と言います。インフルエンザワクチンの効果が期待できないときには、化学的予防(予防投与)が重要になります。アマンタジンが有効でない、耐性があるA型インフルエンザウイルスが大部分となっている現状では、化学的予防(予防投与)は主に、オセルタミビル(商品名:タミフル)やザナミビル(商品名:リレンザ)によることになると考えられます。アマンタジン、オセルタミビルやザナミビルについては、後の「インフルエンザの治療について」の項でも触れます。
 なお、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として治療に用いられてきたラニナミビルオクタン酸エステル(略称:ラニナミビル、商品名:イナビル 吸入粉末剤)についても、2013年12月、予防の効能が追加されました。ラニナミビルオクタン酸エステル(商品名:イナビル 吸入粉末剤)を予防に用いる場合は、原則として、インフルエンザウイルス 感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である 下記の者を対象とします。
( 1 )高齢者(65歳以上)
( 2 )慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
( 3 )代謝性疾患患者(糖尿病等)
( 4 )腎機能障害患者
 ラニナミビルオクタン酸エステル(商品名:イナビル 吸入粉末剤)を予防に用いる場合は、成人及び10歳以上の小児で、ラニナミビルオクタン酸エステル として20mgを1 日1 回、2 日間 吸入投与します。なお、予防に用いる場合は、インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2 日以内に 投与を開始します。また、ラニナミビル(イナビル)の服用開始から10日以降のインフルエンザウイルス 感染症に対する予防効果は確認されていません。

インフルエンザワクチンについて

インフルエンザの検査について

 インフルエンザの診断のための検査には、ウイルス培養検査、血液中の抗体の検査、迅速抗原検査、PCR(polymerase chain reaction)検査および、蛍光抗体検査などがあります。中でも、医療機関を訪れた患者から30分以内にインフルエンザウイルスを検出する迅速抗原検査が、最近になって医療機関で行われるようになってきました。この迅速抗原検査には、いろいろな種類があり、A型インフルエンザウイルスのみを検出するも の、A型とB型のインフルエンザウイルスを検出するけれどもA型とB型のインフルエンザウイルスを区別できないもの、A型とB型のインフルエンザウイルスを検出しA型とB型のインフルエンザウイルスを区別できるものがあります。この迅速抗原検査の感度や特異性は、ウイルス培養検査に劣ります。また、この迅速抗原検査の検体の採取法には、のどをこするものや、鼻の中をこするものなどがあります。この迅速抗原検査によるインフルエンザの早期の診断は、次の項「インフルエンザの治療について」で触れるインフルエンザに特異的な抗ウイルス剤による治療に役立ちます。

 迅速抗原検査のような、簡便な検査法が出てきても、ウイルス培養検査の有用性は変わりません。横浜市衛生研究所では、ウイルス培養によるインフルエンザウイルスの収集を行っています。実際の流行におけるインフルエンザウイルスの流行株を把握し、来季のワクチン株の決定に役立てたり、抗ウイルス剤に対する耐性出現や新型インフルエンザの出現を把握したりするために、ウイルス培養検査は、欠かせない検査なのです。

インフルエンザの治療について

 風邪症状のみで軽症の場合は2週間程度で治癒します。インフルエンザはウイルス感染症なので細菌に対して働く抗生剤(抗生物質)は直接効きませんが、インフルエンザウイルスは呼吸器の粘膜を破壊し細菌などによる二次感染を引き起こすことがあるので抗生剤を処方することがあります。
 肺炎などを併発して重症化した場合は入院による治療が必要になります。

 近年になって、インフルエンザに特異的な抗ウイルス剤が、インフルエンザの治療や予防目的で使用されるようになりました。アメリカ合衆国では、治療薬として、 amantadine,rimantadine,zanamivir,oseltamivirの4種類の薬が認可されていました。日本では、この内、塩酸アマンタジンamantadineが、1998年11月、A型インフルエンザ用抗ウイルス剤として認可されました。さらに、ザナミビルzanamivirが 1999年12月、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として認可されました。また、2001年2月2日からザナミビルおよびオセルタミビルoseltamivirが、抗インフルエンザウイルス剤(A型にもB型にも有効)として健康保険の適用になりました。アマンタジン(商品名:シンメトレル)は錠剤・シロップです。ザナミビル(商品名:リレンザ)は、粉末状で、専用用具で自分で吸入するようになっています。ザナミビルは呼吸機能を悪化させることがあるので、喘息あるいは慢性呼吸器疾患がある人は、投与を控えた方が良いでしょう。オセルタミビル(商品名:タミフル)はカプセルあるいはドライシロップの飲み薬です。オセルタミビルの副作用としては、嘔吐・吐き気・下痢などの症状が出る場合があります。オセルタミビルは、食事と一緒に服薬した方が、嘔吐・吐き気が出ることは少ないようです。オセルタミビルの副作用としては、この他、頻度不明ですが、ショック、アナフィラキシー様症状、肺炎、肝炎、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、急性腎不全、白血球減少、血小板減少、精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)、出血性大腸炎があらわれることがあるとされています。
 また、オセルタミビル(商品名:タミフル)については、服用した十代の小児・未成年者が転落等により死亡した事例が報告されています。厚生労働省は、平成19年3月20日に、予防的な措置として、タミフルの製造販売元の中外製薬株式会社に対して、医療関係者への緊急安全性情報の配布を指示しました。緊急安全性情報の内容は次のとおりでした。

