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インドのこどもの定期予防接種について

こどもの定期予防接種のインドと日本との違いについて

 本稿では、インド(印度)共和国のこどもの定期予防接種について触れます。まず、インドのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。

 日印両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。

表1. こどもの定期予防接種のインドと日本との違い
  インドのこどもの定期予防接種
実施 実施せず
日本のこどもの定期予防接種 実施 日本脳炎
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
結核(BCG)、
ジフテリア・破傷風百日咳
ポリオ
麻疹
ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ(*)

肺炎球菌感染症
風疹
水痘
実施せず B型肝炎、
ロタウイルスによる感染性胃腸炎
流行性耳下腺炎(ムンプス)
髄膜炎菌感染症
A型肝炎
インフルエンザ
*: HPVワクチンについて、日本では女子のみ対象。

 こどもの定期予防接種として、インドで実施されず日本で実施されているものとしては、風疹水痘肺炎球菌感染症ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずインドで実施されているものとしては、B型肝炎、ロタウイルスによる感染性胃腸炎があります。

 日本国外務省によれば、日本からの赴任者がインド入国にあたり義務づけられている予防接種はありませんが、 破傷風腸チフスA型肝炎、B型肝炎、日本脳炎ポリオなどの免疫保持が勧められます(参考文献4)。また、インドで動物に接することが多い場合には、狂犬病の予防接種も勧められます(参考文献4)。

 多数のワクチンを混合したワクチン製剤がインドでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。

 日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。

インドのこどもの定期予防接種スケジュールについて

 インドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュールは、下の表2のとおりです。
 なお、ワクチンではありませんが、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されていますので、下の表2に含めました。

表2. インドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)
接種時期 予防する感染症 接種するワクチン(英字略語表記等)
出生時 B型肝炎 HepB(0回目:医療施設での出産の場合、出生後24時間以内にできるだけ早く接種。)
ポリオ経口生ワクチン OPV(0回目:医療施設での出産の場合、出生後15日以内にできるだけ早く接種。)
結核 BCG(1回接種:1歳までにできるだけ早く接種。)
生後6週 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(1回目)*
B型肝炎 HepB(1回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] Hib[1回目]*
ポリオ経口生ワクチン OPV(1回目)
ロタウイルスワクチン ROTA(1回目)****
生後10週 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(2回目)*
B型肝炎 HepB(2回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] Hib[2回目]*
ポリオ経口生ワクチン OPV(2回目)
ロタウイルスワクチン ROTA(2回目)****
生後14週 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(3回目)*
B型肝炎 HepB(3回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] Hib[3回目]*
ポリオ経口生ワクチン OPV(3回目)
ポリオ不活化ワクチン IPV(1回接種)***
ロタウイルスワクチン ROTA(3回目)****
生後9ヶ月 ビタミンA経口投与 Vitamin A (1回目: 1ml)
生後9-12ヶ月 麻疹 Measles(1回目)
日本脳炎弱毒生ワクチン LAJEV(1回目: 指定された流行地域でのみ接種)
生後16-24ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(4回目)
ポリオ経口生ワクチン OPV (4回目)
麻疹 Measles(2回目)**
日本脳炎弱毒生ワクチン LAJEV(2回目: 指定された流行地域でのみ接種)
生後18ヶ月 ビタミンA経口投与 Vitamin A (2回目: 2ml)
2-5歳 ビタミンA経口投与 Vitamin A (2歳[3回目]から5歳[9回目]まで6ヶ月毎に一回2ml投与の繰り返し)
5歳 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(5回目:6歳までに接種。7歳以上では接種しないこと。)
10歳 破傷風トキソイド TT(1回目)
16歳 破傷風トキソイド TT(2回目)
妊婦 破傷風トキソイド TT(妊娠36週未満までに4週間間隔で2回接種。但し、3年以内にTT接種歴あれば1回接種で良い)
*:インドでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチン(pentavalent vaccineまたはfive in one)で接種されます。
**:デリー州では、MMRワクチン(麻疹流行性耳下腺炎[ムンプス]風疹)で接種されます。
***:OPV(3回目)とともに接種。Assam, Bihar, Gujarat, M.P., Punjab, U.P.の6州で実施。実施州を増やす予定。
****:2016年から、Andhra Pradesh, Haryana, Himachal Pradesh, Orissa州で実施。実施州を増やす予定。

 なお、首都ニューデリーが所在するデリー州(Delhi State: NCT[National Capital Territory] of Delhi[デリー首都圏])では、麻疹ワクチンの二回目について、MMRワクチン(麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹)で接種されます。デリー州がMMRワクチンを州の定期予防接種としたのは1999年11月のことで、インドの州としては初めてのことでした。また、デリー州は、腸チフスワクチンを州の定期予防接種とする唯一の州です。腸チフスワクチンを州の定期予防接種としたのは、2004年11月のことで、2-5歳で一回接種されます。5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)については、2013年3月にデリー州の定期予防接種とされました。
 5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)がインドの定期予防接種に初めて導入されたのは、2011年12月にKerala州とTamil Nadu州とにおいてです。その後、順次、全国的に導入されていきました。5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)の導入前には、3種混合ワクチン(DTwP)とB型肝炎ワクチン(HepB)とが接種され、ヘモフィルスインフルエンザb型菌ワクチン(Hib)は接種されていませんでした。

 複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。

インドにおけるワクチンのヒンディー語表記について

 インド(India)は、南アジアにおいて、パキスタン、中華人民共和国ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマーと陸上で、スリランカモルディブインドネシアと海上で国境を接します。このインドにおける連邦公用語は、ヒンディー語(Hindi)です。英語については、連邦準公用語であり、すべての州で州の公用語となっています。インド政府のホームページは、ヒンディー語及び英語で表記されています。インドのこどもの定期予防接種のワクチン等についてヒンディー語による表記は、下の表3、表4、表5のとおりです。日本語の表記も対照して併記しました。

表3 インドのこどもの定期予防接種のワクチン[その1](ヒンディー語・日本語対照表記)

表4 インドのこどもの定期予防接種のワクチン[その2](ヒンディー語・日本語対照表記)

表5 インドのこどもの定期予防接種のワクチン[その3](ヒンディー語・日本語対照表記)

参考文献

  1. WHO Vaccine Preventable Diseases Monitoring System: Immunization schedules by antigen.
     全世界の国々の予防接種スケジュール(WHO):(英語)。
  2. WHO インド国事務所:
    インド  定期予防接種:(英語)。
  3. 欧州CDCVaccine schedule platform(欧州各国の定期予防接種スケジュール) :(英語).
  4. 外務省;渡航関連情報在外公館医務官情報インド」:(日本語).
  5. インド 保健・家庭福祉省(Ministry of Health and Family Welfare: MoHFW)
    国民健康計画(National Health Mission [NHM])
     ; 定期予防接種
     ; 定期予防接種スケジュール等:(英語).
  6. インド デリー首都圏(デリー州) 保健・家庭福祉部
    : 家庭福祉 : 母子保健 : 予防接種サービス:(英語).

2014年6月2日初掲載
2016年3月11日改訂

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2014年6月2日作成
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