#1 10歳以上の未成年の患者は、合併症などを有するハイリスク患者を除いては、原則使用を差し控えること。
#2 小児・未成年者は、本剤(タミフル)による治療が開始された後は、異常行動発現の恐れがあり、少なくとも二日間、小児・未成年者が一人にならないよう、患者・家族に説明すること。

 オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用と異常な行動との関係については、厚生労働省において、因果関係を究明するための検討を進めました。
 一方、インフルエンザに感染したがオセルタミビル(商品名:タミフル)を服用していない場合でも、異常行動の発現が認められています。インフルエンザと診断され治療が開始された後は、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用の有無を問わず、異常行動発現の恐れがあると考えられます。そのため、万が一の事故を防止するためには、特に小児・未成年者に対して、少なくとも二日間、オセルタミビル(商品名:タミフル)の服用の有無を問わず、小児・未成年者が一人にならないよう周囲の保護者等が注意することが重要です。
 オセルタミビル(商品名:タミフル)の添付文書では、「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、
(1)異常行動の発現のおそれがあること、
(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること
について患者・家族に対し説明を行うこと。 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。」との警告があります。
 なお、ザナミビル(商品名:リレンザ)については、添付文書で、使用上の注意として「因果関係は不明であるものの、本剤の使用後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、
[1]異常行動の発現のおそれがあること、
[2]自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること
について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。」とされています。 また、「本剤投与後に失神やショック症状があらわれたとの報告がある。この失神やショック症状はインフルエンザウイルス感染症に伴う発熱、脱水等の全身状態の悪化に加え、本剤を強く吸入したこと、または長く息を止めたことが誘因となった可能性がある。患者には使用説明書に記載されている吸入法を十分に理解させ、くつろいだ状態(例えば座位等)で吸入するよう指導すること。また、このような症状があらわれた場合には、患者に仰臥位をとらせ安静に保つとともに、補液を行うなど適切な処置を行うこと。」とされています。

 アマンタジン(商品名:シンメトレル)はもともとパーキンソン病の治療薬です。アマンタジンの副作用としては、中枢神経系の症状(神経質、不安、集中困難、フラフラ感)および胃腸症状(吐き気、食欲不振)などが出ることがあります。車の運転を避ける必要があります。また、アマンタジンの90%以上は、尿の中に排出されます。そのため、腎臓機能の悪い患者では、アマンタジンの血中濃度が上昇して副作用が出る恐れがあるので、用量を減らす必要があります。腎臓機能の悪い患者などで、強い中枢神経系の症状(著明な行動変化、痙攣、興奮、幻覚、譫妄)が出ることがあります。インフルエンザの予防や治療に短期投与中の患者で自殺企図の報告があるので、精神障害のある患者又は中枢神経系に作用する薬剤を投与中の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与することとされています。てんかん又はその既往歴のある患者及び痙攣素因のある患者では、発作を誘発又は悪化させることがあるので、患者を注意深く観察し、異常が認められた場合には減量する等の適切な措置を講じることとされています。催奇形性が疑われる症例報告があり、また、動物実験による催奇形性の報告があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこととされています。なお、アマンタジンには抗コリン作用があり、散瞳を起こすことがありえるので、緑内障患者は使用しない方が良いでしょう。
 インフルエンザの発病2日以内に投与を始めれば、アマンタジンは、A型インフルエンザの病気の期間を短縮できます。ザナミビル、オセルタミビルも、発病 2日以内に投与を始めれば、A型、B型のインフルエンザの病気の期間を約1日短縮できます。抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスの出現を避けるために、A型インフルエンザに対するアマンタジンの治療は、3-5日間で、あるいは、A型インフルエンザの症状が消えて後24-48時間以内に打ち切ります。ザナミビル、オセルタミビルの推奨治療期間は5日間です。また、抗ウイルス剤を服薬しているうちに、抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスが出現しインフルエンザ患者から排出されることがありえます。抗ウイルス剤に対する耐性ウイルスを広げないために、これらの抗ウイルス剤を服薬中のインフルエンザ患者は、他の人との接触をできるだけ控えることが望ましいです。

 2010年1月には、新たに、ペラミビル(商品名:ラピアクタ)という抗インフルエンザウイルス剤が、日本国内で販売開始されました。A型又はB型 インフルエンザウイルス感染症に対して静脈内に点滴投与されます。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないとされ、症状発現後,可能な限り速やかに開始すること が望ましいとされています。通常は一回の点滴投与で終了ですが、症状に応じて連日反復投与される場合もあります。
 2010年10月には、さらに、ラニナミビル(商品名:イナビル)という抗インフルエンザウイルス剤が、日本国内で販売開始されました。A型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対して一回だけ吸入投与されます。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患 者における有効性を裏付けるデータは得られていないとされ、症状発現後,可能な限り速やかに開始すること が望ましいとされています。また、「本剤投与後に失神やショック症状があらわれたとの報告がある。この失神 やショック症状はインフルエンザウイルス感染症に伴う発熱、脱水等の全 身状態の悪化に加え、本剤を強く吸入したこと又は長く息を止めたことが誘因となった可能性、及び本剤による可能性がある。患者には使用説明書 に記載されている吸入法を十分に理解させ、くつろいだ状態( 例えば座位等) で吸入するよう指導すること。また、このような症状があらわれた場合には、患者に仰臥位をとらせ安静に保つとともに、補液を行うなど適切 な処置を行うこと。」とされています。また、ラニナミビル(商品名:イナビル)については、2013年12月、A型・B型インフルエンザウイルス感染症の予防の効能が追加されました。
 なお、ペラミビル(商品名:ラピアクタ)とラニナミビル(商品名:イナビル)、いずれとも、添付文書で、使用上の注意として「因果関係は不明であるものの、本剤を含む抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、 異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、
1)異常行動の発現のおそれがあること、
2)自宅において 療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・ 未成年者が一人にならないよう配慮すること
について患者・ 家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状があらわれるとの報告がある ので、上記と同様の説明を行うこと。」とされています。

インフルエンザウイルスのインフルエンザ治療薬(抗ウイルス剤)に対する耐性について

インフルエンザと解熱剤について

 インフルエンザでは高熱が見られます。高熱に対して解熱剤が使われることがあります。この解熱剤の使用については、注意が必要です。インフルエンザにかかったときに、使用を避けるべき解熱剤として、サリチル酸系医薬品(アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サザピリン、サリチルアミドおよびエテンザミド)、ジクロフェナクナトリウム およびメフェナム酸があげられます。サリチル酸系医薬品については、ライ症候群(当・横浜市衛生研究所ホームページの「インフルエンザワクチンについて」・「水痘について」参照)の発生の恐れから、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者には投与しないことが原則となっています。ジクロフェナクナトリウムについては、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させる恐れがあります。メフェナム酸についても、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させる可能性などについて研究が進行中です。このように使えない解熱剤が多いと、「どんな解熱剤を使ったら良いの?」ということになります。小児のインフルエンザでの高熱に対して、解熱剤を使用するのであれば、アセトアミノフェンが適切であるとされています。

 こどもの急な発熱に備えて、以前にもらった熱さましの座薬などを冷蔵庫に保管している方もいらっしゃるかもしれません。インフルエンザにかかって急に高熱が出たときに、そのような取り置きの解熱剤をむやみに使ってはいけません。たとえば、インフルエンザ以外の病気でもらった熱さましの座薬などであれば、イン フルエンザにかかったときに使用を避けるべき解熱剤である可能性があります。インフルエンザにかかって急に高熱が出たときに、解熱剤の使用を考える場合には、医師の助言を得て、適切な解熱剤を選択しましょう。

参考文献

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    インフルエンザの基礎知識
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  11. ラピアクタ点滴静注液:添付文書、2013年7月改訂(第6版)、塩野義製薬株式会社。
  12. イナビル吸入粉末剤20mg:添付文書、2014年10月改訂(第7版)、第一三共株式会社。
  13. タミフルカプセル75:添付文書、2014年11月改訂(第26版)、中外製薬株式会社。
  14. リレンザ:添付文書、2013年1月改訂(第14版)、グラクソ・スミスクライン株式会社。
  15. 厚生労働省ホームページ「鳥インフルエンザA(H7N9)について
  16. 国立感染症研究所ホームページ「インフルエンザA(H7N9)

2000年11月17日改訂増補
2001年2月5日一部改訂
2001年10月1日改訂増補
2002年3月13日増補
2002年11月29日改訂増補
2003年9月24日増補
2004年10月13日増補
2005年12月7日改訂増補
2006年2月15日増補
2006年11月9日増補
2007年1月29日改訂増補
2008年1月4日改訂増補
2012年5月1日一部改訂
2013年4月24日改訂増補
2015年3月12日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成
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